いきいき!エバーグリーンラブ

2018年12月2日日曜日

生涯女性をキープするための手引書『女性ホルモンメンテナンス』、発刊!

女性ホルモンの様々な疾患に対する予防効果と、ホルモン補充療法(HRT)をはじめとする女性のアンチエイジング対策の具体的な方法を、エバーグリーン研究室が女性医学の専門医 宮地清光先生とともに執筆した書籍『女性ホルモンメンテナンス』が発刊されました。

ブログで紹介した、年齢とともに女性ホルモンの分泌がどう変わるか、HRTの実践や安全性に加えて、認知症や骨粗鬆症にHRTがどうして効くかなど、知っておきたい情報を200ページに盛り込みました。


  • 宮地清光・天野礼子 著 
  • エバーグリーン研究室 宮崎睦士 編集 
  • 発行:ルネッサンス・アイ 
  • ​発売:白順社 
  • ​単行本:ソフトカバー、213ページ 
  • 定価:1300円+税
もくじはこちら

病態のメカニズムから医薬品業界の裏話まで、コラムも充実しています。
コラム目次はこちら
 



本誌に掲載された、冒頭のメッセージをご紹介しましょう。

Q:周りの高齢者(65歳以上)の女性を見ると杖を突いて猫背の人が多いですが、なぜそうなってしまうのでしょうか?

A:女性はたとえ生活習慣に問題がなくても、必ず、閉経後のエイジング(加齢)に伴っていろいろな疾患に罹りやすくなります。
特に、閉経周辺期(更年期)に骨粗鬆症の予防をはじめなければ、高齢になるとほとんどの人が背骨を折って、猫背になります。

Q:予防できるのに、なぜ、みなさん、杖を突いて猫背なのでしょうか?

A:それは、女性医学と加齢医学に基づく予防医学的なホルモン補充療法(HRT)の知識があり、それを実践している医師が日本にはほとんどいないからです。

Q:では、私たちはどうすればよいですか?

A:女性医学と加齢医学に基づく予防医学的なHRTの知識があり、それを実践できる医師を探すことです。

Q:そうは言っても、周りにそんな医師は見当たりません。

A:残念ですがその通りです。ですから、自衛のために、あなた(読者)から医師に相談を持ちかけましょう。

Q:相談しても、話を聞いてもらえるような気がしません。 

A:大丈夫です。患者さんがどのように適切な治療や予防を受けたいかをはっきり意思表示すれば、医師には応じる義務があります。

Q:”受けたい治療”について説明するのは難しそうですね。

A:いいえ簡単です。この本を医師に読ませてください。
この本は医師を説得するための資料としても使えるように、あえて医学的に専門性の高い内容まで網羅しています。難しいと感じる内容もあるかもしれませんが、その場合は読み飛ばして、医師への情報提供のためのテキストと考えてください。 

Q:自分自身でできることはあるのかしら? 

A:できることはたくさんあります。詳しくは本書をお読みください。
よい医師を見つけることをはじめ、あなたの体をあなたが守らなければ、やがてエイジングに伴う疾患が確実にあなたを蝕みます。猫背になるだけではありません。生命に関わる疾患もあります。しかし、適切に対策をすれば、エイジングに伴ういろいろな疾患を予防できます。
病気になってはじめて受診するのでは遅いのです。
予防は40歳~65歳までの間にはじめないと手遅れになります。
この本は、アクティブな女性の「年を取っても女性であり続ける」ための実践マニュアルです。この本を読んで、受け身ではなく行動しましょう!

