いきいき!エバーグリーンラブ: 筋トレ
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2018年1月24日水曜日

持久力(心肺フィットネス)が高ければ太っていてもOK!!

エバーグリーン研究室では、以前から健康の維持には運動習慣が不可欠であることをお示ししてきました。
りんご型肥満でおなかが炎症
ミトコンドリアの数で若さが決まる
また、内臓脂肪や異所性脂肪による過体重や肥満が万病の元であることもお伝えしています。


さらに、体重やBMIよりも、体重に占める筋肉の割合が大切であると考えています。
体重・BMIより筋肉量が大事
BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
今日はこれらの考えを証明してくれる新研究が報告されましたので紹介します。

低い運動能力(低心肺フィットネス)はBMIとは独立して、腹部肥満と慢性炎症に関連する

Anne-Sophie Wedell-Neergaard et.al, Low fitness is associated with abdominaladiposity and low-grade inflammation independent of BMI

【研究の目的】
肥満者の集団のうち30%程度までは、糖や脂質などの代謝に異常は認められない。
これらの太っているが代謝的に健康な人は、腹部(内臓)肥満がなく、炎症が少なく、メタボリックシンドロームが発症するような代謝異常が認められない。
そこでこの研究では、太っているが代謝的に健康な人は、持久力(心肺フィットネス)が高く、このことによって、腹部(内臓)肥満がなく、炎症が少なくなっていいるとの仮説を立て、それが正しいかどうかを検討した。

【研究方法】
デンマークで行なわれた調査である、The Danish Health Examination Survey 2007-2008のデータから10,976人について、
●腹囲(ウエスト周囲径)
●高感度CRP(高感度C反応性蛋白):炎症の指標
●持久力(自転車エルゴメーターによる心肺フィットネス能力測定:VO2max)

を測定し統計学的に比較・解析した。

【研究の結果】
●性別に関係なく、高い持久力(心肺フィットネス)は、腹囲(ウエスト周囲径)減少と関連し、この関連は、BMI、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められた。

●男性では、持久力(心肺フィットネス)の+5mL/kg/min上昇で腹囲(ウエスト周囲径)は-1.50 cmと減少 (95% 信頼区間: -1.62~ -1.39 cm、 統計学的に有意 p<0.001)し、炎症の指標の高感度CRPは -0.22mg/Lと減少した (95% 信頼区間: -0.255~-0.185mg/L、統計学的に有意 p<0.001)。

●女性では、持久力(心肺フィットネス)の+5mL/kg/min上昇で腹囲(ウエスト周囲径)が-1.26 cm と減少(95%信頼区間: -1.39 ~-1.13cm、統計学的に有意 p<0.001) し、炎症の指標の高感度CRPは -0.26mg/Lと減少した (95% 信頼区間: -0.3~-0.22mg/L、統計学的に有意 p<0.001)。

●大きい腹囲(ウエスト周囲径)は、炎症の指標の高感度CRPの高値と関連し、この関連は性別とBMIに関係なく認められた。

●+1 cm腹囲(ウエスト周囲径)が大きくなると、男性では高感度CRPが0.03mg/L 上昇し(95%信頼区間: 0.02~ 0.037 mg/L、統計学的に有意 p<0.001) 、女性では高感度CRPが0.025mg/L 上昇し(95%信頼区間: 0.017~0.034mg/L、統計学的に有意 p<0.001)、この関連は、BMI、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められた。


【結論】
持久力(心肺フィットネス)は、BMIとは独立して、腹部(内臓)肥満と慢性炎症と逆相関を認めた。
これらのデータは、BMIとは無関係に、持久力(心肺フィットネス)を向上させることで、腹部(内臓)肥満と慢性炎症を改善させることができることを示している。
BMI, ミトコンドリア, リンゴ型肥満, 運動, 運動不足, 筋トレ, 筋肉, 持久力, 心肺フィットネス, 内蔵脂肪, 肥大化脂肪細胞, 肥満, 有酸素運動, 洋ナシ型肥満,
持久力(心肺フィットネス)を向上させることで、腹部(内臓)肥満と慢性炎症を改善

