いきいき!エバーグリーンラブ: 8月 2015

2015年8月25日火曜日

レシピ*トマト&ワインゼリー

ワインとトマトで作る、大人向きの低糖質ゼリーです。

ワインの味が強すぎるかな、と思われる方は、白ワインを半分、水にしてください。


【材料】(5~6人分)
  • ミニトマト   15~20個
  • 赤ワイン   100㏄
  • 白ワイン   200㏄
  • 液体ラカント    大さじ3
  • しょうがおろし汁  小さじ1/2
  • レモンスライス   3枚
  • ゼラチン       5g
  • 水(ゼラチン用)  大さじ2      
【作り方】
  1. ミニトマトのへたを取って、取ったへたのあとに穴をあける
  2. 1に熱湯をかけて30秒おいてから冷水にとり、皮をむく
  3. ゼラチンを水でふやかす
  4. レモンスライスは、1/4くらいに切る
  5. レモンとミニトマト以外の材料を鍋に入れて火にかけ、よく混ぜる
  6. 沸騰したらミニトマトとレモンを入れて一煮立ちさせ、火を止める
  7. 器に入れて冷ます
  8. 冷めたら冷蔵庫へ

甘さ控えめなので、お好みで液体ラカントをかけてお召し上がりください。

トマト水
ラカントはできれば液体のものを使ってください。
粉末だと、冷えたとき結晶が出てきてしまいます。


トマトにはカリウムがたくさん含まれるので、塩分をたくさん摂りがちな暑い季節にピッタリです。

抗酸化物質も多いので、日焼けによるシミ、そばかす対策にもお勧めです。

2015年8月21日金曜日

運動すればボケを防げる!

いつまでも健康で楽しく人生を送ることを目指して、エバーグリーン研究室は活動していますが、健康でいることの最終目標は、元気ボケずに老年期を過ごして穏やかな最後を迎えることにあると思います。

知り合いの医師たちは、ほとんどの患者さんが、
「自分は重い病気にならない」
「自分はがんにはならない」
と思っていると口を揃えていいます。
みな病気の怖さはなんとなく知っていても、自分は例外と思いがちなのです。

生活習慣を改善すれば、認知症にならない

不健康な生活習慣が原因になることが多い高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病や、喫煙による肺疾患、アルコール過飲による肝臓・膵臓疾患、がん、など、日本の人口が高齢化すればするほど、病気になる確率は高くなります。
やはり、避けられる病気は、できる限り生活習慣を改善して、回避することが大切です。

運動, 運動不足, 有酸素運動, 認知症, 筋トレ, 筋肉, 認知機能,
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症、730万人!
認知症の原因はまだよくわかっていませんが、高血圧や糖尿病の患者さんに認知症が多いことがわかっていますし、脳卒中を起こした人は認知症になりやすいこともわかっています。
つまり、生活習慣の改善で、認知症も防げるということです。

自分だけは認知症にはならない、と思っていませんか?

図を見てください。

あと10年後にはなんと65歳以上の5人に1人が認知症という予測されているのです。
私もあと約15年で65歳になりますので、とても他人事ではありません。

では、どうすればよいのでしょうか?

そのヒントとなる研究結果が報告されましたので、ご紹介しますね。

運動は高齢者の認知機能(脳機能)を良くする


Eric D. Vidoni et al. Dose-Response of Aerobic Exercise on Cognition: A Community-Based, Pilot Randomized Controlled Trial. PLoS ONE 10(7): e0131647. doi:10.1371/ journal.pone.0131647


【研究の方法】
  • 認知機能に問題のない65歳以上の101人の高齢者をコンピューターソフトで、下記の4つのグループにランダム(無作為)に分けた。
  1. 特別に運動をしないグループ
  2. 中等度の運動を週あたり150分程度行うグループ
  3. 中等度の運動を週あたり75分程度行うグループ
  4. 中等度の運動を週あたり225分程度行うグループ
  • 研究の開始時に参加者の心肺機能と脳機能をテストして測定した。
  • 研究参加者は26週間、それぞれのグループの運動を続けた。
  • 研究参加者は研究の終了時にも同じテストをして、それぞれの成績を比較した。
  • 脳機能は言語の記憶、視覚空間認知機能、注意力・集中力、問題への柔軟性・対応力、論理力・推察力の脳機能についてテストした。

