いきいき!エバーグリーンラブ: ミトコンドリア
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2018年1月24日水曜日

持久力(心肺フィットネス)が高ければ太っていてもOK!!

エバーグリーン研究室では、以前から健康の維持には運動習慣が不可欠であることをお示ししてきました。
りんご型肥満でおなかが炎症
ミトコンドリアの数で若さが決まる
また、内臓脂肪や異所性脂肪による過体重や肥満が万病の元であることもお伝えしています。


さらに、体重やBMIよりも、体重に占める筋肉の割合が大切であると考えています。
体重・BMIより筋肉量が大事
BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
今日はこれらの考えを証明してくれる新研究が報告されましたので紹介します。

低い運動能力(低心肺フィットネス)はBMIとは独立して、腹部肥満と慢性炎症に関連する

Anne-Sophie Wedell-Neergaard et.al, Low fitness is associated with abdominaladiposity and low-grade inflammation independent of BMI

【研究の目的】
肥満者の集団のうち30%程度までは、糖や脂質などの代謝に異常は認められない。
これらの太っているが代謝的に健康な人は、腹部(内臓)肥満がなく、炎症が少なく、メタボリックシンドロームが発症するような代謝異常が認められない。
そこでこの研究では、太っているが代謝的に健康な人は、持久力(心肺フィットネス)が高く、このことによって、腹部(内臓)肥満がなく、炎症が少なくなっていいるとの仮説を立て、それが正しいかどうかを検討した。

【研究方法】
デンマークで行なわれた調査である、The Danish Health Examination Survey 2007-2008のデータから10,976人について、
●腹囲(ウエスト周囲径)
●高感度CRP(高感度C反応性蛋白):炎症の指標
●持久力(自転車エルゴメーターによる心肺フィットネス能力測定:VO2max)

を測定し統計学的に比較・解析した。

【研究の結果】
●性別に関係なく、高い持久力(心肺フィットネス)は、腹囲(ウエスト周囲径)減少と関連し、この関連は、BMI、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められた。

●男性では、持久力(心肺フィットネス)の+5mL/kg/min上昇で腹囲(ウエスト周囲径)は-1.50 cmと減少 (95% 信頼区間: -1.62~ -1.39 cm、 統計学的に有意 p<0.001)し、炎症の指標の高感度CRPは -0.22mg/Lと減少した (95% 信頼区間: -0.255~-0.185mg/L、統計学的に有意 p<0.001)。

●女性では、持久力(心肺フィットネス)の+5mL/kg/min上昇で腹囲(ウエスト周囲径)が-1.26 cm と減少(95%信頼区間: -1.39 ~-1.13cm、統計学的に有意 p<0.001) し、炎症の指標の高感度CRPは -0.26mg/Lと減少した (95% 信頼区間: -0.3~-0.22mg/L、統計学的に有意 p<0.001)。

●大きい腹囲(ウエスト周囲径)は、炎症の指標の高感度CRPの高値と関連し、この関連は性別とBMIに関係なく認められた。

●+1 cm腹囲(ウエスト周囲径)が大きくなると、男性では高感度CRPが0.03mg/L 上昇し(95%信頼区間: 0.02~ 0.037 mg/L、統計学的に有意 p<0.001) 、女性では高感度CRPが0.025mg/L 上昇し(95%信頼区間: 0.017~0.034mg/L、統計学的に有意 p<0.001)、この関連は、BMI、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められた。


【結論】
持久力(心肺フィットネス)は、BMIとは独立して、腹部(内臓)肥満と慢性炎症と逆相関を認めた。
これらのデータは、BMIとは無関係に、持久力(心肺フィットネス)を向上させることで、腹部(内臓)肥満と慢性炎症を改善させることができることを示している。
BMI, ミトコンドリア, リンゴ型肥満, 運動, 運動不足, 筋トレ, 筋肉, 持久力, 心肺フィットネス, 内蔵脂肪, 肥大化脂肪細胞, 肥満, 有酸素運動, 洋ナシ型肥満,
持久力(心肺フィットネス)を向上させることで、腹部(内臓)肥満と慢性炎症を改善

運動能力が高い=持久力が高くミトコンドリアが元気

いかがですか。
やはり、運動能力を高め、それを維持することが重要なのです。

運動能力が高い人は、当然、心肺機能が鍛えられていて持久力があり、運動習慣がありますので、同じ体重の肥満者よりも筋肉が多いことが予想できます。

恰幅が良くて、一見、太って見える人でも、健診で問題を指摘されないような元気な人がいますね。
こんな人に訊いてみると、たいていスポーツを趣味にしています。
そんな人は、スポーツで鍛えた強い心肺があり、体重やBMIは高くても、筋肉が豊富にあります。
体重やBMIの増加分が、脂肪よりも筋肉で占められている割合が高いと考えられます。

実際に、筋肉量が多いと、死亡する危険性(リスク)が低下するという報告もあるのです。
体重・BMIより筋肉量が大事


同じ体重やBMIでも、それに占める割合が筋肉が多いのか、腹部(内臓)脂肪が多いのかで明暗を分けてしまうというわけです。

言うまでもなく、脂肪細胞は、脂肪をため込み過ぎると、炎症性のサイトカインなどを慢性的に放出する慢性炎症を引き起こします。
脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!