『女性ホルモンメンテナンス』コラム目次


女性ホルモンの様々な疾患に対する予防効果と、ホルモン補充療法(HRT)をはじめとする女性のアンチエイジング対策の具体的な方法を、エバーグリーン研究室が女性医学の専門医 宮地清光先生とともに執筆した書籍『女性ホルモンメンテナンス』が発刊されました。

本書では、次のようなコラムも掲載しています。


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コラム目次

  • ホルモン補充療法(HRT)の安全性
  • ステロイドホルモンの生合成カスケード
  • 卵胞-黄体と女性ホルモンと月経周期
  • 月経周期をコントロールしている5つのホルモン
  • エストラジオールのポジティブフィードバック
  • FSHの様々な作用
  • 予防医学・医療のススメ
  • 収縮期血圧・拡張期血圧と心臓と血管の関係 
  • LDLHDLはコレステロールの一種」は誤解!
  • 一酸化窒素(NOを増やすエストロゲンの働き
  • 経口エストロゲン製剤で見られる静脈血栓塞栓症
  • エストロゲンと各臓器での血管攣縮と病態
  • 皮下脂肪内臓脂肪の違い
  • エストロゲンとT細胞炎症性サイトカイン骨吸収の関係    
  • 認知症に対するエストロゲンの作用 ①神経の伝達をよくする
  • 認知症に対するエストロゲンの作用 ②アミロイドβに対抗する
  • 妊娠・出産によるエストロゲンの変動と頭痛の関係         
  • エストロゲンとセロトニンの関係
  • 関節の構造
  • 関節リウマチ免疫
  • HLAの働きと免疫応答
  • HLAのタイプによって関節リウマチの罹りやすさが異なる
  • 感度と特異度
  • DFSdense fine speckle70抗体
  • エストロゲンはTNF-αを抑えて関節リウマチを防ぐ
  • 角層(角質層)
  • 薬の血中濃度と時間の関係
  • 経口投与した薬の動き
  • 経口投与と経皮投与の違い
  • 子宮内膜増殖症とエストロゲン、プロゲステロンの関係
  • 産業界主導の医療システムの問題点
  • 保険が適応となる疾患」とは
  • 私の各種HRT製剤の使用感
  • エストロゲンの代謝とリスクの関係
  • 私の女性ホルモンメンテナンス

専門医が教える!薬剤師が実践する! 
『女性ホルモンメンテナンス』 
宮地清光・天野礼子 著
エバーグリーン研究室 宮崎睦士 編集
発行:ルネッサンス・アイ
​発売:白順社
​単行本:ソフトカバー、213ページ
定価:1300円+税

『女性ホルモンメンテナンス』もくじ


女性ホルモンの様々な疾患に対する予防効果と、ホルモン補充療法(HRT)をはじめとする女性のアンチエイジング対策の具体的な方法を、エバーグリーン研究室が女性医学の専門医 宮地清光先生とともに執筆した書籍『女性ホルモンメンテナンス』が発刊されました。
本書の目次をご紹介しましょう。
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読者のみなさんへ

序章 生涯現役女性でいるために ―女性ホルモンメンテナンスの勧め―

1 ホルモン補充療法の現状
2 女性ホルモンメンテナンスに取り組むきっかけ
3 乳がん治療後の関節痛の解決
4 月経不順・月経前症候群に伴う関節痛の解決
5 女性ホルモンメンテナンスで乳がんを予防
6 女性ホルモンメンテナンス普及のために

第1章 更年期に考えなければいけないこと

1-1 女性には不健康な長い老後が待っている
1-2 閉経周辺期以降、女性に起こる障害
1-3 女性ホルモンの枯渇は外見の老化も進める
1-4 問題は、更年期症状だと気づきにくいこと
1-5 賢い患者になって、無駄な治療を受けない!

第2章 女性ホルモンの偉大な効果

2-1 ホルモンて何?
2-2 女性ホルモンの種類
2-3 閉経周辺期を境にエストロゲンはほとんど出なくなる
2-4 妊娠のためのホルモン分泌システム
2-5 FSHは卵巣でエストラジオールを分泌させる
2-6 加齢による卵巣機能の低下とエストラジオールの分泌
2-7 閉経周辺期はどうかというと・・・
2-8 更年期症状がなくなっても、身体の中の不調は悪化
2-9 閉経周辺期の指標にはFSHも有用
2-10 HRTで解決できること・できないこと

