いきいき!エバーグリーンラブ: 熱中症
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2016年12月21日水曜日

漢方薬で感染性胃腸炎の嘔吐、下痢対策

寒くなってくると、感染症が流行って、困ることが多いですね。

ちょうど、今の時期、ノロウイルスやロタウイルスなどによる感染性胃腸炎が流行していることも多いです。

特に、お子さんや高齢の方が罹ると、嘔吐(吐き戻し)や下痢で脱水症状が出やすく、危険なこともあります。

高齢者の場合は、嘔吐物を誤嚥(誤って、気管に入ってしまう)して、肺炎を起こす、いわゆる誤嚥性肺炎の原因になることもあるので、侮れない感染症です。

主な症状は、吐き気、嘔吐、下痢、発熱(38℃以下)、腹痛で、小児では嘔吐が多く、大人は下痢が多い傾向があるといいます。

病原体により異なりますが、だいたい潜伏期間は1~3日くらいで、症状も1~3日くらいで治ることが多いようです。

特に有効な治療法はなく、安静と水分補給が重要ですが、重い脱水症状には点滴が必要です。
嘔吐や下痢が酷い場合は、OS-1などの経口補水液や水は、消化管が受け付けず、飲んでも嘔吐と下痢がひどくなるだけで、脱水症状は改善されないことを覚えておいてください。

重篤な脱水症状や肺炎が起こったら医療機関を受診するといいでしょう。

軽い場合には、自宅で安静にして水分補給に努めるとよいと思いますが、水分補給についてはコツがあるので、詳しくは下記をご覧ください。
⇒脱水状態になったら経口補水液!

また、大抵の感染性胃腸炎には抗菌薬や抗ウイルス薬は必要なく、かえって有害です。

胃腸炎に効く漢方薬☆五苓散

さて、こんな厄介な感染性胃腸炎ですが、実は、嘔吐と下痢には、漢方薬で特効薬があります。

五苓散(ごれいさん)、という処方です。
処方内容は、沢瀉、茯苓、蒼朮、猪苓、桂皮の5つの生薬で構成されます。

それぞれの生薬は、利尿、鎮静、健胃、抗眩暈(めまい)、発汗、理気(体表の血管を拡張させて軽く発汗させる)作用を持つものから構成されていますが、桂皮以外のすべての生薬は、利尿作用を持っています。

五苓散は漢方や中国医学の考え方の、水毒や水滞・湿証(水分停滞)、水腫(水分横溢)という病態に著効することが多いです。

漢方や中国医学の考えでは、水毒や水滞、水腫という病態は、体内で水が本来あるべきではないところに偏って存在する状態と捉えます。

ですので、五苓散は嘔吐や吐き気、下痢ばかりでなく、浮腫(むくみ)、胸水、腹水、尿量減少、頭痛、眩暈(めまい)、耳鳴り、口渇(のどの渇き)、二日酔いによるこれらの症状、つわり(悪阻)、熱中症による脱水予防などに応用されます。

とても良く効きますので、感染性胃腸炎対策に常備しておくことをお勧めします。

胃腸炎では薬が吸収されにくいことに注意

胃腸炎で、吐き気や嘔吐、下痢があると、胃や腸などの消化管は機能が低下しているので、水をはじめ、ほとんどのものの吸収が落ちています。

感染性胃腸炎には病院でナウゼリンやプリンペランなどの吐き気止めや、ロペミンやトランコロンなどの下痢止めの薬を処方されることもあると思いますが、これらの薬も、消化管の機能が低下しているときには吸収されにくいと考えられます。

その点、五苓散は、消化管の機能が低下しているときでも、よく効きます

五苓散の飲み方

感染性胃腸炎への五苓散の常備法としてお勧めなのは、エキス顆粒(粉薬)の五苓散をお湯に溶かして、冷ましてから、製氷皿に入れて冷凍庫に入れて、五苓散氷としておくことです。