運動能力が高い=持久力が高くミトコンドリアが元気

いかがですか。
やはり、運動能力を高め、それを維持することが重要なのです。

運動能力が高い人は、当然、心肺機能が鍛えられていて持久力があり、運動習慣がありますので、同じ体重の肥満者よりも筋肉が多いことが予想できます。

恰幅が良くて、一見、太って見える人でも、健診で問題を指摘されないような元気な人がいますね。
こんな人に訊いてみると、たいていスポーツを趣味にしています。
そんな人は、スポーツで鍛えた強い心肺があり、体重やBMIは高くても、筋肉が豊富にあります。
体重やBMIの増加分が、脂肪よりも筋肉で占められている割合が高いと考えられます。

実際に、筋肉量が多いと、死亡する危険性(リスク)が低下するという報告もあるのです。
体重・BMIより筋肉量が大事


同じ体重やBMIでも、それに占める割合が筋肉が多いのか、腹部(内臓)脂肪が多いのかで明暗を分けてしまうというわけです。

言うまでもなく、脂肪細胞は、脂肪をため込み過ぎると、炎症性のサイトカインなどを慢性的に放出する慢性炎症を引き起こします。
脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!


同じ体重なら、身体の構成として、脂肪ではなく筋肉を多めとすることが大切なのです。

さらに、腹囲(ウエスト周囲径)が増える原因は腹部の内臓脂肪の増加です。

内臓脂肪の蓄積は異所性脂肪とも呼ばれ、本来脂肪を貯める役割を持つ皮下脂肪以外の組織・臓器に脂肪をため込みます。
脂肪の収納場所の皮下脂肪以外にたまる脂肪なので、異所性脂肪と命名されたのです。
これが炎症を引き起こし代謝異常など様々な疾患の原因になると考えられています。

異所性脂肪が恐ろしいのは、軽くても長い時間にわたって炎症性のサイトカインなどが全身を炎症に陥れることです。

この慢性的な炎症が恐ろしいのです。
打撲や虫刺されなどによる炎症は、やがて治癒して、長い時間続くことはありません。
異所性脂肪による炎症は、減量して異所性脂肪をなくさない限り収まりません。
つまり、過体重や肥満であった期間=何年もにわたって炎症が続いてしまうのです。

上記の研究とは別の、5,115人を25年間追跡した最近の研究では、健康な成人で肺機能(呼吸機能)が急速に低下すると、メタボリックシンドロームを発症する危険性があることが分かりました。
これらの人は、胸腔内に内臓脂肪が蓄積していることが分かりました。
Moualla M et.al. Thorax. 2017 Dec;72(12):1113-1120. doi: 10.1136/thoraxjnl-2016-209125. Epub 2017 Jul 20.

運動不足や過食・過飲による影響は、腹部だけではなく全身の異所性脂肪となり、様々な病気の原因となるようです。

運動の仕方のコツ

また、上記の研究で注目すべきなのは、高い持久力(心肺フィットネス)による腹囲(ウエスト周囲径)減少効果は、BMIだけでなく、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められたことです。

ミトコンドリアの数で若さが決まる
つまり、過体重・肥満の人、喫煙・飲酒習慣のある人、健康に自信がない人ほど、運動して持久力を維持することが必要だといえます。

忘れてはならないのは、心肺が丈夫で持久力があり、筋肉が豊富ということは、我々に活力を与えてくれるミトコンドリアもたくさんいるということです。
ミトコンドリアがエネルギーを充電してくれるわけです。

運動は、心肺機能を高める有酸素運動と、ミトコンドリアを増やして活性化させる筋トレを並行して行うのがベストですね。

持久力 心肺機能 筋肉 ミトコンドリア

2017年3月24日金曜日

老化を遅らせる運動法は?

例えば、傷の治りが遅くなるとか、打ち身の痛みや、寝違え、捻挫、筋肉痛など、年とともに、治りが遅くなることを感じたことはありませんか?

