いきいき!エバーグリーンラブ: 関節痛サプリのウソ

2016年7月13日水曜日

関節痛サプリのウソ

私たちくらいの年齢になると、関節リウマチや、痛風などの病気以外で、膝の痛みやそのほかの関節の痛みに悩まされる人が多くなります。

いわゆる変形性関節症です。


原因はさまざま考えられますが、過体重や肥満での関節への荷重や、激しい運動などで、関節に長年負担をかけたため、関節を覆っている軟骨がすり減ってしまい、いわば関節のクッションがなくなって、関節の骨同士が当たり、痛みとなるものです。

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膝関節の解剖図
左側が右膝を正面から見たもの、右側が内側側面から見たもの。
水色の部分が軟骨で、クッションの役割をしている。
関節軟骨がすり減ってしまうと痛みが生じる。

大腿四頭筋や膝屈筋などを鍛えていれば、大腿骨と脛骨の間隙を支えることができ、
仮に軟骨がすり減っていても痛みが出にくくなると考えられる。


軟骨がすり減っていても初期には自覚症状がないため、65歳以上の発症が多く、日本での40歳以上の変形性膝関節症患者は2530万人以上と推測されるそうです。
川口 浩ら:変形性関節症の大規模臨床統合データベースの構築と、これを用いた観察疫学・ゲノム疫学研究.日本整形外科学会誌 82(2)2008

治療法は、ひどい場合は、人工関節に入れ替える手術となってしまいます。
しかし、そこまでいかない軽度の場合は、決め手になる治療法はなくて、減量と適度な運動が勧められています。
以前は、整形外科の医師はヒアルロン酸を関節内に注射する治療を行っていましたが、これも有効性が確認できないとされ、アメリカの学会のガイドラインでは推奨しないとされています。
AAOS Releases Revised Clinical Practice Guideline for Osteoarthritis of the Knee

医療費の高騰が言われているのに、これらの薬に未だに健康保険が適応されているのが不思議です。
それとも日本人だけには特異的に効果があるというのでしょうか?

中年以降に膝が痛くならないためにも、早くからの適切な運動習慣と、体重管理が重要ということです。

さて、膝の痛みに効くとされるヒアルロン酸やコラーゲン、グルコサミン、コンドロイチンなどのサプリメントや医薬品がたくさん売られています。

これらに効果がないことは、これまでたくさんの研究で証明済みです。

このブログをお読みいただいている皆さんは、これらのサプリに騙されない方々と思いますが、お友達に、まだ、本当のことを知らないで、痛みから藁をもつかむ思いで高価なサプリメントを使っている人が居られるかもしれません。

今日は、これらのサプリや医薬品がウソであることを説明できる決定的な研究が発表されたので、ご紹介します。

成人以降は関節の軟骨は再生されない

Katja M. Heinemeier et al. Radiocarbon dating reveals minimal collagen turnover in both healthy and osteoarthritic human cartilage. Science Translational Medicine  06 Jul 2016: Vol. 8, Issue 346, pp. 346ra90. DOI: 10.1126/scitranslmed.aad8335

Why knee injuries often don’t heal

【研究の方法】

  • 1935~1997年に生まれた23人の膝関節の組織サンプルを採取し、軟骨が再生されているかどうかを炭素の同位体(14C)の含有量を利用して調べる。
  • サンプルを採取したのは2012から2014年の期間。
  • 膝関節の組織サンプルを提供したのは、15人が変形性関節症(OA)で、8人が健康な人。
  • 膝関節の軟骨中の炭素の同位体(14C)の含有量について、変形性関節症の人のサンプルと、健康な人のサンプルとを比較したり、年代別に比較したりした。
  • サンプルは、膝の関節で最も負荷のかかる中心部と、負荷の少ない辺縁部でも比較した。
  • 大気中の14Cは1950年代に核実験が盛んに行われて増加したが、1963年に国連で調印され1970年3月に発効した核拡散防止条約以降は一気に減少した。
  • つまり、1950年ごろから70年ごろに生まれた人たちの組織は、14Cを多く取り込んでいる。
  • 現在は核実験が禁止されているので、大気中の14Cは微量で、14Cを含む組織もわずかである。
  • 仮に、軟骨が再生されているなら、1950年ごろから70年ごろに軟骨に取り込まれた14Cは減少して、現在の大気中の濃度と同じくらいになっているはずである。
  • 仮に、軟骨が再生されていなければ、軟骨中の14Cは高いままのはずである。

※陽子の数が同じで中性子の数が異なる元素を同位体という。炭素(C)の大部分(98.9%)を占める炭素12(12C)の原子核は6個の陽子と6個の中性子、1.1%を占める炭素13(13C)は6個の陽子と7個の中性子でできている。炭素14(14C)は炭素全体の0.00000000012%を占め、原子核は6個の陽子と8個の中性子でできている。

【研究の結果】
  • 大気中の14Cの濃度は、1960年代の終わりから急激に減少していた。
  • 軟骨の中のコラーゲンに含まれる14Cの濃度は、それぞれの年代生まれの人たちが8-13歳くらいの頃の大気中の14Cに近かった(つまり、参加者の成長期に14Cが取り込まれて作られた軟骨のまま入れ替わりがない)。
  • 1935年や1940年代、1997年生まれの参加者のサンプル軟骨の14Cは少なく、1950年代に生まれた人たちの軟骨のサンプルは最も多く14Cが含まれていた。

【研究から考えられること】
  • 軟骨は成長期を過ぎて成人以降では再生されないと考えられる。
  • 一度、傷ついた軟骨は自己修復できないことから、軟骨を大事にしなければならない。

適度な運動と体重管理で軟骨にやさしい生活を

いかがですか?

ちょっとショックな結果ですね。
スポーツなどでの骨折は2-3か月で治癒するのに、痛めた膝がなかなか治らない理由がはっきりしました。

軟骨のコラーゲンが入れ替わらないのなら、どのような方法でコラーゲンなどのサプリメントや医薬品を投与しても、まったく無駄なことが分かりました。

さらに、体重管理と適切な運動をして筋力をつけて、膝に負担をかけない生活習慣がとても大事なこともわかりました。
大腿四頭筋や膝屈筋などを鍛えていれば、大腿骨と脛骨の間隙を支えることができるので、仮に軟骨がすり減っていても痛みが出にくくなると考えられます。

でも運動は、適度に行い膝に負担となるようなスポーツは控えるべきですね。

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