第3章 エストロゲン不足で起こる疾患

3-1 エストロゲン不足が時間をかけて重大な疾患に
3-2 エストロゲンが影響する疾患の男女別の患者数の推移
3-3 エストロゲンが影響する疾患
3-3-1 高血圧
3-3-2 脂質異常症
3-3-3 動脈硬化・血流障害・血栓症
3-3-4 微小血管(攣縮型)狭心症
3-3-5 糖尿病
3-3-6   肥満(内臓脂肪の蓄積)
3-3-1~6 生活習慣病とエストロゲンについてまとめると
3-3-7   骨粗鬆症
3-3-8 アルツハイマー型認知症
3-3-9 頭痛
3-3-10 うつ症状
3-3-11 めまい

第4章 エストロゲン不足と関節痛・関節リウマチ

4-1 関節リウマチとはどういう病気?
4-2 関節リウマチの症状
4-3 関節リウマチはどのような人に多いか
4-4 関節リウマチの原因
4-5 関節リウマチの発症が多く見られる年齢
4-6 経産婦は未産婦に比べ関節リウマチに罹りにくい
4-7 関節リウマチの診断基準
4-8 関節リウマチの診断で行われる検査
①リウマチ因子
②抗CCP抗体
③C反応性タンパク(CRP: C-reactive protein)
④赤血球沈降速度(赤沈)
⑤抗核抗体
4-9 関節痛のある更年期の患者さんに必要な治療は?
4-10 45~55歳の女性には、まず更年期障害の診断を
4-11 どうして閉経周辺期に関節症が現れるのか
4-12 閉経周辺期の関節症状はHRTで改善・消失する
4-13 HRTは、リウマトイド因子陽性、または抗CCP抗体陽性で関節リウマチと診断されない患者さんの関節リウマチ発症を防ぐ
4-14 隠れリウマチを見逃さないことが重要
4-15 エストロゲンが関節リウマチを抑える理由
4-16 閉経直前の関節痛にはビタミンEが有効
4-17 45歳未満の関節痛には超低用量ピルが有効
4-18 当院の関節痛治療のまとめ

第5章 ホルモン補充療法(HRT)で使う薬と使い方

5-1 HRTのスケジュール
①50歳前後~60歳
②50歳前後~60歳で子宮がない場合
③60歳以上
④60歳以上で子宮がない場合
5-2 HRTで使われるエストロゲン製剤
5-2-1 エストロゲン製剤開発の歴史
5-2-2 エストラジオール製剤の比較
5-2-3 エストラジオール製剤選択のポイント
①血液中のエストラジオールの濃度が安定しているか
②どのくらいのエストラジオールが血液中に入るか
③不要な(有害な)代謝物ができないか
④外用剤使用による皮膚症状(副作用)がないか
5-2-4 血中濃度を確認しながら継続
5-3 エストリオール製剤
5-4 プロゲスチン製剤
5-4-1 プロゲスチン製剤開発の歴史
5-4-2 HRTに使われるプロゲスチン製剤
5-5 HRTに使われるエストラジオール+プロゲスチン製剤

第6章 女性ホルモンメンテナンスを安全で効果的に行うために

6-1 HRTの継続に乳がんの検査は必要か?
6-2 HRTで乳がん・アルツハイマー型認知症は予防できる
6-3 HRTを注意しながら行う必要がある疾患
6-4 HRTを行ってはいけない人
6-5 運動はHRTの副作用を減らす
6-6 自分でできる女性ホルモンメンテナンス
6-7 HRTの効果を正しく評価するために必要なこと

第7章  ホルモン補充療法(HRT)を行った患者さんの例

7-1 HRTを急に止めたために関節痛が発症した例
 [症例]HRT中止によりシェーグレン症候群を発症した症例
 [症例]HRTによって線維筋痛症が改善した症例
 [症例]関節リウマチと誤診されHRTにて改善した関節痛の症例
7-2 抗うつ薬、抗精神病薬が関節痛の原因となった例
 [症例]うつ治療で高プロラクチン血症となり、HRTで改善した症例
 [症例]抗精神病薬の変更で高プロラクチン血症が消失した症例
7-3 いったん治まった関節症状が更年期に再発した例
 [症例]関節リウマチと診断された関節痛がHRTで解決した症例
 [症例]関節リウマチ治療で取れない痛みがHRTで改善した症例
7-4 閉経前の関節の痛みに超低用量ピルが奏功した例
 [症例]関節リウマチ発症素因があり、超低用量ピルで発症を予防した症例