同じ体重なら、身体の構成として、脂肪ではなく筋肉を多めとすることが大切なのです。

さらに、腹囲(ウエスト周囲径)が増える原因は腹部の内臓脂肪の増加です。

内臓脂肪の蓄積は異所性脂肪とも呼ばれ、本来脂肪を貯める役割を持つ皮下脂肪以外の組織・臓器に脂肪をため込みます。
脂肪の収納場所の皮下脂肪以外にたまる脂肪なので、異所性脂肪と命名されたのです。
これが炎症を引き起こし代謝異常など様々な疾患の原因になると考えられています。

異所性脂肪が恐ろしいのは、軽くても長い時間にわたって炎症性のサイトカインなどが全身を炎症に陥れることです。

この慢性的な炎症が恐ろしいのです。
打撲や虫刺されなどによる炎症は、やがて治癒して、長い時間続くことはありません。
異所性脂肪による炎症は、減量して異所性脂肪をなくさない限り収まりません。
つまり、過体重や肥満であった期間=何年もにわたって炎症が続いてしまうのです。

上記の研究とは別の、5,115人を25年間追跡した最近の研究では、健康な成人で肺機能(呼吸機能)が急速に低下すると、メタボリックシンドロームを発症する危険性があることが分かりました。
これらの人は、胸腔内に内臓脂肪が蓄積していることが分かりました。
Moualla M et.al. Thorax. 2017 Dec;72(12):1113-1120. doi: 10.1136/thoraxjnl-2016-209125. Epub 2017 Jul 20.

運動不足や過食・過飲による影響は、腹部だけではなく全身の異所性脂肪となり、様々な病気の原因となるようです。

運動の仕方のコツ

また、上記の研究で注目すべきなのは、高い持久力(心肺フィットネス)による腹囲(ウエスト周囲径)減少効果は、BMIだけでなく、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められたことです。

ミトコンドリアの数で若さが決まる
つまり、過体重・肥満の人、喫煙・飲酒習慣のある人、健康に自信がない人ほど、運動して持久力を維持することが必要だといえます。

忘れてはならないのは、心肺が丈夫で持久力があり、筋肉が豊富ということは、我々に活力を与えてくれるミトコンドリアもたくさんいるということです。
ミトコンドリアがエネルギーを充電してくれるわけです。

運動は、心肺機能を高める有酸素運動と、ミトコンドリアを増やして活性化させる筋トレを並行して行うのがベストですね。

持久力 心肺機能 筋肉 ミトコンドリア

2017年3月24日金曜日

老化を遅らせる運動法は?

例えば、傷の治りが遅くなるとか、打ち身の痛みや、寝違え、捻挫、筋肉痛など、年とともに、治りが遅くなることを感じたことはありませんか?

モチロン若い方は想像もできないでしょうが、アラフォーを過ぎたあたりからこのことを感じている方は多いはずです。

ヒトだけでなくすべての生物(真核生物)は老化と死はプログラムされていて避けられないのですが、それを遅らせることはできます。

ヒトの場合の唯一の方法は、
本来の体の機能を十分に引き出すこと
つまり、運動することです。


では、どうして運動が老化を遅らせることができるのでしょうか。
そして、老化を遅らせるための運動はどうやって行えばよいのでしょうか?
このブログをお読みの方はお察しがつくでしょう。
キーワードはミトちゃんです。
ミトコンドリアの数で若さが決まる

今日はそのヒントになる研究を紹介して、老化に対抗する運動法と、老化にブレーキを掛ける仕組みについてみてみましょう。

運動によるタンパク質生合成の向上で、加齢に伴う身体・代謝の変化へ対応できる

Matthew M. Robinson et.al. Enhanced Protein Translation Underlies Improved Metabolic and Physical Adaptations to Different Exercise Training Modes in Young and Old Humans.Cell Metab. 2017 Mar 7;25(3):581-592. 

How exercise -- interval training in particular -- helps your mitochondria stave off old age

【研究の参加者】
18~30歳の若年者群と、65~80歳の高齢者群それぞれ36名(男女)

【研究の方法】
上記の若年者群と高齢者群に
  1. 高強度インターバルトレーニング(自転車マシーン)
  2. 筋力トレーニング
  3. 高強度インターバルトレーニング+筋力トレーニング
をそれぞれ行ってもらい、参加者の大腿筋群から細胞のサンプルを取って、
  • 細胞内での小器官の働き
  • 筋肉量
  • インスリン感受性(低下により糖尿病リスクとなる)
について測定し、それぞれの運動との関連を調べた。

【研究の結果】
  • 筋力トレーニングはどちらの群でも筋肉量を増加させた
  • 高強度インターバルトレーニングは、若年者群ではミトコンドリアの能力を49%増加させ、高齢者群では69%も増加した
  • 高強度インターバルトレーニングではこれらの効果に加えて、インスリン感受性を改善した
  • 高強度インターバルトレーニングは加齢に伴う筋肉量低下はあまり改善させなかった

【研究から考えられること】
  • 老化を遅らせるためには、週当たり3~4回の高強度インターバルトレーニングと、筋力トレーニングを組み合わせることがよいと考えられた。
  • 仮に、忙しいので1つの運動パターンを選択しなくてはならないとすれば、高強度インターバルトレーニングはお勧めだが、それだけでは、筋肉量低下は防げそうもない。
  • しかし、全く運動しないよりははるかにましであろう、と研究者らはコメントしている。

いかがでしょうか。
研究者らはこの論文で、
老化に対抗していくには、どのような運動が良いか
だけでなく、
この研究によって、運動が細胞内の器官の機能を向上させる仕組みがいくつか明らかになった 
ことを強調しています。

具体的には、
自転車マシーンによる高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)では、ミトコンドリアが独自に持つミトコンドリア遺伝子からのRNAの複製が増加し、ミトコンドリアタンパク質*ができて、老化に伴うミトコンドリア機能低下が抑えられ、さらには改善さえして、筋力増強に有用なタンパク質の生合成も増加していた
ことが示されました。

老化防止の鍵はミトコンドリア にある

この研究では、高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)で、ミトコンドリアの機能と質が改善し、タンパク質生合成の能力が向上したということは、細胞の小器官としてタンパク質の製造工場を務めるリボソームの若返りを促したものと考えられる、としています。

