いきいき!エバーグリーンラブ: 高血圧
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2017年12月23日土曜日

薬を飲む前に減量しよう!

生活習慣病は、40歳代後半から50歳代の中年期~高齢初期に発病・診断されることが多いですね。

皆さんご承知の通り、生活習慣病の危険因子=リスクファクターの指標としては、体重(腹囲)増加、血糖値・血圧・血中の脂質の上昇が知られています。


高血圧や糖尿病にならない簡単な方法

定期健診で、これらの上昇や上昇傾向を指摘されるようになるのが、中年期~高齢初期の場合が多いのです。
急に過体重や肥満にはなりません。
若い時からの生活習慣が集積して、特に、運動不足と過食過飲によって少しずつ太っていきます。
それが悪い実を結ぶのが中年期~高齢初期で、体重以外のリスクファクターである血糖値・血圧・血中の脂質も正常上限を超えてくるのです。

もしもあなたが、血圧や血糖値が上がり始め、高血圧や2型糖尿病を発病する境界であることを定期健診などで指摘されたら、ぜひ体重計に乗って、体重とBMIを測る習慣をつけてください。

過体重や肥満になると、全身の脂肪組織が慢性的に炎症をしている状態になり、糖尿病だけでなく、がんや動脈硬化など万病のもとです。
⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!
たとえ適正体重には至らなくても、太っている状態から減量できれば、これらの病気にならないようにできるのです。

今日は、減量で2型糖尿病から薬を使わずに離脱できた、という研究を紹介し、過体重や肥満から減量することの大切さを考えてみたいと思います。

減量すれば、薬なしで2型糖尿病の治療が可能


【研究の目的】

2型糖尿病は発症すると生涯治療が必要な慢性疾患である。
一般診療所などでの指導による集中的な減量で、2型糖尿病が寛解(2型糖尿病の診断基準以下に維持)できるか否かを評価した。

【研究方法】

●実施場所はスコットランド、 イギリス・タインサイド地方の一般診療所など9ヶ所。

●被検者をコンピュータで作成したリストにより、減量管理プログラム(介入グループ)ガイドラインに基づく治療(対照グループ)の2つの群に1:1にランダムに割り付けた。

●研究実施場所(タインサイド、スコットランド)と、被験者のリストのサイズ(5,700超とそれ以下)により層別化した。

●被検者、ケア担当者、アウトカムデータ収集研究アシスタントは、被験者がいずれの群に割り付けられたかを知り得たが、これらの割り付けは研究結果を解析する者には知らされなかった。

●研究開始前の6年間に2型糖尿病と診断された20~65歳の、BMIが 27~45、インスリン未使用の患者を登録した。

●介入グループは、抗糖尿病薬と降圧薬を使用中止し825~853 kcal/日の半消化態栄養剤で3~5ヶ月間食事をとり、その後2~8週間で段階的に普通食を再開する長期的な減量プログラムを実行した。

15kg以上の減量ができたか、糖尿病の寛解としてHbA1c<6.5%を維持できたかを評価した。

【研究の結果】

●2014年7月25日から2017年8月5日まで306人の被験者が研究に参加し、介入グループ157人、対照グループ149人に割り付けられた。

●12ヶ月時点で介入グループでは68人(46%)が糖尿病の寛解を達成し、対照グループでは6人(4%)が糖尿病の寛解を達成した。

●12ヶ月時点で15kg以上の減量 が成功したのは介入グループでは36人(24%)、対照グループでは0人 で統計学的に意味のある差だった(p< 0.0001)。

糖尿病の寛解の成功は、体重増加した76名では0、0~5kgの減量で6/89人(7%)、5~10kgの減量では19/56人(34%)、10~15kgの減量で16/28人(57%)、15kg以上の減量では31/36人(86%)減量の度合いが大きいほど糖尿病の寛解の成功率は高まった。

●介入グループでは 減量の平均は10.0kg(標準偏差 8.0)、対照グループでは 1.0kg(標準偏差3.7)だった。(群間補正差 -8.8 kg、95%信頼区間 -10.3 〜 -7.3 で統計学的に有意 p< 0.001)

生活の質(QOL)を EuroQol 5 Dimensions visual analogue scaleで評価したところ、介入グループ では、試験開始時に比べて7.2ポイント(標準偏差21.3)改善、対照グループでは -2.9ポイントと (標準偏差15.5)悪化していた。
(群間補正差 6.4、95%信頼区間2.5〜10.3で統計学的に有意 p=0.0012)

●研究実施中、重大な有害な副作用は、介入グループで 7件/157人 (4%)、 対照グループ で2件/149人 (1%)に見られた。そのうち胆道疝痛、腹痛が同じ被検者で起こり、介入に関連した副作用である可能性があると見なされた。

●研究終了後に重大な副作用は起こらなかった。

【結論】

研究実施後12ヶ月時点で、被検者の半数が非糖尿病状態へ寛解し、抗糖尿病薬の使用を終了できた。
このような2型糖尿病の寛解が、(患者と)一般診療所などの目標である。
 
いかがでしょう?

糖尿病の方も、その予備軍の方も、減量をすれば、薬なしで、糖尿病から離脱できるのです。

15%の減量で糖尿病から離脱

この研究で注目すべきなのは、15kg以上の減量で86%が糖尿病から離脱できたということです。
研究参加者の研究開始時点での体重が平均約100kgだったことから、おおよそ15%の減量に成功すればよいということになります。
仮に、BMIの値が大きい肥満の方でも、15%の減量を頑張れば、病気を遠ざけることができるのです。
例えば体重80kgの人は、12kgの減量、つまり68kgを目指して実現すればよいのです。
決して実現できない目標ではありませんね。
実際、「若いころはそのくらいの体重だった」と思う人も多いはずです。

いきなり15%の減量は無理!!って思う人も多いでしょう。
でも、この研究では、10~15kgの減量でも57%もの人が糖尿病から離脱できています。
15%の減量に届かなくても、ある程度の効果が得られると考えられます。
確かにダイエットは難しいので、いきなり15%体重を落とすことを目標にするのではなく、リバウンドしないような着実な減量を時間をかけて行うことでも、十分効果は期待できます。
諦めずにじっくり取り組みましょう。
”週末にまとめて運動”でも死亡率は下がる!

