いきいき!エバーグリーンラブ: 糖尿病予備群
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2017年12月23日土曜日

薬を飲む前に減量しよう!

生活習慣病は、40歳代後半から50歳代の中年期~高齢初期に発病・診断されることが多いですね。

皆さんご承知の通り、生活習慣病の危険因子=リスクファクターの指標としては、体重(腹囲)増加、血糖値・血圧・血中の脂質の上昇が知られています。


高血圧や糖尿病にならない簡単な方法

定期健診で、これらの上昇や上昇傾向を指摘されるようになるのが、中年期~高齢初期の場合が多いのです。
急に過体重や肥満にはなりません。
若い時からの生活習慣が集積して、特に、運動不足と過食過飲によって少しずつ太っていきます。
それが悪い実を結ぶのが中年期~高齢初期で、体重以外のリスクファクターである血糖値・血圧・血中の脂質も正常上限を超えてくるのです。

もしもあなたが、血圧や血糖値が上がり始め、高血圧や2型糖尿病を発病する境界であることを定期健診などで指摘されたら、ぜひ体重計に乗って、体重とBMIを測る習慣をつけてください。

過体重や肥満になると、全身の脂肪組織が慢性的に炎症をしている状態になり、糖尿病だけでなく、がんや動脈硬化など万病のもとです。
⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!
たとえ適正体重には至らなくても、太っている状態から減量できれば、これらの病気にならないようにできるのです。

今日は、減量で2型糖尿病から薬を使わずに離脱できた、という研究を紹介し、過体重や肥満から減量することの大切さを考えてみたいと思います。

減量すれば、薬なしで2型糖尿病の治療が可能


【研究の目的】

2型糖尿病は発症すると生涯治療が必要な慢性疾患である。
一般診療所などでの指導による集中的な減量で、2型糖尿病が寛解(2型糖尿病の診断基準以下に維持)できるか否かを評価した。

【研究方法】

●実施場所はスコットランド、 イギリス・タインサイド地方の一般診療所など9ヶ所。

●被検者をコンピュータで作成したリストにより、減量管理プログラム(介入グループ)ガイドラインに基づく治療(対照グループ)の2つの群に1:1にランダムに割り付けた。

●研究実施場所(タインサイド、スコットランド)と、被験者のリストのサイズ(5,700超とそれ以下)により層別化した。

●被検者、ケア担当者、アウトカムデータ収集研究アシスタントは、被験者がいずれの群に割り付けられたかを知り得たが、これらの割り付けは研究結果を解析する者には知らされなかった。

●研究開始前の6年間に2型糖尿病と診断された20~65歳の、BMIが 27~45、インスリン未使用の患者を登録した。

●介入グループは、抗糖尿病薬と降圧薬を使用中止し825~853 kcal/日の半消化態栄養剤で3~5ヶ月間食事をとり、その後2~8週間で段階的に普通食を再開する長期的な減量プログラムを実行した。

15kg以上の減量ができたか、糖尿病の寛解としてHbA1c<6.5%を維持できたかを評価した。

【研究の結果】

●2014年7月25日から2017年8月5日まで306人の被験者が研究に参加し、介入グループ157人、対照グループ149人に割り付けられた。

●12ヶ月時点で介入グループでは68人(46%)が糖尿病の寛解を達成し、対照グループでは6人(4%)が糖尿病の寛解を達成した。

●12ヶ月時点で15kg以上の減量 が成功したのは介入グループでは36人(24%)、対照グループでは0人 で統計学的に意味のある差だった(p< 0.0001)。

糖尿病の寛解の成功は、体重増加した76名では0、0~5kgの減量で6/89人(7%)、5~10kgの減量では19/56人(34%)、10~15kgの減量で16/28人(57%)、15kg以上の減量では31/36人(86%)減量の度合いが大きいほど糖尿病の寛解の成功率は高まった。

●介入グループでは 減量の平均は10.0kg(標準偏差 8.0)、対照グループでは 1.0kg(標準偏差3.7)だった。(群間補正差 -8.8 kg、95%信頼区間 -10.3 〜 -7.3 で統計学的に有意 p< 0.001)

生活の質(QOL)を EuroQol 5 Dimensions visual analogue scaleで評価したところ、介入グループ では、試験開始時に比べて7.2ポイント(標準偏差21.3)改善、対照グループでは -2.9ポイントと (標準偏差15.5)悪化していた。
(群間補正差 6.4、95%信頼区間2.5〜10.3で統計学的に有意 p=0.0012)

●研究実施中、重大な有害な副作用は、介入グループで 7件/157人 (4%)、 対照グループ で2件/149人 (1%)に見られた。そのうち胆道疝痛、腹痛が同じ被検者で起こり、介入に関連した副作用である可能性があると見なされた。

●研究終了後に重大な副作用は起こらなかった。

【結論】

研究実施後12ヶ月時点で、被検者の半数が非糖尿病状態へ寛解し、抗糖尿病薬の使用を終了できた。
このような2型糖尿病の寛解が、(患者と)一般診療所などの目標である。
 
いかがでしょう?