モチロン若い方は想像もできないでしょうが、アラフォーを過ぎたあたりからこのことを感じている方は多いはずです。

ヒトだけでなくすべての生物(真核生物)は老化と死はプログラムされていて避けられないのですが、それを遅らせることはできます。

ヒトの場合の唯一の方法は、
本来の体の機能を十分に引き出すこと
つまり、運動することです。


では、どうして運動が老化を遅らせることができるのでしょうか。
そして、老化を遅らせるための運動はどうやって行えばよいのでしょうか?
このブログをお読みの方はお察しがつくでしょう。
キーワードはミトちゃんです。
ミトコンドリアの数で若さが決まる

今日はそのヒントになる研究を紹介して、老化に対抗する運動法と、老化にブレーキを掛ける仕組みについてみてみましょう。

運動によるタンパク質生合成の向上で、加齢に伴う身体・代謝の変化へ対応できる

Matthew M. Robinson et.al. Enhanced Protein Translation Underlies Improved Metabolic and Physical Adaptations to Different Exercise Training Modes in Young and Old Humans.Cell Metab. 2017 Mar 7;25(3):581-592. 

How exercise -- interval training in particular -- helps your mitochondria stave off old age

【研究の参加者】
18~30歳の若年者群と、65~80歳の高齢者群それぞれ36名(男女)

【研究の方法】
上記の若年者群と高齢者群に
  1. 高強度インターバルトレーニング(自転車マシーン)
  2. 筋力トレーニング
  3. 高強度インターバルトレーニング+筋力トレーニング
をそれぞれ行ってもらい、参加者の大腿筋群から細胞のサンプルを取って、
  • 細胞内での小器官の働き
  • 筋肉量
  • インスリン感受性(低下により糖尿病リスクとなる)
について測定し、それぞれの運動との関連を調べた。

【研究の結果】
  • 筋力トレーニングはどちらの群でも筋肉量を増加させた
  • 高強度インターバルトレーニングは、若年者群ではミトコンドリアの能力を49%増加させ、高齢者群では69%も増加した
  • 高強度インターバルトレーニングではこれらの効果に加えて、インスリン感受性を改善した
  • 高強度インターバルトレーニングは加齢に伴う筋肉量低下はあまり改善させなかった

【研究から考えられること】
  • 老化を遅らせるためには、週当たり3~4回の高強度インターバルトレーニングと、筋力トレーニングを組み合わせることがよいと考えられた。
  • 仮に、忙しいので1つの運動パターンを選択しなくてはならないとすれば、高強度インターバルトレーニングはお勧めだが、それだけでは、筋肉量低下は防げそうもない。
  • しかし、全く運動しないよりははるかにましであろう、と研究者らはコメントしている。

いかがでしょうか。
研究者らはこの論文で、
老化に対抗していくには、どのような運動が良いか
だけでなく、
この研究によって、運動が細胞内の器官の機能を向上させる仕組みがいくつか明らかになった 
ことを強調しています。

具体的には、
自転車マシーンによる高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)では、ミトコンドリアが独自に持つミトコンドリア遺伝子からのRNAの複製が増加し、ミトコンドリアタンパク質*ができて、老化に伴うミトコンドリア機能低下が抑えられ、さらには改善さえして、筋力増強に有用なタンパク質の生合成も増加していた
ことが示されました。

老化防止の鍵はミトコンドリア にある

この研究では、高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)で、ミトコンドリアの機能と質が改善し、タンパク質生合成の能力が向上したということは、細胞の小器官としてタンパク質の製造工場を務めるリボソームの若返りを促したものと考えられる、としています。

*ミトコンドリアタンパク質とは
ミトコンドリアタンパク質のうち約21%は、ミトコンドリアが総ての細胞や細胞内小器官のエネルギーであるATPを作るために必要な、ミトコンドリア内膜にある電子伝達系(図)と呼ばれるところにあるタンパク質(酵素)のセットに使われています。
ミトコンドリア, アンチエイジング, 運動, 運動習慣, 運動不足, 筋トレ, 筋肉, 高齢者, 有酸素運動, 老化, ATP, 電子伝達系,
ミトコンドリアは外膜と内膜で囲まれ、内膜には電子伝達系という5つの酵素のセットがある。ミトコンドリア内では、食物から得られた化合物から水素イオンと電子を取り出す。水素イオンは内膜を通じて大半が汲み出され、電子は電子伝達系で受け渡されて、最終的に、これも取り込まれた酸素と、汲み出されなかった分の水素イオンとが反応して水ができる。その時にできる外膜-内膜のすき間と内膜内の水素イオンの数の差(電位差)が電気エネルギー(電荷の流れ=稲妻に相当)を生み出して、電子伝達系のタービン(電子伝達系のATP合成酵素)を回して、ATPを効率よく作る。同時に、TCA(クエン酸)回路も回して、ATPを作り、食物からの化合物の反応で二酸化炭素もできる。この一連の反応が呼吸(細胞呼吸)である。このように、ミトコンドリアの活動には酸素が不可欠である。有酸素運動がミトコンドリアを活性化させることが解る。