ガイドラインにしたがって薬を飲んでいるだけでは、糖尿病は治りません。
生活習慣を変えて、太っている場合は減量しなければ、いくら薬を飲んでも、血液透析や神経障害、認知症へと進んでいきます。
薬を飲む前にやるべきことがあることが分かりますね。
糖尿病ガイドライン 糖尿病治療薬はやめられる
糖尿病で血液透析や神経障害になりたくなければ、まず運動療法・食事療法が勧められる。ガイドラインに従った薬物療法だけではダメ

糖尿病治療で優先すべきなのは服薬ではない!

生活習慣病の薬は、あくまでも減量など生活習慣の改善の補助的な選択肢に過ぎません。
現在の生活習慣病の薬では、生活習慣病の進行を少しは遅らせることはできても、元の健康な身体に戻すことはできません。

薬を使わずに寛解(病気からの離脱)を目指すことが正しい治療目標です。
健診で検査値に問題を指摘されたからといって、病院でいきなり薬を処方してもらうのは考え直さなければなりませんね。

この研究からも明らかなように、糖尿病の薬や降圧薬など、生活習慣病の薬は、1度飲み始めたら止められないというのは間違いです。
医師や薬剤師などの医療従事者や、製薬企業の従業員の中には、「生活習慣病の薬は一生飲まなければならない」という科学的に誤った指導・情報提供をする方もいますが、そのような医療機関や薬は受診・使用しないほうが身のためです。
患者も医療従事者も、「薬を飲んでいれば大丈夫」という誤った認識を改めなければなりません。

この研究のように、良識のある病院・医院は、生活習慣病の治療では、いきなり薬を処方せずに、先ずは食事療法や運動療法を指導してくれるはずです。
生活習慣病予備軍の方は、是非、まずこの方法を選んでください。

運動・糖尿病については以下のコンテンツもどうぞ

運動
老化を遅らせる運動法は?

糖尿病

2017年5月27日土曜日

健康にも不健康にもすぐにはなれない

健康であることの大切さは、体調を本格的に崩した経験をして、不健康を自覚して初めて分かります。
「一病息災」とも言いますね。

人間は自分で考えるよりもずっと愚かです。
何事も経験して、ある意味痛い目に合わないと、大切なことが理解できないようです。
いくら能力にも体力にも自信があると言っても、体験を伴わない勉強や、机上の理論や思い込みだけで「分かっている」つもりにならないようにすることが大切なようです。

それを証明してくれるような長期にわたる大規模な調査研究の結果をご紹介しましょう。


長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手

Norrina B. Allen et.al. Favorable Cardiovascular Health, Compression of Morbidity, and Healthcare Costs
Forty-Year Follow-Up of the CHA Study (Chicago Heart Association Detection Project in Industry). Circulation. 2017;135:1693-1701

Golden years are longer and healthier for those with good heart health in middle age
American Heart Association Rapid Access Journal Report

【研究の参加者】
  • 研究開始時に18-74歳(平均44歳)のだった参加者のうち、2010年時点で65歳以上になった人25,804人(開始時点の参加者の65%に該当、43%が女性、90%が白人)

【研究の方法】
  • 1963年から1974年に参加者に最初の健康テストを行った。
  • 健康保険(アメリカのメディケア)の記録から、継続的に対象者を追跡。
  • 血圧、コレステロール値、糖尿病の有無、BMI、喫煙の有無を調査して、それぞれをリスク要因と定める。
  • 心臓血管の健康状態に応じて、

  • ①良好(リスク要因なし。2010年時点で全体の6%に該当) 
    ②普通[リスク要因は0項目だが、リスク要因の指標(数値)が上昇傾向。2010年時点で全体の19%に該当]
    ③要注意(リスク要因が1項目該当。2010年時点で全体の40%に該当
    ④リスクあり(リスク要因が2項目以上該当。2010年時点で全体の35%に該当)
にグループ分けした。

【研究の結果】
  • 65歳まで慢性疾患にならなかった17,939人のなかで①良好(リスク要因なし)のグループは、④のリスク要因が2項目以上該当したリスクありのグループに比べて、
医療費節約 寿命 慢性疾患 血圧 コレステロール糖尿病 BMI 喫煙
長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手
  1. 寿命が平均3.9年長い
  2. 慢性疾患の発症が4.5年遅かった
  3. 高齢期の慢性疾患発症が22%少なかった
  4. 医療費は約18,000ドル(約200万円)節約できた
  • 65歳まで心臓発作、脳卒中、うっ血性心不全にならなかった18,714人のなかで、①良好(リスク要因なし)のグループでは、
  1. 心血管疾患の発症が6.9年遅かった
  2. 心疾患の医療費は46.5%削減された

【研究から考えられること】
  • 長生きして高齢になってもやりたいことをするためには、健康的なライフスタイルが大切であることを、若い成人たちに普及させる必要がある
と研究者らはコメントしています。

リスク要因は年を取ってから病気になって現れる

この研究は、一見当たり前のような結果を示していますが、よくかみ砕くと警句に満ちています。

リスク要因が2項目以上該当した④のリスクありのグループの人は、65歳までは慢性疾患と診断されなくても、その後、病気と診断されて生涯病院通いになる可能性もあることを示しています。

寿命に平均3.9年、慢性疾患の発症に4.5年の差があるということは、65歳を超えたら、間もなく重い病気を発病して、闘病の末に3.9年早く亡くなるというシナリオもあり得るのです。

「65歳なんてまだまだ先、太り気味で血圧が高めだけど元気だから大丈夫」なんて思っていませんか?
辛い思いをしながら病気と闘う期間が長い老後は、果たしてハッピーリタイアメントでしょうか?