終章 ホルモン補充療法(HRT)と自己免疫疾患の原因解明について

8-1 なぜHRTが普及しないのか?
8-2 抗DFS70抗体を用いた自己免疫疾患に進展しない症例の見極め
8-3 関節の痛みとHRT
8-4 年齢に応じた関節症状の診療・研究目標
8-5 自己免疫疾患の発症原因の解明に向けて

あとがき
参考文献
女性ホルモンメンテナンスに用いる主な薬剤
用語解説
索引
図版索引
著者略歴

専門医が教える!薬剤師が実践する! 
『女性ホルモンメンテナンス』 
  • 宮地清光・天野礼子 著 
  • エバーグリーン研究室 宮崎睦士 編集 
  • 発行:ルネッサンス・アイ 
  • ​発売:白順社 
  • ​単行本:ソフトカバー、213ページ 
  • 定価:1300円+税
 

2018年10月9日火曜日

女性ホルモンの急激な低下は認知機能によくない

前回、
 妊娠回数の多い女性の方が将来、認知症になりにくい
というコホート試験の結果をご紹介しました。


今回は、
出産経験が5回以上の女性はアルツハイマー病になりやすく
流産を経験した女性はアルツハイマー病になりにくい
という、ソウル大学(韓国)の報告をご紹介します。

ン?言っていることが反対?
一見、そう思われそうな結果ですね。

実は、女性ホルモンの乱高下を視野に入れて考えると、納得できる結果と言えます。
まずは、臨床試験の概要をご紹介し、その読み解き方を解説しましょう。

出産、流産とアルツハイマー病リスクの関係

Jang H, et al. Neurology. 2018; 91(7):e643-e651. 

【対象】
  • 予め登録された3,549例の女性を対象に、軽度認知障害あるいはアルツハイマー病が発症した人としなかった人とで、出産・流産の経験に違いがあるかどうかを検討した(後ろ向きコホート研究、ロジスティック回帰分析)。
  • 認知症にならなかった女性については、出産・流産の経験とミニメンタルステート検査(MMSE)スコアとの相関を検討した(共分散分析)。
※ミニメンタルステート検査(MMSE):認知症の診断に用いられる検査。11項目の質問で判定する。

【結果】
  • 出産経験5回以上(多産)の女性は、1~4回の女性と比較して、アルツハイマー病に罹るリスクが約1.7倍高かった(オッズ比[OR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.04~2.72)。
  • 流産を経験した女性は、未経験の女性と比較して、アルツハイマー病に罹るリスクが約半分だった(1回の流産[OR:0.43、95%CI:0.24~0.76]、2回以上の流産[OR:0.56、95%CI:0.34~0.92])。
  • 認知症に罹らなかった女性において、出産経験が5回以上の女性は、1~4回の女性と比較し、MMSEスコアが不良だった(p<0.001)。
  • 認知症に罹らなかった女性において、流産を経験した女性は、未経験の女性と比較し、MMSEスコアが良好だった(p=0.008)。
まとめると・・・
  • 出産経験が5回以上の女性は、1~4回の女性に比べて、認知機能が低下しやすい
  • 流産を経験した女性は、認知機能が低下しにくい。 

流産が認知症予防に有効な理由

前回、「妊娠するとエストロゲンがたくさん分泌されるので、年を取ってから認知症になりにくい」というお話をしました。
女性ホルモンが認知症を予防する

今回の研究報告では、出産経験が多過ぎる場合も認知症になりやすくなる、というもので、一見、矛盾します。
(ただし、今回の報告は、出産経験のない女性と比較したデータではありません)