【研究の結果】
  • 中等度の運動を行う2、3、4のどのグループでも、程度の差はあるが、脳機能が改善した。
  • なかでも、特に4の週あたり225分運動行うグループは、視覚空間認知機能の成績が良くなった。この機能は、物体がどこにあるかを理解し、そこまでの距離などの見当をつける能力。
  • 注意力・集中力も2、3、4のどのグループでも改善していた。         

【研究から考えられること】
  • 脳の機能は、運動量が多いほど改善する傾向があった。
  • しかし、単純に運動量を増やすため運動時間を長くすればいいのではなく、運動時間よりも運動の強度のほうが大切である可能性がある。
  • 運動に慣れてきて、以前の運動の強度が楽に感じるようなら、ダンベルを重くするなど運動の強さをだんだん上げていかないと、脳機能の改善には効果が発揮されないと考えられた。

いかがでしょう?

運動で脳機能が改善するなんて、とても心強いですね。
認知症を予防するには、運動は欠かせないようです。

運動のステップアップが脳の快感に

筋トレをしているとわかりますが、たとえばダンベルの重さを慣れに従って少しずつ重くしていかないと、筋肉は付いてきません
また、骨折などで動けない期間など、身体の機能を使わない期間があると、筋肉をはじめとして、体の機能はどんどん落ちていきます。

⇒筋肉を保つためにはどの程度の運動が必要か
⇒筋肉を維持するにはどうすれば良いか

身体の機能を使わない期間が長い寝たきりの患者さんなどでは、廃用症候群といって(生活不活発病ともいいます)、筋肉が大幅に落ちて、床ずれがでてきたりして、身体の機能がどんどん落ちていくのですが、身体の機能だけでなく、精神的な機能も落ちることが知られています。

運動と脳機能の関係もきっと同じですね。

運動を始めて、慣れてきたころに、さらに強さを上げて運動することで、目標を達成した快感を繰り返し得ることができます。
これが脳にとって刺激になるのでしょう。
刺激を受け続けることが、脳の機能を維持するカギなのでしょうね。

身体の運動や、脳の運動も続けて、その強度を上げていくことは、言い換えれば、チャレンジし続けることです。



 重い植木鉢を力いっぱい押しのけて障害物を乗り越え、達成感に浸る 
エバーグリーン研究室所属リクガメ うらら研究員(愛称:うらちゃん)
カメにも運動は欠かせない。リクガメの空間認知機能は優れている。



こうすることで、我々は歳をとっても常に新たな目標を得ます。
理想の体型に一歩ずつ近づく。
素敵なことです。
目標に向かって、ささやかにでも努力を続ければ、体はそれに応えて機能を維持してくれるようです。

また、慣れてくれば、運動の後の爽快感は格別です。
この爽快感は、運動により脳の報酬系が活性化されドパミンが分泌されるためです。
報酬系は、目標を定め、努力して、それを達成することで活性化されます。
この達成感は、アスリートはみな経験しています。