お金より健康を蓄えよう

この研究は、中年期を過ぎたら自分を労わることこそが、実は仕事・出世や貯蓄よりも、だんだんと弱っていく高齢期の、健やかで確かな備えであることを証明しています。

急に肥満にはならないし、高血圧や、2型糖尿病などの生活習慣病も、急には発病しません。

不健康」も「健康」も日常生活の蓄積によります。
中年までは、若さによって、多少の無理や暴飲暴食、運動不足、ストレスを解消できますが、それ以降は、無理をすれば「不健康」に向かって悪い要素が蓄積していくわけです。

健康にわき目も振らず一生懸命仕事をして、貨幣を得て財テクなどで人生に保険を掛けたつもりでも、「不健康」も一緒に蓄えてしまっては元も子もありません。
厚くかけた保険が充分に降りたとしても、貯めたお金を治療にふんだんに使えたとしても、現代の医療ではほとんどの場合、老化と病気は根治しないことも覚えておくべきです。

エバーグリーン研究室がお勧めできる唯一の「安心」は、
正しい知識に基づく、健康な生活習慣の獲得です。

仕事を引退して暇になったら始めるさ・・・では、間に合わないかもしれません。
健康な老後の前に、健康な60代があり、その前に健康な50代があり、その前に健康な40代があるのです。
そして、年とともに、健康の状態の質はだんだん下がっていきます。

年とともにやる気がなくなっていくことも計算に入れておく必要があります。
「もう体なんかどうでもいいや」と投げやりな気持ちになると、厄介です。

医療や介護の現場で、一番問題になるのは、患者さん本人の健康への無関心と、生活への諦めです。
一度投げやりになってしまうと、いくらアドバイスをしても、なかなか抜け出すきっかけをつかめないようです。

ときどき、ライフスタイルを見直そう

上の研究の①のグループのように、リスク因子が1つもない「無病息災」は難しいとしても、健康診断などで問題を指摘されたら、そろそろライフスタイルを考え直す時ではないでしょうか?

ライフスタイルを考え直すキーワードは、
多忙、ストレス過多、運動不足、睡眠障害(不足・質が悪い睡眠)、無趣味・無関心、タバコ・アルコール・カフェイン・甘味などの嗜好品、食べ過ぎ・飲みすぎ、偏食、外食(美食)過多
です。
これらを修正することが他のどんな健康法より一番効果があります。

中年期が、健康な老後に向けて「まだ取り返しのつく」人生最後のチャンスです。

始めるのは、今、ですね。

2016年3月17日木曜日

早い、うまい、安いが身を滅ぼす

“エネルギー効率”“エネルギー密度”の問題点

エバーグリーン研究室では、現代の食生活の問題点を、エネルギー効率あるいはエネルギー密度にあるとみています。
以前にも、別な表現で「早い栄養素」にご注意というコンテンツも書きました。
⇒吸収が速い栄養素は老化を進める?
⇒速い栄養にご注意

“火”による調理で、よりおいしく、より食べやすくなった

人類の築いた文明・英知は、ヒトの進化に伴って厳しい自然をヒトが生き抜くために発達しました。
その中でも「飢餓」を克服するための発明、特にインパクトが大きかったのが、「火」の使用だといわれています。

今のところ火を自分で熾して利用する生物はヒトだけだとされています。

火の効用には、食事以外にも、暖をとる、照らす、威嚇するなどの効用もありますが、なんといっても、食物を調理することで、硬いものでも食べやすくして、食中毒や寄生虫を避けるといったメリットが最大のものだったでしょう。

穀物などの農作物は植物性食品ですので、果物など以外は、火を使って調理することが必要となります。
植物細胞は細胞壁があるので、十分熱を加えないと柔らかくはなりません。
⇒高温・高圧で柔らかくなる

また、加熱することで、植物中のでんぷんが分解されて、オリゴ糖や二糖類になり、消化・吸収されやすくなると同時に甘くおいしくなります。
⇒炭水化物の消化と吸収

調理することで、同じ穀物でも、生で食べるよりもずっと栄養価が高くなるのです。

粉砕することで、さらにおいしく食べやすく

さらに、火を使用した調理に加えて、穀物を粉砕すること、つまり挽くことも大きな技術進歩でした。
紀元前3,000年頃の古代エジプトでは、碾臼で小麦粉を挽き、パンを焼いていたといわれます。

小麦などの穀物を挽くことで、粒子は細かくなり、それを焼くことでさらにでんぷんが分解されて甘くておいしいパンとなるのです。

このように調理技術の発達は、ヒトに計り知れないメリットをもたらしました。
ヒトの脳は、調理することで、ふんだんな栄養を摂れるようになったことで発達したのかもしれません。

調理技術の発達で、エネルギー効率、エネルギー密度が向上

しかし、一方で、調理することのデメリットも生まれました。

調理することによって、食物のエネルギー効率あるいはエネルギー密度は飛躍的に向上します。

飢餓に見舞われた時代のヒトには、調理技術や、食品開発・保存技術は、ありがたいものだったのです。

しかし、約300年前の産業革命以降、ヒトは常にエネルギー効率のよい食べ物にありつけるようになりました。
特に、砂糖の抽出と食用油を搾る搾油、精製された小麦粉などの製粉が一般的になってからは、先進国では低コストで大量生産可能な、エネルギー密度が高い食事・食品にあふれています。

便利な生活が産んだ運動不足で、より慢性疾患が増加

こんな食環境になったうえ、産業革命以降、農業従事が低下し、デスクワークが増加しました。
鉄道や自動車、エレベーター、エスカレーターの普及による慢性的な運動不足も加わって、エネルギーの収支が大幅に過剰になりました。

そして、肥満をはじめとして、糖尿病、高血圧、脂質異常症、がん、関節疾患、骨粗鬆症などの慢性疾患が爆発的に増加したのです。
日本でも、戦後の自家用車の普及と、糖尿病の有病率は比例しています。
高効率のエネルギー供給と、エネルギー消費のバランスが崩れたライフスタイルが、先進国の生活です。
これでは、そのままの生活で健康を維持するのは、困難でしょう。

エネルギー効率の高い食品は血糖値が上がりやすい

エネルギー効率がよい、あるいはエネルギー密度が高い食事は、農作業などの肉体労働をしている場合は、有利に働くこともあったでしょう。

しかし、現代先進諸国のライフスタイルでは、エネルギー高効率あるいはエネルギー高密度は、諸悪の根源のようです。

同じカロリー(熱量)を摂取しても、エネルギー高効率あるいはエネルギー高密度の食品では、血糖値が上がりやすく、インスリンが出やすくなるため、体に余計に負担がかかるようです。

その証拠となる研究の1つを簡単に紹介します。

カロリーは同じでも性質の違う糖では、血糖値とインスリン値に差

Farnaz Keyhani-Nejad.et al. Effects of Palatinose and Sucrose Intake on Glucose Metabolism and Incretin Secretion in Subjects With Type 2 Diabetes. Diabetes Care 2016;39:e38–e39 | DOI: 10.2337/dc15-1891