【材料】1日分
大人
  • ツムラの五苓散料エキス顆粒(薬局で買えます) 2包(5g)
  • 熱湯 40mL
子ども
  • ツムラの五苓散料エキス顆粒 1包(2.5g)
  • 熱湯 40mL 
  • 砂糖 小さじ1/2くらい
【作り方】
  1. 五苓散料エキス顆粒(子ども用には砂糖も)を湯呑にいれて、40mLの熱湯で良く溶かす。ちょっと溶けにくいので、必ず熱湯を用いて、スプーンで根気よく溶かしてください。
  2. 冷めたら製氷皿4ピースに、同じ量になるように入れる
  3. 冷凍庫で凍らせる
【飲み方】
  • 五苓散氷を口の中に1つ含み、溶かす(飲み込まないこと)
  • 1日4個が目安
  • できれば、吐き気や下痢が軽いうちに飲む
  • 熱中症の脱水予防に使う場合は、暑さを感じた時点で予防的に飲む
  • 二日酔い予防もモチロン飲み会の前に飲む

消化機能が落ちていても飲みやすい

五苓散氷は、消化管の機能が低下していても、ゆっくり吸収されていくので、胃腸炎に適していると言えます。

感染性胃腸炎では、水も一切受け付けない(嘔吐の時は水を飲めばすぐ吐く、下痢の時は水を飲むとすぐ下痢する)状態になっていることが多いでしょう。
この方法ならこんな時でも、薬を飲むのに水をたくさん飲まずに済みます

エバーグリーン研究室では、夏の熱中症の脱水対策にもこの方法をお勧めします。
特に高齢の方とお子さんがいる家庭にぴったりです。

ちょっと渋いのが難点ですが、良薬口に苦しということで、味わってみてください。

お子さんには、ちょっと砂糖を加えて溶かして、味を調整してあげてもいいでしょう。

五苓散で症状が改善されて落ち着いたら、下記のリンクのアミノ酸スープがお勧めです。
⇒胃腸炎にアミノ酸スープ

下痢やむくみになぜ効くのか


五苓散は、体内が水分過多のむくんだ(浮腫)の状態では尿量を増やし,脱水状態では尿量を減少させる作用があります。
西洋薬の利尿剤では脱水状態でも尿量が増えるのに、五苓散は浮腫である場合のみ尿量が増えることも特徴です。

血中の電解質濃度(ナトリウムイオンやカリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオンなど)のバランスに影響せずに尿量を増やす作用もあります。
西洋薬の利尿剤の欠点は、この電解質のバランスに影響することです。

これらの五苓散の持つ、まさに体内の水分をあるべきところに納める作用は、とても不思議で、日本の研究者たちは一生懸命研究しました。

その1つをご紹介します。

礒濱洋一 郎 漢方薬の薬理作用とアクアポリン


図1から図5までを見てください。

漢方薬 アクアポリン 五苓散 イラスト 水の吸収 カリウムイオン ナトリウムイオン ポンプ
1.細胞外と細胞内の電解質バランスが正常
水の挙動(移動)は細胞外と細胞内の電解質バランスによって方向が決まる。
細胞内から塩素イオンなどの負(-)イオンが出ると、細胞外液のほうが浸透圧が高まり、
細胞内の水をアクアポリンを通じて引き寄せる。
ナトリウムイオンなどの正(+)イオンが細胞に入り、細胞内の浸透圧が高まると
細胞外液からアクアポリンを通じて水が細胞内に流入する。
どちらの場合も一時的に細胞内の水の量が増減するが、
管腔側との基底層のそれぞれのアクアポリンの働きで、水が出入りして収支を保ち、
やがて細胞の浸透圧は一定に落ち着くと考えられる。
アクアポリン 五苓散 イラスト 水の吸収 カリウムイオン ナトリウムイオン ポンプ
2.細胞外と細胞内の電解質バランスが異常
細胞外液と細胞内の電解質バランスが崩れると、水の移動が起こり浮腫(むくみ)や脱水や下痢となる。
この図の場合は管腔側の細胞外から水が流入し、浮腫となる様子を描いている。
アクアポリン, つわり(悪阻), むくみ, 下痢, 感染性胃腸炎, 胸水, 五苓散, 口渇、二日酔, 水滞, 水毒, 脱水, 頭痛, 尿量減少, 熱中症, 腹水, 眩暈(めまい), 漢方薬,
3.細胞外と細胞内の電解質バランスが異常
細胞外液と細胞内の電解質バランスが崩れると、水の移動が起こり浮腫(むくみ)や脱水や下痢となる。
この図の場合は、基底層側の細胞外から水が流入し、脱水や下痢となる様子を描いている。