この酵素セットによって、ミトコンドリア内で呼吸が行われて、エネルギーであるATPができるのです。
このATPを受け取ったリボソームは、エネルギーとしてATPを使って、細胞に必要なタンパク質を作ることができます。
ミトコンドリアは、体(細胞)が要求するエネルギーに見合った数の酵素セットを作って、要求に応えていると考えられます。
その要求とはつまり運動することですね。
運動をしない人のミトコンドリアは、わざわざ酵素セットを新たに作らないと思われます。
ミトコンドリアの数で若さが決まる
   ミトコンドリアが酵素セットである電子伝達系を新たに作る能力が若さの秘訣
   と言えるでしょう。

さらに、この研究者らは、
参加者から細胞のサンプルを取った大腿筋は筋肉細胞である。
筋肉細胞は、脳などの神経細胞や心筋細胞などと同様に、細胞分裂しにくい細胞の一種であり、再生しにくい。
高齢者群でも運動によって、ミトコンドリアの機能が改善し、筋肉量が増えるということは、運動による筋肉の再生が観察されたということである。
筋肉細胞と同じく、再生しにくい脳の細胞や心筋細胞の再生にも運動の効果が期待できる
としています。

アンチエイジングとして、食べ物や、健康食品・サプリメント、各種ダイエット法などがいろいろ宣伝されていますが、やはり運動に勝るものはありませんね。
外からあれこれ栄養素や成分を摂ったところで、ミトコンドリアに代表される細胞の中の器官を運動で刺激して、自ら大切な体の部品(タンパク質)を作らせて補修させることに上回る効果はないということです。

例えば、骨の構成成分のコラーゲンは筋肉と似た性質のタンパク質で出来ています。
コラーゲンはサプリメントなどでそのままの形では外からは取りこめませんから、骨が脆くなりつつある人は、運動してその人の骨にぴったり合ったコラーゲンを、ミトコンドリアとリボソームに作ってもらうことが骨粗鬆症防止に有効ということですね。その原料となるアミノ酸で構成されるコラーゲン(ペプチド)をゼラチンなどで摂ることには、原料を補給するという意味があると考えられます。

まとめると、健康に役立って老化を防ぐベストな運動法は、基本的には、
高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)+筋力トレーニング
ですが、忙しければ、最低でも
高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)
を行えば効果ありということでしょう。

中高年や高齢者では、
高強度インターバルトレーニング(有酸素運動)だけでは筋肉の低下を防げないので、筋力トレーニングをプラスする
のがお勧めということですね。

また、老化にブレーキをかけるのは、
有酸素運動によりミトコンドリアとリボソームを活性化して、細胞の中で修復のためのタンパク質を生合成させること
にあるようです。

このことから、運動と合わせて、普段の食生活でも修復するタンパク質の原料となる食事由来のタンパク質(アミノ酸)の摂取も大切であることがわかります。

サプリメントも健康食品も薬も、運動してこそ役に立つ

逆に言えば、どんなに食事やサプリメントや健康食品で、良い栄養成分を摂っても、運動しなければ、せっかくの原料を体の修復用のタンパク質や化合物に作り変えてもらえないということになります。
昔からよく言われる、「良好な新陳代謝」とは、運動と適正な食事の2本立てで初めて成り立つものなのですね。

恐らく、運動せずにこれらの栄養成分をせっせと食べたり飲んだりしても、体が過剰なカロリーと判断して、脂肪としてため込むか、吸収されずに消化器に負担をかけるだけの素通りになる可能性が高いと思います。