【研究目的】
砂糖(ショ糖・スクロース)と同じように、グルコース(ブドウ糖)フルクトース(果糖)で構成される、イソマルツロース(パラチノース)摂取後の血糖値の上昇は、砂糖摂取後よりも低いとされる。

これまで、イソマルツロースの代謝の詳細は不明であったので、ヒトでの代謝を調べる。

【研究方法】
2型糖尿病の成人10人(女性2名、男性 8名、61.6±4.6歳、BMI 32.1±4.06 kg/m2)をランダムに次の2群に分けて、血糖値とインスリン値、インスリンの分泌を促進するホルモン(GLP-1GIPなどを調べた。
  • イソマルツロース(パラチノース)50gが溶けたドリンクを300mLを飲む群
  • 砂糖50gが溶けたドリンクを300mLを飲む群
1週間以上時間をあけて2つのグループのドリンクを入れ替えて、同様に調べた。

【研究結果】
  • イソマルツロース摂取後は砂糖摂取に比べて、血糖値のピーク値の平均が20%低く、インスリン分泌は55%低かった。
  • イソマルツロース摂取後、血液中のGIP濃度が僅かに増加したが、ピーク時にもそれほど上がらなかった。
  • 砂糖摂取後では、GIP濃度は15分後に倍以上と急峻に上昇して、約60分後に急落した。
  • イソマルツロース摂取後では、GLP-1濃度は砂糖摂取後に比べて、素早く上昇し、より長時間持続した。

まとめると、
イソマルツロース摂取は砂糖摂取に比べて、
  • 血糖値が上がりにくい
  • インスリンも極端には上がりにくい
  • GIPは上がりにくい
  • GLP-1は素早く上昇して、長時間持続した

【研究結果から考えられること】
砂糖摂取に比べて、イソマルツロース摂取では、血糖値もインスリンもGIPも上がりにくいことが分かった。

砂糖は消化酵素によって速やかにグルコースとフルクトースに分解されるため、小腸上部に分布するGIP産生K細胞を刺激しGIPを産生する。
一方、イソマルツロースでは分解に時間がかかるため、イソマルツロースのほとんどは分解されないまま、小腸上部を通過してしまうのでGIP分泌が刺激されない。
GLP-1を産生するL細胞は、小腸の下部にあるため、そこに到達するまでにイソマルツロースがグルコースとフルクトースに分解され、GLP-1は分泌される。

これまでの研究から、GIPは肥満や脂肪肝、脂肪組織の炎症を起こす可能性が示されている。

砂糖もイソマルツロースも、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)で構成されるが、化学結合が異なる。
そのため、消化酵素の働き方が異なり、砂糖は早く分解され、イソマルツロースはゆっくりと分解される。

この違いから、このような結果となったと思われる。

イソマルツロースは、糖尿病の代替甘味料として使用されている。
このことについて、研究者たちは、次のように結論している。
  • イソマルツロースは、腸の細胞でGIP分泌を減少させてGLP-1分泌を増加させ、インスリン分泌もある程度維持するので、血糖値の著しい変動を防ぐことができる。
  • イソマルツロースは2型糖尿病患者に有効であろう。

ただし、砂糖もイソマルツロースも、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が1:1で構成されているので、最終的には吸収されてエネルギーになる。
摂りすぎは良くないし、運動も必要だと警告もしている。

砂糖とイソマルツロースの違い

いかがですか。
下の絵は、砂糖とイソマルツロースの化学構造を比較しています。

どちらも、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が1:1で構成されていいますが、化学結合の仕方が異なります。
糖質 何グラム

砂糖(スクロース、ショ糖)とイソマルツロース(パラチノース)は
どちらもグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が化学結合したもの。
化学結合の部位が違うことで分解されやすさが変わる。
イソマルツロースでは砂糖に比べて分解のスピードが遅いことから、吸収に時間がかかり、
血糖値の上がり方やインスリンの出方が緩やかになる。

砂糖の赤い丸の結合は速やかに分解されますが、イソマルツロースの青い丸の結合は、比較的ゆっくり分解されるので、血糖値の上がり方も、インスリンの出方もゆっくりです。
しかも、代謝的に好ましくないGIPの分泌も上がらないというわけです。

でも、研究者達も注意している通り、最終的には砂糖と同じ分のグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が吸収され摂取カロリーは同じです。
また、イソマルツロース甘さが砂糖の約半分なので、砂糖と同じ甘さを求めて使用すると倍量を使うことになってしまい逆効果になることもあります。

GIPGLP-1の違い

GIPGLP-1 どちらもインスリン分泌を促すホルモンですが、図のように小腸で産生する細胞がある場所が違います。

インクレチン、GIP, GLP-1, DPP-4,イソマルツロース, インスリン, エネルギー効率, エネルギー密度, 炎症, 血糖値, 倹約遺伝子, 高血圧, 脂質異常症, 糖尿病, 肥満,
インスリンの分泌を促す小腸の上皮細胞で産生されるホルモンをインクレチンと呼ぶ。
インクレチンにはGIPGLP-1がある。
GIPを産生するK細胞は図中ピンク色の上部小腸の吸収上皮細胞層にある。
GLP-1を産生するL細胞は、図中グリーン色の下部小腸の吸収上皮細胞層に分布する


GIPは、肥満や脂肪肝、脂肪組織の炎症を起こす可能性が示されていて、
GLP-1には、脂質異常や高血圧を防いだり、慢性炎症を治めて動脈硬化が進まないようにする作用があります。
Yutaka Seino and Daisuke Yabe. Glucose-dependent insulinotropic polypeptide and glucagon-like peptide-1: Incretin actions beyond the pancreas.Journal of Diabetes Investigation
Volume 4, Issue 2, pages 108–130, March 2013

どうして、2つのホルモンにこのような違いがあるのかまだ詳しいことは不明ですが、どうもGIPは、飢餓にさらされたときなどに働く「倹約遺伝子」によって現れてくるホルモンのようです。

