いきいき!エバーグリーンラブ: 酵素健康食品のウソ

2015年9月18日金曜日

酵素健康食品のウソ

ローフード(加熱しない食べ物)などの食品やジュース、サプリメントで酵素をとれば、健康に良いといっている宣伝は数多くあります。

「酵素栄養学」などと呼んで、一見科学っぽく装っていますね。
他にも、どのような狙いがあるのかわかりませんが、「◎×酵素」などと発酵食品の健康食品にわざわざ「酵素」とネーミングした商品もあります。

このブログをお読みの皆さんは、酵素栄養学、酵素ダイエット、酵素ドリンク…などのキーワードに騙されない方々だと思いますが、酵素についておさらいしておきましょう。

酵素って何?

まず、酵素とはなんでしょうか?

私たち生物は、呼吸や食事によって外から物質を取り込んで、物質を自分たちに必要な形に変えて身体の部品としたり、物質の形を変えることでエネルギーを取り出したりしています。

物質が変化するとき、必ず化学反応が起こっています。
生きることは、この化学反応を常に行って行くことと言っても良いでしょう。

酵素は「触媒」

この化学反応を起こすための「触媒」が酵素です。

理科の授業を思い出してください。
過酸化水素水(プツプツ泡立つ透明な液体)に二酸化マンガン(黒い粉)を入れて酸素がでる実験をした方も多いのでは?
この反応では二酸化マンガンが触媒で、二酸化マンガンは変化しません。

触媒は化学反応の反応する速さや効率に作用する物質で、触媒自体は反応の前後で変化しないものです。

上の実験の触媒は、試験管の中で働いていますが、酵素は生物での化学反応で働く触媒なのです。

生物は、生きていくために必要な化学反応を効率よく行うために、必要に応じて触媒である酵素を作ります。

酵素は身体の活動すべてに関わっている

酵素というと、アミラーゼやペプシンといった消化酵素を思い浮かべる方も多いでしょうが、消化吸収だけでなく、排泄や、呼吸すること、身体を動かすこと、見ること、聞くこと、感じること、喜ぶこと、悲しむこと、考えることにも、化学反応が関わり、そこには必ず酵素が触媒として働いています。

実は生物の生命活動のほとんどすべてに酵素が関わっているといっても良いのです。

これらの酵素は、臓器や組織の細胞の膜や細胞の中(細胞質)、細胞核やミトコンドリアなどの細胞の小器官で必要な時に必要な分だけ作られて、それぞれ必要な化学反応を進めます。

消化管では

例えば胃や小腸などの消化管では、食べ物を消化(分解)する消化酵素(正しくは分解酵素)を消化管の中に分泌して、食べ物を消化する化学反応を起こさせます。

ミトコンドリアでは

細胞内のミトコンドリアでは、ブドウ糖などの栄養素からエネルギーを取り出すための化学反応が活発に起こっています。
その一連の化学反応を進めるのに10個の酵素が精密に関わっています。

このような酵素を代謝酵素と呼ぶこともあります。
酵素反応の模式図 酵素が触媒して化学反応して変化する物質を基質と呼ぶ。酵素反応には様々なものがあるが、ここでは、分解、生合成、修飾の反応を表した。図のように、酵素には、基質がぴったりと嵌るクラフトというくぼみがあり、そこに基質を導いて反応を進める。図のように反応の前後で基質は変化するが、酵素は変化せず、再利用される。イラスト
酵素反応の模式図

酵素が触媒し化学反応して変化する物質を基質と呼ぶ。
酵素反応には様々なものがあるが、ここでは、生合成、分解、修飾の反応を表した。

図のように、酵素には、基質がぴったりと嵌るクラフトというくぼみがあり、そこに基質を導いて反応を進める。
この仕組みにより、酵素が触媒する基質を選択していると考えられる。

図のように反応の前後で基質は変化するが、酵素は変化せず、再利用される。

また、通常は1つの反応に1つの専用の酵素が対応する。
酵素反応は、条件(温度やpHなど)によって矢印のどちらにも進めることができる。
これを可逆反応という。

酵素の多くはアミノ酸が立体的に結合したタンパク質である。
酵素のタンパク質の立体構造が熱、pH、塩分濃度などで変化すると酵素の作用が減弱したり、消失する(失活という)。