*ミトコンドリアタンパク質とは
ミトコンドリアタンパク質のうち約21%は、ミトコンドリアが総ての細胞や細胞内小器官のエネルギーであるATPを作るために必要な、ミトコンドリア内膜にある電子伝達系(図)と呼ばれるところにあるタンパク質(酵素)のセットに使われています。
ミトコンドリア, アンチエイジング, 運動, 運動習慣, 運動不足, 筋トレ, 筋肉, 高齢者, 有酸素運動, 老化, ATP, 電子伝達系,
ミトコンドリアは外膜と内膜で囲まれ、内膜には電子伝達系という5つの酵素のセットがある。ミトコンドリア内では、食物から得られた化合物から水素イオンと電子を取り出す。水素イオンは内膜を通じて大半が汲み出され、電子は電子伝達系で受け渡されて、最終的に、これも取り込まれた酸素と、汲み出されなかった分の水素イオンとが反応して水ができる。その時にできる外膜-内膜のすき間と内膜内の水素イオンの数の差(電位差)が電気エネルギー(電荷の流れ=稲妻に相当)を生み出して、電子伝達系のタービン(電子伝達系のATP合成酵素)を回して、ATPを効率よく作る。同時に、TCA(クエン酸)回路も回して、ATPを作り、食物からの化合物の反応で二酸化炭素もできる。この一連の反応が呼吸(細胞呼吸)である。このように、ミトコンドリアの活動には酸素が不可欠である。有酸素運動がミトコンドリアを活性化させることが解る。

この酵素セットによって、ミトコンドリア内で呼吸が行われて、エネルギーであるATPができるのです。
このATPを受け取ったリボソームは、エネルギーとしてATPを使って、細胞に必要なタンパク質を作ることができます。
ミトコンドリアは、体(細胞)が要求するエネルギーに見合った数の酵素セットを作って、要求に応えていると考えられます。
その要求とはつまり運動することですね。
運動をしない人のミトコンドリアは、わざわざ酵素セットを新たに作らないと思われます。
ミトコンドリアの数で若さが決まる
   ミトコンドリアが酵素セットである電子伝達系を新たに作る能力が若さの秘訣
   と言えるでしょう。

さらに、この研究者らは、
参加者から細胞のサンプルを取った大腿筋は筋肉細胞である。
筋肉細胞は、脳などの神経細胞や心筋細胞などと同様に、細胞分裂しにくい細胞の一種であり、再生しにくい。
高齢者群でも運動によって、ミトコンドリアの機能が改善し、筋肉量が増えるということは、運動による筋肉の再生が観察されたということである。
筋肉細胞と同じく、再生しにくい脳の細胞や心筋細胞の再生にも運動の効果が期待できる
としています。

アンチエイジングとして、食べ物や、健康食品・サプリメント、各種ダイエット法などがいろいろ宣伝されていますが、やはり運動に勝るものはありませんね。
外からあれこれ栄養素や成分を摂ったところで、ミトコンドリアに代表される細胞の中の器官を運動で刺激して、自ら大切な体の部品(タンパク質)を作らせて補修させることに上回る効果はないということです。

例えば、骨の構成成分のコラーゲンは筋肉と似た性質のタンパク質で出来ています。
コラーゲンはサプリメントなどでそのままの形では外からは取りこめませんから、骨が脆くなりつつある人は、運動してその人の骨にぴったり合ったコラーゲンを、ミトコンドリアとリボソームに作ってもらうことが骨粗鬆症防止に有効ということですね。その原料となるアミノ酸で構成されるコラーゲン(ペプチド)をゼラチンなどで摂ることには、原料を補給するという意味があると考えられます。

まとめると、健康に役立って老化を防ぐベストな運動法は、基本的には、
高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)+筋力トレーニング
ですが、忙しければ、最低でも
高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)
を行えば効果ありということでしょう。

中高年や高齢者では、
高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)だけでは筋肉の低下を防げないので、筋力トレーニングをプラスする
のがお勧めということですね。

また、老化にブレーキをかけるのは、
有酸素運動によりミトコンドリアとリボソームを活性化して、細胞の中で修復のためのタンパク質を生合成させること
にあるようです。

このことから、運動と合わせて、普段の食生活でも修復するタンパク質の原料となる食事由来のタンパク質(アミノ酸)の摂取も大切であることがわかります。

サプリメントも健康食品も薬も、運動してこそ役に立つ

逆に言えば、どんなに食事やサプリメントや健康食品で、良い栄養成分を摂っても、運動しなければ、せっかくの原料を体の修復用のタンパク質や化合物に作り変えてもらえないということになります。
昔からよく言われる、「良好な新陳代謝」とは、運動と適正な食事の2本立てで初めて成り立つものなのですね。

恐らく、運動せずにこれらの栄養成分をせっせと食べたり飲んだりしても、体が過剰なカロリーと判断して、脂肪としてため込むか、吸収されずに消化器に負担をかけるだけの素通りになる可能性が高いと思います。

 サプリメント健康食品が効果を発揮するには、上でお話ししたミトコンドリア電子伝達系が働く必要があります。
「これを飲んでいればOK!」と宣伝するサプリメント健康食品???ですね。

このことは多くの生活習慣病の薬にも当てはまると思います。
糖尿病の薬も、高血圧治療薬も、高脂血症治療薬も、骨粗鬆症治療薬も、 運動と併用して初めて効果が出る 
と思ったほうが良いと思います。

運動とミトコンドリアについてはこちらの記事も読んでください。
運動・ミトコンドリア
ミトコンドリアの数で若さが決まる
有酸素運動と無酸素運動の違い
体重・BMIより筋肉量が大事
運動すると食べ過ぎる?
デスクワークは危険!
座り時間を短くすれば老化しにくい
筋肉は脚から落ちる
1時間に2分体を軽く動かせば寿命が延びる
ミトコンドリアが活発な筋肉を保つためには
運動すればボケを防げる!
歳をとってから運動を始めても遅くはない
BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
運動不足で脳がしぼむ!
運動不足のリスクは喫煙なみ
たくさん動いていれば何を食べてもOK

