いきいき!エバーグリーンラブ: 11月 2015

2015年11月23日月曜日

抗菌薬の反復使用で小児の体重が増加


小児が抗菌薬(抗生剤、抗生物質とも呼ばれます)を何度も使うと、生涯にわたっての体重増加につながる

という研究結果が、アメリカで発表されました。
B S Schwartz, J Pollak,et al.International journal of obesity (2005). 2015 Oct 21; doi: 10.1038/ijo.2015.218.


【対象】
米国の3~18歳の若者 16万3,820人

【結果】
  • 約21%が小児期に7回以上の抗菌薬の処方を受けていた。
  • これらの群の15歳時の体重は、抗菌薬を使用しなかった群よりも1.4kg多かった。
  • 特に、マクロライド系抗菌薬で体重増加が多く認められた。

【考察】
  • 抗菌薬を小児に与えるたびに、体重増加が速まることを示唆している。
  • 小児期の抗菌薬の投与で、生涯にわたりBMIが変わる可能性がある。
  • このような抗菌薬が繰り返されることで、成人期にはさらに体重増加が悪化する可能性が高まる。
  • 抗菌薬の全身投与は、臨床的にどうしても必要とされる場合を除き避けるべきである。

抗菌薬は腸内細菌にも影響する

どうして、抗菌薬の投与が体重を増加させるのでしょうか。
その理由として、消化管の細菌の一部が抗菌薬によって殺されることが考えられます。

健康な成人の消化管には、約100兆個の細菌が棲んでいます。
ただ棲んでいるのではなく、人が生きていくのに必要な栄養素を作ったり、免疫系をコントロールしたり、様々な役割を果たしています。

しかも、種類が多く、それぞれ、人が食べる食物を栄養源にして、持ちつ持たれつの絶妙な関係を築いています。

ここへ、細菌を殺す薬、つまり、抗菌薬が入ってくれば、想像できないほど、大きな影響を及ぼすことになります。

体重が増えることもその一つと考えられています。

抗菌薬が必要な病気は少ない

風邪をひいたときに、お医者さんに抗菌薬を処方してもらうと安心する方もいるようですが、風邪の原因は多くの場合、ウイルスです。
細菌が原因となっているケースの方が少ないと思われます。

ウイルスに、抗菌薬は全く効果がありません。

ただ、原因が細菌なのかウイルスなのかを調べようと思ったら、何日も時間がかかってしまうことが多いので、医師によっては、とりあえず抗菌薬を処方していることもあるようです。

でも、抗菌薬を飲まなければ、重症化してしまうような病気は、多くはありません。
抗菌薬を飲むことで、体の中にはじめから住んでいる細菌たちを殺してしまう危険性を考えれば、できることならば、抗菌薬の使用は避けたいところです。

といっても、自分で判断するのは難しいですから、風邪で医師から薬を処方された時、

「この中に抗菌薬はありますか?
私の症状には、抗菌薬が必要ですか?」

と聞いてみてください。

医師の中には、抗菌薬を処方しないと患者さんが満足しないと思って、効かないと思いながら処方している方もいます。

ちなみに、抗菌薬はお店で買うことはできません。

ご参考までに、マクロライド系抗菌薬には右の薬があります。
マクロライド系抗菌薬は、先ほど紹介した研究結果で、特に体重増加が多くみられたとされる抗菌薬です。


このなかで一番健康なのはどれでしょう?
身体の中での細菌の活躍については、こちらをご参照ください。
除菌は人類を滅ぼす?

2015年11月19日木曜日

BMIが正常でも死亡率が上がる原因?

体重や、BMIが適正でも、筋肉が少なく、体脂肪や腹部肥満(内臓脂肪)が多ければ、不健康な質の悪い体格であると考えられることは以前お話ししました。
⇒体重・BMIより筋肉量が大事

今回は、それを裏付ける長期間の観察研究が発表されたのでご紹介します。
この研究のミソは、正常体重の人たちを対象にしたところです。

BMIが正常でも腹部肥満は死亡率を上げる


Normal-Weight Central Obesity: Implications for Total and Cardiovascular Mortality

【研究の狙い】
正常体重の人たちの腹部肥満(内臓脂肪)と全般的な死亡率、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患による死亡率との関係を見る

【研究の参加者】
18 -90歳の 1万5184人 (内52.3% は女性)

【研究の方法】
参加者のBMI(体格指数)と腹部肥満(ウエスト/ヒップの比)を測定して、全般的な死亡率、心血管疾患による死亡率を平均14.5年間観察して分析した。

【研究の結果】
男性では同じBMIでも腹部肥満のある人は87%死亡するリスクが高かった。
女性では同じBMIでも腹部肥満のある人は48%死亡するリスクが高かった。

腹部肥満の人の死亡するリスクが高いことは、何れの年齢やBMIでも統計学的に確認できた。

【研究の結論】
腹部肥満の人は死亡するリスクが高いことがわかった。医師などの医療従事者はBMIだけで判断しないほうが良い。

いかがですか?