 サプリメント健康食品が効果を発揮するには、上でお話ししたミトコンドリア電子伝達系が働く必要があります。
「これを飲んでいればOK!」と宣伝するサプリメント健康食品???ですね。

このことは多くの生活習慣病の薬にも当てはまると思います。
糖尿病の薬も、高血圧治療薬も、高脂血症治療薬も、骨粗鬆症治療薬も、 運動と併用して初めて効果が出る 
と思ったほうが良いと思います。

運動とミトコンドリアについてはこちらの記事も読んでください。
運動・ミトコンドリア
ミトコンドリアの数で若さが決まる
有酸素運動と無酸素運動の違い
体重・BMIより筋肉量が大事
運動すると食べ過ぎる?
デスクワークは危険!
座り時間を短くすれば老化しにくい
筋肉は脚から落ちる
1時間に2分体を軽く動かせば寿命が延びる
ミトコンドリアが活発な筋肉を保つためには
運動すればボケを防げる!
歳をとってから運動を始めても遅くはない
BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
運動不足で脳がしぼむ!
運動不足のリスクは喫煙なみ
たくさん動いていれば何を食べてもOK

2016年9月10日土曜日

運動不足のリスクは喫煙なみ

スウェーデンで45年間にわたり、死亡リスクを増やす原因について調査をしたところ、第1位は喫煙であることが認められました。

ここで問題です。
喫煙に次ぐ第2位は、次のうちどれでしょう。

  1. 血清コレステロール
  2. 運動不足
  3. 高BMI


回答に替えて、研究の概要をご紹介しましょう。

中年男性の45年間の死亡リスクに影響を及ぼす因子について

Per Ladenvall et.al.; Low aerobic capacity in middle-aged men associated with increased mortality rates during 45 years of follow-up.

【研究の方法】
  • 1963年に50歳だった男性の792人のデータを使用した、45年間にわたる前向き観察研究(プロスペクティブコーホート研究)。
  • 参加者が54歳の1967年に、792人のうち656人が自転車(エルゴメーター)に乗ってマスクをつけて、最大酸素摂取量(VO2max)を測定して、運動能力の上限を測定した。
  • 2012年の99歳まで参加者を観察して、約10年ごとに運動能力検査をした。
  • 参加者の死亡および一般国民の死亡率は、スウェーデン国民死亡原因登録のデータで確認した。
  • 参加者の身体測定・血圧や血液検査データと、運動能力と死亡のデータを比較して分析した。
【研究の結果】
  • 運動能力の指標である最大酸素摂取量(VO2max)で、次の3つのグループに分けて比較した。
  1. VO2maxが高いグループ
  2. VO2maxが中等度のグループ
  3. VO2maxが低いグループ
  • VO2maxが高いグループは、特に運動しない場合と比べ45年間の死亡リスクが21%低下すると推算できた[ハザード比0.79 (95%信頼区間0.71–0.89; p < 0.0001)]。
  • つまり、運動しないと45年間で21%死亡しやすくなるといえる。
  • 運動しないことの死亡リスク増加へのインパクトは、喫煙に次いでの2位で、高BMI、血清コレステロール高値などよりもはるかにリスクが高かった。
  • 喫煙での死亡リスク増加は58%の上昇であった[ハザード比1.58 (95%信頼区間1.34–1.85; p < 0.0001) ]。
いかがですか。

この研究は45年にわたる長期間参加者の656人を追跡して、10年ごとに運動テストも実施しているのでかなり信頼できる研究結果といえるでしょう。
現在では、喫煙は最もはっきりした健康へ悪影響のあるリスクの1つです。

運動不足はその喫煙に次いで、死亡リスクを上げてしまうのです。

エバーグリーン研究室では、運動の習慣をつけることが、生涯の健康にどれほど良い影響を与えるかについて、皆さんといろいろ勉強してきました。

でも、運動不足がどれだけのデメリットであるかについては、解説するのが難しいところでした。
この研究で、実感いただけたでしょうか?