倹約遺伝子は糖尿病・肥満に弱い

倹約遺伝子は、言葉の通り、エネルギーの使用を倹約して、余ったエネルギーを出来るだけ蓄える作用を持ちます。
最小限のエネルギー源で生きていけるようにしてくれる、本来は生物にとってありがたい遺伝子です。

日本人は倹約遺伝子が働きやすい

我々日本人やアメリカ大陸のピマインデアンは、この倹約遺伝子が働きやすく、糖尿病や肥満に弱いとされます。

実際に、運動量の多い伝統的な生活を続けるメキシコに住むピマインデアンは健康なのに、同じ遺伝子を持つアメリカに住む近代的な生活をするようになったピマインデアンでは、肥満と糖尿病が蔓延したという事実があります。


倹約遺伝子を持っている人種は、おそらく、食料に困りがちで、食料を得るための農作業などの運動量も多く、かつ栄養価が高くてエネルギー効率が良いあるいはエネルギー密度が高い食べ物をあまり多く食べて来なかったと考えられます。

そういえば、昔の日本の食事は食物繊維を多く含む質素なもので、就労者は殆どが仕事でよく体を動かす一次産業でした。


倹約遺伝子に高エネルギー密度の食べ物は想定外

現代の日本のような文明国に住み、倹約遺伝子が働きやすい体質で、忙しく、運動する暇もない我々にとって、エネルギー密度が高い食べ物はとても危険な食料と思われます。

忙しいと言って、ファーストフード、丼もの、カレーなどのルーをかけた白飯、麺類、パンなどの外食や、コンビニ中食、インスタント食品などを利用することを考えさせられる研究です。

早い、うまい、安いで身を滅ぼさないようにしたいものですね。

“血糖値をあげにくいサプリメント”も使い方を間違えれば本末転倒

最後に、「血糖値の上昇を緩やかにする」などと謳った難消化性デキストリンなどのサプリメントについて。

最近、このような商品がたくさん市販されていますね。
上の説明のとおり、このようなサプリメントは血糖値の上昇カーブを緩やかにさせますが、それは糖の吸収スピードが遅くなっただけ。
糖が吸収されないわけではありません。

つまり、最終的に吸収される糖質の量、カロリーは同じです。
気を許してたくさん食べれば、当然、オーバーカロリーに・・・

早い、うまい、安い(高い?)食べ物を存分に食べるためのサプリメント使用は本末転倒でしょう。

よろしければ下記↓も読んでみてください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
エナジードリンクは飲んでもOK?
加糖飲料の危険性が次々証明
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の恐ろしい結果、終末糖化産物(AGEs)とは?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備群!
糖毒性で糖尿病予備群に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の末路、終末糖化産物(AGEs)とは?
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

食用油
健康に良い油?悪い油?

運動・ミトコンドリア
ミトコンドリアの数で若さが決まる
有酸素運動と無酸素運動の違い
体重・BMIより筋肉量が大事
運動すると食べ過ぎる?
デスクワークは危険!
座り時間を短くすれば老化しにくい
筋肉は脚から落ちる
1時間に2分体を軽く動かせば寿命が延びる
ミトコンドリアが活発な筋肉を保つためには
運動すればボケを防げる!
歳をとってから運動を始めても遅くはない
BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
運動不足で脳がしぼむ!

2015年1月6日火曜日

糖質制限 糖質は何gまでOK?

私たちエバーグリーン研究室では、ずっと健康でいるために、食生活と運動習慣の大切さをお伝えしています。

今日は、食生活のなかでも、最近注目されている糖質についてお話します。

糖質制限、低糖質、糖質制限ダイエット、糖質0、などのキーワードがいろいろなメディアで取り上げられていますが、みなさんこんな疑問はありませんか?
糖質を制限するといっても、どのくらいまでなら摂ってもOKなのでしょう?

糖質はどれくらいまでならOK?

これが難問なのです。

推奨される糖質の摂取量は示されていない

実は、2015年1月現在、日本で、行政や学術団体などの公的な機関が推奨する糖質の摂取量は存在しません。

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の報告書には、糖類について、
「糖類については、日本人においてその摂取量の測定が困難であることから」基準を作成しない
と記述されています。

でも、糖質、特に単純糖質の取りすぎは、肥満、糖尿病、がん、認知症など様々な病気や障害の原因となるという科学的な報告はたくさんあります。

なのに、糖質の摂取量の基準を作成しないのは、納得ができませんね。
本来、厚生労働省は、国民の健康を維持するための政府機関なのですから。

WHOが示した基準は「糖類の摂取量1日約25g」

では、海外ではどうなのでしょう

世界保健機関(WHO)は、2014年の3月に、糖類(sugars)の摂取量の指針案を発表しました。
参考⇒WHO opens public consultation on draft sugars guideline

それによると、肥満や虫歯などの公衆衛生の点から、糖類の摂取量は1日のエネルギー摂取量の5%未満に制限すべきだとしています。

標準的な体格(BMI)の成人でおおよそ25g(角砂糖6個分)の糖類の量です。

ここで注意しなければならなのは、WHOは「糖質」ではなく、糖類(sugars)の摂取量について提示していることです。

イヌリン、ポリデキストロース、セルロース、 難消化性デキストリン、多糖類、グルコース、ぶどう糖、 フルクトース、果糖、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン、糖アルコール、還元麦芽糖水飴、エリスリトール、キシリトール、 マルチトール、ラクチトール、アセスルファムK、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、砂糖、ショ糖、スクロース、 乳糖、ラクトース、麦芽糖、マルトース、 トレハロース、異性化糖、高果糖コーンシロップ、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖
赤字:血糖値を上げる成分
紫字:血糖値を少しだけ上げる成分
黒字:血糖値を上げない成分
図のように、糖類とは砂糖や麦芽糖などの二糖類とグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)など単糖のことを言います。

また、でんぷんを加工して単糖にした、異性化糖(高果糖コーンシロップ)も糖類です。

WHOは、砂糖や麦芽糖とグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)や、甘味料として飲み物などに入っている異性化糖(高果糖コーンシロップ)などの摂取量を1日25g以下にしなさいと言っているわけです。
でんぷんなどの糖質まで含めてはいません。