糖尿病の方も、その予備軍の方も、減量をすれば、薬なしで、糖尿病から離脱できるのです。

15%の減量で糖尿病から離脱

この研究で注目すべきなのは、15kg以上の減量で86%が糖尿病から離脱できたということです。
研究参加者の研究開始時点での体重が平均約100kgだったことから、おおよそ15%の減量に成功すればよいということになります。
仮に、BMIの値が大きい肥満の方でも、15%の減量を頑張れば、病気を遠ざけることができるのです。
例えば体重80kgの人は、12kgの減量、つまり68kgを目指して実現すればよいのです。
決して実現できない目標ではありませんね。
実際、「若いころはそのくらいの体重だった」と思う人も多いはずです。

いきなり15%の減量は無理!!って思う人も多いでしょう。
でも、この研究では、10~15kgの減量でも57%もの人が糖尿病から離脱できています。
15%の減量に届かなくても、ある程度の効果が得られると考えられます。
確かにダイエットは難しいので、いきなり15%体重を落とすことを目標にするのではなく、リバウンドしないような着実な減量を時間をかけて行うことでも、十分効果は期待できます。
諦めずにじっくり取り組みましょう。
”週末にまとめて運動”でも死亡率は下がる!

ガイドラインにしたがって薬を飲んでいるだけでは、糖尿病は治りません。
生活習慣を変えて、太っている場合は減量しなければ、いくら薬を飲んでも、血液透析や神経障害、認知症へと進んでいきます。
薬を飲む前にやるべきことがあることが分かりますね。
糖尿病ガイドライン 糖尿病治療薬はやめられる
糖尿病で血液透析や神経障害になりたくなければ、まず運動療法・食事療法が勧められる。ガイドラインに従った薬物療法だけではダメ

糖尿病治療で優先すべきなのは服薬ではない!

生活習慣病の薬は、あくまでも減量など生活習慣の改善の補助的な選択肢に過ぎません。
現在の生活習慣病の薬では、生活習慣病の進行を少しは遅らせることはできても、元の健康な身体に戻すことはできません。

薬を使わずに寛解(病気からの離脱)を目指すことが正しい治療目標です。
健診で検査値に問題を指摘されたからといって、病院でいきなり薬を処方してもらうのは考え直さなければなりませんね。

この研究からも明らかなように、糖尿病の薬や降圧薬など、生活習慣病の薬は、1度飲み始めたら止められないというのは間違いです。
医師や薬剤師などの医療従事者や、製薬企業の従業員の中には、「生活習慣病の薬は一生飲まなければならない」という科学的に誤った指導・情報提供をする方もいますが、そのような医療機関や薬は受診・使用しないほうが身のためです。
患者も医療従事者も、「薬を飲んでいれば大丈夫」という誤った認識を改めなければなりません。

この研究のように、良識のある病院・医院は、生活習慣病の治療では、いきなり薬を処方せずに、先ずは食事療法や運動療法を指導してくれるはずです。
生活習慣病予備軍の方は、是非、まずこの方法を選んでください。

運動・糖尿病については以下のコンテンツもどうぞ

運動
老化を遅らせる運動法は?

糖尿病

2017年5月27日土曜日

健康にも不健康にもすぐにはなれない

健康であることの大切さは、体調を本格的に崩した経験をして、不健康を自覚して初めて分かります。
「一病息災」とも言いますね。

人間は自分で考えるよりもずっと愚かです。
何事も経験して、ある意味痛い目に合わないと、大切なことが理解できないようです。
いくら能力にも体力にも自信があると言っても、体験を伴わない勉強や、机上の理論や思い込みだけで「分かっている」つもりにならないようにすることが大切なようです。

それを証明してくれるような長期にわたる大規模な調査研究の結果をご紹介しましょう。


長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手

Norrina B. Allen et.al. Favorable Cardiovascular Health, Compression of Morbidity, and Healthcare Costs
Forty-Year Follow-Up of the CHA Study (Chicago Heart Association Detection Project in Industry). Circulation. 2017;135:1693-1701

Golden years are longer and healthier for those with good heart health in middle age
American Heart Association Rapid Access Journal Report

【研究の参加者】
  • 研究開始時に18-74歳(平均44歳)のだった参加者のうち、2010年時点で65歳以上になった人25,804人(開始時点の参加者の65%に該当、43%が女性、90%が白人)

【研究の方法】
  • 1963年から1974年に参加者に最初の健康テストを行った。
  • 健康保険(アメリカのメディケア)の記録から、継続的に対象者を追跡。
  • 血圧、コレステロール値、糖尿病の有無、BMI、喫煙の有無を調査して、それぞれをリスク要因と定める。
  • 心臓血管の健康状態に応じて、

  • ①良好(リスク要因なし。2010年時点で全体の6%に該当) 
    ②普通[リスク要因は0項目だが、リスク要因の指標(数値)が上昇傾向。2010年時点で全体の19%に該当]
    ③要注意(リスク要因が1項目該当。2010年時点で全体の40%に該当
    ④リスクあり(リスク要因が2項目以上該当。2010年時点で全体の35%に該当)
にグループ分けした。

【研究の結果】
  • 65歳まで慢性疾患にならなかった17,939人のなかで①良好(リスク要因なし)のグループは、④のリスク要因が2項目以上該当したリスクありのグループに比べて、
医療費節約 寿命 慢性疾患 血圧 コレステロール糖尿病 BMI 喫煙
長生きで健康な高齢期は、中年期が決め手
  1. 寿命が平均3.9年長い
  2. 慢性疾患の発症が4.5年遅かった
  3. 高齢期の慢性疾患発症が22%少なかった
  4. 医療費は約18,000ドル(約200万円)節約できた
  • 65歳まで心臓発作、脳卒中、うっ血性心不全にならなかった18,714人のなかで、①良好(リスク要因なし)のグループでは、
  1. 心血管疾患の発症が6.9年遅かった
  2. 心疾患の医療費は46.5%削減された

【研究から考えられること】
  • 長生きして高齢になってもやりたいことをするためには、健康的なライフスタイルが大切であることを、若い成人たちに普及させる必要がある
と研究者らはコメントしています。