外見やBMIではリスクはわからない

ヘルスメーターに乗って、体重と、BMIを測って安心してはいませんか?
見た目に痩せぎみ、太りぎみ、BMIが正常範囲、というだけでの判断は間違っていることがこの研究からわかりますね。

腹部肥満はお腹の下の内臓脂肪が増えることで起こります。

腹膜と腸間膜の中の脂肪細胞が増えたのが内臓脂肪。  これらは、本来は薄い膜だが、食べすぎたり運動不足になって  余ったエネルギーを蓄えようとして、脂肪細胞が膨らみ数が増えてしまう。皮下脂肪はエネルギーの正規の貯蔵庫だが、内臓脂肪はもともとエネルギーを貯蔵するための組織だったわけではない。このことから、内臓脂肪は異所性脂肪とも呼ばれる。異所性脂肪がさらに進むと肝臓や膵臓などの臓器にも脂肪がたまり、肝疾患や膵炎、糖尿病やがんなどの原因となる。
腹膜と腸間膜の中の脂肪細胞が増えたのが内臓脂肪。
これらは、本来は薄い膜だが、食べすぎたり運動不足になって
余ったエネルギーを蓄えようとして、脂肪細胞が膨らみ数が増えてしまう。皮下脂肪はエネルギーの正規の貯蔵庫だが、内臓脂肪はもともとエネルギーを貯蔵するための組織だったわけではない。このことから、内臓脂肪は異所性脂肪とも呼ばれる。異所性脂肪がさらに進むと肝臓や膵臓などの臓器にも脂肪がたまり、肝疾患や膵炎、糖尿病やがんなどの原因となる。
内臓脂肪は、運動によって速やかに減ることもわかっています。
腹部肥満=内臓脂肪が多いということは、運動不足が原因のことが多いです。


この研究から、腹部肥満(内臓脂肪)の人は日ごろから運動習慣がなく、オーバーカロリーであることが推察されます。

健康の維持には、食生活と運動習慣の両方が大切であることを教えてくれていますね。


内臓脂肪については、こちらをご覧ください
脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!
脂肪を貯めるしくみ
脂肪細胞の正体
りんご型肥満でおなかが炎症

2015年11月13日金曜日

レシピ*豆乳+チーズプリン

豆乳を使ったお菓子のレシピです。
豆乳でつくる低糖質プリン  写真 エバーグリーンラブ
豆乳を牛乳の代わりに使うと、牛乳に比べて脂肪分が少ないので、ちょっと物足りない感じになってしまいます。
そこで、チーズと塩を少々加えてみました。

ゼラチンで固めるので、失敗しません。

糖質を抑えるために、砂糖の代わりにラカンカットを使っています。

ラカンカットの代わりに砂糖を使う場合には、ラカントと同じ量を入れてください。


【材料】小さいココット型3つ分
  • 豆乳         200mL
  • 卵          1個
  • クリームチーズ  40g
  • ラカンカット    大さじ2
  • 塩          1つまみ
  • ゼラチン      3g
  • 水(ゼラチン用) 大さじ1
  • バニラエッセンス 2~3滴

【作り方】
豆乳でつくる低糖質プリン  写真
  1. ゼラチンを水大さじ1でふやかす
  2. 豆乳と卵を泡だて器でよく混ぜる
  3. 2を濾して、鍋に入れる
  4. 3に1のゼラチンとほかの材料を全て入れて火にかける
  5. チーズが溶け、沸騰する直前までよく混ぜる
  6. 沸騰する直前で火を止め、容器に入れる
  7. 冷蔵庫で冷やす

火にかけたとき、煮立たせないように注意してください。

かなりトロトロなので、ココット型から取り出すと、崩れてしまいます。
容器のままお召し上がりください。

ラカンカットとは?