2017年1月16日月曜日

ちょっと工夫で静電気対策

冬になり乾燥してくると、ドアノブ、セーター、車のドア、いろんなところでバチバチって来て不快な思いをされることも多いでしょう。

皆が嫌う静電気です。

ここで問題です。

非常に乾燥した時期(湿度10〜20%)にカーペット(絨毯)上を歩く人が帯電する静電気の電圧(ボルト;V)はおおよそどれでしょう。
A. 35,000V
B. 12V
C. 5億V

正解はAの35,000Vです。

新幹線の架線(電線)の電圧が25,000Vですから驚きですね。
参考:静電気の電圧

でも、ご安心を。
冬場のよくあるバチっと静電気が放電される際の電圧は、おおよそ2,000Vと高いのですが、流れる電流と時間はごくわずかなので、感電による影響はほとんどありません。*
*人体の静電容量は約100pFだそうです。小さなコンデンサー1つ分で、仮に35,000Vでこのコンデンサーを充電しても、0.0000035クーロンの電荷(電気量)しか蓄えられません。これは、バチっとわずかに電撃を感じる1mA(ミリアンペア)の電流が、0.035秒流れるのと同じ電気量です。

でも、不快なことはやっぱり避けたいですよね。

今日は、ちょっとした工夫で静電気を防止することができることをご紹介します。

静電気対策

加湿

室内ではなんといっても加湿が静電気防止に絶対の効果があります。
感染症対策にもなるので、加湿器などで50-60%に保ちましょう。

 

静電気防止剤・柔軟剤

静電気防止というと、洗濯の時に用いる柔軟剤や静電気防止剤(スプレーなど)を思い浮かべる方も多いと思います。
これらは、中の成分の界面活性剤(両親媒性分子成分)の、油に馴染みやすい部分が衣類の滑りを良くして、摩擦による帯電が起きにくくして、水に馴染みやすい部分から帯電した静電気を逃がすことで効果を発揮します。
⇒界面活性剤についてはこちらを

でも、あまり効果的とは言えないと思いますし、下着やタオルなどでは吸湿性が落ち実用性が落ちます。

静電気防止スプレーも結構高価なので、必要な方は、自分で作りましょう。
すごく簡単です。
【静電気防止スプレーの作り方】
  1. 百均ショップで、50mLくらいのスプレーボトルを買ってくる
  2. 水を入れる
  3. 柔軟剤か髪に使うリンス(コンディショナー)を2-3滴入れる

 

導電性繊維

普通の繊維は電気を通さない絶縁体ですが、導電性繊維という、電気を通す繊維もあります。
身近なところでは、スマホ対応の手袋などに使われています。
この繊維でできた服を着たり、裏地などに使用すると、体の静電気を逃がしてくれますが、まだあまり一般的ではないですし、お値段もそこそこのようです。

 

衣服の素材

それよりも、まずは下着や、衣服の重ね着をする場合の素材を選ぶとよいと思います。

下着やシャツやセーターの素材をなるべく同じ繊維にするとよいでしょう。
例えば綿のTシャツに綿のワイシャツ、フリースの下着にフリースのスエットなど繊維の素材をそろえると静電気が帯電しにくいのです。

下の表は、摩擦帯電列といわれるもので、ここでは、主な繊維の原料の物質を表にしました。



右に行くほどマイナス(-)に帯電(電子を得る)し、左に行くほどプラス(+)に帯電(電子を失う)する傾向にあります。

女性はストッキングをはいた脚にスカートがまとわりついてお困りになった経験があると思います。
これは、ナイロンのストッキングと、ポリエステルのスカートの裏地がこすれると(摩擦)、ナイロンの電子がポリエステルに引き寄せられて偏り、静電気を帯びたために(電界(電場)の発生)、纏わりついていたのです。

例えば、フリースはマイナス(-)に帯電しやすいポリエステルでできているので、フリースのスエットの上に、プラス(+)に帯電しやすいウールのセーターを重ね着すると、やっぱり静電気が起きやすくなります。

化繊(合成繊維)が悪いのではなく、組み合わせの問題なのです。

上の図から、綿と麻、絹とレーヨンなど同じ色のグループの繊維同士を重ね着すれば、静電気が起きにくいといえます。

これは、かなり効果的なのでお試しあれ。

静電気を逃す工夫

さてここまでは、静電気を帯電させない工夫でした。
ここからは、静電気を逃がしてしまう(電界を打ち消す)工夫です。

効果的なのが、ドアノブなどを触る前に、地面や、壁、木や車のタイヤ、ボディを両手で触るなどをして、体に帯電した静電気を逃す(電界を打ち消す)ことです。

静電気の放電が指先など1点に集中すると、ショックが強いので、いきなり片手や指だけで金属などを触らないようにしましょう。

人との接触でパチッと来ることもありますね。
レジでのお金の受け渡しの時などです。
そんな時は、お金を出す前に、レジの台(机)に触ってからにするとよいです。

また、外出から帰ってきて服を脱ぐ前に、手を洗うと静電気が逃げていく効果があります。

静電気対策グッズの中でも、静電気除去 キーホルダーはお勧めです。

効果的に静電気を逃してくれます。

中には光って、静電気が放電されるのを確認できるものもあるようです。

試してみてはいかがですか。

身体の中の発電所

ちなみに…最後に先頭の問題をもう一度見ましょう。
非常に乾燥した時期(湿度10〜20%)にカーペット(絨毯)上を歩く人で帯電する静電気の電圧(ボルト;V)はおおよそどれでしょう。

A. 35,000V
B. 12V
C. 5億V

正解は35,000Vでしたが、Cの5億Vは稲妻(雷)の電圧です。
稲妻(雷)は電圧は200万-10億V(ボルト)、電流は1千~50万A(アンペア)と言われます。

我々は体の表面に静電気を帯びますが、実は、私たちの体の中でも、この稲妻(雷)クラスの電気が発電されていることも知っておいてください。

ミトコンドリアとは?
ミトコンドリアがそれを行っているのです。

ATPという生体のエネルギーを作るミトコンドリアは、6ナノメートル(10億分の6メートル)のミトコンドリアの内膜を挟んで、150-200mV(ミリボルト)の電位差を生み出して、タービン(ATP合成酵素)を回転させてATPを作っていますが、これを人体の身長レベル、メートル単位に換算すれば、電界の強さは約3000万V/m(ボルト/メーター)です。
まさに、ミトコンドリアの内膜では雷が発生しているに等しいのです。