リスク要因は年を取ってから病気になって現れる

この研究は、一見当たり前のような結果を示していますが、よくかみ砕くと警句に満ちています。

リスク要因が2項目以上該当した④のリスクありのグループの人は、65歳までは慢性疾患と診断されなくても、その後、病気と診断されて生涯病院通いになる可能性もあることを示しています。

寿命に平均3.9年、慢性疾患の発症に4.5年の差があるということは、65歳を超えたら、間もなく重い病気を発病して、闘病の末に3.9年早く亡くなるというシナリオもあり得るのです。

「65歳なんてまだまだ先、太り気味で血圧が高めだけど元気だから大丈夫」なんて思っていませんか?
辛い思いをしながら病気と闘う期間が長い老後は、果たしてハッピーリタイアメントでしょうか?

お金より健康を蓄えよう

この研究は、中年期を過ぎたら自分を労わることこそが、実は仕事・出世や貯蓄よりも、だんだんと弱っていく高齢期の、健やかで確かな備えであることを証明しています。

急に肥満にはならないし、高血圧や、2型糖尿病などの生活習慣病も、急には発病しません。

不健康」も「健康」も日常生活の蓄積によります。
中年までは、若さによって、多少の無理や暴飲暴食、運動不足、ストレスを解消できますが、それ以降は、無理をすれば「不健康」に向かって悪い要素が蓄積していくわけです。

健康にわき目も振らず一生懸命仕事をして、貨幣を得て財テクなどで人生に保険を掛けたつもりでも、「不健康」も一緒に蓄えてしまっては元も子もありません。
厚くかけた保険が充分に降りたとしても、貯めたお金を治療にふんだんに使えたとしても、現代の医療ではほとんどの場合、老化と病気は根治しないことも覚えておくべきです。

エバーグリーン研究室がお勧めできる唯一の「安心」は、
正しい知識に基づく、健康な生活習慣の獲得です。

仕事を引退して暇になったら始めるさ・・・では、間に合わないかもしれません。
健康な老後の前に、健康な60代があり、その前に健康な50代があり、その前に健康な40代があるのです。
そして、年とともに、健康の状態の質はだんだん下がっていきます。

年とともにやる気がなくなっていくことも計算に入れておく必要があります。
「もう体なんかどうでもいいや」と投げやりな気持ちになると、厄介です。

医療や介護の現場で、一番問題になるのは、患者さん本人の健康への無関心と、生活への諦めです。
一度投げやりになってしまうと、いくらアドバイスをしても、なかなか抜け出すきっかけをつかめないようです。

ときどき、ライフスタイルを見直そう

上の研究の①のグループのように、リスク因子が1つもない「無病息災」は難しいとしても、健康診断などで問題を指摘されたら、そろそろライフスタイルを考え直す時ではないでしょうか?

ライフスタイルを考え直すキーワードは、
多忙、ストレス過多、運動不足、睡眠障害(不足・質が悪い睡眠)、無趣味・無関心、タバコ・アルコール・カフェイン・甘味などの嗜好品、食べ過ぎ・飲みすぎ、偏食、外食(美食)過多
です。
これらを修正することが他のどんな健康法より一番効果があります。

中年期が、健康な老後に向けて「まだ取り返しのつく」人生最後のチャンスです。

始めるのは、今、ですね。

2017年4月9日日曜日

夜に炭水化物を食べないほうが良い

仕事や家事や子育てで忙しい毎日、皆様お疲れ様です。

帰宅が遅くなったり、つい外食や買い食いが多くなったりして、夕食の時間が遅くなっていませんか?

夕食は、遅くとも寝る前の3-4時間前ぐらいまでに済ませることが理想だと言われますね。
12時に就寝するとして、8時頃までに夕食を済ますということですね。
これが体に良いのには理由があります。
理由についてはこの記事の終わりに書きますね。

さて、今日は、先ず、やっぱり夜に食事、特に糖質などの炭水化物を摂ると、血糖値を上げてしまうことを示した研究を紹介してから、夕食の上手な摂り方を研究してみましょう。

特に、糖尿病予備軍や糖尿病の人たちは要注目です。

夜に炭水化物を取ると血糖値が上がる

Katharina Kessler. et al. The effect of diurnal distribution of carbohydrates and fat on glycaemic control in humans: a randomized controlled trial.Scientific Reports 7, Article number: 44170 (2017)

Men with impaired glucose metabolism should avoid high-carbohydrate foods in the evening

【研究の参加者】
  • 29人の男性(平均年齢:約46歳)
  • 平均BMIは27(平均的な体格~肥満気味の人までが参加したことになる)
  • 参加者のうち11人は、調査開始時点に耐糖能異常(糖尿病予備群)で、他の18人は正常だった。
【研究の方法】
  • 29人をグループA14人とグループB15人に分けた。
  • グループAにX食、グループBにY食を4週間食べてもらい、4週間の期間(ウォッシュアウト期間)をおいてから、X食Y食を入れ替えてさらに4週間食べてもらった。
(X食)高炭水化物食を朝~昼頃に食べ、高脂肪食を夕方~夜に食べる
(Y食)高脂肪食を朝~昼頃に食べ、高炭水化物食を夕方~夜に食べる
  • 参加者の炭水化物と脂質の代謝と各種のホルモン分泌、体重、BMIを測定して、それぞれを比較した。


