いきいき!エバーグリーンラブ: 心血管病リスク
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2017年7月22日土曜日

人工甘味料は大丈夫?

暑いですね。
ここまで暑いと、食欲がなくなってしまう方も少なくないと思われます。
暑いから、喉ごしの良い甘味や甘い飲み物を食事替わりにしている方もいらっしゃるでしょう。
甘味はカロリーが多く、体重管理や血糖値を気にして、砂糖以外の甘味料を利用することもあると思います。

甘味料には、天然由来のものと、天然にはない化学構造の合成した人工甘味料がありますが、どちらもダイエットや2型糖尿病のカロリーコントロール、糖質摂取コントロールに利用されていますね。

ダイエット効果を謳うノンカロリー飲料・食品に積極的にノンカロリーの甘味料が使われています。
欧米、特にアメリカではこれらの甘味料の使用は一般的で、ノンカロリー飲料・食品には人工甘味料が広く使われているようです。
中でも人工甘味料はその危険性がいろいろ言われていますが、ほんとうのところはどうなのでしょうか。

今日は、甘味料・人工甘味料の種類と特徴をおさらいしてから、人工甘味料の使用がBMIやメタボ、高血圧、2型糖尿病、心血管疾患にどのように影響するかについての研究をまとめて解析した結果をお知らせます。

甘味料の種類と特徴を知っておこう

表を見てください。
アスパルテーム, アセスルファム, インスリン, スクラロース, ステビア, ノンカロリー飲料, メタボ, 異性化糖, 心血管病リスク, 人工甘味料, 糖尿病予備軍,
甘味料の甘さは、砂糖の甘さを1として比較しています。

人工甘味料は、砂糖と比べてどれも強烈な甘味ですね。
ただし、人工甘味料は血糖値やインスリン分泌に影響することはありません。
この点は安心してよいと思います。

主な人工甘味料は、サッカリン、アセスルファム 、アスパルテーム、スクラロースです。

ステビアは厳密には人工甘味料ではなく、血糖値は上げないものの、インスリンを追加分泌させる作用がラットで認められているので、ちょっと気になりますね。

表の中で血糖値を上げる甘味料にはカロリーがあると考えてください。

表の中の人工甘味料は天然にはない化学構造で合成したものですが、天然由来の甘味成分と同一の化学構造を持つ甘味料であっても、酵素やアルカリを使った化学反応で工業的に「合成」しているものがほとんどです。

甘味料を大量生産して一般市場に出回っている価格にするには効率の良い「合成」は不可欠と言えます。
天然原料からの抽出では効率が悪くとてもコストがかかってしまいます。

天然原料抽出でも合成でも、できる甘味料の化学構造に違いはないので、「天然」が良く、「合成」が悪いということはありません。

人工甘味料は血糖値を上げない

人工甘味料は、砂糖に比べて強烈に甘いといいましたが、こと血糖値とインスリン分泌に関しては、問題は概ねないと言えるでしょう。

人工甘味料がインスリン分泌を促進するというのはうそです。

オーガニック志向など、人工物・合成物を嫌い、天然物を崇拝する人たちの中には、根拠も証拠もなく人工物・合成物の危険性を言う方がいますので、注意が必要です。

糖質制限にはエリスリトールがお勧め

糖質制限ダイエットする場合や、糖尿病予備軍の人におススメ甘味料はエリスリトールです。
エリスリトールは、メロン、梨やブドウなどの果物や、醤油、味噌、日本酒などの発酵食品にも含まれる甘味成分です。

他の糖アルコールと異なり、良く吸収されるため下痢などの副作用が出にくく、吸収されたエリスリトールは代謝を受けずに90%以上が尿中に排泄されます。
表のように砂糖の8割ほどの甘さで、血糖値とインスリン分泌に影響がありません

砂糖よりさっぱりしていて、後味が残りません。
物足りないと思われるかもしれませんが、しつこさがないので好まれる方も多いと思います。
エバーグリーン研究室でも使用している優れた甘味料で、お勧めです。

人工甘味料は健康に悪影響する?