漢方薬 アクアポリン 五苓散 イラスト 水の吸収 カリウムイオン ナトリウムイオン ポンプ
4. 五苓散がむくみに効くメカニズム
アクアポリンに作用して、アクアポリンの機能を止めて、
本来移動すべきでない水を堰き止める。
五苓散などの漢方薬に含まれる成分の1つ(この場合はマンガンイオン)が水の通り道となるアクアポリンに作用して、アクアポリンの機能を止めて、本来移動すべきでない水を堰き止める。

これが、五苓散が下痢にも、むくみにも効くメカニズムの1つのようです。

また、五苓散などの漢方薬の成分は小腸まで到達しなくても、口の中や喉などの粘膜からも吸収される可能性も指摘されています。

このあたりが嘔吐や下痢で消化管が機能低下しても、五苓散が効く秘密なのかもしれません。



漢方薬 アクアポリン 五苓散 イラスト 水の吸収 カリウムイオン ナトリウムイオン ポンプ
5.五苓散が下痢に効くメカニズム
アクアポリンに作用して、アクアポリンの機能を止めて、
本来移動すべきでない水を堰き止める。

漢方や中国医学の2000年以上の経験から、いろいろな生薬を使った処方が蓄積されています。
その使い方やメカニズムはまだ十分に科学的にわかっていないものも多いですが、近年の研究からだいぶ明らかになってきました。


エバーグリーン研究室では、副作用の出にくい漢方薬や民間薬の有効活用を推奨していますが、このような研究が進めば、より科学的に納得して漢方薬を使えるようになりますね。

漢方や中国医学の欠点は、どのような場合にどの処方を使うべきかの方法論が、経験論に基づいていて、一応体系化はされているものの、理論の基礎に陰陽五行説と易(経)という古い哲学ないし思想があり、難解で、多様な解釈ができてしまうことです。

漢方や中国医学の弁証(理論と診断・処方)は、物事の捉え方として素晴らしい点も多いのですが、ある意味、教条主義的で、一部に論理的ではない面があり、経験と勘がものをいう場合が多いことも問題点でしょう。

上の研究のように、漢方や中国医学の知見や考え方を現代科学・医学・薬学で分析・検証して、より有効で安全な使用法が明らかになっていくことを期待しています。

2016年9月10日土曜日

運動不足のリスクは喫煙なみ

スウェーデンで45年間にわたり、死亡リスクを増やす原因について調査をしたところ、第1位は喫煙であることが認められました。

ここで問題です。
喫煙に次ぐ第2位は、次のうちどれでしょう。

  1. 血清コレステロール
  2. 運動不足
  3. 高BMI


回答に替えて、研究の概要をご紹介しましょう。

中年男性の45年間の死亡リスクに影響を及ぼす因子について

Per Ladenvall et.al.; Low aerobic capacity in middle-aged men associated with increased mortality rates during 45 years of follow-up.

【研究の方法】
  • 1963年に50歳だった男性の792人のデータを使用した、45年間にわたる前向き観察研究(プロスペクティブコーホート研究)。
  • 参加者が54歳の1967年に、792人のうち656人が自転車(エルゴメーター)に乗ってマスクをつけて、最大酸素摂取量(VO2max)を測定して、運動能力の上限を測定した。
  • 2012年の99歳まで参加者を観察して、約10年ごとに運動能力検査をした。
  • 参加者の死亡および一般国民の死亡率は、スウェーデン国民死亡原因登録のデータで確認した。
  • 参加者の身体測定・血圧や血液検査データと、運動能力と死亡のデータを比較して分析した。
【研究の結果】
  • 運動能力の指標である最大酸素摂取量(VO2max)で、次の3つのグループに分けて比較した。
  1. VO2maxが高いグループ
  2. VO2maxが中等度のグループ
  3. VO2maxが低いグループ
  • VO2maxが高いグループは、特に運動しない場合と比べ45年間の死亡リスクが21%低下すると推算できた[ハザード比0.79 (95%信頼区間0.71–0.89; p < 0.0001)]。
  • つまり、運動しないと45年間で21%死亡しやすくなるといえる。
  • 運動しないことの死亡リスク増加へのインパクトは、喫煙に次いでの2位で、高BMI、血清コレステロール高値などよりもはるかにリスクが高かった。
  • 喫煙での死亡リスク増加は58%の上昇であった[ハザード比1.58 (95%信頼区間1.34–1.85; p < 0.0001) ]。
いかがですか。