運動を習慣化すれば目標ができて、ストレスを解消でき、かつボケ防止にも役立つ。

もう運動しない手はありませんね。

2015年8月16日日曜日

レシピ*ミントのうがい薬

以前、レモンの皮を乾燥させて煮出して作ったうがい薬を紹介しました。
あれは、とてもよかったのですが、作るのが面倒という大きな欠点がありました。

今回は、もっとお手軽にできるうがい液をご紹介します。

ベランダで育てているミントが、どんどん大きくなるのだけど使い道がない、という方、必見です。

ただし、のどの痛みをとる、というような薬効のあるうがい薬ではありません。
気もちよくうがいをすることが目的です。

ミント水で口臭防止、汗も対策

【材料】
ミントの葉    4枚くらい
浄水       1L

【作り方】
1.ミントの葉と浄水をミキサーに入れて混ぜる

2.1を茶こしで濾す

【使い方】
朝、ピッチャー1杯のミント水を作って、洗面所に置いておきます。
色が爽やかで、香りも良いので、まめにうがいをしようという気分になれます。

口臭防止には、良いと思います。
ハッカのような、すうっとする感じがあるかというと、微妙ですね。

ミントの成分

ミントにはたくさんの種類があります。
よく見るのは、ペパーミント、スペアミント
ハッカも日本産のミントです。
我が家にあるのはスペアミントです。

ペパーミントの主成分はハッカと同じl-メントールで、スペアミントの主成分はl-カルボンです。

構造式はとてもよく似ています。
香りも効用もよく似ています。

ペパーミントの方が、すうっとする効果は高く、
スペアミントの方が甘い香りがするそうです。
スペアミントは、モヒートなどのアルコールに入れるのに適しているというので、偶然ですが、スペアミントを選んでよかったなと。

ミントの効果

効能としては、ペパーミントもスペアミントも、香りでリラックスするほか、炎症を抑える作用、殺菌作用、消臭作用などがあるといわれます。

とはいっても、どのくらいの量をどうやって使うかまでは調べられませんでした。
うがい液はとても薄めているので、効能といえば、口をすすげばすっきりするくらいでしょうか。

私はあせも対策に、汗をかいた後、コットンに浸して拭いています。
これはさっぱりします。
ただの水と違いがあるかどうかは、検証できませんが。

ミント水はきれいなので、洗面所に置いてあると、まめにうがいをしたり、汗を拭いたりする気になる、というのが最大の効果ですね。

市販のうがい薬は使わない方がいい

レモンの皮とハッカ油でつくったうがい薬はこちら
ここからは、レシピ*うがい薬で書いたことですが、知っておくとよいと思いますのでもう一度書きます。

市販のうがい薬の成分を見ると、大きく2種類に分かれます。

殺菌成分として、ポビドンヨードを含むものとセチルピリジニウムを含むものです。
色がついていたらポビドンヨード、透明だったらセチルピリジニウムです。

ポビドンヨードは強い殺菌作用を持っていて、細菌やウイルスを壊します。
もう少し詳しく説明すると、ポビドンヨードヨウ素とポリビニルピロリドンでできていて、ヨウ素の酸化作用でタンパク質を変性させます。
タンパク質は、細菌や一部のウイルスの構成成分なので、ヨウ素で細菌やウイルスを殺すことがでるわけです。

でも、よく考えてください。
ヒトののどの粘膜の細胞膜にだって、タンパク質があります。
ということは???


セチルピリジニウムは第四級アンモニウムと呼ばれる化合物で、ヨウ素と同様にタンパク質を変性させると考えられます。
私は、セチルピリジニウムの入ったトローチを2日くらい使ったら、口内炎ができてしまいました。
トローチを使うときは、気を付けてください。
トローチ、咳止めについてはこちらをご覧ください

口内炎の薬にも入っていることがありますが、これは使わない方がよいでしょうね。


参考まで・・・

ヨード液は使わない方がうがい効果が高い

「うがいをしない群」「水うがい群」「ヨード液うがい群」に割り付けて、うがいの風邪予防効果を調べた実験があります。

その結果は、水うがいには効果があったけれど、ヨード液うがいうがいをしないのとかわらなかった、というものでした。
というわけで、実はうがいは水で十分なのです。

緑茶だと、さらに効果的だとも言われています。
実は、ミント水に緑茶を入れてみたのですが、すぐに色が変わってしまい、そのうえ、時間が経つと渋みが強くなってしまいました。





2015年8月6日木曜日

ピロリ菌は除菌して大丈夫??

ヘリコバクター ピロリって、よく聞きますね。
H.ピロリとか、ピロリ菌と書かれていることも多いです。

胃がんの原因になるといわれて有名になりました。
このピロリ菌が胃の粘膜の中に棲みついてしまうと、胃潰瘍になったり、胃がんになったりする。
だから、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などのある人の胃の中に見つけたら“除菌”しようということで、病院ではピロリ菌除菌用のお薬パックを処方します。