さて、人工甘味料を常用すると、砂糖の常用と同程度に肥満・2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患のリスクが上がるという報告がこれまでにもありました。
Swithers SE.Artificial sweeteners produce the counterintuitive effect of inducing metabolic derangements. Trends Endocrinol Metab. 2013 Sep;24(9):431-41.

血糖値とインスリン分泌を上げない人工甘味料の常用が、なぜこれらの病気のリスクを上げてしまうのでしょうか?

人工甘味料は本当に危険なの?


メタ解析:ノンカロリー甘味料の心血管・メタボリックシンドロームへの影響

Meghan B. Azad et.al. Nonnutritive sweeteners and cardiometabolic health: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials and prospective cohort studies CMAJ 2017 July 17;189:E929-39. doi: 10.1503/cmaj.161390

今回の研究では、どうなっているでしょう?

メタ解析:ノンカロリー甘味料の心血管・メタボリックシンドロームへの影響

【研究の目的】
・人工甘味料の常用がメタボリックシンドロームや2型糖尿病、心血管疾患のリスクとなるかを調べる。

【研究の方法=メタ解析】
人工甘味料を常用するグループと常用しないグループに入る人を予めくじ引きで定めて、常用するグループでは実際に人工甘味料を使ってもらい、その後それぞれのグループでメタボリックシンドロームや心血管疾患の発症率やリスクがどうなっていたかを調べた(無作為化対照前向き介入)研究と、健康な人々で、人工甘味料を常用していたと報告した人のグループと、常用しなかった人のグループでの発症率やリスクがどうなっていたかを調べた前向きコーホート(観察)研究を2016年1月の時点で、国際的なデータベース(MEDLINE、Embase 、 Cochrane Library)で検索した。
・これらの研究がデータ解析対象として信頼できるものかを評価し、信頼できる研究を抽出した。
・抽出した研究からのデータをまとめて、大きなビッグデータとして統合して改めて統計学的に解析した。

【研究の結果】
・37の試験が抽出の基準を満たしていた。
・ 7 つは介入研究 (1,003人参加、観察期間の中央値6か月) 。
・30はコーホート(観察)研究 (405,907人参加、観察期間の中央値10年間)。
・アスパルテーム・スクラロース・ステビオシド(ステビア)などの人工甘味料摂取とBMI低下は関連せず、長期観察研究ではむしろ上昇と関連していた。
・人工甘味料の常用で、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、心血管疾患のリスク(危険度)が上昇した。

【研究から考えられること】
今回まとめたメタ解析だけでは、人工甘味料のリスクを確定的に言うことはできない。
しかし、人工甘味料がこれだけ広く使用されていることから、少なくとも使用にあたってのリスクの可能性を警告するべきだろう。
もっと詳しい研究が必要である。

人工甘味料そのものにリスクがあるわけではない ?

いかがですか?

エバーグリーン研究室でこの論文を読んだ限りでも、今回の研究では、人工甘味料にはリスクがあると確定的に言うことはできないと思います。

このメタ解析で注目すべきなのは、
●観察期間が短い介入研究では人工甘味料のグループのBMI低下がみられなかった
 ことと、
●長期観察研究ではBMI上昇傾向が認められた
ことです。

つまり、人工甘味料を使っても摂取カロリーに影響はなく(減少させられず)、自己申告によって人工甘味料を常用してきたと報告した人のグループでBMIが上昇したのには、人工甘味料によるカロリーコントロールの効果とは別の要素が関係していると考えられます。

恐らく、人工甘味料を常用してきたと報告した人は、人工甘味料を常に使いたいほど「甘味」に飢えており、この食事の嗜好が、これらの悪影響の原因と考えるのが自然だと思います。
このような嗜好の人は、極端な味付けのものをたくさん食べる傾向があっても不思議ではありません。
食べ物が偏りがちで、間食が多いなどの、人工甘味料以外の食生活の習慣に問題があると思われます。

もちろん、人工甘味料そのものにもリスクが全くないとは、データーが未だ十分に集まっていないため言い切れません。
しかし、観察期間が短い介入研究での結果をみたところ、BMIが著しく上昇したり、他の明らかな有害事象が認められたわけではなく(BMIは低下しない程度)、やはり、人工甘味料そのものがリスクを誘引しているとは考えにくいと思います。

