「一病息災」とも言いますね。
人間は自分で考えるよりもずっと愚かです。
何事も経験して、ある意味痛い目に合わないと、大切なことが理解できないようです。
いくら能力にも体力にも自信があると言っても、体験を伴わない勉強や、机上の理論や思い込みだけで「分かっている」つもりにならないようにすることが大切なようです。
それを証明してくれるような長期にわたる大規模な調査研究の結果をご紹介しましょう。
長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手
Norrina B. Allen et.al. Favorable Cardiovascular Health, Compression of Morbidity, and Healthcare CostsForty-Year Follow-Up of the CHA Study (Chicago Heart Association Detection Project in Industry). Circulation. 2017;135:1693-1701
Golden years are longer and healthier for those with good heart health in middle age
American Heart Association Rapid Access Journal Report
【研究の参加者】
- 研究開始時に18-74歳(平均44歳)のだった参加者のうち、2010年時点で65歳以上になった人25,804人(開始時点の参加者の65%に該当、43%が女性、90%が白人)
【研究の方法】
- 1963年から1974年に参加者に最初の健康テストを行った。
- 健康保険(アメリカのメディケア)の記録から、継続的に対象者を追跡。
- 血圧、コレステロール値、糖尿病の有無、BMI、喫煙の有無を調査して、それぞれをリスク要因と定める。
- 心臓血管の健康状態に応じて、
①良好(リスク要因なし。2010年時点で全体の6%に該当)
- ②普通[リスク要因は0項目だが、リスク要因の指標(数値)が上昇傾向。2010年時点で全体の19%に該当]
- ③要注意(リスク要因が1項目該当。2010年時点で全体の40%に該当
- ④リスクあり(リスク要因が2項目以上該当。2010年時点で全体の35%に該当)
にグループ分けした。
【研究の結果】
- 65歳まで慢性疾患にならなかった17,939人のなかで①良好(リスク要因なし)のグループは、④のリスク要因が2項目以上該当したリスクありのグループに比べて、
長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手
- 寿命が平均3.9年長い
- 慢性疾患の発症が4.5年遅かった
- 高齢期の慢性疾患発症が22%少なかった
- 医療費は約18,000ドル(約200万円)節約できた
- 65歳まで心臓発作、脳卒中、うっ血性心不全にならなかった18,714人のなかで、①良好(リスク要因なし)のグループでは、
- 心血管疾患の発症が6.9年遅かった
- 心疾患の医療費は46.5%削減された
【研究から考えられること】
- 長生きして高齢になってもやりたいことをするためには、健康的なライフスタイルが大切であることを、若い成人たちに普及させる必要がある
リスク要因は年を取ってから病気になって現れる
この研究は、一見当たり前のような結果を示していますが、よくかみ砕くと警句に満ちています。リスク要因が2項目以上該当した④のリスクありのグループの人は、65歳までは慢性疾患と診断されなくても、その後、病気と診断されて生涯病院通いになる可能性もあることを示しています。
寿命に平均3.9年、慢性疾患の発症に4.5年の差があるということは、65歳を超えたら、間もなく重い病気を発病して、闘病の末に3.9年早く亡くなるというシナリオもあり得るのです。
「65歳なんてまだまだ先、太り気味で血圧が高めだけど元気だから大丈夫」なんて思っていませんか?
辛い思いをしながら病気と闘う期間が長い老後は、果たしてハッピーリタイアメントでしょうか?
お金より健康を蓄えよう
この研究は、中年期を過ぎたら自分を労わることこそが、実は仕事・出世や貯蓄よりも、だんだんと弱っていく高齢期の、健やかで確かな備えであることを証明しています。急に肥満にはならないし、高血圧や、2型糖尿病などの生活習慣病も、急には発病しません。
「不健康」も「健康」も日常生活の蓄積によります。
中年までは、若さによって、多少の無理や暴飲暴食、運動不足、ストレスを解消できますが、それ以降は、無理をすれば「不健康」に向かって悪い要素が蓄積していくわけです。
健康にわき目も振らず一生懸命仕事をして、貨幣を得て財テクなどで人生に保険を掛けたつもりでも、「不健康」も一緒に蓄えてしまっては元も子もありません。
厚くかけた保険が充分に降りたとしても、貯めたお金を治療にふんだんに使えたとしても、現代の医療ではほとんどの場合、老化と病気は根治しないことも覚えておくべきです。
エバーグリーン研究室がお勧めできる唯一の「安心」は、
正しい知識に基づく、健康な生活習慣の獲得です。
仕事を引退して暇になったら始めるさ・・・では、間に合わないかもしれません。
健康な老後の前に、健康な60代があり、その前に健康な50代があり、その前に健康な40代があるのです。
そして、年とともに、健康の状態の質はだんだん下がっていきます。
年とともにやる気がなくなっていくことも計算に入れておく必要があります。
「もう体なんかどうでもいいや」と投げやりな気持ちになると、厄介です。
医療や介護の現場で、一番問題になるのは、患者さん本人の健康への無関心と、生活への諦めです。
一度投げやりになってしまうと、いくらアドバイスをしても、なかなか抜け出すきっかけをつかめないようです。
ときどき、ライフスタイルを見直そう
上の研究の①のグループのように、リスク因子が1つもない「無病息災」は難しいとしても、健康診断などで問題を指摘されたら、そろそろライフスタイルを考え直す時ではないでしょうか?ライフスタイルを考え直すキーワードは、
多忙、ストレス過多、運動不足、睡眠障害(不足・質が悪い睡眠)、無趣味・無関心、タバコ・アルコール・カフェイン・甘味などの嗜好品、食べ過ぎ・飲みすぎ、偏食、外食(美食)過多
です。
これらを修正することが他のどんな健康法より一番効果があります。
中年期が、健康な老後に向けて「まだ取り返しのつく」人生最後のチャンスです。
始めるのは、今、ですね。
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