WHOは、加工食品が大量の糖類を含んでいることを問題視していて、これを警告しているのですね。

たとえばスプーン1杯のケチャップには約4g、1缶の甘味炭酸飲料には約40gの砂糖が含まれていることを例にとって注意しています。

食品中の糖分の量は調べられない

さらに「糖質はどれくらいまでならOK?」が難問である理由に、食品中の糖類や糖質の量が確認できないということがあります。

例えば、WHOの基準「糖類25g」を守ろうと思っても

話が複雑になるので、まず、WHOの推奨する糖類25gについて、考えてみましょう。

1日のエネルギーの5%=1日約25gの糖類という目安があっても、日本に住む私たちがこのこの勧告を利用するのは難しいのです。

なぜなら、食品中の糖類の含有量がわかる公的な資料は現在ありません。

糖質の量は推算できるけれど、糖類の量はわからない

私たちエバーグリーン研究室が糖質(糖類ではありません)の含有量を計算するときは、文部科学省の、 日本食品標準成分表2010、日本食品標準成分表2010準拠 アミノ酸成分表、五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編をデータべース化したwebサイトの情報から推算しています。
⇒参考サイト 食品成分データベース

現在このデータベースの項目には糖質や糖分はなく、炭水化物の項目しかありません。
(文部科学省は2015年以降の日本食品標準成分表に糖分含有量の記載を始めるそうです。)

そこで、私たちエバーグリーン研究室が食品の糖質を推算する場合は、炭水化物から食物繊維を引き算して出しています。

上のベン図のように炭水化物量から食物繊維を除けば、ほぼ糖質の量になると思われるからです。
それでも、求められるのは糖質ですから、その中にどの位の糖類が含まれているかはわからないわけです。

食料品については、最近では日本でも、食料品の栄養成分表示に糖質や糖類が表示されているものもありますが、まだまだ少なく、仮に糖類を25g以内に制限しようとしても、食料品にどれだけの糖類が含まれているかわかりません。

ちなみに、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国では糖類の栄養成分表示が義務化されていますが、日本では栄養成分表示はまだ義務化されていません(消費者庁が中心になって義務化を検討中です。なぜ厚労省ではないのか疑問です)。

糖類でない糖質でも、デンプン、オリゴ糖などは血糖値を上げる

また、糖類でなければ血糖値を上げないかというと、そうではありません。
私たちが主食としている小麦やお米の主成分であるでんぷんは、消化されてブドウ糖(グルコース)になります。

他にも、上の図の赤い文字の成分は、すべて血糖値を上げます。
もう一度、復習しましょう。

糖質

  • でんぷん、オリゴ糖、デキストリン、還元麦芽糖水飴、キシリトール、マルチトール、ラクチトール

糖質の中で、特に糖類と呼ばれるもの

  • 砂糖(ショ糖=スクロース)、乳糖(ラクトース)、麦芽糖(マルトース)、トレハロース、グルコース(ぶどう糖)、フルクトース(果糖)、異性化糖(グルコース+フルクトース)≒高果糖コーンシロップブドウ糖果糖液糖果糖ブドウ糖液糖高果糖液糖砂糖混合異性化液
これらは、全部、血糖値を上げます。
糖の仲間の呼び方と血糖値についてはこちらを…
⇒「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い

お菓子や清涼飲料水などには、水飴、キシリトールやマルチトールなどが成分として表示されているので、確認して避けることができますね。
生鮮食料品の中に入っている糖質(糖類も含む)は、さきほどの食品成分データベースで「炭水化物-食物繊維」で推算してください。

問題点をまとめると

このように、

・厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」に糖質や糖分をどれだけとればよいかの指針の記載がなく

・WHOは糖類は一日のエネルギーの5%=1日約25g未満を勧告してるけれど、でんぷんを含む糖質には触れていない

・文部科学省の、 日本食品標準成分表には糖分含有量の記載は現時点ではない

・栄養成分表示には糖質や糖分の表示が義務化されていない。

問題がたくさんあって、「糖質はどれくらいまでならOK?」に解決が困難なことが実感できますね。

予想どおり、お役人さんや専門家は、利害関係を含めて、いろいろなご事情がおありのようで、はっきりせず、やはり頼りないものです。

では、糖質の量をとうやってコントロールするかというと

自分の健康は自分で守るがポリシーの私たちエバーグリーン研究室では、情報の制限のある中で、「糖質はどれくらいまでならOK?」のヒントを出しましょう。

その方法は、
  • 糖類については、WHOの一日のエネルギーの5%=1日約25g(角砂糖6個分)未満という勧告を守る。25gには、飲み物、アルコール飲料、調味料を含めて計算。

     ⇒アルコール飲料 角砂糖いくつ分?

  • 一日三食食べている場合は、まず、主食(ご飯、パン、麺類)を一食分やめるか量を減らす。まずは夕食分の主食をやめるのがおすすめ。
  • 糖質制限を始めたら、体重を定期的に測り、記録する。3日おきぐらいがおすすめ。
  • 糖質制限に慣れてきた(2-3週間を目安)ら、最低週に3回45分以上のうっすら軽く汗をかく程度の運動をする。筋トレ+有酸素運動がおすすめ。息が上がり、汗が滴るような激しい運動はNG.。
  • 体重が落ちてきて、自分の理想の体重(BMI22ぐらい)になるまで、主食と糖類を減らす。たとえば最初に夕食のご飯をやめても体重が落ちてこなければ、ケチャップなどの糖類が多い調味料の使用を見直したり、昼食の主食も量を調節して、体重が落ちてくるまで様子をみる。
  • 体重が目標値に到達したら、我慢していた糖質を1つ許可してみる。たとえば、昼食の定食のごはんを1/3だけ食べてみて、体重が増えてこないなら、その量の糖質は許容範囲となる。

つまり、体と相談して、糖質を制限していくのです。

糖質制限の効果

糖質制限は、厳しく行えば短期間で劇的に体重が減り、血圧が下がります。
特に体重は2週間もすれば減ってきます。

これは、糖質を制限すると、食後の高血糖がなくなり、インスリンが過剰に出なくなって、体のむくみが取れるためです。

インスリンは、腎臓にナトリウムを再吸収するシグナルを送り、水分を排出しないように働き、その結果血圧を上昇させ、むくみの分体重が増えているからです。

尿として排泄する体の中の成分(水分やミネラルなど)は、すぐには排泄しないで、一旦、腎臓に蓄えられた後、インスリンなどの指令を受けて、必要と判断した分だけもう一度血液中に戻されている(再吸収)のですね。