嗜好を躾(しつけ)よう

誰でも、美味しいものは好きです。
楽しいこと、わくわくすることは好きだし、美しいものも、性的なことも、物欲もモチロンあります。
これらはみな脳の報酬系が関わっています。
何度も言いますが我々生命の進化の歴史は飢餓と生殖(種の生き残り)の闘いでした。
脳の報酬系は、この歴史の上に獲得した生物の性質です。

生存と生殖にとって大切で得難いものを追い求める習性を、生物は多かれ少なかれ獲得してしまっているのです。

報酬系の恐ろしさはペットを見ているとわかります。
ワンちゃんやニャンコも、野生動物に比べて、報酬系が高じているのがわかります。
野生の猫はもともと肉食で、植物食(穀物、果実、野菜・根菜)しません。
そのような食性で味蕾を進化させ、糖類の甘味や塩味を感じにくい猫が、ご主人の食べるクッキーなどをしつこく欲しがる光景には何か異常を感じます。
生物の家畜化は報酬系の異常な働きを招くのではないでしょうか。

われわれ人間も同じでしょう。
今は「アメリカ人好みの黄色や紫の過激に甘いケーキはとても食べられない 」と思っていても、食べ慣れればいつの間にか美味しく、病みつきになってしまうかもしれません。

飽くなき報酬系が呼び覚ます欲望を満たすことを優先する行動様式が、生活習慣を乱し、暴飲暴食に走らせます。

人工甘味料は表のように軒並み砂糖の100倍以上と強烈な甘味です。
人工甘味料に限らず、甘味料を常用したいと思う「嗜好=報酬系の暴走」が問題なのではないでしょうか?

やはり「足るを知り」、極端な嗜好に走らないように、「欲望」をコントロールすることが健康の秘訣のようです。
⇒「足ることのない」人間の報酬系

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2017年5月27日土曜日

健康にも不健康にもすぐにはなれない

健康であることの大切さは、体調を本格的に崩した経験をして、不健康を自覚して初めて分かります。
「一病息災」とも言いますね。

人間は自分で考えるよりもずっと愚かです。
何事も経験して、ある意味痛い目に合わないと、大切なことが理解できないようです。
いくら能力にも体力にも自信があると言っても、体験を伴わない勉強や、机上の理論や思い込みだけで「分かっている」つもりにならないようにすることが大切なようです。

それを証明してくれるような長期にわたる大規模な調査研究の結果をご紹介しましょう。


長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手

Norrina B. Allen et.al. Favorable Cardiovascular Health, Compression of Morbidity, and Healthcare Costs
Forty-Year Follow-Up of the CHA Study (Chicago Heart Association Detection Project in Industry). Circulation. 2017;135:1693-1701

Golden years are longer and healthier for those with good heart health in middle age
American Heart Association Rapid Access Journal Report

【研究の参加者】
  • 研究開始時に18-74歳(平均44歳)のだった参加者のうち、2010年時点で65歳以上になった人25,804人(開始時点の参加者の65%に該当、43%が女性、90%が白人)

【研究の方法】
  • 1963年から1974年に参加者に最初の健康テストを行った。
  • 健康保険(アメリカのメディケア)の記録から、継続的に対象者を追跡。
  • 血圧、コレステロール値、糖尿病の有無、BMI、喫煙の有無を調査して、それぞれをリスク要因と定める。
  • 心臓血管の健康状態に応じて、

  • ①良好(リスク要因なし。2010年時点で全体の6%に該当) 
    ②普通[リスク要因は0項目だが、リスク要因の指標(数値)が上昇傾向。2010年時点で全体の19%に該当]
    ③要注意(リスク要因が1項目該当。2010年時点で全体の40%に該当
    ④リスクあり(リスク要因が2項目以上該当。2010年時点で全体の35%に該当)
にグループ分けした。

【研究の結果】
  • 65歳まで慢性疾患にならなかった17,939人のなかで①良好(リスク要因なし)のグループは、④のリスク要因が2項目以上該当したリスクありのグループに比べて、
医療費節約 寿命 慢性疾患 血圧 コレステロール糖尿病 BMI 喫煙
長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手
  1. 寿命が平均3.9年長い
  2. 慢性疾患の発症が4.5年遅かった
  3. 高齢期の慢性疾患発症が22%少なかった
  4. 医療費は約18,000ドル(約200万円)節約できた
  • 65歳まで心臓発作、脳卒中、うっ血性心不全にならなかった18,714人のなかで、①良好(リスク要因なし)のグループでは、
  1. 心血管疾患の発症が6.9年遅かった
  2. 心疾患の医療費は46.5%削減された