【研究の結果】
  • 血糖値を比較した結果、夜に高炭水化物食を摂るY食摂取後の血糖値は、夜に高脂肪食を摂るX食摂取後の血糖値に比べ、平均7.9%高かった。
  • この傾向は耐糖能異常(糖尿病予備軍)でより明らかだった。
  • 糖質の代謝に必要な消化管ホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)と、食欲を抑制する消化管ホルモンのペプチドYY(PYY)の分泌低下も、夜に高炭水化物食を摂るY食摂取を摂取した耐糖能異常(糖尿病予備軍)でより明らかだった。

【研究から考えられること】
  • 耐糖能異常(糖尿病予備軍)の人は、夕方以降の高炭水化物食は避けるべきである。
  • 通常の生活リズム(体内時計、概日リズム)ではGLP-1ペプチドYYなどのホルモンは食後の必要時にきちんと分泌されるが、夕方~夜に食事をした場合には分泌が低下する傾向にあった。
  • 特に耐糖能異常(糖尿病予備軍)の群ではGLP-1ペプチドYYなどのホルモンの分泌が低下していたことから、耐糖能異常(糖尿病予備軍)の人は、夜に食べるなどの不規則な生活を修正すべきである。
とコメントしている。

いかがですか。

夕方以降の炭水化物摂取は、糖の代謝に負担をかけるようです。
特に、耐糖能異常(糖尿病予備軍)の人は夕食以降は糖質を控えるべきですね。

この研究で、寝る前の食事や、夜食、お酒の締めの麺類やお茶漬けなどの食事は、高血糖や肥満の元である理由が明らかになったようです。

寝ている間に働く”モチリン ”の邪魔をしない食生活を!

実はこれ以外にも、就寝前まで時間を空けずに食事をすることのリスクを説明するホルモンがあります。

モチリンという消化管ホルモンです。
モチリンは小腸の細胞から睡眠中に多く分泌され、寝ている間や食事の合間に胃や小腸に残っている食物などを大腸へ運ぶ蠕動運動を促します(空腹期伝播性強収縮と呼びます)。
また、モチリンは胃液(ペプシン)や膵液(アミラーゼなど)といった消化酵素の分泌も促します。

つまり寝ているときの消化と翌日の排便に備えて、消化管内を片づけて掃除する役目のホルモンと言えます。

こんな大切な役目を持つモチリンですが、モチリン空腹でないと働きません

寝るときに満腹でモチリン寝ているときに働けないのです。
胃や小腸に食物がたくさん入っている状態で、モチリンが働いてしまい、内容物をどんどん大腸に送ってしまったら、かえって消化・吸収を妨げることになるからです。

つまりある程度、消化管の中が空いてきてから、モチリン掃除を始めるわけです。
モチリンに働いてもらうには、最後に食事をしてからある程度消化吸収が済むまでの時間が必要ということです。
夜遅く食事すると翌朝食欲がなくなる理由がわかりますね。

前夜のお酒で翌朝食欲がないのも、二日酔いのせいだけでなく、就寝間際の締めの食事のためにモチリンが作用しなかったからかもしれません。

そうは言っても・・・という方の対策

血糖値を上げず、朝から快食・快便の快適な生活を始めるためには、少なくとも夜の炭水化物(糖質)と満腹は避けるべきなことが理解できます。

「日中は仕事があるから空腹はつらいし、時間がないから外食せざるを得ないし、 朝食と昼食は炭水化物(糖質)を止められない。晩ご飯を早めに食べるのも難しい」という方、晩ご飯だけは炭水化物(糖質)をカットして量を減らしてみてはいかがでしょうか?

夜遅くコンビニでお弁当を買って帰る際には、おにぎりやカップラーメン、パンはやめて、たんぱく質が多めのおかずを選ぶことをお勧めします。
お弁当を買ったときには、思い切ってご飯(お米)は残しましょう。
「もったいない」と思ってしまう方は、〇年後の糖尿病食を想像すると思いきれるかもしれません。

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2016年8月6日土曜日

主食の罠

主食をたくさん食べると、やっぱり太るようですね。

面白い調査結果を報道で知りました。

『主食の重ね食べ』は肥満のもと

大阪府健康医療部が2016年8月2日に発表した、大阪版健康・栄養調査結果(速報版)によると、男女とも 4 人に 1 人が、1 日 1 食以上、主食の重ね食べ、をしているということです。

具体的には、
  • お好み焼き+ごはん
  • うどん+かやくごはん
  • ラーメン+チャーハン
  • そば+どんぶりもの
などの組み合わせでしょうね。
週に1食以上、「主食の重ね食べ」をしている人の割合をBMI(体格指数)別にみると、肥満の人は63.9%で、普通(51.6%)、やせ(44.6%)の人より高かったったということです。

この調査は2015年11-12月、18歳以上の大阪府民1858人から回答を得たものです。
大阪版健康・栄養調査結果(速報版)

News Up 「重ね食べ」は肥満の元?

調査報告書には、『主食の重ね食べは「太りそうだ」と思う人が男女とも多く、特に女性はどの世代も多い傾向だった』との記述もありました。
主食好きの人は、わかっているのについやってしまう。ということでしょうか?

これには仕組みがあります。
主食の白米や精製された小麦粉などは、糖質が多く含まれているので、余計におなかが空いてしまうのでしたね。
⇒糖質は食欲を増進させる

白米の食べすぎが糖尿病の原因に?

