食物繊維が豊富な野菜や全粒粉もその1つでしょう。
今の日本人の食生活では食物繊維が足りない、と言われて、努力して野菜ばかり食べたり、場合によっては食物繊維のサプリをお使いの方もいらっしゃるかもしれません。
食生活や運動習慣に気をつけて、実践して、いつまでも元気でいることはとても素敵なことです。
でも、情報を吟味しないで、そのまま鵜呑みにすると、せっかくの努力が無駄になりかねません。
食物繊維や全粒粉の効果的な利用方法
今日は、食物繊維や全粒粉のより効果的な利用方法についての研究を2つご紹介します。1つ目の研究は、
2型糖尿病を予防するには食物繊維をどの食物(野菜、果物、穀物)からどのようにとればよいのかについての研究です。
⇒ Matthias B. Schulze et al. Fiber and Magnesium Intake and Incidence of Type 2 Diabetes A Prospective Study and Meta-analysis. Arch Intern Med. 2007;167(9):956-965. doi:10.1001/archinte.167.9.956.
【研究の方法】
- 健康な人の食生活を調べて、その後その人たちが2型糖尿病になったかどうかを追跡調査した研究をデータベースで検索して
- そのなかで、食物繊維をどの食物(野菜、果物、穀物)からどれだけ摂っっていたかと、糖尿病の発病の関係を調べていた信頼性の高い研究を9つ選んで、まとめて統計学的に分析した。
【研究の結果】
- 穀物から摂った食物繊維の量が多い人では、2型糖尿病の発病が予防できる。
- 野菜や果物から摂った食物繊維の量が多い人では、2型糖尿病の発病が予防できない。
と分析できた。
いかがでしょう。
食物繊維を摂れば身体にいいという先入観がありませんか?
穀物からの食物繊維が多いということは、パンであれば全粒粉などの精製度の低い小麦粉を使ったパンを多く食べていたということです。全粒粉は絵のように、胚乳、胚芽、表皮(ふすま)を全部粉にしています。
胚乳には糖質が、ふすまには食物繊維が多く含まれます。
つまり、糖質を摂るときに、一緒に食物繊維を摂ることが大切なようです。
食物繊維を糖質と一緒にとれば、食物繊維が糖質の消化・吸収を遅らせて、血糖値の急激な上昇を抑える効果があると考えられます。
野菜や果物をたくさん食べて食物繊維を摂っても、2型糖尿病の予防の効果がみられなかったということは、野菜や果物を単独で食べても、糖質と一緒に摂らなければ食物繊維の血糖値への効果が発揮されないということです。
例えば、食物繊維を多くとろうと思って、サラダや温野菜だけをたくさん昼食で食べても、夕食に糖質の多い食事をして、同時に食物繊維を摂らなければ、1日の食物繊維の摂取量は増えるかもしれませんが、夕食時の急激な血糖上昇は防げないわけです。
この研究からわかることは、
- 糖質を摂るときに食物繊維を一緒に摂るのが良い
- 野菜や果物などを単独で多く食べても2型糖尿病の予防にはならない
- 食物繊維のサプリメントを使うなら、食事と一緒に摂るのがよさそう
ということですね。
食品を加工しすぎるのは危険?!
次の研究は、同じ小麦粉でも、製粉の仕方によって血糖値の上がり方が変わるというものです。⇒Cathrina H Edwards, et al. Manipulation of starch bioaccessibility in wheat endosperm to regulate starch digestion, postprandial glycemia, insulinemia, and gut hormone responses: a randomized controlled trial in healthy ileostomy participants. Am J Clin Nutr doi: 10.3945/ajcn.114.106203.
【研究の方法】
- 研究の参加者は、ストーマ(お腹に便を排泄する人工的な排泄口)を持つ健康な9人。
- 9人をランダムに、①2mmの粒子になるように小麦の胚乳を製粉した小麦粉(粗挽き)で作ったお粥、②0.2mmの粒子になるように製粉した小麦粉(普通の小麦粉)で作ったお粥を食べるグループに割り付けて、
- 少なくとも1週間、お粥を食べてもらって、血糖値やインスリンの値を測定し、
- そのあと、同じグループで①と②を入れ替えて1週間お粥を食べてもらって、血糖値やインスリンの値を測定しそれぞれ比較した。
【研究の結果】
粗挽き小麦粉のお粥を食べた人は、通常の小麦粉のお粥を食べた人に比べて、
【研究から考えられること】
いかがですか?