では、もう一度、妊娠・出産とエストロゲンの分泌の関係を見てみましょう。

血中エストロゲン濃度は、妊娠中は通常の月経の何十倍も高い値を示しますが、産後は非常に低い値となります。
これは、授乳によって分泌されるプロラクチンが排卵を抑制するために、卵胞からのエストロゲンの分泌がストップするためです。

出産直後は、次の子どもを妊娠できないように、コントロールされているのでしょう。
このエストロゲンの低値は、ほぼ授乳している期間中、続きます。

妊娠しただけで出産に至らなければ、エストロゲンの高値だけを経験して、産後のエストロゲン低値を経験しないで済むことになります。
これは、
生涯を通じて分泌されるエストロゲンの量が増える
だけでなく、
エストロゲンの異常高値からの急激な低下を経験しない
ことでも、認知症の予防に働くと考えられるのではないでしょうか。

産後の体調不良は、エストロゲンの急低下の影響

認知症は、出産したばかりの女性には遠い先の話ですが、産後に起こる様々な体調不良も、エストロゲンの急低下が影響していると考えられています。

産後うつは有名ですね。
関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患も、出産を機に発症するケースがあることが知られています。

エストロゲンは様々な疾患から女性を守るホルモンなのに、出産という人生の一大事の後に急激に低下することで身体に悪い影響を及ぼすというのは、納得がいかないように感じますね。
これは、生物の進化の歴史を考えると、納得できます。
生物は、母親が出産することで継代されるのですから、優先されるのは確実に子どもを産むことであって、産後の母体の健康は二の次なのでしょう。

更年期のエストロゲンの乱高下について考える

閉経後、女性には加齢とともに様々な疾患が現れる(黄色囲み)。
男性では、若い頃から継続して少量のエストロゲン分泌がある
(水色線)。
そのため男性では更年期症状は見られず、認知症や骨折も女性に比べて少ない。
出産後のエストロゲンの急激な低下に比べれば程度は軽いものの、更年期・閉経周辺期には月経周期が乱れて、エストロゲンが急激に高くなったり低くなったりを繰り返します。
これをエストロゲンの乱高下といいます。
詳細はこちらを⇒ホルモンの非常事態が更年期症状に!

乱高下の後、最終的にエストロゲンはほとんど分泌されなくなり、月経がみられなくなります。

更年期・閉経周辺期のエストロゲンの乱高下、その後のエストロゲンの枯渇のいずれの事態も、その後の健康に非常に悪い影響を及ぼすことが容易に想像できます。

実際に、憂うつや関節の痛みなど、出産後に見られるのと同じ症状が、更年期・閉経周辺期にも見られます。

妊娠・出産や流産に関しては、コントロールのしようがありませんが、更年期以降・閉経周辺期のエストロゲンの変動は、ホルモン補充療法(HRT)で防ぐことが可能です。

認知症をはじめ、図に示した多くの疾患の予防のために、HRTを考えてみてはいかがでしょうか。

2018年9月26日水曜日

女性ホルモンが認知症を予防する

もし、認知症を予防する方法があるとしたら、あなたは試してみますか?

女性ホルモンが、認知症に予防的に働く可能性があることが、アメリカとイギリスから報告されました。

簡単にまとめると・・・
  • 出産回数が多い女性ほど、認知症のリスクが低い。
  • 初経から閉経までの期間が長い女性ほど、認知症のリスクが低い。
  • 生涯のうち妊娠していた期間が長い女性ほど、認知症、アルツハイマー病のリスクが低い。 
  • 閉経の時期が遅い方が、認知能力が高い。
初経から閉経までの期間が長いということは、エストロゲンが分泌されていた期間が長いということです。
また、妊娠中はエストラジオールの分泌量が通常の50倍~100倍に増えます。

生涯を通じてのエストロゲンの分泌量が多いことが、認知症の発症を予防するのではないか、と考察されています。
※女性ホルモンにはプロゲステロンとエストロゲンがあり、エストロゲンにはエストラジオールエストロンエストリオールなどがあります。
⇒参考:精巧!女性ホルモン調節システム  ホルモンの非常事態が更年期症状に!