この研究は45年にわたる長期間参加者の656人を追跡して、10年ごとに運動テストも実施しているのでかなり信頼できる研究結果といえるでしょう。
現在では、喫煙は最もはっきりした健康へ悪影響のあるリスクの1つです。

運動不足はその喫煙に次いで、死亡リスクを上げてしまうのです。

エバーグリーン研究室では、運動の習慣をつけることが、生涯の健康にどれほど良い影響を与えるかについて、皆さんといろいろ勉強してきました。

でも、運動不足がどれだけのデメリットであるかについては、解説するのが難しいところでした。
この研究で、実感いただけたでしょうか?

禁煙に成功した方、次は運動習慣ですね。

運動のメリットを復習

運動することを習慣にできれば、まず筋肉が太目に維持され、筋肉内のミトコンドリアが増加し、その働きが向上します。
筋トレと有酸素運動を組み合わせた適度な強度がお勧めです。

肩こり、腰の痛み、関節痛など、筋肉がつくだけで解消できる痛みも多くあります。
また、有酸素運動をして心拍数を上げると血流がよくなり、肺や心臓や血管の健康にも役立ちます。
定期的に骨が刺激を受けることで、骨も強くなります。

代謝が上がるので、体の中の不要なものが排泄されやすくなり、何より太らず健康に美味しいものを楽しめます。

また、運動ががん認知症などいろいろな病気を予防する証拠も数多くあります。
さらに、適切な運動で病気を回復に向かわせたり、進行を遅らせることさえできます。

エバーグリーン研究室では、健康な生活の基礎となるのが、運動習慣と考えています。
どんなダイエットや健康法、サプリメントや薬も、適切な運動習慣の効果にはかないません。

また、これらのダイエットや健康法も、運動と組み合わせなければ効果が発揮されないと考えて間違いありません。


キーワードは、
  • 筋肉の量が増加
  • ミトコンドリアが増加して活性化
  • 有酸素運動+筋肉トレーニング
  • 心肺機能向上(血流を良くする)
  • 動脈硬化予防
  • 骨の健康
  • 肥満回避
  • 代謝向上
  • 老廃物除去(デトックス)
  • 汗をかく能力(熱中症予防)
  • 体温調節
  • 自律神経活性化
  • 認知機能改善(ボケ防止)
  • 精神の健康
  • がん予防
  • メタボ防止(血圧、血糖値の正常化)
など、たくさんあげられます。

関係する話題は、下記をご参照ください。

ミトコンドリアの数で若さが決まる
有酸素運動と無酸素運動の違い
体重・BMIより筋肉量が大事
運動すると食べ過ぎる?
デスクワークは危険!
座り時間を短くすれば老化しにくい
筋肉は脚から落ちる
1時間に2分体を軽く動かせば寿命が延びる
ミトコンドリアが活発な筋肉を保つためには
運動すればボケを防げる!
歳をとってから運動を始めても遅くはない
BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
運動不足で脳がしぼむ!

2016年8月12日金曜日

熱中症対策、誤解していませんか?