パックにはなっていないけれど同じ作用を持つ薬剤を組み合わせて使うこともできますが、ここではパックを中心に説明します。

ピロリ菌除菌に使われる薬

このお薬パックには、1次除菌用と、1次除菌が効かなかったときの2次除菌用の2種類があり、それぞれ2つの製薬メーカーから、発売されています。
  • 1次除菌用:ランサップ(武田薬品工業)、ラベキュアパック(エーザイ)
  • 2次除菌用:ランピオンパック(武田薬品工業)、ラベファインパック(エーザイ)

どれも、胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬の3剤がパックになっていて、1日2回、1週間飲みます。

抗菌薬は強い酸性の胃の中では効きにくいため、胃酸を抑える薬で胃の中を中性に近づけてから、抗菌薬を効かせるわけです。

パックに入っている薬は次の通り。

1次除菌用
  • ランサップ :ランソプラゾール(胃の薬)アモキシシリンクラリスロマイシン(抗菌薬)
  • ラベキュアパック :ラベプラゾール(胃の薬)アモキシシリンクラリスロマイシン(抗菌薬)

2次除菌用
  • ランピオンパック  :ランソプラゾール(胃の薬)アモキシシリンメトロニダゾール(抗菌薬)
  • ラベファインパック :ラベプラゾール(胃の薬)アモキシシリンメトロニダゾール(抗菌薬)

1次除菌用の2つのパックを見てみると、胃の薬以外は同じ抗菌薬が入っています。
2次除菌用も一緒。

1次除菌用と2次除菌用の違いは、抗菌薬のクラリスロマイシンが、メトロニダゾールになっているところ。
同じピロリ菌でも、クラリスロマイシンが効かなくなっているものもいるので、その時にはメトロニダゾールでもう一度チャレンジする、というシステムです。

ただし、メトロニダゾールは細菌だけでなく、原虫と呼ばれるようなもっと大きな生物にも効果を示します。
副作用も現れやすいので、できれば1次除菌だけで解決させたいですね。

そのためにも、薬はきちんと決められた通りに飲むようにしましょう。

ピロリ菌除菌が保険で認められている疾患

薬でピロリ菌を除菌する治療が保険で認められているのは、次の通り。

  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 胃MALTリンパ腫
  • 特発性血小板減少性紫斑病
  • 早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、ピロリ菌除菌で再発する可能性が低くなります。
特発性血小板減少性紫斑病は難治性の病気ですが、理由はわかりませんがピロリ菌除菌で改善することがあります。

ただの胃炎や、いつも胃の具合が悪い程度の症状であれば、除菌治療は保険では認められていません。
これは、次に説明する、常在菌や耐性菌のことを考慮すれば、妥当な適応だと思います。


ピロリ菌感染が胃がんの主な原因と考えられることから、ピロリ菌感染がみられたら、誰でも直ちに除菌するのがよいのではないか、という意見もあります。

ピロリ菌を除菌することに何の問題もないとすれば、この意見はごもっともです。
しかし、抗菌薬をたくさん使うことには、色々な意味で問題があります。

ヒトの体の中で今、生きている100兆を超える細菌を、その一部であるとはいえ、安易に殺してしまっても、身体は大丈夫なのでしょうか。

ここからは、ピロリ菌を例に、抗菌薬を使うことの弊害を考えてみます。

抗菌薬 使い過ぎの弊害

抗菌薬が他の薬と違う点は、生き物を殺す作用を持つというところにあります。

もちろん、ヒトに害がないように、細菌にあってヒトにないもの・・・細胞壁とかDNAを作る酵素とか・・・をターゲットにした殺菌力を持つように作られています。


抗菌薬はたくさんの種類の菌に効かないものを選ぶのが原則

まずは、数多い抗菌薬のどれを選ぶか、という考え方をお話しします。

抗菌薬は何の菌にでも効果がある方がいい薬、というイメージがありませんか?
これは間違いです。

抗菌薬は、目的とする細菌以外は殺さない作用をもつものを選ぶのが正解。
ピロリ菌を除菌したければ、なるべくピロリ菌以外の菌には効かない抗菌薬を選びます。

理由は2つあります。

理由1 常在菌を殺さないようにするため

私たちの体の中・・・特に腸管の中には、私たちになくてはならない細菌がたくさん棲みついています。
これらの細菌を常在菌といいます。

身体に良い菌を善玉菌、身体に悪い菌を悪玉菌とする呼び方がありますが、これはあまり正確ではありません。
なぜならば、同じ細菌でも、体調や細菌の数や、身体のどの部分にいるかによって、身体に良い菌として働いたり、悪い菌として働いたりすることがあるからです。
除菌は人類を滅ぼす?