酵素は身体の中で作られるもの

「酵素栄養学」などでは、一生のうちで酵素が作られる量に限りがあり、酵素を浪費すると健康によくないので、酵素を食べ物や健康食品で補う必要があるとしていますが、酵素の作られる量に限りがあるかは解っていません。

それに、酵素は再利用されますし、ほとんどの酵素はタンパク質でできているので、外から摂っても消化されてしまい、酵素の形では吸収されません。

もし、酵素を食べて酵素の形で吸収され、酵素が働いてしまったら、余計な酵素となり、化学反応が進みすぎたり、起こるべきではないところで反応が進んだりして、身体にとって害になるでしょう。

ちなみに、ボツリヌス菌や破傷風菌、コレラ菌などが作り出す細菌毒の多くは、酵素です。

酵素はオーダーメード。

必要な場所で、必要なだけ作られる

例えば、胃に分泌されるタンパク質分解酵素のペプシンは、胃の粘膜の細胞の中では、ペプシンンに形を変える前のペプシノーゲンというタンパク質として作られています。
ペプシノーゲン自体は酵素として消化(分解)を触媒しません。
胃の中の酸によってペプシノーゲンがペプシンンに形を変えて初めて、酵素として働きます。
最初からペプシンとして作られてしまったら、胃の粘膜の細胞のタンパク質も分解してしまうでしょう。

このように酵素は適材適所でその状況と必要に応じて作られることが大切なのです。
食べ物やサプリで補えるような単純なものではないのです。

さらに、「酵素栄養学」などでは、消化酵素を服用して補えば、代謝酵素にその分のエネルギーを回せるので健康に良いといいますが、これも根拠が曖昧です。

外から消化酵素を補い続ければ、自分で酵素を生合成して分泌する能力が失われかねません。
生物は、使わないようになった身体の機能には無駄にエネルギーを使わないようにする特性を持っているからです。

発酵と酵素

よく誤解されているのは、発酵と酵素の関係です。

発酵とは

発酵とは、微生物を利用して、食品を製造することを言います。
発酵食品とは、イースト・麹や乳酸菌などの発酵菌(真菌・細菌)を使用して発酵させた食品です。

お酒やパン、ヨーグルト、チーズ、糠漬け、納豆など、みなさんおなじみですね。

発酵で発酵菌が作り出して利用するのも酵素です。

図 イラスト 米のでんぷんから麹菌と清酒酵母で日本酒を作る 酵素 アミラーゼ ピルビン酸デカルボキシラーゼ ブドウ糖
発酵で日本酒を作る仕組み

例えば、日本酒を作るとき


日本酒は、
①麹菌と呼ばれる発酵菌が、アミラーゼを作り、お米の中のでんぷんをブドウ糖に分解して、
②ブドウ糖を今度は清酒酵母という発酵菌がピルビン酸デカルボキシラーゼなどを使ってアルコールと二酸化炭素に分解して作ります。

日本酒は2種類の発酵菌を使って作られるのですね。

発酵で細菌はエネルギーを作っている

このように、発酵菌が生み出した酵素で発酵菌の食べ物を分解する化学反応を触媒して、このときに出るエネルギーを発酵菌自身が利用することが発酵なのです。

その結果できたもの(生成物)を我々は食品として利用しているわけです。

ちなみに、発酵菌が酵素を使って「発酵菌にとっての食物」を分解することで、人間がその生成物を利用できる場合を『発酵』と呼び、生成物の多くが毒性を持ち、人間が利用できない場合を『腐敗』というのです。

発酵食品は身体に良い?

発酵食品は体に良いといわれていますが、現時点ではこれも根拠が曖昧です。
ヨーグルトや味噌、漬物、納豆などの乳酸菌や麹菌、納豆菌が腸内菌叢を整えて、免疫力を増強させる可能性も指摘されていますが、科学的に十分には解明されていません。
人によっては、発酵食品が下痢や便秘の原因になることもあるようです。
発酵食品と腸内菌の関係については、充分な科学的な解明を待たないと、良いとも悪いとも言えません。

酵素については、あたかも発酵食品の中に入っている酵素が良さそうに思えますが、先ほどお話ししたように、発酵食品の中の酵素も、食べれば分解されますので、酵素としては吸収されません。

「酵素栄養学」などに基づいて「酵素が入っているから身体に良い」と宣伝する健康食品、サプリの類は、すべて信じない方がよさそうです。

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