やっぱりミトコンドリアってすごいですね。


2015年7月18日土曜日

ミトコンドリアが活発な筋肉を保つためには

ミトコンドリアの
ミトちゃん
エバーグリーン研究室では、いつまでも健康で若さを保つために、運動の大切さをお伝えしています。

運動すると、筋肉がつきます。
定期的な運動によって筋肉を保つことが大切です。
⇒体重・BMIより筋肉量が大事
⇒筋肉は脚から落ちる

なぜなら、筋肉は我々ヒトに活力=エネルギーを生み出して、与えてくれるミトコンドリアの住処だからです。
筋肉量が多ければ、ミトコンドリアの量と質が良い状態と言えるでしょう。
⇒ミトコンドリアの数で若さが決まる
でも、いったいどれくらいの頻度で運動をすれば筋肉を保てるのでしょう?

今日は、筋肉を保つためのヒントになる研究をご紹介します。

筋肉を保つためにはどの程度の運動が必要か

Six weeks’ aerobic retraining after two weeks’ immobilization restores leg lean mass and aerobic capacity but does not fully rehabilitate leg strenght in young and older men

【研究の目的】
  • 運動をしないとどの程度の割合で筋肉が落ちるか、そして、筋肉を回復させるにはどの程度の運動が必要かを若者と高齢者で調べる。
【研究の参加者】
  • 17人の男性若者(平均23歳)と15人の男性高齢者(平均68歳)。

【研究の方法】
  • 2週間、片方の脚に脚枷(脚が動かないような装具)をつけたあと、脚力、筋肉量を調べてそれぞれ比較した。
  • その後、筋力リハビリのため、1週あたり3~4回の自転車漕ぎトレーニングを6週間して、筋肉の回復を測定した。
【研究結果】
2週間の足枷で、
  • 若者グループでは脚の筋肉の収縮力(脚力)が平均28 %低下し、高齢者グループでは平均23%低下した。
  • 若者グループでは脚の筋肉量が平均で485g減少し、高齢者グループでは平均250g減少した。     
6週間の自転車漕ぎ筋力リハビリトレーニングで、
  • 若者グループでは脚力が平均34 %回復し、高齢者グループでは平均17%回復した。
  • 脚の筋肉量は、若者グループでのみ、平均669g回復した。
【研究から考えられること】
  • 足枷によって不活動にして2週間過ごさせると、若者では最大で筋力の約3分の1が失われ、高齢者では約4分の1を失った。
  • 若者では2週間の不活動によって40~50代の筋力と同程度にまで筋力が低下したことになる。
  • これは、若者のほうが高齢者より片脚につき1kgずつ筋肉量が多いためと考えられる。
  • 若者では筋肉が多い分、運動しないと筋肉の減少が激しいようだ。
  • しかし、高齢者では、筋肉の絶対量が少なく、運動能力が落ちているため、筋肉量の減少幅は若者より少なくてもその悪影響は大きいと思われる。
  • 筋力リハビリのための、週あたり3~4回の自転車漕ぎトレーニングは、6週間続けても、若者グループの一部を除いて、以前の筋力に戻るには十分な運動と言えなかった。
  • 一度失った筋力を取り戻すには、有酸素運動である自転車漕ぎトレーニングにプラスして、筋トレが必要であると考えられた。
  • わずか2週間の不活動な状態による筋力低下を、ある程度まで回復させるにも、自転車漕ぎトレーニング6週間という3倍の期間が必要であった。
健康な人でも、ケガなどをすれば否応なく不活動な期間ができてしまう。

いったん落ちた筋力の回復にこれだけの時間がかかることを考えると、不活動による筋力の急速な低下の仕組みが理解できる。

高齢者では筋肉を失うと、回復が難しい

いかがですか、
日常的な運動の大切さがわかる研究ですね。
筋肉の維持には、定期的な有酸素運動だけでなく、筋トレが大切なことも理解できる研究ですね。

特に注目すべきなのは、週3~4回の自転車漕ぎトレーニングを6週間続けても、高齢者では元の筋力まで戻らなかったことです。

高齢者では一度、筋肉・筋力を失うと、回復が簡単ではないことがわかります。

これは、感覚的にもわかりますね。

若者は、まだ細胞に活力があるので、細胞分裂が活発になって、回復が早いのでしょう。

歳をとってくると、いろいろなことに気力が起きなくなって、億劫になり、不活動になりがちです。

歳をとったらなおさら意識して運動に励まなくてはならないと研究は教えてくれたのです。

若いときから運動する習慣を

歳を取ってから一念発起して運動を始めるというのは現実的ではありませんから
中年に差し掛かったくらいから定期的な有酸素運動+筋トレをはじめて、準備しておくほうがよさそうですね。
腕に付けられるタイプもあって、アンクルリストウエイトといいます。 500gなら、女性でも使えますよ。
女性でも使える、アンクルリストウエイト。これでラジオ体操はいかが?

仕事が忙しい中でも週末にはスポーツジムに通っている!という習慣は重要です。

これにプラスして、毎日少しの時間でも筋トレができれば理想的です。
お勧めは、体力・筋力に合わせたダンベルを使ってラジオ体操をすること。

腕に付けられるタイプもあって、アンクルリストウエイトといいます。
500gなら、女性でも使えますよ。

2015年2月7日土曜日

筋肉は脚から落ちる

座りがちなライフスタイルは、健康に良くないことをお話ししました。
⇒デスクワークは危険!