熱中症になったら「水だけ飲んでも汗で出てしまった塩分やミネラルが不足してしまうので、塩分やミネラルも補いましょう」といわれますね。
そのようなときには、OS-1のような経口補水液が役に立ちます。

ここで、よく誤解されていることがあります。


熱中症で誤解されやすいポイント1

熱中症にならないようにするために一番必要なのは、水分を摂り続けることではありません。
予防で大切なのは
  • 体の中から余分な熱を発散させること。
  • 熱を発散させるには汗をかくのが一番なので、普段から上手に汗をかけるようになるために、筋肉を鍛えること。
  • お年寄りや体力がなくて汗がかけないような方は、暑い場所を避けること。
  • スポーツなどで大量の汗をかく可能性ある場合は予防的に水分補給をする。
です。

熱中症で誤解されやすいポイント2

熱中症で脱水になってしまったら、

水分+塩分(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質)+糖

を補わなければなりませんが、

熱中症にならないようにするために、1日中水分+塩分+糖を摂り続ける必要はありません。

そのようなことをしたら、むしろ、塩分(特にナトリウム)も、糖も摂りすぎになってしまいます。

そして何よりも、熱中症になってしまったら、まずは体を冷やしましょう。
クーラーの効いたところに駆け込んだり、水を浴びるなどして、とにかく体を冷やすことです。


熱中症とは

ここからは、熱中症について詳しくお話しします。

熱中症対策を考える前に、熱中症とは何か、正しく理解しましょう。

熱中症は「熱にあたる(中る)」と書きます。
漢字のとおり、熱が体の中から出ていけなくなった状態です。

健康な人は、気温の高いところで長時間過ごしたり、激しい運動をしたりして体が熱くなると、汗をかくことで体温を調節します。

汗をかけば乾くときに身体の表面から気化熱が奪われ、体温が下がります。
また、顔が赤くなるのは顔の表面に血管、血液が拡がってきて身体の表面から熱を外に逃がそうとするためです。

ですから、体の中の水分が少なくなると汗をかけなくなって、体温調節がうまくいかなくなります。
この状態が熱中症です。

正しい熱中症予防策とは?

熱中症を予防するにはどうすればよいでしょうか。

上手に汗をかくことができる人は、水分補給をすることで熱中症を予防できます。
若い人や、体力のある人は、比較的上手に汗をかけます。

汗をかきにくい人は、お年寄りや体力のない方に多いようです。
まさに、熱中症になりやすいと言われている方々ですね。

では、どうすれば汗をかけるようになるのでしょうか。

答えは、筋肉をつけてミトコンドリアを増やすことです。

どうして筋肉をつけてミトコンドリアが増えると汗がかけるようになるかは、とても難しいので別の機会にお話ししましょう。

ミトコンドリアについては、こちらをご覧ください。
⇒ミトコンドリアの数で若さが決まる

うまく汗をかけない人の熱中症予防策は

高齢者など、筋肉が少ない方は、体の中に水分があってもうまく汗をかけないために熱中症になる危険があります。
このような方が熱中症にならないためには、体温が高くなるような環境に、長くいないようにすることが肝心です

特に高齢者は、部屋の温度が高くなっていることに気付かない場合がありますので、室温と湿度をまめにチェックして、温度は28度以下、湿度は50~60%を超えないように、エアコンを使いましょう。

「熱中症対策に経口補水液」に異議あり!

熱中症対策にOS-1(オーエスワン)のような経口補水液が盛んに勧められていますね。
あたかも、経口補水液を飲み続けていれば熱中症にならないかのような印象を受けます。

が、正確には
「熱中症で少しでも脱水症状が見られたら経口補水液」
「暑いところに行ったり、沢山汗をかくスポーツをするような状況で脱水する可能性がある場合に予防的に経口補水液」
と言わなければいけません。

脱水するリスクの少ない生活をしている場合は、夏だからと言って経口補水液を飲み続ける必要はありません。

普通の生活をしていて(激しい運動をしないで)汗をかくだけならば、お水で十分、脱水は予防できます。


ただの水というのも味気ないので、我が家では、レモンミント水を常備しています。

朝、レモンジュースを作ったあとのミキサーに、ミントと水を入れて、もう一度回します。

レモンミント水より、もう少し味の濃い飲み物がほしいというときには、フルーツジュースに比べて糖質の低い、トマト水はいかがでしょうか。

【材料】
  • トマト   小1個(約100g)
  • 水+氷  700mL
  • お好みでバジル 1/3枚
  • 汗をかいたなと思ったら、塩  1g (塩は、小さじ1=6g なので、1gは小さじ1/6)