何の役にも立っていないように見えて、実は、重要な役割を担っている菌もたくさんいます。

腸内細菌が免疫のシステムを作る話はこちらをご覧ください。

色々な細菌に効く抗菌薬を使ってしまったら、身体に必要な常在菌まで殺してしまうことになります。

抗菌薬を飲むとおなかをこわすことがありますね?
あれは、抗菌薬が必要な常在菌を殺してしまって、腸が正常に働けなくなってしまった結果です。

理由2 耐性菌を作らないため

耐性菌って聞いたことはありますか?

細菌Bに対して抗菌薬Aがはじめは効いていたのに、使っているうちに効かなくなってきた場合、
細菌Bは抗菌薬Aに耐性化した
といい、
細菌Bは抗菌薬Aに対して耐性菌になったと考えられます。

細菌が耐性化する仕組み

例えば、細菌Bが抗菌薬Aに耐性化する仕組みをみてみましょう。

細菌Bの中には、抗菌薬Aがとてもよく効くタイプもいれば、あまり効かないタイプもいます。

細菌は人間と比べてかなり頻繁に増殖します。
人間はせいぜい30年に数人子供を産む程度ですが、大腸菌は条件が良い場合20分に1回分裂する、つまり子孫を増やしています。

遺伝子は、増殖する際に間違ってコピーされることが多く、このコピーミスが違った性質の子孫を作ることになります。
ですから、増殖の機会の多い細菌は、ちょっと性質の違う子孫ができる確率がヒトより高くなります。


抗菌薬が細菌を耐性化する仕組みのイラスト 耐性菌を作らないようにするために抗菌薬の使用はよく考えて。ピロリ菌除菌 抗生物質の正しい使い方 イラスト 
右の図を見てください。

細菌Bが増殖したところへ抗菌薬Aを投与したとします。
細菌Bは、中でも抗菌薬Aがよく効く性質をもったものから順に死んでいきます。

抗菌薬Aがよく効くことを「抗菌薬Aに感受性が高い」といいます。

何回か抗菌薬Aを投与すると、抗菌薬Aが効きにくい性質を持った細菌B、つまり、耐性化した細菌Bだけが生き残った状態になります。

この段階で抗菌薬Aの投与をやめるとどうなるでしょう。
抗菌薬Aに耐性化した細菌Bには、周囲に競合する細菌Bがいなくなりましたから、抗菌薬A耐性細菌Bばかりが増えます。

そして、次に細菌Bが増えすぎて肺炎の症状を起こした時には、抗菌薬Aを投与しても効果が得られなくなってしまいます。


医師や薬剤師から、抗菌薬を決められた期間、きちんと飲むようにと言われたことはありませんか?
それは、中途半端に感受性の高い菌だけを殺して、耐性化することのないようにするためです。

とはいっても、やっぱり耐性化は防げないようで、ピロリ菌の除菌に用いるクラリスロマイシンもメトロニダゾールも、耐性化が進んでいることが実験で確かめられています。
Sasakiら:J Clin Biochem Nutr 2010; 47:53-58
和田真太郎他 感染症学雑誌 77(4); 187-194

どんな菌にでも効く抗菌薬が必要な場合

「特定の細菌にしか効かない抗菌薬を選ぶ」という原則には例外があります。

お腹をこわしたり、肺炎になったりしたときなど、原因の細菌が何かを調べるのを待っていられないこともあります。
原因の細菌は、痰や便を調べることで確認することができますが、何日か時間がかかってしまいます。

こういうときに限って、何にでも効く抗菌薬をとりあえず飲むことになります。

これを「エンピリックセラピー」といいます。

インフルエンザに罹ったときには、10分くらいで簡単に調べて薬を処方されますが、インフルエンザは患者さんがたくさんいるので、検査薬メーカーもがんばってインフルエンザウイルス用に特別な検査薬が開発したのですね。

ピロリ菌ワクチンは必要??