糖質制限の副作用と対策

しかし、糖質制限を始めると、体が慣れていないので、一時的に不調に陥る方もいます。

具体的な症状としては、

  • めまい・立ちくらみ・意識がふっとなくなる(起立性低血圧、低血糖症状)、疲労、虚脱(弱)感、イライラしやすい、怒りっぽくなる、筋力低下、手足の冷え・しびれ、吐き気、便秘、下痢、脱水

などです。

身体がエネルギー源をスイッチする

糖質を制限すると、糖を主要エネルギー源としていた身体が、脂肪(脂肪酸)やケトン体を主要エネルギー源に変更するようになります。
このように糖質制限で身体がエネルギー源を脂肪(脂肪酸)やケトン体にすることを「ケト適応keto-adaptation」とよびます。

特に1日の糖質量を60g以下にするような厳しい糖質制限を行うと、ケト適応に伴う副作用として上にあげたような症状が現れるとされます。

このような症状が現れたら、過剰な糖質制限ですので、主食の量を調節するなどして、症状が現れないようにしてください。
ナッツたっぷりの
低糖質クッキーのレシピはこちら

ミネラルバランスに注意

また、お話ししたように、糖質を制限するとインスリンが過剰に出なくなるため、体内のナトリウムの量が減ります。
むくみが取れて血圧も下がりよいのですが、人によっては、ナトリウムの欠乏と体が判断してしまい、ナトリウムとカリウムのバランスを保とうとして、カリウムを排泄してしまう場合があります。

カリウム不足になると、お話しした副作用の症状が出やすくなるので、糖質制限を行うときは、カリウムの多い食品、アーモンド、ピーナツなどのナッツ類、緑色の野菜、ワカメ、昆布などの海藻を摂ることをお勧めします。

水分補給を

レモンミント水
レシピはこちら
さらに、むくみが取れ、血圧が下がるのは歓迎ですが、これが効きすぎてしまうと、脱水の可能性があります。
ですので糖質制限中は、水分の補給を心がけてください。
目安は、食事以外で、1日1~2Lの糖質を加えていない飲み物で水分補給をしてください。

カフェインが入っているコーヒーやお茶、紅茶などは、利尿作用があるのであまりたくさん飲むとかえって水分を失います。

エバーグリーン研究室では、レモンやライム、スダチを絞った柑橘フレーバー水をお勧めします。

柑橘類にはミネラルも入っていますので、カリウムやナトリウムのバランスを保つのにも役立ちます。
トマト水レシピはこちら

ミネラル補給の切り札

カリウム不足と脱水予防にエバーグリーン研究室では、アミノ酸スープをお勧めします。
糖質制限中の副作用防止に、削り節と昆布でとっただし汁の、
アミノ酸スープを1日2回(朝と夜)250mL(お椀1杯)ほど飲んでみてください。
アミノ酸スープは、カリウム、ナトリウムなどのミネラルたっぷりで、水分補給もできます。
もちろん糖質も少ないです。
具として、ホウレンソウや、ワカメを入れれば効果抜群です。
アミノ酸スープの作り方はこちらを…
⇒アミノ酸スープ

アミノ酸スープ
レシピはこちら
また、だし汁をとるのが面倒な方は、カリウム豊富な昆布茶や、青汁を1日2回(朝と夜)飲むのも良いと思います。

便秘対策

最後に、糖質制限をすると、腸内の常在細菌が栄養にする糖質と食物繊維が減るので、常在細菌が元気がなくなり、便の量が少なくなり、便秘になる人もいます。

この場合を踏まえて、意識して食物繊維を摂るように心がけてください。
大豆、玉ねぎなどの野菜、ワカメ、ヒジキ、昆布などの海藻、キノコなどが糖分も少なくお勧めです。

血糖降下薬、降圧薬服用中は医師に相談

とき玉アミノ酸スープ
レシピはこちら
ここでお話しした、糖質摂取の目安は、生活習慣、運動量、筋肉量(ミトコンドリアの量と質)などの個人差がありますので、その点はご理解ください。

また、ここで、紹介する糖質制限のやり方はあくまでも、病気を持っていない人を想定しています。
糖尿病や高血圧などの病気をお持ちの方は、医師と糖質制限について相談してから行ってください。

特に、血糖降下薬、降圧薬を飲んでいる方は、糖質を制限すると、低血糖、昏睡(意識がなくなる)、過剰な血圧低下によるめまい・立ちくらみ(起立性低血圧)、転倒、転倒による事故やけがが起こる危険性があります。
充分ご注意ください。

糖質制限に興味をお持ちの方は下記もどうぞ。

糖質
文明が病気を作った!
ミトコンドリア イラスト
ミトコンドリアについては
こちらをご覧ください
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い

2014年12月20日土曜日

砂糖入り飲料のリスク~テロメアが短縮?



エバーグリーン研究室でも、適度な糖質制限をおすすめしていますが、今日は、特に砂糖入りの飲料が身体に悪い決定的な研究報告がありましたので、紹介します。
この研究を理解するためにちょっと基礎知識を勉強しましょう。

テロメアの短縮で老化する

身体が成熟した後(つまり大人になった後)も、私たちの体は、必要に応じて細胞分裂して体を修復しています。
組織を構成する細胞が傷ついたり、寿命を迎えたりして、組織の細胞が欠落するとそれを補うわけですね。

この時に働くのがご存知の遺伝子DNAです。

遺伝子DNAは細胞の細胞核の中で普段は、立体的によじれるよううにして染色体の形をとっています。

テロメア、老化、アンチエイジング、細胞核、糖質制限、テロメラーゼ、砂糖、リスク、細胞分裂、細胞老化
コイルのようなDNA二重らせんの先っぽに濃いブルーと水色で書かれているのがテロメア。
細胞分裂が起こると二重らせんが紐解かれて、DNAのコピーを作るが、その際テロメアが短くなる。
短くなったテロメアを伸長させる酵素、テロメラーゼの働きが悪くなることが、老化の一因と考えられている。