【研究から考えられること】
  • 長生きして高齢になってもやりたいことをするためには、健康的なライフスタイルが大切であることを、若い成人たちに普及させる必要がある
と研究者らはコメントしています。

リスク要因は年を取ってから病気になって現れる

この研究は、一見当たり前のような結果を示していますが、よくかみ砕くと警句に満ちています。

リスク要因が2項目以上該当した④のリスクありのグループの人は、65歳までは慢性疾患と診断されなくても、その後、病気と診断されて生涯病院通いになる可能性もあることを示しています。

寿命に平均3.9年、慢性疾患の発症に4.5年の差があるということは、65歳を超えたら、間もなく重い病気を発病して、闘病の末に3.9年早く亡くなるというシナリオもあり得るのです。

「65歳なんてまだまだ先、太り気味で血圧が高めだけど元気だから大丈夫」なんて思っていませんか?
辛い思いをしながら病気と闘う期間が長い老後は、果たしてハッピーリタイアメントでしょうか?

お金より健康を蓄えよう

この研究は、中年期を過ぎたら自分を労わることこそが、実は仕事・出世や貯蓄よりも、だんだんと弱っていく高齢期の、健やかで確かな備えであることを証明しています。

急に肥満にはならないし、高血圧や、2型糖尿病などの生活習慣病も、急には発病しません。

不健康」も「健康」も日常生活の蓄積によります。
中年までは、若さによって、多少の無理や暴飲暴食、運動不足、ストレスを解消できますが、それ以降は、無理をすれば「不健康」に向かって悪い要素が蓄積していくわけです。

健康にわき目も振らず一生懸命仕事をして、貨幣を得て財テクなどで人生に保険を掛けたつもりでも、「不健康」も一緒に蓄えてしまっては元も子もありません。
厚くかけた保険が充分に降りたとしても、貯めたお金を治療にふんだんに使えたとしても、現代の医療ではほとんどの場合、老化と病気は根治しないことも覚えておくべきです。

エバーグリーン研究室がお勧めできる唯一の「安心」は、
正しい知識に基づく、健康な生活習慣の獲得です。

仕事を引退して暇になったら始めるさ・・・では、間に合わないかもしれません。
健康な老後の前に、健康な60代があり、その前に健康な50代があり、その前に健康な40代があるのです。
そして、年とともに、健康の状態の質はだんだん下がっていきます。

年とともにやる気がなくなっていくことも計算に入れておく必要があります。
「もう体なんかどうでもいいや」と投げやりな気持ちになると、厄介です。

医療や介護の現場で、一番問題になるのは、患者さん本人の健康への無関心と、生活への諦めです。
一度投げやりになってしまうと、いくらアドバイスをしても、なかなか抜け出すきっかけをつかめないようです。

ときどき、ライフスタイルを見直そう

上の研究の①のグループのように、リスク因子が1つもない「無病息災」は難しいとしても、健康診断などで問題を指摘されたら、そろそろライフスタイルを考え直す時ではないでしょうか?

ライフスタイルを考え直すキーワードは、
多忙、ストレス過多、運動不足、睡眠障害(不足・質が悪い睡眠)、無趣味・無関心、タバコ・アルコール・カフェイン・甘味などの嗜好品、食べ過ぎ・飲みすぎ、偏食、外食(美食)過多
です。
これらを修正することが他のどんな健康法より一番効果があります。

中年期が、健康な老後に向けて「まだ取り返しのつく」人生最後のチャンスです。

始めるのは、今、ですね。

2015年6月6日土曜日

加糖飲料の危険性が次々証明

糖質の中でも糖類に分類される、砂糖(ショ糖)、グルコース(ブドウ糖)、果糖や異性化糖などを過剰にとることが健康に悪影響がある証拠は、これまでたくさん報告されてきました。
⇒糖類・糖質・炭水化物の分類はこちらを