経口補水液での塩分の摂りすぎに注意

経口補水液は、水分を効率よく吸収できるように、グルコース(ブドウ糖)と塩分を含んでいるため、1日中飲むには糖分も塩分も高すぎます。

参考までに、厚生労働省が定める日本人のナトリウム(食塩相当量)の目標量は、
  • 男性8.0g/日(ナトリウムとして3144mg)未満
  • 女性7.0g/日(ナトリウムとして2751mg)未満
です。

食塩1gには、ナトリウムが約393mg含まれています。

OS-1には100mL中に115mgのナトリウムが含まれているので、500mL(ペットボトル1本)飲むと、575mgのナトリウムを摂取することになります。

飲み物からの1日の水分摂取量は、少なくとも1500mLとされています。
これをOS-1にすべて置き換えて、ペットボトル3本(1500mL)飲んだとすると、
575mg×3=1725mg
のナトリウム摂取。

1日の目標値の半分強です。
食事などでもナトリウムは摂取されるので、目標値を超えてしまう可能性があります。

塩飴もNG

暑くなると、よくレジの周りにおかれる塩飴
これは糖質の塊です。

塩の辛さを甘さでマスクして美味しくしています。
ですから、飴とほぼ同じ量の角砂糖をなめているのと変わらない糖質を摂ることになります。

一見、健康に良いようなコピーがかかれているパッケージをよく見かけますが、塩分(塩、NaCl、ナトリウムなどの表示)の量と、糖質の量を確かめたうえで買うようにしましょう。

脱水状態になったら経口補水液!

経口補水液が適しているのは、
  • 感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態
  • 高齢者の経口摂取不足による脱水状態
  • 過度の発汗による脱水状態
どれも、普通の健康状態ではなくなってしまったときです。

経口補水液は、自宅でも簡単に作れます。

【材料】  
  •  500 mL
  • 1.5g (小さじ3/10)
  • 砂糖 20g (大さじ2と1/5)
※ミネラルを含む水で作れば、ミネラルも摂取できます。

経口補水液が良いと言われる理由は正しい??

小腸から体内に水分を吸収するには、ブドウ糖とナトリウムイオン(Na+)が不可欠です。

経口補水液を勧める理由として、

「ブドウ糖とナトリウムイオンは、1:1の割合で取り込まれるので、1:1の割合で含まれる経口補水液を飲むと、最も効率よく水分を吸収することができる」

と、メーカーは言っています。

しかし、実際には、ブドウ糖とナトリウムイオンが含まれてさえいれば、小腸はブドウ糖とナトリウムイオンを1:1の割合で水とともに拾い上げて吸収するので、元の飲料水に含まれる割合は問題になりません。

つまり、ブドウ糖とナトリウムイオンがある程度入っていれば、厳密に1:1でなくても構わないということです。

ということで、安く簡単にできる経口補水液もどきのレシピをご紹介します。

経口補水液もどき

【材料】
  • ポカリスエット 500mL 
  • 水        500mL 
  • 塩        3g

〈参考〉小腸で水分を吸収する仕組み

小腸の吸収のシステムについては、少々、専門的なお話になります。
興味のある方はご覧ください。
エネルギーが必要なトランスポーター:SGLT1 Na+/K+ポンプ エネルギーを使わないトランスポーター:GLUT2 アクアポリン   Na+とブドウ糖濃度が適切な経口補水液を飲むと、この SGLT1が働き、Na+とブドウ糖が小腸の壁の細胞の中に移動します。⇒①  小腸の壁の細胞に入ったブドウ糖は、今度はGLUT2というトランスポーターで小腸の壁を囲んでいる血管の中へ移動します(⇒②)。  ブドウ糖と一緒に小腸の壁に入ってきたNa+は、Na+/K+ポンプ(ナトリウムイオン カリウムイオン ポンプ)というトランスポーターで、血液中のカリウムイオン(K+)と入れかわる形で血管の中に出ていきます(⇒③)。  Na+とブドウ糖が血液中に入ると、小腸の中と小腸を囲む血管の中とで浸透圧に差ができます。 (血管の中、つまり血液のほうが、小腸の中より浸透圧が高くなります。)  体の反応は、この浸透圧の差を元に戻す方向に進みます。  ここで、もう一度、腸肝の壁をみてみましょう。 腸管の壁の細胞には、水を取り込むアクアポリンというトランスポーターがたくさん存在しています。  腸管の中と血液と間にできた浸透圧の差の分、水はアクアポリンを通って腸管の膜を通過し、血液の中へ入っていきます。(⇒④)  このようにして、経口補水液に含まれるブドウ糖とナトリウムと水は、血液中に入り、全身に送られます。イラスト 画像 糖尿病