現在、中国ではピロリ菌を感染させないためのワクチンの開発が進んでいます。

6~15歳の小児4,464例を対象に、ワクチン投与群とプラセボ(偽薬)投与群とを3年間フォローした結果、ピロリ菌感染がみられた人数は次の通り。
  • プラセボ群:2年目22例、3年目13例
  • ワクチン群:2年目10例、3年目6例
Lancet. 2015 Jun 30. pii: S0140-6736(15)60310-5.

さて、ここからはみなさんに考えていただきたいことです。
このワクチンを使うべきかどうか。

衛生状態が良くなったことで、ピロリ菌の感染者は減少したと考えられています。
また、ピロリ菌が原因で胃がんが発症するのは高齢になってからです。

ということは、近年までほとんどの人は生まれてすぐにピロリ菌に感染し、感染したまま60歳程度の天寿を全うしていたということになります。

これは、ピロリ菌と人間がお互いに持ちつ持たれつの共生関係を保っている証拠なのではないでしょうか。

ピロリ菌除菌で食道がんにはなりやすくなる

ピロリ菌除菌によって発症率が高くなる病気もあります。
食道がんがその一つ。

ピロリ菌は胃の中で、胃酸という強力な酸の中で生息しています。
これは、ピロリ菌が胃粘膜にある尿酸を塩基性のアンモニアに変えるウレアーゼという酵素を分泌して、胃酸を適度に中和して住みやすくできるためです。

ピロリ菌はウレアーゼのほかにもCagA(カグエー)など、色々なタンパク質を出すのですが、これらが胃粘膜に炎症を起こします。
この炎症が何十年もの長期間続くことで、がんが発症すると考えられています。

さて、食道について考えてみましょう。
健康な人でも、胃の中のものが食道に入ってきてしまうことがありますね。
この時、胃の中の強い酸は、食道の壁を攻撃してしまいます。

ピロリ菌が胃の中にいれば、ウレアーゼが胃酸を中和してくれることで、食道に胃の中のものが逆流した時にも、強い酸が食道に触れずにすみます。

つまり、図らずもピロリ菌は胃酸から食道を守る働きをしているわけです。

ピロリ菌感染で、免疫の働きが鍛えられる

ピロリ菌が感染している人は、小児ぜんそく、アレルギー性鼻炎、皮膚アレルギーなどの疾患に罹る割合が低いことも報告されています。
Yu Chen and Martin J.Blaser  Journal of Infection Diseases 2008; no.4: 198

さらに、乳児期にピロリ菌に感染することで、ピロリ菌に対して強い炎症反応を起こさなくなることも確認されました。
A.Amberbir et al. Clinical and Experimental Allergy 2011; no.10: 41

つまり、3歳くらいまでにピロリ菌に感染していれば、年をとってから胃の中にピロリ菌がいたとしても強い炎症が起こらないからがんにならない。
さらに、喘息や花粉症、アトピーなどの免疫が過剰に働いてしまう病気にもならない、ということです。

これは、細菌がヒトの体の中に棲むことで、ヒトの免疫反応が教育されて、「ほどほどに外敵と闘う力」を身につけるためと考えられます。

衛生的な環境が整うまでの何100万年という歳月の中で、ヒトは様々な細菌と出会い、お互いに一番うまく生き抜く方法を作り上げてきたのです。
いきなり環境が変わっても、100年足らずの年月で簡単には適応できません。

抗菌薬で常在菌を殺すのは、身体に優しくない

ヒトの体からいなくなったのはピロリ菌だけではありません。
私たちのおじいさん、おばあさんの時代ですら、お腹の中に寄生虫がいたり、頭にシラミがいたりするのが当たり前でした。