実は、白米の過食がアジア地域(日本人と中国人)の2型糖尿病の主な原因であることは、明らかになっています。

この研究では、メタアナリシスという解析方法で、7つの前向き観察研究(プロスペクティブコーホート研究)を解析対象として、
  • 228,869人のアメリカ人とオーストラリア人
  • 123,479人の日本人と中国人
を4-22年間観察した食事内容と2型糖尿病発病割合などの結果を比較しました。

解析結果は、
  1. 日本人と中国人で白米の摂取量が多かったグループは、少なかったグループに比べて、 55% 2型糖尿病になりやすかった[相対危険度1.55 (95%信頼区間1.20-2.01)] 
  2. アメリカ人とオーストラリア人で 白米の摂取量が多かったグループは、少なかったグループに比べて12% 2型糖尿病になりやすかった[相対危険度1.12(95%信頼区間 0.94-1.33)]
  3. 1の結果と2の結果を統計学的に解析すると、同じ量の白米を摂取した場合、アメリカ人とオーストラリア人に比べて、日本人と中国人のほうが糖尿病になりやすいと判断できる。
  4. 白米の摂取量が多ければ多いほど2型糖尿病の発病リスクは高まった(線形相関あり)。
  5. 2型糖尿病の発病リスクは、およそ1日600g(ご飯4杯)の摂取で、まったく白米を摂らない場合に比べて約50%上昇すると推算された。
いかがでしょう?

白米、うどん、パンなど、精製度が高く、エネルギーの密度が高い食品はやはりほどほどにしないと危険ですね。

日本独特の「主食」という奇妙な考え方

エバーグリーン研究室では、我々日本人が陥っている最悪の食習慣が「主食」を摂るということにあると考えます。

「主食」について調べるとわかりますが、「主食」の概念は先進国では日本以外ではまず見当たりません。
欧米人もパンやパスタは食べますが、それが「主食」になることはありません。
中国人も、南の地域では白米を多く食べるようですが、あえて「主食」といえば餃子のようです。
つまり、他の国の人々も、高エネルギー密度のデンプンを食べてはいますが、その量と割合が日本人ほど高くないということです。

「主食」は、英訳すればメインディッシュになります。
日本人の多くが、ご飯やうどんがメインディッシュということです。

外国人がこれを聞くととても驚きます。
多くの外国の料理のメインディッシュは,
肉や魚などのタンパク質が豊富な料理です。

日本人は、もともと狩猟採取による肉食中心の雑食であったのが、農業振興と租税の目的で律令時代のころから始まった肉食禁止令などによって、次第に米中心の食生活となり、江戸時代には通貨の代わりになるまでになりました。
元禄時代に精米技術の普及によって、庶民も白米を食べるようになると、脚気=「江戸患い」が出現しました。

その後も、農業保護の政策から、米を中心とした「主食」の考え方は日本に蔓延しています。
明治期にも海軍軍医の高木兼寛が海軍で多くの死者を出していた脚気の原因を白米中心の食事であることを発見して、海軍の食事内容を改めたことは有名です。

脚気の直接の原因はビタミンB1不足です。
精米によって白米にすることで、玄米に含まれていたビタミンB1は失われコメの栄養価が変わってしまうわけです。
そして、白米のご飯(主食)と漬物といった栄養価の足りない食事スタイルで脚気が起こっていたのです。
ちなみに脚気による死亡者数は、1923(大正12)年の26,796人がピークだそうです。

昭和に入っても1975年に日本神経学会で脚気の症例が全国各地から報告されて、学会がざわめいたことがあるそうです。
このころは、ちょうど高度成長期で豊かになるとともに、白米中心の食事に加え、インスタント食品や外食などの機会が増えてきたからと思われます。

もちろん医療技術の進歩も影響しているのでしょうが、日本人の平均寿命の延長は高度成長期から始まった、コメの消費量の減少に比例しています。

また、戦前までは小さかった日本人の体格が、戦後急速に大きくなったのも、食事に占める炭水化物の割合が少なくなり、タンパク質の摂取割合が増えたためと思われます。

日本の栄養学と栄養食品の問題点

日本の栄養学はあまり進歩していないようです。
PFCバランスなどと呼ばれる、1日のエネルギーの13~20%はタンパク質、20~30%は脂肪で、50~65%は炭水化物(でんぷん・糖質、食物繊維、アルコールも含む)で摂りなさいという、炭水化物が多過ぎる食事指導を行っているのが実情です。

ここにも、「主食」の考えが影響していると思われます。
「主食」の考えを改めない限り、日本食が健康食とは言えないでしょう。

日本の栄養学の問題点は、食事に含まれる栄養素の割合や熱量にばかり着目して、各食品の消化・吸収を含めたエネルギー密度・効率という視野が乏しいことと考えます。
日本の栄養学の問題点は、食事に含まれる栄養素の割合や熱量にばかり着目して、各食品の消化・吸収を含めたエネルギー密度・効率という視野が乏しい バナナジュース イラスト 

例えば、同じ量の糖質を含む食品であっても、バナナをミキサーでジュースにした飲み物のほうが、固形のバナナよりもエネルギー密度が高くなり、消化・吸収効率が良いことは、実験しなくても論理的に直観できます。

安直なキャッチの商品に注意

「食べられないなら飲めばいい」などという安直なキャッチコピーで、栄養バランスが取れているとする流動食を宣伝している食品・製薬メーカーもありますが、あのような商品を一般向けに開発する意図がわかりません。

その商品は、1パケージで200kcal/125mL(1mL当たり1.6kcal)のエネルギーだそうですが、125mLなら一気に飲めるでしょう。
200kcal(おにぎり1個強のエネルギー、糖質29.3g!角砂糖7.3個分に相当)を一飲みで摂るなんて恐ろしいことです。
仮に一食の摂取カロリーを800kcalとしても、通常の調理での、固形物の多い、のど越しの良くない、よく噛む必要のある食事では、早く食べても30分はかけているはずです。