とりわけ、糖類を加えて甘くした飲料、いわゆる加糖飲料のリスクが次々と報告される中で、最近インパクトのある2つの研究結果が報告されたので、ご紹介します。

まず、1つ目は、アメリカでの研究の結果です。
A dose-response study of consuming high-fructose corn syrup–sweetened beverages on lipid/lipoprotein risk factors for cardiovascular disease in young adults
Sugary drinks boost risk factors for heart disease, study shows

この試験の試験方法は、介入研究と言って、結果と原因の因果関係をはっきり証明できる試験方法ですので、かなり説得力があります。
⇒医学・栄養学などの試験方法の読み解きはこちらを

15日間続けて加糖飲料を飲むと、心血管疾患になりやすくなる

【研究参加者】
18-40歳の男女85人

【方法】
参加者を4つのグループに分けて、異性化糖である高果糖コーンシロップを

①1日のカロリー必要量の0%
②1日のカロリー必要量の10%
③1日のカロリー必要量の17.5%
④1日のカロリー必要量の25%

にあたる量を添加(加糖)したドリンクを15日間、毎日飲んでもらった。
①の0%のドリンクには、人工甘味料のアスパルテームで甘味をつけた。

この試験では試験を行っている研究者も、参加者も、参加者が①~④のどのドリンクを飲まされたかわからないようにしています。
研究者や参加者が試験期間中にそれがわかってしまうと、研究結果に参加者や研究者の心理的な影響が出てしまうことがあるので、これを避けるためそのように隠しているのです。
ですので、①のドリンクも十分な甘さを付けました。
このような方法は二重盲検法といって、試験の信頼性が高まります。

試験の開始時点と終了時点で、参加者の血液検査をして、心筋梗塞や狭心症や脳卒中などの心血管疾患の危険因子である、LDL-コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)、尿酸の値を調べて比較した。


【結果】

②1日のカロリー必要量の10%
③1日のカロリー必要量の17.5%
④1日のカロリー必要量の25%

の加糖飲料を飲んだ人達では、LDL-コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)、尿酸の値が上がり、それらの上昇の割合は④>③>②の順番で高まった。
つまり、加糖ドリンクに添加した高果糖コーンシロップ濃度が濃いほどに、リスクが上昇した。

②の1日のカロリー必要量の10%の高果糖コーンシロップを加えた加糖飲料を15日間飲んだグループでさえ、LDL-コレステロール、中性脂肪は上昇した。

さらに研究者たちは、加糖飲料の摂取により、心血管疾患リスク因子であるLDL-コレステロール、中性脂肪などの血中脂質の多くが、女性よりも男性でより高くなり、体重増加とは無関係だったことを発見した。

研究を指導した、カリフォルニア州立大学デイビス校の Kimber Stanhope氏は、
「今回の研究結果は、ヒトが過剰な糖分を摂取することで、有害な影響は速やかに現れることを明確にしている」
とコメントしている。

いかがですか?

上の研究でも、1日のカロリー必要量の10%の加糖飲料でさえ心血管リスクが上がっています。
この研究結果からも、WHOが勧告する、糖類の摂取量は1日のエネルギー摂取量の5%未満という指針は、妥当なものと思われますね。
⇒糖質制限 糖質は何gまでOK?

加糖飲料摂取が5%増える毎に糖尿病発病リスクは18%上昇

つぎに、イギリスでの大規模な観察研究をご紹介します。

Prospective associations and population impact of sweet beverage intake and type 2 diabetes, and effects of substitutions with alternative beverages

【研究参加者】
研究開始時には糖尿病でなかった40–79歳の成人男女 25,639人

【方法】
参加者に1週間に食べたり飲んだりしたものを日記として1年間にわたって記録してもらった。
4年間にわたって日記をつけてもらった。

①糖類を加えたソフトドリンク(スカッシュやジュースなども含む)
②糖類を加えた(紅)茶やコーヒー
③糖類を加えた乳飲料 (ミルクセーキ、いちご牛乳などのフレーバーミルク、ホットチョコレートなど )
④人工甘味料で甘くした飲料
⑤フルーツジュース
 の摂取量を調べた。