製粉技術が未熟だった頃には、全粒でしかも粗挽きの小麦粉で焼いたパンなどを、ゆっくり噛んで食べていたでしょう。
玄米飯も噛んで飲み下すのに時間がかかります。
こうした食事では、消化に時間がかかるために、食後の急激な血糖値の上昇が抑えられると考えられます。
食後に急に血糖値が上がってしまうことをグルコーススパイクとか食後高血糖と呼び、動脈硬化などの原因になるとされます。
⇒グルコーススパイクに注意
砂糖や糖類や、みりんやケチャップなど糖類を含む調味料で味付けした食品、加糖飲料や、精製度の高い主食(白飯、パン)、粥、スムージー、麺類(うどん、中華麺、つなぎの多い日本蕎麦)、片栗粉や小麦粉でトロミをつけた料理や流動食などは、消化・吸収が速やかです。
同時にこれらの食品は柔らかく、喉ごしが良く呑み込みやすいものです。
私たちエバーグリーン研究室では、これらに多く含まれる、単純糖質(遊離糖質)を「効率の良すぎる速い栄養素」と呼んでいます。
⇒吸収が速い栄養素は老化を進める?
消化の手間がなく単純糖質を吸収できる食品・飲料や、加工・調理法が、血糖値上昇にとって危険であると言えるでしょう。
永い進化の歴史から見れば、「効率の良すぎる速い栄養素」がふんだんに食べられるようになったのはごく最近のことに過ぎません。
我々の身体と遺伝子は、「効率の良すぎる速い栄養素」にまだ対応できていないと考えます。
⇒短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
粗挽き小麦粉のお粥を食べた人は、通常の小麦粉のお粥を食べた人に比べて、
- 食後2時間以内の血糖値の上昇が33%抑えられた。
- インスリンの分泌も43%抑えられた。
- インスリンの過剰な分泌による「低血糖」の状態を起こすことも少なかった。
- ストーマからの小腸の内容物を調べると、未吸収の小麦粉の大きな粒子が沢山残っていた。粒子が大きいほど天然の細胞壁の構造(食物繊維)がより多く残されていた。
【研究から考えられること】
- 粗挽きも粗挽きでなくても、小麦粉の成分は全く同じなのに、粗挽きだとでんぷんの消化・吸収の速度が遅くなって、急激な血糖値の上昇を抑えられると考えられる。
- 小麦は植物なので、細胞壁があり、でんぷんの周りを細胞壁=食物繊維で取り囲まれている。普通に挽かれた小麦粉は細胞壁=食物繊維が破壊されているため、でんぷんは速やかに消化されて糖類になり、吸収されて、血糖値が急速にあがる。
- 天然の食物繊維の構造を破壊しないような製粉(製造法)によって、食後の血糖値の上昇を抑えることができそうだ。
いかがですか?
速い栄養にご注意
全粒粉、大豆、ふすまで作ったパン |
玄米飯も噛んで飲み下すのに時間がかかります。
こうした食事では、消化に時間がかかるために、食後の急激な血糖値の上昇が抑えられると考えられます。
食後に急に血糖値が上がってしまうことをグルコーススパイクとか食後高血糖と呼び、動脈硬化などの原因になるとされます。
⇒グルコーススパイクに注意
砂糖や糖類や、みりんやケチャップなど糖類を含む調味料で味付けした食品、加糖飲料や、精製度の高い主食(白飯、パン)、粥、スムージー、麺類(うどん、中華麺、つなぎの多い日本蕎麦)、片栗粉や小麦粉でトロミをつけた料理や流動食などは、消化・吸収が速やかです。
同時にこれらの食品は柔らかく、喉ごしが良く呑み込みやすいものです。
私たちエバーグリーン研究室では、これらに多く含まれる、単純糖質(遊離糖質)を「効率の良すぎる速い栄養素」と呼んでいます。
⇒吸収が速い栄養素は老化を進める?
消化の手間がなく単純糖質を吸収できる食品・飲料や、加工・調理法が、血糖値上昇にとって危険であると言えるでしょう。
永い進化の歴史から見れば、「効率の良すぎる速い栄養素」がふんだんに食べられるようになったのはごく最近のことに過ぎません。
我々の身体と遺伝子は、「効率の良すぎる速い栄養素」にまだ対応できていないと考えます。
⇒短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
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