明治 メイバランス イラストこのような商品を飲むと、唾液の分泌は少なく、胃を素通りして、膵臓がびっくりして膵アミラーゼを盛んに分泌させて膵臓に負担をかけ、急速に小腸から栄養が吸収され、血糖値の急上昇とインスリンの過剰分泌の恐れがあると思います。

ちなみに、この商品と同じグループに分類される液体半消化態栄養剤の医薬品の用法では1時間に50-100mLの速度で投与するとなっています。

※液体半消化態栄養剤:口から食べられなくなってしまった人が固形の食事の代わりに摂取する医薬品

この医薬品の液体半消化態栄養剤は、各栄養成分の組成と配合量は異なりますが、エネルギーは1mL当たり1.5kcalと上の商品と同様です。

一般に販売されている流動食のように飲む食品はこれ以外にもありますが、忙しいからと言ってこのような食品を使用しないことをお勧めします。

第一、栄養学などで食品のエネルギー換算に用いる、食品の物理的燃焼熱を基にしたアトウォーター換算係数には、問題点が多すぎます。

※ アトウォーター換算係数:食品のカロリーを計算する際に用いる係数。
食品を燃やして生じる熱量(燃焼熱)から,それを摂取した場合に糞に排泄される部分の燃焼熱と、尿に排泄される部分の燃焼熱を差し引いて求める。
炭水化物とタンパク質は1gを4kcal、脂質は1gを9kcalとする。

栄養学が、この問題点を認識できていないはずがありません。
学問として、なぜ率先して改善しないのか理解できません。
栄養学は、農業・畜産業をはじめ食品業界、外食産業などの利権が関係しやすい学問領域ですが、もう少し進歩していただきたいものです。


バランスのよい食事 20のポイント

バランス良い食事が大切とは、栄養士による栄養指導の決まり文句ですが、具体性に欠けます。

それよりも、
  1. 主な食品の主要な栄養成分を覚えておく
  2. 一種類の食品や1つの栄養素を含むものをたくさん食べすぎない
  3. いろいろな食材を用いて食事をする
  4. 動物にとってはタンパク質が最も重要な栄養素
  5. 濃い味付けを避け、薄味に慣れる(塩分を控える)
  6. 同じ調理法のものを食べすぎない(揚げ物、炒め物ばかりなど)
  7. スムージーや粥、餅など極端に粉砕・加熱・加工調理したものは控えめに
  8. のど越しの良い食物(カレーなどルーのかかったもの、あんかけの丼もの・麺、汁の多い丼もの、汁かけ飯、麺類、噛まなくて済む柔らかい食物、流動食)を食べすぎない
  9. 加工食品を食べすぎない
  10. 糖質を摂るときは食物繊維(野菜)を一緒に食べる
  11. 美味しいものは習慣性・依存性があるので嗜好品と考える
  12. 塩+砂糖+油脂の多い味付けが習慣性・依存性をもたらす
  13. 美味しい(甘い)飲み物は飲まない(子供には水!)
  14. 早食いしない(1口で30回は噛んで、食物に唾液を良く絡めてから飲み込む)
  15. 大食いしない
  16. 保存食を買い置きしない
  17. 外食を控える
  18. 食べ放題は危険
  19. 満腹を感じたら食べない。無理して食べない
  20. 食べること以外の楽しみを持つ
を心掛けると良いと思います。
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2014年10月12日日曜日

早食いはメタボの元

 
イラスト おにぎり
外回りに忙しい営業マンの立ち食いソバ、国際的なジェットセッターのお手軽な空港マック、ついつい立って食事をしてしまう子育てに忙しいお母さん。

みなさんお疲れ様です。

食事をゆっくりとっていますか?

今日は、早食いをするとメタボになりやすいという日本人での研究を紹介します。
Nagahama S, et al.Self-reported eating rate and metabolic syndrome in Japanese people: cross-sectional study. BMJ Open. 2014 Sep 5;4:e005241.

国立国際医療研究センターの長濱 さつ絵さんらの研究グループの研究です。


2011年に健康診断を受けて、心臓の病気や脳卒中を起こしたことがない5万6,865人(男性4万1,820人、女性1万5,045人)について、参加者の自己申告による食べる速度と、メタボリックシンドロームとメタボの原因となる事柄との関係について調査して、なりやすさの指標となるオッズ比を算出して統計学的に分析しました。

その結果

食べる速さはメタボリックシンドロームと正の関連がありました。

食べるのが速い人ほどメタボの人が多かったのです。

●詳しく見ると、男性では、食べる速度が「普通」の人を基準(1.00とする)に比較して、「遅い」人は0.70倍(0.62~0.79)とメタボになりにくく、「速い」人は1.61倍(1.53~1.70)メタボになりやすいという結果でした。

上の0.70倍(0.62~0.79)と1.61倍(1.53~1.70)の括弧の中の数字は、データーのぶれを表す数字で、95%信頼区間といいます。

95%信頼区間とは、簡単に言うと調査で食べるのが遅いと答えた人全体から、100人を代表して切り出すとその100人の中の95人がこの範囲の数字となるということです。
つまり、「遅い」人は0.70倍(0.62~0.79)の読み方は、「遅い」人は押しなべて0.70倍とメタボになりにくく、でも幅があって、100人中95人が0.62~0.79倍とメタボになりにくい範囲に入っていたということです。

女性では、「普通」の人を基準(1.00とする)に比較して、「遅い」人は0.74倍(0.60~0.91)とメタボになりにくく、「速い」人は1.27倍(1.13~1.43)メタボになりやすいという結果でした。

●メタボリックシンドロームの原因には高血圧や高血糖などいろいろありますが、そのなかで食べる速さに一番強く関連していたのは腹部肥満でした。

●さらに詳しい分析では、食べる速さが遅いと、男性でも女性でも高血圧になりにくく、男性では高血糖になりにくいことがわかりました。

食べる速さが早いと、男性では脂質異常症になりやすいことが統計学的に確かめられました。

早食いはやっぱり体に悪いですね。
メタボ防止に食事はゆっくりおいしく食べましょう!!