参加者の2型糖尿病の発病について約10年にわたって観察した。


【結果】

  • 全参加者の99.9%が1週間のうち上の①~⑤のいずれかの飲み物を摂取していた。
  • 最も割合が多く摂取されていたのは①の加糖ソフトドリンクで、全体の52.0%が摂取していた。
  • つぎに多かったのは②の加糖した(紅)茶やコーヒーで、全体の33%が摂取していた。
  • 約10年の観察中に新たに2型糖尿病と診断されたと確認できた人は、 847人だった。
  • ①の糖類を加えたソフトドリンクを摂取していた人では、2型糖尿病になるリスク(ハザード比) が1.21倍、つまり、21%リスクが増加した。
  • ③の糖類を加えた乳飲料では、1.22倍、22%2型糖尿病リスクが増加した。
  • ④の人工甘味料で甘くした飲料でも1.22倍、22%2型糖尿病リスクが増加した。
  • 糖類を加えず、甘味料も使っていないコーヒーや(紅)茶あるいは、フルーツジュースでは、リスクは増加しなかった。
  • 1日必要摂取カロリーのうち、加糖飲料からのカロリー摂取が5%増える毎に、糖尿病発病リスクは1.18倍、18%上昇する。
  • 1日必要摂取カロリーのうち、加糖飲料からのカロリー摂取が増えればこの割合でリスクもどんどん上昇すると推算され、1日必要摂取カロリーのうち加糖飲料からのカロリー摂取が20%を超えた人たちでの糖尿病発病リスクは2倍、200%を超えていた。
  • ①の糖類を加えたソフトドリンクや③の糖類を加えた乳飲料の代わりに、1日のうち1杯を、水や、 糖類を加えないコーヒーや(紅)茶にすれば、糖尿病発病率が14-25%下がると推算された。

この研究は、1つ目の研究のように介入研究ではありませんが、参加者が25,639人と大規模で、かつ、観察期間も10年間と長期で、参加者の食生活と病気の発病を調べる観察研究としては、信頼性が高いといえます。

この研究では、2型糖尿病と診断された人の結果ですので、糖尿病予備軍になった人も含めると、加糖飲料の摂取と糖尿病発病・血糖値の異常の関連はかなり強いのではないでしょうか。

特に、糖類を飲み物などに加えて、消化の必要のない形で摂取すると、糖類は胃を素通りして上部の小腸で吸収され、血糖値の上昇は急激だと思います。

例えば、500mL入りのペットボトル入りのサイダーやコーラには約50から57gの砂糖が入っている計算になります。
カロリ―に換算すれば、約200から228kcalです。
50歳〜69歳の中程度の活動量の日本人男性での1日の必要摂取カロリーは 2450 kcalとされますので、これを、上の最初の研究に当てはめると、

500mLのペットボトル入りのサイダーやコーラを1日1本飲めば、1日必要量摂取カロリーの8.1-11.7%となります。
これだけでもWHOの、糖類の摂取量は1日のエネルギー摂取量の5%未満という基準を超えています。
上の研究では、
1日必要量摂取カロリー10%の加糖飲料を15日間飲んだだけでも、心血管リスクが上がるのでした。

また、下の研究に当てはめると、

500mL入りのペットボトル入りのサイダーやコーラを1日1本飲めば、加糖飲料からのカロリー摂取の割合は、1日必要量摂取カロリー10%ぐらいになるので、少なくとも糖尿病発病リスクは1.5倍以上、50%以上上昇すると思われます

また、これらのリスクは、加糖飲料の摂取量が増えれば増えるほど上がっていくのも共通しています。


いかがですか…。
少なくとも、健康な食生活の中に、加糖飲料の類が入ってはいけないということですね。

コンビニや自動販売機に所狭しと並ぶ缶コーヒーや清涼飲料、もう見る目が変わりましたね。

飲料に糖質はどれくらい入っている、角砂糖 イラスト なっちゃん ポカリスエット ペットボトル スポーツドリンク 糖質 ダイエット 糖尿病
角砂糖コーラ14個、加糖オレンジ飲料13個、スポドリ8個
(角砂糖1個=4g として)
糖質や糖質制限、糖尿病については以下もどうぞお読みください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
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糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い