食塩は、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)が化合してできています。

小腸には、ナトリウムイオン(Na+)ブドウ糖(グルコース)の両方が存在すると働くSGLT1というトランスポーターがあります。

トランスポーターというのは、細胞膜の外から中に特定の物質を汲み入れたり、中から外に特定の物質を汲み出したりするポンプのようなものです。
トランスポーターには、働くのにATPというエネルギーが必要なものと、エネルギーを使わないで働くものがあります。
ここでは、次の4種類のトランスポーターが登場します。
  • エネルギーが必要なトランスポーター:SGLT1 Na+/K+ポンプ
  • エネルギーを使わないトランスポーター:GLUT2 アクアポリン
Na+ブドウ糖濃度が適切な経口補水液を飲むと、この SGLT1が働きます。
SGLT1は、エネルギー(ATP)を使ってNa+を小腸の壁の細胞の中に取り込み、流れを引き起こすことで一緒にブドウ糖も引き込みます。⇒①

小腸の壁の細胞に入ったブドウ糖は、今度はGLUT2というトランスポーターで小腸の壁を囲んでいる血管の中へ移動します(⇒②)

ブドウ糖と一緒に小腸の壁に入ってきたNa+は、Na+/K+ポンプ(ナトリウムイオン カリウムイオン ポンプ)というトランスポーターで、血液中のカリウムイオン(K+)と入れかわる形で血管の中に出ていきます(⇒③)

Na+ブドウ糖が血液中に入ると、小腸の中と小腸を囲む血管の中とで浸透圧に差ができます。
(血管の中、つまり血液のほうが、小腸の中より浸透圧が高くなります。)

体の反応は、この浸透圧の差を元に戻す方向に進みます

ここで、もう一度、腸管の壁をみてみましょう。
腸管の壁の細胞には、を取り込むアクアポリンというトランスポーターがたくさん存在しています。

腸管の中と血液との間にできた浸透圧の差の分、アクアポリンを通って腸管の膜を通過し、血液の中へ入っていきます。(⇒④)

このようにして、経口補水液に含まれるブドウ糖ナトリウムは血液中に入り、全身に送られます。

ここで気が付くことがあります。
  • ブドウ糖=糖尿病の原因
  • ナトリウム=高血圧の原因
  • =むくみの原因=高血圧の原因
ブドウ糖ナトリウムも、摂りすぎてはいけないとされているものの代表格です。

昔は、塩も砂糖も貴重品でした。
これらを摂ることが難しい環境だったために、わざわざ取り込むためのトランスポーターができ、現在は過剰摂取によって病気を引き起こすことになったのでしょう。

健康な人が経口補水液を常飲することがいかに無駄なことかがお分かりいただけると思います。

個人的には経口補水液よりお勧め アミノ酸スープ

経口補水液 だし汁 
アミノ酸スープ レシピはこちら

脱水で身体がだるいときには、アミノ酸スープをお試しください。
経口補水液より、格段においしいです。

OS-1に含まれるアミノ酸は、グルタミン酸ナトリウムだけですが、アミノ酸スープには、30種以上のアミノ酸が含まれています。
旨み成分として有名なイノシン酸も含まれます。

ビタミンやミネラルも、OS-1よりたくさんの種類が含まれています。

経口補水液がいいというけれど

「脱水には経口補水液」といってきましたが、ここにも重要な落とし穴があります。

原因が熱中症であっても下痢や嘔吐であっても、脱水状態になってしまったら、口からの水分・電解質の補給では間に合わないことが多いです。
特に、重症な下痢や嘔吐の時には口から水分をとっても吸収できません。

このようなときには、経口補水液を買いに走るのではなく、病院に行って点滴してください。