アルツハイマー病協会国際会議(AAIC、2018年7月、シカゴ)で報告

 FROM THE ALZHEIMER’S ASSOCIATION INTERNATIONAL CONFERENCE 2018 PREGNANCY AND REPRODUCTIVE HISTORY MAY IMPACT DEMENTIA RISK PLUS, THE MOVE TO RE-THINK THE IMPACT OF HORMONE THERAPY ON COGNITION: Plus, Sex-Based Approaches May Improve Diagnostic Accuracy in Alzheimer’s

①Paola Gilsanzらの報告

【方法】
  • 1964~1973年に40~55歳であった女性1万4,595人の医療記録を用いて、出産歴と認知症の発症リスクとの関連を調べた。

【結果】
  • 子どもが3人以上いる女性は、子どもが1人の女性に比べて認知症リスクが12%低かった。
  • 妊娠可能な期間が38~44年だった女性に比べて、21~30年だった女性では、認知症リスクが33%高かった。
  • 初潮を13歳で迎えた女性に比べて、16歳以上で迎えた女性では、認知症リスクが31%高く、45歳以降も月経があった女性に比べて、45歳以下で自然閉経した女性では28%高かった。
 【考察】
  • エストロゲンが認知症に対して予防的に働く可能性がある。 

②Molly Foxらの報告

【方法】
  • 英国の高齢女性133人を対象に、妊娠歴とアルツハイマー病の発症リスクとの関連を調べた。

【結果】
  • 生涯のうち妊娠していた期間が長いほどアルツハイマー病リスクは低かった。
  • 妊娠していた期間が1カ月延びるごとに、アルツハイマー病リスクは5.5%低下していた。

【考察】
  • 妊娠が女性の免疫系に有益な作用をもたらし、その後の脳の健康にも何らかのよい影響をもたらした可能性が考えられる。

アメリカ神経学会雑誌Neurologyに掲載

③Diana Kuhらの報告

Kuh D et al. Neurology. 2018 May 8;90(19):e1673-e1681. doi: 10.1212/WNL.0000000000005486. Epub 2018 Apr 11.

【方法】
  • 出生コホート研究に登録された1,315例の英国の女性を対象に、閉経の時期が認知能力と関連するかどうかを検討した。
  • 認知能力の評価は、言語記憶および処理速度について、43歳から69歳までのあいだに4回行い、加齢による変化の度合いを比較した。
  • 結果の解析に当たっては、小児期の認知能力(8歳時に標準的指標で評価)やHRTの使用、体格指数、職業、教育で補正した。

【結果】
  • 言語記憶スコアは、閉経時の年齢が晩期の女性は早期に自然閉経した女性と比べて、1歳あたり0.17語良好だった。
  • 言語記憶スコアは、閉経時の年齢が晩期の女性は、外科的に卵巣を切除することで閉経した女性に比べて0.16語良好だった。
  • 処理速度は、自然閉経時または外科的閉経時の年齢とは関連しなかった。 

【考察】
  • 妊娠可能な期間が晩年まで続くことが、特に言語記憶に関する認知機能に良い影響を及ぼすと考えられる。

以上の報告から言えること

以上の報告から、
  • 妊娠期間が長い方が、認知機能に良い。
  • 妊娠可能な期間が長い方が、 認知機能に良い。
と言えそうです。
③の報告では、69歳までの比較的若い時点での認知機能を調べています。
また、③の報告では、約6割の人がホルモン補充療法(HRT)を行っていましたが、HRTの有無にかかわらず、妊娠可能な期間が長いことが認知機能に良いという結果が得られました。
妊娠中は、通常の月経と比べてエストロゲンが大量に分泌されます。
妊娠期間の長さが後々の認知機能を左右するという結果から、生涯に分泌されたエストロゲンの量が多いことが、認知機能に良い影響を与えると考えられます。