また、座り時間を短くすれば老化しにくいこともご紹介しましたね。
⇒座り時間を短くすれば老化しにくい

健康と若さの源は、筋肉に多いミトコンドリアが鍵であることもお話ししましたね。
筋肉を鍛えて維持すれば、ミトコンドリアが活性化して、生きるエネルギーを生み出してくれるわけです。
⇒ミトコンドリアの数で若さが決まる
⇒体重・BMIより筋肉量が大事

言い換えれば、運動して筋肉を維持することが、究極のアンチエイジングともいえます。
今日は、年をとると自然に落ちてしまう筋肉をどうすればいいかをお話しします。

日本人の筋肉量の加齢による特徴

大阪医科大学の研究グループが、18歳以上の日本人 4,003 人(男性 1,702 人,女性 2,301 人)を調べた研究「日本人筋肉量の加齢による特徴」があります。

⇒谷本 芳美ら 日本人筋肉量の加齢による特徴 日本老年医学会雑誌 Vol. 47 (2010) No. 1 P 52-57

それによると、

  1. 加齢に伴う筋肉量の減少の割合は男性の方が女性よりも大きい
  2. 脚は 20 歳代ごろより年を取るにつれて大幅に減少し
  3. 腕は高齢期になって緩やかに減少しはじめて
  4. 胴体は中年頃まで緩やかに上昇した後、減少し
  5. 全身筋肉量は中年頃まで微量に増加あるいは横ばい状態から減少する
  6. 筋肉量の加齢変化は部位により異なり,減少率が最も大きいのは脚で、次に全身、上肢、胴体の順で落ちていく。

ということがわかりました。



解説すると

イラスト,サルコペニア, ミトコンドリア少ない, 座りがちだと危険, 座り時間が長いと危ない, 筋肉少ないとやばい, 運動しないとサルコペニア, 運動不足で炎症,
脚(腿、ふくらはぎ)の筋肉量は全身の筋肉量の
約50%を占める
1.は、男の人は、思春期以降、男性ホルモンであるテストステロンが多く分泌されるので、筋肉がつきやすい状態にあり、学生時代の部活などのスポーツや運動の経験や習慣があることが多いために、女性よりも筋肉が多い傾向があり、このため、落ちる割合も大きいと考えられます。

2.は、おそらく、現代社会では、20歳代で社会人になって、デスクワークにつく人が多いため、運動量が減り、大幅に減少してゆくと考えられます。

3.は、でも、腕は、座りがちの生活でも使っているので、なかなか落ちにくいのでしょう。

4.は、胴体(体幹部)の筋肉、つまり、背筋や腹筋などは、座ったり、立ったりしているだけでも使われているので、中年までの時間でゆっくりと鍛えられているために、こうなるのでしょう。

5.は、とくに運動しなければ、全身の筋肉は増えることはないということですね。

6.は、つまり、現代の普通の社会生活を送れば、年を取るにつれて、自然と筋肉は落ちていくということで、特に脚の筋肉が落ちるということです。

筋肉を維持するにはどうすれば良いか

脚(腿、ふくらはぎ)の筋肉量は全身の筋肉量の約50%を占めます。
ですから、運動によって脚の筋肉を落とさないことが最低限必要なわけです。
『足腰立たなくなったら、おしまい』みたいなことをよく言いますが、まさにそうなのです。

最近では、加齢で筋肉が落ちていくことをサルコペニアといって、医学的な病気として考えるようになってきました。

カナダで 60 歳以上の 4,449人を対象とした研究では、食事、入浴、着替えなどの基本的な日常の 動作ができなくなることとサルコペニアが関係していることも報告されています。
⇒Janssen et al. Skeletal muscle cutpoints associated with elevated physical disability risk in older men and women. Am J Epidemiol. 2004 Feb 15;159(4):413-21.

年をとって、食事、入浴、着替えなどが満足にできなくなるのなんて嫌ですよね。

まずは、脚を鍛えることから始めましょう。

いきなり筋トレはつらいでしょうから、まずは、ストレッチから始めるのがよいでしょう。
ストレッチをしている暇がない方は、日常生活で文明の利器に頼っていた部分を、自分の力を頼ることにしてみるのも一案です。

例えばこんなことで脚を鍛えてみませんか?


エスカレーター、エレベータを使わないで階段で上がる 近距離は、自転車やバス、電車を使わないで歩く 電車で座らない ちょっとした買い物するとき、カートを使わないで手でカゴをもつ なるべく速足で歩く ルンバを使わないで掃除機を使う リモコンを使わずに操作できる電気機器は手で操作する 座りっぱなしにならないように、1時間に5分は歩くようにする
筋肉が落ちないようにする
  • エスカレーター、エレベータを使わないで階段で上がる
  • 近距離は、自転車やバス、電車を使わないで歩く
  • 横断歩道の代わりに、歩道橋を渡る
  • 電車で座らない
  • ちょっとした買い物するとき、カートを使わないで手でカゴをもつ
  • なるべく速足で歩く
  • ルンバを使わないで掃除機を使う
  • リモコンを使わずに操作できる電気機器は手で操作する
  • 座りっぱなしにならないように、1時間に5分は歩くようにする
こうやって挙げてみるといろいろあって、ため息が出そう・・・
まず、ため息が出ないものからはじめてみる、というのはいかがでしょう?