水洗トイレができて、ごみの回収が徹底されて、快適になった暮らしは、もう元には戻せませんね。
寄生虫も、シラミも勘弁・・・です。

天然痘やはしかのように、致死率の高い感染症がワクチンで防げるのもありがたいことです。

一方で、こうして一つひとつきれいに、安全にするたびに、他の危機・・・アトピー性皮膚炎や喘息、花粉症など・・・が生まれます。

と、考えると解決策は思い浮かびませんが、せめて、過剰な抗菌薬の使用だけは避けたいものです。

風邪の原因はほとんどがウイルス。
抗菌薬は効きません。

抗菌薬を飲むこと=薬で過剰に菌を殺すことのデメリットをしっかり考えて、薬を使いましょう。

といっても、自分で判断するのは難しいですから、風邪で医師から薬を処方された時、
「この中に抗菌薬はありますか?
私の症状には、抗菌薬が必要ですか?
と聞いてみてください。

医師の中には、抗菌薬を処方しないと患者さんが満足しないと思って、効かないと思いながら処方している方もいます。



もちろん、先に書いたピロリ菌除菌の適応に相当する方・・・放っておくと胃がんになる可能性の高いような方には、除菌することをお勧めします。


ピロリ菌について、詳細を知りたい方は
JACRI 日本臨床検査薬協会のウェブサイトがわかりやすいです。
寄生虫なき病
参考図書
モイセズ・ベラスケス=マノフ/著 赤根洋子/訳 福岡伸一/解説『寄生虫なき病』 文芸春秋 2014年3月発行


2015年8月1日土曜日

レシピ*暑さ対策、トマト水

「熱中症にならないように、水分は十分摂りましょう」
とよく言われます。

でも、お店で売っているスポーツドリンクでは糖質が多すぎるというお話をしました。
スポーツドリンクで糖尿病に?

そこで、薄めのトマトジュースを作ってみました。
実は、私は市販のトマトジュースは好きではないのですが、これは爽やかで美味しいです。

【材料】
  • トマト   小1個(約100g)
  • 水+氷  700mL
  • お好みでバジル 1/3枚
  • 汗をかいたなと思ったら、塩  1g
(塩は、小さじ1=6g なので、1gは小さじ1/6)

【作り方】
  • 材料を全部、ミキサーに入れて混ぜる

バジルは入れない方が色はきれいです。
塩は、汗をかいたときの塩分補給を目的として入れているので、必要がないと思われれば入れなくても美味しいです。

「塩分補給」とはいっても、塩分はほどほどに

熱中症の時には「水だけ飲んでも汗で出てしまった塩分やミネラルが不足してしまうので、塩分やミネラルも補いましょう」といわれますね。
そのようなときには、OS-1のような経口補水液が役に立ちます。

脱水で身体がだるいときには、胃腸炎にアミノ酸スープをお試しください。

でも、特に運動をしたわけでもなく、暑くて汗をかいた、というくらいでOS-1を飲んでしまったら、塩分も糖分も摂りすぎてしまいます。

通常の水分補給ならばお水でもお茶でも十分なのですが、ジュースやスポーツドリンクのような味のある飲み物がほしいときもあります。

こういうときの水分補給に、ミネラルやビタミン、アミノ酸も摂れるトマト水が活躍します。

二日酔いにもいけます。
二日酔いには、塩が入っている方が良いようです。

夏にはトマトでカリウム摂取

化学的に考えても、トマト水はお勧めです。

私たちの体では、ナトリウムとカリウムが上手にバランスを取って働いています。
カリウムは野菜や果物、海藻などの食材で、ナトリウムは主に調味料や海産物で摂っています。

生物の祖先は海でうまれて、そのあと陸に上がったことを思い出してください。
植物も動物もナトリウム豊富な海水中の環境から、ナトリウムが摂りにくい陸棲の環境に変わりました。

ですから、生き物にとってナトリウムは大切な成分であるにもかかわらず、野菜や肉類などの中に、ナトリウムはあまり含まれていないのですね。

「敵に塩を贈る」のことわざがあるように、「塩」などのナトリウム豊富な調味料が人工的に簡単に作られるようになるまでは、ナトリウムは私たちにとって貴重な物質でした。

ちなみに、「敵に塩を贈る」は、戦国時代、海のない甲斐の武田氏が、遠江の今川氏と相模の北条氏の経済封鎖で塩不足になったとき、敵対していた上杉謙信が武田信玄に塩を送ったことに由来するそうです。