妊娠時には、エストラジオールの分泌が劇的に増加

妊娠に際してエストラジオールの血中濃度がどのように変化するかを見てみましょう。

ホルモン補充療法 hrt HRT エストロゲン 女性ホルモンと妊娠出産

右上のグラフは妊娠時エストラジオールの血中濃度の基準値の上限(ピンク)と下限(黄色)を示しています。
多くの人は、妊娠中のエストラジオール濃度が、この上限と下限の間のピンク黄色のグラデーションの範囲の値を取ります(基準値=95%の人々が当てはまる値の範囲)。

エストラジオールは、妊娠していないときには卵胞から分泌されますが、妊娠すると胎盤から大量に分泌されるようになり、しかも、胎児の成長とともにその量が増えていきます。
そして出産と同時に胎盤がなくなることで、分泌は一気に下がります。

出産直後は排卵が起こらないためにエストラジオールはほとんど分泌されません。
その後も、授乳によって分泌されるプロラクチンが排卵を抑制することから、授乳を続けている間は、排卵は起こらず、エストラジオールの分泌が低い状態が続きます。

妊娠時に分泌が増えても、産後に分泌が減るのであれば、 妊娠してもしなくてもトータルのエストラジオールの分泌量は差し引き変わらないのではないかと思われるかもしれませんね。
ここで、妊娠時と、妊娠していないときとのエストラジオールの血中濃度を比較してみましょう。

左下のグラフは、通常の月経周期のエストラジオールの血中濃度を示しています。
上のグラフと、単位を比べてください。
妊娠時とそうない場合とでは、2桁も違います。
月経周期の増減など、誤差のようなものですね。

これらのグラフから、妊娠時のエストラジオールの分泌の増加分は、産後の分泌の低下分に比べて圧倒的に多いことがわかります。

ホルモン補充療法(HRT)でエストロゲンを補うという人生設計

若い女性の中には、「いずれは結婚したいし、子供も欲しい」と考える方もいれば、「結婚するより、社会の中で活躍したい」、「子供に束縛されない人生を送りたい」と考える方もいるでしょう。
でも、「認知症にならないために、とにかく子供はたくさん作ろう」という理由で結婚を急ぐ方は、まずいませんね。 

更年期にさしかかっても、自分の両親が認知症にならないようにするにはどうすればよいかは考えても、自分自身の認知症対策は”まだまだ先のこと”と思いがちです。

しかし、ここで紹介した研究を見ると、認知症対策はもっとずっと若い頃から必要だと考えられます。

とはいえ、更年期になって「もっと子供を産んでおけば認知症になりにくかったのに」と言われても今さらどうにもなりません。
唯一、”今さら”でも可能な対策が、ホルモン補充療法(HRT)です。
ご紹介した研究からも、閉経後にHRTを行い、エストロゲンが枯渇するのを防ぐことで、多少なりとも、認知症を遠ざけることができるのではないかと考えられます。

「結婚する・しない」、「子供を作る・作らない」などの人生設計の一環として、「若いときに十分に分泌する機会を得られない分のエストロゲンを、更年期からHRTで補う」という選択肢も検討すると良いのではないでしょうか。

今から始める認知症対策

認知症の危険因子には、エストロゲンの他にも、高血圧や2型糖尿病など、若い頃からの生活習慣病が影響する可能性が指摘されています。

認知症は、ある日突然、発症するわけではなく、何十年という年月をかけて、徐々に進んでいく疾患です。
脳の神経や血管などの衰えに、閉経によるエストロゲンの欠乏が拍車をかけ、さらにそこから10数年の年月をかけて、いよいよ本格的な症状が現れてくるのです。

若い頃から運動や正しい食事を心がけ、子供もたくさん産んだうえで、更年期以降はHRTにも助けてもらう、というのが理想なのでしょうが、現代社会に生きる女性では、理想通りはいかないのが現実でしょう。

でも、今からでも遅くありません。
日々の運動年齢に見合った食事HRTという女性ホルモンメンテナンスで、認知症を遠ざける生活をはじめませんか?

女性ホルモンメンテナンスのメリットは他にもたくさんあります。
このことについてはまたお話ししますね。

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