2014年7月15日火曜日

体重・BMIより筋肉量が大事

BMI, ミトコンドリア, 有酸素運動, 筋肉, 肥満, 脂肪組織 筋肉 ミトコンドリア 筋肉指数 BMI 筋肉量 運動

ミトコンドリアは元気の元とお話ししました。
今日はその証拠となる研究を2つご紹介しますね。

筋肉量が多い高齢者は元気で長生き

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アメリカ人(参加者の85%は白人)で55歳以上の男性と65歳以上の女性計3659人を5年間分析した研究があります。
その結果、筋肉量が多いと、死亡する危険性(リスク)が低下する
ことがわかりました。

具体的には、

・身長と筋肉量を指標とした、筋肉指数(muscle mass index)が最も高い人は、最も低い人に比べて死亡するリスクが約20%低い

という結果でした。

これは、運動する習慣のある人では、筋肉がつき、筋肉の中のミトコンドリアの働きが高まるためと考えられます。
また、そのような身体になれば、有酸素運動がとても効率的になるので、ダイエット効果もばっちりでしょう。

でも、この研究でも、肥満の指標となるBMIは、死亡リスクと関係ありませんでした。

ほかの研究では、

・明らかな肥満(BMIが35 kg/m2以上、肥満3度以上)の高齢者の死亡リスクは確かに上がるが、
・BMIが30-35kg/m2の範囲の肥満(2度)では死亡リスクが上がらず、
・過体重といわれるBMIが25-30g/m2の範囲の人々が一番死亡リスクが低かった

との結果もあります。

つまり、大事なのは、単なる体重やBMIだけでなく、体格の質であることがわかります。

体重や、BMIが適正でも、筋肉が少なく、体脂肪や内臓脂肪が多ければ、不健康な質の悪い体格?!

といえるのではないでしょうか。

この研究で一番死亡リスクが低かったBMIが25-30g/m2の範囲の人々は、実は肥満でBMIが高いのではなく、筋肉の量が多いことが予想できます。

ミトコンドリアは、エネルギーを貯めている脂肪細胞より、筋肉に多いことからも、これらの研究の結果が納得できますね。

体重やBMIを気にしてダイエットするだけではなく、筋肉の量(除体脂肪量)を多くすることが大切なようです。


筋肉はゆっくり成長します。
にわかな運動や不定期な運動では筋肉はつきません。
研究の参加者たちの多くは運動の習慣があったに違いありません。

BMI, ミトコンドリア, 有酸素運動, 筋肉, 肥満, 脂肪組織 筋肉 ミトコンドリア 筋肉指数 BMI 筋肉量 運動人類は長い間食べ物を得るために、採集したり、狩りをしたり、農作業をしたり……運動するための筋肉がなければ、食物にありつけなかったのです。
そのような環境の中で進化してきたのです。

もっと言えば、生物はすべて、特にわれわれ「動物」は運動して、食物によって吸収したエネルギーを発散することを前提に出来上がっているのです。
それは、自然の摂理の1つの物理法則(熱力学の第二法則)に従いながら、それを利用しているのです。

しかし、人類の発明した文明は、その摂理に反することをすることを行ってきました。

人類が文明の恩恵を受けているはずの現代社会は、自動車、エレベーター、エスカレーターなど人間に身体を動かさないことを強要しているようなものです。
これではエネルギーを発散できません。

その上、文明がもたらした、近代化された便利な食生活は、糖質・脂質・塩分漬けのオーバーカロリー
……エネルギーが蓄積される一方です。
これでは、病気になるはずです。

このへんはまた詳しくお話ししますね。


さて、このようにいろいろ問題はあるものの、やっぱり文明を捨てては生きられないのが我々。
では、健康を保つためにどうすればよいか・・・
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高齢者と呼ばれる歳になる前に、運動の習慣をつけ、筋肉を増やしてミトコンドリアを元気にして、健康で長生きしましょう。

2014年7月9日水曜日

有酸素運動と無酸素運動の違い

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運動には無酸素運動と有酸素運動があることはご存じだと思います。
無酸素運動は、瞬発力や渾身の力が必要となる短時間の運動で、短距離走や重量挙げなどのハードな運動で、通常無意識に息を止めて行います。

一方、有酸素運動は、力はそれほど出さない持続的な運動で、多くは腹式呼吸で行われますが、一定のペースでしっかりと呼吸をして、十分に酸素を取り入れながら行うものです。

ダイエット=皮下脂肪の燃焼には、有酸素運動が有効なことが分かっています。


無酸素運動と有酸素運動とでは、運動に使用するエネルギーも異なります。
無酸素運動では、筋肉は瞬発力が必要なので、血中のグルコース(ブドウ糖)が足りないと、筋肉内部に蓄えたグリコーゲンからグルコース(ブドウ糖)を取り出して使用します。
しかし、グリコーゲンは全身の筋肉に蓄えられている総量でも、成人男性で250~300gで、熱量にして、1000~1200kcalほどで、長時間の運動では枯渇してしまいます。

ちなみに体重60kgの成人男性が1時間クロールで水泳をすると約1200kcal消費します。

無酸素運動は細胞の細胞質で糖が代謝されエネルギーを作りますが、効率は悪く、細胞を元気にするミトコンドリアが働きません。


一方、有酸素運動では、エネルギー源として、グルコース(ブドウ糖)も使いますが、主に脂肪の成分である脂肪酸を使います。
実は、筋肉はグルコース(ブドウ糖)より脂肪酸のほうを好んで使うのです。

なぜなら、脂肪酸は、皮下脂肪の形で体に大量に貯蔵されていますので、グリコーゲンのように貯蔵量に限りはなく、持久的な運動に向いているのです。
そして、有酸素運動では酸素がたっぷりと供給されるので、細胞を元気にするミトコンドリアの発電機TCA回路がフルに稼働します。

アンチエイジング, ダイエット, ミトコンドリア, 有酸素運動,無酸素運動,ブドウ糖,筋肉、エネルギー,細胞,水泳,ヨガ運動をしながら軽く汗かき、ちょっとだけ息があがるような、ややきつめの持久的な有酸素運動が、ミトコンドリアを活性化させます。
週に3回ぐらいは行いたいですね。


ヨガや太極拳などもいいですが、よほどハードにやらないとダイエットは難しいでしょうね。
ゆうさんそうんどう むさんそうんどう ちがい
有酸素運動と無酸素運動の違い
ダイエットに有酸素運動が向いているというのは、ここからわかります。

皮下脂肪を効率的に減らすには、脂肪酸をエネルギー源にした、ちょっときつめの有酸素運動がお勧めです。

ミトコンドリアがフルに稼働しアンチエイジングになります。


2014年7月1日火曜日

ミトコンドリアの数で若さが決まる


ミトコンドリアのミトちゃんをご紹介しましょう。

エバーグリーンラブのマスコットキャラです。

どうしてミトちゃんがマスコットかというと、ミトコンドリアが若さや健康のもとだからです。
ミトコンドリアのことを知ると、アンチエイジングとは何かとか、病気にならないためにはどうすればいいかなどが、わかってきます。
なので、今後も取り上げていきますね。
まずは、第一弾!!
ミトコンドリアは我々のパワーの源という話です。

ミトコンドリアって何?