身体は、この貴重な物質を簡単に排泄してしまわないようなシステムを作っています。

もう少し詳しく説明すると・・・
ナトリウムもカリウムも、主に腎臓から尿として排泄されます。
腎臓は、一旦、血液を大雑把に濾してから、必要な成分を選んで血液中に取り込み直す作業をします。
ここで、多くの場合は、ナトリウムは取り込み直す成分、カリウムは排泄する成分とみなされます。

ところが、現代では、塩分は簡単に摂取できるようになったために、ナトリウムを摂りすぎる食生活になってしまいました。
ナトリウムとカリウムのバランスを取るためには、カリウムを多く摂ることを心がける必要が出てきました。

特に夏は汗と一緒にナトリウムが出てしまうので、無意識に塩辛いものを多く摂りがち。
トマトにはカリウムがとてもたくさん含まれるので、カリウム補給にピッタリなのです。

トマト水の成分

トマトには、βカロチン、ビタミンE、ビタミンCなどの抗酸化物質も含まれます
「体液に近い電解質(イオン)濃度」と宣伝しているポカリスエットと比較してみました。

右の表は、トマト水は文部科学省のデータベース、ポカリスエットとOS-1は、それぞれメーカーの資料から作成しました。

この「トマト水」は、塩を加えていない値です。

また、水道水やミネラルウォーターに含まれるミネラルはこの表には入っていません。
ちなみに、水道水の水質基準では、ナトリウムは20mg/100mL以下、カリウムは基準がありませんが、多くても1mg/100mLぐらいのようです。
また、ミネラルミネラルウォーターは軟水、硬水でかなりミネラルの量が違いますので、表示をよくご覧ください。

ポカリスエットとOS-1に含まれる炭水化物は、ほとんどが糖質だと思われますので、糖質は圧倒的にトマト水が少ないことがわかります。

また、トマトには、βカロチン、ビタミンE、ビタミンCなどの抗酸化物質も含まれます。

ここにはありませんが、トマトに含まれるリコピンは、強力な抗酸化物質として有名ですね。
トマトの赤い色はリコピンの色で、赤いトマトほどリコピンがたくさん含まれています。
トマトの赤さで、含まれるリコピンの量はかなり違うようです。

抗酸化物質は、日焼けによるシミ、ソバカスを防ぐ作用もあるので、夏はたくさん摂りたいですね。

塩分の摂りすぎにも注意

参考までに、厚生労働省が定める日本人のナトリウム(食塩相当量)の目標量は、
  • 男性8.0g/日(ナトリウムとして3144mg)未満
  • 女性7.0g/日(ナトリウムとして2751mg)未満
です。

食塩1gには、ナトリウムが約393mg含まれています。

OS-1には100mL中に115mgのナトリウムが含まれているので、500mL(ペットボトル1本)飲むと、575mgのナトリウムを摂取することになります。

飲み物からの1日の水分摂取量は、少なくとも1500mLとされています。
これをOS-1にすべて置き換えて、ペットボトル3本(1500mL)飲んだとすると、
575mg×3=1725mg
のナトリウム摂取。

1日の目標値の半分強です。
食事などでもナトリウムは摂取されるので、目標値を超えてしまう可能性があります。

「熱中症予防に塩分を」といわれて、涼しい所で、汗もかいていないのにOS-1などを水やお茶の代わりに飲んでしまうと、ナトリウムの摂りすぎになるかもしれません。


OS-1が適しているのは、
  • 感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態
  • 高齢者の経口摂取不足による脱水状態
  • 過度の発汗による脱水状態
どれも、普通の健康状態ではなくなってしまったときです。
私もトマトは大好き
by うらら

それから・・・
暑くなると、よくレジの周りにおかれる塩飴
これは糖質の塊です。

塩の辛さを甘さでマスクして美味しくしています。
ですから、飴とほぼ同じ量の角砂糖をなめているのと変わらない糖質を摂ることになります。

一見、健康に良いようなコピーがかかれているパッケージをよく見かけますが、塩分(塩、NaCl、ナトリウムなど)の量と、糖質の量を確かめたうえで買うようにしましょう。

最後に熱中症などによる脱水には、口からの水分補給では間に合わないことが多いです。
病院で点滴による補液が必要です。
これも覚えておいてください。