2014年10月9日木曜日

厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?

健康的な食生活とか、健康に良い食事、バランスの良い食事をとるべきだといろいろなメディアや人が言いますね。
でも健康的な食生活、バランスの良い食事って具体的にどんなものなのでしょうか?
そして、一般に言われている『健康的な食生活』、『バランスの良い食事』は本当に正しいのでしょうか?
今日はこのことについてご一緒に考えましょう。

日本で勧められている「バランスの良い食事」とは

実は、このページを書き始めたきっかけが、本日2014年 10月6日 15時23分掲載のNHKのNews Web【「健康な食事」コンビニ弁当などに専用マーク】というニュースを見たからです。
要約すると、

厚生労働省では、生活習慣病の予防や健康作のために、1食当たりに必要な栄養素の量を定めた基準を満たせばコンビニなどで販売される弁当などに専用のマークを付けることができる制度を来年度から始めることになった。

というものです。
コンビニのお弁当などに、このお弁当は、「健康な食事」ですよ!のマークがつき始めるということのようです。

そこで、このニュースの元となった、厚生労働省が実施している、

【日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会】

の議事録をみて、内容を確認してみました。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書を取りまとめました

今回の「健康な食事」の基準は、「厚生労働大臣が定める、健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準」として定められた【日本人の食事摂取基準(2015 年版)】に基づくもののようです。

この基準の中で気になることがあります。

下の表を見てください。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
エネルギーとなる栄養素の目標バランス(一日必要エネルギーの何%を占めるか)


この表は、1日に摂るべき栄養素のバランス(%)の目標値を示しています。

わかりやすいように元の表を少し編集していますが、要するに、1日に必要なエネルギーをどの栄養素でとるべきかの割合を%で示しています。

幅がありますが、1日のエネルギーの、13~20%はタンパク質で、20~30%は脂肪で、50~65%は炭水化物(糖質、食物繊維、アルコールも含む)で摂りなさいということです。

このバランスは別名、PFCバランスとも呼ばれます。
Pはタンパク質(protein)の頭文字、Fは脂肪(fat)、Cは炭水化物(carbohydrate)の頭文字からとっています。

では、具体的にどれくらいの量なのかを見てみましょう。

日常生活での身体の活動性が普通の30~49歳の男性で、必要な1日のエネルギーは、2650kcalとされています。
ちなみに同年齢層の女性は2000kcalですので、以下のお話の答えの数字に0.755を掛け算して読んでみてください。

身体活動が普通とは、デスクワーク中心の仕事だけれども、職場内での移動や立ってする作業・接客等、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツなどを合計2時間ほどしていて、1日30分歩行しているくらいの人です。

結構、仕事や家事で体を動かしてますね。

さて、上の割合を当てはめてみましょう。

まず、タンパク質の割合は全体のエネルギーの13~20%とされますので、仮に20%として、

2650kcal(1日の必要エネルギー)×0.2(20%)=530kcal

となります。

では、530kcalのタンパク質はどれ位の量かというと、
タンパク質は1gで4kcalのエネルギーを持っていますので、

530kcal(1日の必要エネルギーの20%)÷4(タンパク質は1gで4kcal)=132.5g

同じようにして、脂肪を30%として計算すると、
脂肪(1日の必要エネルギーの20%)は795kcalとなります。

脂肪は1gで9kcalのエネルギーを持っていますので、

795kcal(1日の必要エネルギーの30%)÷9(脂肪は1gで9kcal)=88g

さらに、炭水化物を50%として、
炭水化物(1日の必要エネルギーの50%)は1325kcalとなります。

炭水化物は1gで4kcalのエネルギーを持っていますので、

1325kcal(1日の必要エネルギーの50%)÷4(炭水化物は1gで4kcal)=331.25g


これらをまとめると

普通の30~49歳の人では、1日の必要エネルギーを、
おおよそ、タンパク質133g、脂肪88g、炭水化物332gの割合で摂ればよいとされているわけです。

鶏もも肉ロースト2枚とごはん6杯

もっとイメージしやすくするために、実際の食品に当てはめてみると、

タンパク質133gは、鶏もも肉のロースト540g分、小さめの鶏もも肉2枚分です。

上の鶏もも肉のローストにも脂肪が入っているので、鶏もも肉のロースト540gには、約71gの脂肪が含まれています。
脂肪88gに17g足りないですね。

炭水化物、332gは、ごはんにすると920gで、ごはん茶碗(150g)として、約6杯分です。
ここでは、単純化するため、食品を2つに絞って、調味料などの実際の食事のことを考慮していませんが…

2枚の鶏もも肉ローストとごはん6杯を1日で食べると聞いて、直観的にどう感じますか?
(女性では、鶏もも肉ロースト1枚半、ごはん4杯半を1日で…

ご飯が、炭水化物が多すぎると思いませんか?

糖質を制限している私からするとめまいがするような炭水化物の量です。

現在の日本の栄養学では、このバランスが推奨されているのです。

白米の過食が2型糖尿病の主な原因なのに?