ヒトでは46本ある染色体は、細胞分裂のときにほどかれて、コピーされます。

この染色体の4つの端っこにテロメアがついています。

コピーして複製されたDNAは端っこのテロメアがちょっとだけ短くなりますが、これを修復する酵素があって、のばされて元と同じ長さになります。

細胞分裂を繰り返すたびに、端っこのテロメアが短くなり、これを修復するわけですが、この修復が働きにくくなることが老化の1つの原因と考えられています。

砂糖入り炭酸飲料で、テロメアが短縮

今回の研究は、このテロメアの長さを、アメリカの20歳から65歳の成人5309人について調べました。
その結果、

  • 砂糖入りの炭酸飲料をよく飲む人は、白血球のテロメアがより短い


ことがわかりました。

100%のフルーツジュース、ダイエットソーダ、非炭酸の砂糖入り飲料(コーヒーや紅茶に砂糖を入れて飲むなど)を飲むことは、テロメアの長さと統計学的にあきらかな関連はありませんでした。

研究者は、砂糖入りの炭酸飲料を常飲することは、細胞を老化させてメタボリックシンドロームになりやすくすると結論しています。


砂糖入りの飲料のリスクを明らかにした研究はこのほかにもたくさんあります。

リスクとなる疾患も、2型糖尿病、高血圧、肥満、脳卒中、心疾患、癌などたくさんあります。

砂糖など糖類のリスクについては、下のページもご覧ください。
⇒ブドウ糖と果糖の毒性
⇒糖類の依存性
⇒糖類を食べるとおなかがすく?
⇒グルコーススパイクに注意
⇒糖毒性で糖尿病予備軍に??
⇒果糖はブドウ糖より危険
⇒インスリンは肥満ホルモン?!
⇒「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い

砂糖は味覚を変えてしまう

砂糖は味覚も変えてしまうようです。
こんな研究もあります。
Taste perception and implicit attitude toward sweet related to body mass index and soft drink supplementation

  • 肥満ないし太り過ぎの人は、正常体重の人に比べて、塩味や甘味の感受性が鈍く、より強い甘味を好むようになる

という研究です。

もともとは、砂糖の味を特に好きではなかった人が、1か月間、砂糖入りソフトドリンクを飲み続けた結果、砂糖への嗜好度合い(好んで摂取する)が2.3倍になりました。

このように、砂糖入りソフトドリンクを飲み続けると正常体重の人も味覚が鈍って甘味を好むように変化することが研究で示されました。

砂糖を規制しないのはなぜ?

では、このような砂糖の有害性を政府は規制していないのでしょうか?

アメリカではニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ前市長が中心となり、大きなサイズ(473ミリリットル以上)の砂糖入り炭酸飲料と砂糖入りコーヒーや紅茶などを映画館やファーストフード店、飲食店で販売することを禁止する条例をニューヨーク市が施行しようとしました。

しかし、米国飲料協会がこの条例は違法だとして提訴して、ニューヨーク市が敗れました。
ニューヨーク市は控訴し、再び敗れ、上告していて、いまだに決着がついていません。

また、カリフォルニア州では、砂糖入りの清涼飲料に、肥満、糖尿病、虫歯の警告表示を義務付ける法案が州議会に提出されましたが、2014年7月に僅差で廃案になりました。

食品・飲料・外食産業による圧力と、規制当局とのいたちごっこのようです。

一方で、カリフォルニア州では2005年に砂糖入り炭酸飲料やファーストフードを公立学校で販売することを規制しています。

また、イギリスの新しい学校での食事基準では、
  • 甘いものや揚げ物など脂肪分に富む食品は抑制
  • お菓子は禁止
  • 飲み物は水が基本
  • 飲料への砂糖や蜂蜜などを添加は全量の5%まで
  • フルーツジュースは150mLまでに制限
など、かなり厳しく糖質を制限しています。
Education Secretary Michael Gove announces a new set of standards for food served in schools.

自己責任で砂糖の誘惑と戦う


大人は、自己責任で健康管理をするしかなさそうです。
私たちに備わっている報酬系に自分で打ち勝たないと、われわれの欲望を、様々な方法で刺激し続ける、産業界の餌食になってしまいますよ。

日本人は欧米の人に比べれば、野菜をたくさん食べるし、甘すぎるお菓子は食べていないと感じられるかもしれませんね。
でも、私たちが子供のころお店で売っていたお菓子を思い出してください。
今、スーパーに並ぶラインナップがとがどれほど充実して、おいしく、魅力的になったことか。

行政が私たちの健康を考えて規制してくれていると思うのは大きな間違いです。
自己責任という言葉で行政はそれとなく言い訳しているのです。
産業界が稼いで税金を納めてくれなければ、行政は成り立ちませんからね。
私たちは、お金を払っておいしい思いをしたお釣りに、不健康をもらっているわけです。

とはいえ、やっぱりスイーツは食べたい!

産業界や行政に惑わされず、正しい知識を読み解く力を持って、健康で美味しい人生を送りましょう。

糖質を制限したレシピ、エバーグリーン研究室では れい 研究員がいろいろトライしています。
ご覧ください。

クッキー
低糖質チョコレートクッキー
低糖質アーモンドクッキー
低糖質ゴマクッキー
低糖質ジンジャークッキー
低糖質カシューナッツ アイスボックスクッキー
低糖質 ごまのビスコッティ
ケーキ
低糖質チョコレートブラウニー
低糖質クルミケーキ
低糖質バナナケーキ
低糖質リンゴ&ヨーグルトケーキ
低糖質小麦粉なし!リンゴケーキ
低糖質みかんケーキ
低糖質かぼちゃケーキ
サイリウムのお菓子
低糖質サイリウム黒豆大福
低糖質マンゴーババロア
豆乳ブラマンジェ
和菓子
低糖質サイリウム黒豆大福
低糖質黒豆羊羹
パン
低糖質大豆パン 
低糖質ごま大豆パン
低糖質チーズ大豆パン
低糖質ガーリック大豆パン
低糖質大豆&にんじんパン
低糖質ごぼう大豆パン
低糖質シナモンパン
低糖質シナモンロール
低糖質紅茶パン
低糖質ラズベリー&クリームチーズパン
低糖質 小麦粉なし!チョコパン
蒸しパン
低糖質チーズ蒸しパン
低糖質きなこ蒸しパン

よろしければ下記もご覧ください。

糖質
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「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
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果糖はブドウ糖より危険
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