株式会社エム・エイチ・ピーMLの製品で、糖質の仲間ですが血糖値を上昇させない甘味料です。  成分は エリスリトール 98.3% ラカンカエキス 1.2% 甘草エキス 0.5% 写真株式会社エム・エイチ・ピーMLの製品で、糖質の仲間ですが血糖値を上昇させない甘味料です。

成分は
エリスリトール 98.3%
ラカンカエキス 1.2%
甘草エキス 0.5%

砂糖に比べて後味が残らないので、物足りなく感じる方もいるかと思います。
私は、砂糖と同じ量で料理全般に代用できています。

ジャムなどでは、冷やすと析出して、ざらざらしたかたまりが出てしてしまうのですが、プリンでは大丈夫でした。


パルスイート カロリー0ラカントも血糖値をあげないので、ラカンカットと同様に使えます。
いずれもエリスリトールが主成分です。
ただし、パルスイートカロリー0では、エリスリトールのほかに人工甘味料であるアスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムKも含みます。
人工甘味料の安全性については、未だ議論のあるところですので、どちらかといえば、ラカントやラカンカットをお勧めします。






2015年11月6日金曜日

歳をとってから運動を始めても遅くはない


エバーグリーン研究室では健康を保ち、老化をゆっくりにするために、運動を繰り返しおすすめしています。
でも、わかっていても、お仕事や家事で忙しいと、なかなか運動の習慣を身に付けられない場合も多く、どうすればいいかわからないとの声も聞かれます。

いつかは運動を始めようと思いつつ中年を過ぎてお腹が出てきている方にこそ送りたい研究を紹介します。

まずは、中年になってから運動を始めても、若いうちからやらないと意味がないのでは?という疑問に答えた研究です。

2014年の5月に開催された欧州心臓学会議でフランスの研究者が発表しました。

歳をとってから持久力トレーニングを開始しても遅くはない

Matelot D, Schnell F, Ridard C, et al. Cardiac benefits of endurance training: 40 years old is not too late to start.

Forty is not too old or too late to start endurance training
Cardiac benefits comparable in those who began endurance exercise at an earlier or later stage in life

【試験の参加者】
心臓病を持っていない年齢55歳~70歳の男性40人

【方法】
面接調査でこれまでの運動経験を聞き取り、

グループ1: 1週間に2時間以上の運動を行う習慣が一度もなかった10人。
グループ2: 30歳以前から運動を始め、週5時間以上の運動を平均40.8±5.0年間していた16人。
グループ3: 40歳以降に運動を始め、週5時間以上の運動を平均で18.2±6.1年間していた14人。

にグループ分けして、

①平均運動期間
②安静時心拍数
③最大酸素取り込み量
④心臓エコー検査で左心室のサイズ
⑤心臓エコー検査で血管壁の厚さ

について測定した。
運動の内容はサイクリングかランニングが主なものだった。

【結果】
安静時の1分間の心拍数が、運動経験のあるグループ2と3は運動したことのないグループ1よりも少なかった。
心拍数が少ないということは、1回の拍動で多くの血液を身体に送り出せることを示し、心臓のポンプ能力が優れていることを示している。

最大酸素取り込み量も運動経験のあるグループ2と3は運動したことのないグループ1より平均値が高い値を示した。
最大酸素取り込み(摂取)量は、1分間あたりどれだけ酸素を取り込む能力があるのかを表し、有酸素運動の能力(持久力)を示す。

心臓エコー検査では、運動経験のあるグループ2と3は運動したことのないグループ1と比べて左心室が大きく血管も太かった。
運動したことのないグループ1の血管壁はその他のグループよりも厚く、動脈硬化の徴候が現れていた。
動脈硬化は血管の壁が厚くなりもろくなり、血管が詰まったり、破れたりする病気。心臓病や脳卒中を引き起こす原因。

【結論】
このように40歳以降になって持久力トレーニングを始めた人も30歳前の若いうちから始めた人と同程度の心臓の機能を保っていた。
ライフスタイルを変更して、持久力トレーニングを始めるのに、遅すぎるということはないと結論した。


運動不足は心臓の機能低下や動脈硬化以外にも、高血圧、糖尿病、がん、認知症や骨粗鬆症、腰痛や膝痛などの関節疾患、肩こり、疲労、睡眠障害などを引き起こす。 軽い運動、ジョギング、ランニングを習慣化しよう イラスト
いかがですか、週5時間の運動は1日にならぜば、約43分です。これくらいの運動なら何とかこなせそうですね。

運動不足は心臓や肺の機能低下や動脈硬化以外にも、高血圧、糖尿病、がん、認知症や骨粗鬆症、腰痛や膝痛などの関節疾患、肩こり、疲労、睡眠障害などを引き起こします。
軽い運動を習慣化するだけで、どれだけメリットがあるかわかりません。

忙しい仕事に一生懸命取り組んで、収入を得ても、病気になっては仕事も危ういですし、せっかくの収入の使い道が医療費になってしまうのではもったいないですよね。

いつか運動を始めなきゃ!と思っている方は、病気になったり、けがをしたりして運動をする意欲がなくなってしまわないうちに、少しでも運動する習慣を身につけてはいかがでしょう。