私たちエバーグリーン研究室の見解では、この基準の勧める割合は、炭水化物が多すぎると考えます。

また、糖尿病患者への食事指導でも、1日の総エネルギーは抑えられますが、上に書いたPFCバランスの割合はだいたい同じ割合で指導されます。

糖尿病というのは、何らかの原因で、インスリンが出なくなったり、インスリンの働きが悪くなり、グルコース(ブドウ糖)を処理できなくなって血糖値が上がってしまう病気です。

それなのに、このような割合の炭水化物を摂ってしまって、大丈夫なのでしょうか?

実は、白米の過食がアジア地域(日本人と中国人)の2型糖尿病の主な原因であることは、明らかになっています。
White rice consumption and risk of type 2 diabetes:meta-analysis and systematic review

このことは、日本食の最大の欠点である主食の習慣とかかわっています。
詳しくは下のリンクで…。
主食の罠

厚生労働大臣お勧めの栄養バランスで糖尿病・糖尿病予備群が増えた?


さて、この疑問が残るPFCバランスを用いた栄養指導で、糖尿病や糖尿病予備群が増えてしまったと考えられる実例があります。

九州の福岡県の久山町という町でのことです。

実は、この久山町という地域では、地元の九州大学の医学部第二内科が中心となって、食生活や運動、飲酒、などの生活習慣と病気についての医学研究を1961年以来行い続けている地域です。

久山町に住む40歳以上の住民の大半は、手厚い健康管理と検診を定期的に受けて、継続して医学的データを提供しています。

この研究は久山町研究と呼ばれて、世界的に注目される研究結果をいくつも出してきました。

ところが、このように医師や栄養士による生活指導や食事指導をきちっと受けている地域で、なぜか糖尿病やその予備軍が増えてしまったのです。

図を見てください。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
久山町40歳以上男性の代謝性疾患の頻度の推移

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
久山町40歳以上女性の代謝性疾患の頻度の推移


上のグラフのように、肥満、高コレステロール血症、糖代謝異常(糖尿病と予備群)について1961年、1974年、1988年、2002年に調査した結果、1974年から1988年の14年間で、男性も女性も高コレステロール血症(赤の棒)と糖代謝異常(グリーンの棒)が非常に増えていました。

さらに詳しく、1988年と2002年の調査結果を比較すると、

男女とも、高コレステロール血症は増加はしませんでした。

これは、1974年から1988年の過去の14年間での高コレステロール血症の増加を重く見て、しっかりと、高コレステロール血症の予防と治療をした成果なのでしょう。

しかし、糖代謝異常(糖尿病とその予備軍)では、

男性では糖代謝異常(糖尿病とその予備軍)が39.3から54.5%に増加し、
女性では糖代謝異常(糖尿病とその予備軍)が30から35.5%に増えました。


高コレステロール血症と同じように、糖代謝異常にも、食事指導などの対策をしたにもかかわらず、大幅に増えました。

さらに、次のグラフを見てください。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
2002年の久山町40歳以上の住民と全国の糖尿病の割合の比較

このグラフは、2002年の久山町と全国の糖尿病(糖尿病の疑いが濃厚な人も含む)の割合を比較したものです。

青い棒が全国で、赤い棒が久山町です。

2002年の久山町の糖尿病の割合の男性23.6%、女性13.4%は、同じ年の日本人全体の糖尿病の割合の男性15.6%、女性8.1%と比べても多いという結果となってしまったのです。

なぜこんなことが起こるのでしょう?

下の表は、久山町住人の栄養素のバランス(%)を1965年、1985年、1994年、2004年に調査した結果です。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
久山町住人の栄養素のバランス(%)を1965年、1985年、1994年、2004年に調査

1965年は研究を始めて間もない時期でしたから、栄養の指導が十分行きわたっていなかったためか、タンパク質が少な目で、脂質も少なく、炭水化物が多めです。




1985年、1994年、2004年の結果では、研究が始まり医師や栄養士による栄養指導が行きわたっていたためか、タンパク質、脂質、炭水化物の全てで、栄養素のバランスの目標の範囲に見事入っています。

この事実からいえることは、現在の日本の栄養学や、糖尿病の専門家や、厚生労働省などが推奨している栄養法では、糖尿病とその予備軍が増えてしまうことになります。

繰り返しますが、私たちエバーグリーン研究室の見解では、このような久山町での事実を踏まえて、【日本人の食事摂取基準(2015年版)】や、糖尿病の食事指導などで勧められている、栄養素のバランスは、炭水化物が多すぎると考えます。
栄養指導をするのなら、少なくとも炭水化物を単純糖質(遊離糖質、単糖類、二糖類)と複合糖質、食物繊維に分けて考えることが最低限必要でしょう。

生活が便利になるほど、私たちは運動不足になっています。
久山町の1985年、1994年、2004年の結果からも明らかなように、糖尿病とその予備軍が時を経るほどに増えている事実からも、運動不足が加速され、そこに加えて、旧態依然とした炭水化物(主食文化=白米を好む)の多い食事指導をしたために、糖尿病とその予備軍が増加したのではないでしょうか?
実は、自家用車の普及率と2型糖尿病の増加も比例しています。
運動不足の現代の日本人では、食後直ちに血糖値を上げる単純糖質の多い食事を控え、代わりに努めて食物繊維を摂るように指導するべきでしょう。

最初のニュースの通り、コンビニで売られている「健康な食事」のマーク入りのお弁当が普及するのがちょっと怖い気がします。

あなたはどうお考えですか?

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
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ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
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