ところで、ミトコンドリアってどこにあるかご存じですか?
私たちの細胞の1つひとつにあるんです。

しかも、ミトコンドリアは細胞のなかで「生きて」います。
ミトコンドリアは分裂したり融合したりします。
そう、状況に応じで自分自身で増えたり減ったりして生活しているんです。
つまり、知らないうちに私たちはたくさんのミトコンドリアを体の中に飼っていることになります。

どのくらいたくさんかというと・・・
私たちの体には40兆個の細胞があるとされます。
その細胞1つずつに、100~5000個ほどのミトコンドリアがいるんです。
とすると・・・あとは自分で計算してください。
かたちは、というと、ミトちゃんのような感じです。
思い出してきませんか?
中学のころ、理科で習ったことがあるでしょう?


ミトコンドリアの数は臓器や組織によって違います。
肝臓や筋肉などの活動が盛んな細胞ほど、ミトコンドリアの活躍が必要で、そのために数も多いようです。
なぜなら、ミトコンドリアが細胞にエネルギーを与える「発電所」だからです。
全身の細胞はミトコンドリアからパワーをもらっているのです。

ミトコンドリアがない細胞もあります。
赤血球や眼の角膜、水晶体。
これらは、エネルギーをあまり必要としない細胞です。
ミトコンドリアは、必要とされるところを、ちゃんと知っているんですね。

細胞はミトコンドリアにパワーをもらう

ところで、人間にとってエネルギーって何だと思いますか?
それはATPです。
アデノシン三リン酸を略してATPといいます。
アデノシンに3つリン酸がついているもので、これがどうやってエネルギー源になるかは、説明が難しいので、別の機会に。

ここでは、ATPが全身の細胞が共通して使っているエネルギー電池で、それを作っている発電所+充電機ミトコンドリアだということを覚えておいてください。

どのような栄養素でも、エネルギーとなるには最終的にはこのATPを生み出す反応が起こらなければなりません。
ATPを生み出す反応を一番効率よくできるのがミトコンドリアです。
ミトコンドリアの中でATPを作り出している装置をTCA回路といいます。
発電所でいえばタービンですね。

下の絵のように、グルコース(ブドウ糖)を1つ取り込んだ細胞で、ミトコンドリアの中にあるTCA回路というタービンが回れば、36分子(個)のATPができます。
ミトコンドリアのタービンを効率よく回すためには、酸素が欠かせません。

実は、TCAサイクル以外でもATPを作ることはできるのですが、ひどく効率が悪いのです。
酸素がないと、この効率の悪い方の装置でATPを作ることになります。
細胞に取り込んだグルコースがピルビン酸に変わるところまでは一緒。
でも、酸素がないと、ピルビン酸はミトコンドリアに入らずに外側の細胞質で代謝されて、たった2つのATPにしかなりません。
もっとミトコンドリアの仕組みを知りたい方はこちらもどうぞ
老化防止の鍵はミトコンドリア にある

ミトコンドリアがいかに上手に栄養素を燃焼させて、ATPを取り出しているかがわかりますね。
ミトコンドリアは優秀な発電機なのです。
ミトコンドリアが働いてくれれば、細胞は効率よく活力を得るわけです。

みとこんどりあ ティーシーエー はつでんしょ
ミトコンドリアとTCA回路・発電所


ミトコンドリアを減らさないことがアンチエイジング

さて、このありがたいミトコンドリアですが、年齢とともに減っていってしまうようです。
ミトコンドリアの機能も年齢とともに低下して、ATPの産生が低下して、次第に活性酸素が多く出るようになるようです。
活性酸素は、ミトコンドリア自体を傷つけてしまうので、結果として細胞中のミトコンドリアが減少することにつながります。

ですので、細胞内のミトコンドリアを減らさないことが、アンチエイジングにつながるといえます。

ミトコンドリアを増やそう!

では、ミトコンドリアを増やすにはどうしたらよいのでしょうか?
ミトコンドリアは、細胞が活動するときに必要なエネルギー供給発電機ですから、体を動かして、酸素を取り込み、ミトコンドリアにエネルギーを要求すればよいのです。
ちょっときつめの有酸素運動が最適です。
運動をしながら軽く汗かき、ちょっとだけ息があがるような、ややきつめの持久的な有酸素運動が、ミトコンドリアを活性化させます。
1回最低30分ぐらいを週に3回は行いたいですね。

有酸素運動と無酸素運動の違いはこちら


ミトコンドリアが好む酸素を多く取り込む有酸素運動を行えば、ミトコンドリアは分裂し数を増やしてくれます。
また、ミトコンドリアは体の要求に応えて酸素を使って呼吸をし、ATPを生み出す能力がどんどん向上します。
また、筋トレなどの筋肉量を増やす運動によって筋肉が増えれば、筋肉にはミトコンドリアがたくさんいますので、より数が多くなるというわけです。
有酸素運動に慣れてきたら、ぜひ筋トレなどの筋肉を増やす運動(無酸素運動)も組み合わせてください。

女性が男性より長生きなのは、ミトコンドリアが多いからだとの説があります。
なぜなら、女性の筋肉は、持久力に富むミトコンドリアがたくさんある赤筋(遅筋)が多く、逆に男性は瞬発力に長けていて、ミトコンドリアが少なくてよい白筋(速筋)が多いからとされています。

若さを保つのに運動が大切!と、誰もが思っていますね。
その理由の1つの鍵が、ミトコンドリアの数を増やすことだったのです。


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