禁煙に成功した方、次は運動習慣ですね。

運動のメリットを復習

運動することを習慣にできれば、まず筋肉が太目に維持され、筋肉内のミトコンドリアが増加し、その働きが向上します。
筋トレと有酸素運動を組み合わせた適度な強度がお勧めです。

肩こり、腰の痛み、関節痛など、筋肉がつくだけで解消できる痛みも多くあります。
また、有酸素運動をして心拍数を上げると血流がよくなり、肺や心臓や血管の健康にも役立ちます。
定期的に骨が刺激を受けることで、骨も強くなります。

代謝が上がるので、体の中の不要なものが排泄されやすくなり、何より太らず健康に美味しいものを楽しめます。

また、運動ががん認知症などいろいろな病気を予防する証拠も数多くあります。
さらに、適切な運動で病気を回復に向かわせたり、進行を遅らせることさえできます。

エバーグリーン研究室では、健康な生活の基礎となるのが、運動習慣と考えています。
どんなダイエットや健康法、サプリメントや薬も、適切な運動習慣の効果にはかないません。

また、これらのダイエットや健康法も、運動と組み合わせなければ効果が発揮されないと考えて間違いありません。


キーワードは、
  • 筋肉の量が増加
  • ミトコンドリアが増加して活性化
  • 有酸素運動+筋肉トレーニング
  • 心肺機能向上(血流を良くする)
  • 動脈硬化予防
  • 骨の健康
  • 肥満回避
  • 代謝向上
  • 老廃物除去(デトックス)
  • 汗をかく能力(熱中症予防)
  • 体温調節
  • 自律神経活性化
  • 認知機能改善(ボケ防止)
  • 精神の健康
  • がん予防
  • メタボ防止(血圧、血糖値の正常化)
など、たくさんあげられます。

関係する話題は、下記をご参照ください。

ミトコンドリアの数で若さが決まる
有酸素運動と無酸素運動の違い
体重・BMIより筋肉量が大事
運動すると食べ過ぎる?
デスクワークは危険!
座り時間を短くすれば老化しにくい
筋肉は脚から落ちる
1時間に2分体を軽く動かせば寿命が延びる
ミトコンドリアが活発な筋肉を保つためには
運動すればボケを防げる!
歳をとってから運動を始めても遅くはない
BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
運動不足で脳がしぼむ!

2015年8月21日金曜日

運動すればボケを防げる!

いつまでも健康で楽しく人生を送ることを目指して、エバーグリーン研究室は活動していますが、健康でいることの最終目標は、元気ボケずに老年期を過ごして穏やかな最後を迎えることにあると思います。

知り合いの医師たちは、ほとんどの患者さんが、
「自分は重い病気にならない」
「自分はがんにはならない」
と思っていると口を揃えていいます。
みな病気の怖さはなんとなく知っていても、自分は例外と思いがちなのです。

生活習慣を改善すれば、認知症にならない

不健康な生活習慣が原因になることが多い高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病や、喫煙による肺疾患、アルコール過飲による肝臓・膵臓疾患、がん、など、日本の人口が高齢化すればするほど、病気になる確率は高くなります。
やはり、避けられる病気は、できる限り生活習慣を改善して、回避することが大切です。

運動, 運動不足, 有酸素運動, 認知症, 筋トレ, 筋肉, 認知機能,
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症、730万人!
認知症の原因はまだよくわかっていませんが、高血圧や糖尿病の患者さんに認知症が多いことがわかっていますし、脳卒中を起こした人は認知症になりやすいこともわかっています。
つまり、生活習慣の改善で、認知症も防げるということです。

自分だけは認知症にはならない、と思っていませんか?

図を見てください。

あと10年後にはなんと65歳以上の5人に1人が認知症という予測されているのです。
私もあと約15年で65歳になりますので、とても他人事ではありません。

では、どうすればよいのでしょうか?

そのヒントとなる研究結果が報告されましたので、ご紹介しますね。

運動は高齢者の認知機能(脳機能)を良くする


Eric D. Vidoni et al. Dose-Response of Aerobic Exercise on Cognition: A Community-Based, Pilot Randomized Controlled Trial. PLoS ONE 10(7): e0131647. doi:10.1371/ journal.pone.0131647


【研究の方法】
  • 認知機能に問題のない65歳以上の101人の高齢者をコンピューターソフトで、下記の4つのグループにランダム(無作為)に分けた。
  1. 特別に運動をしないグループ
  2. 中等度の運動を週あたり150分程度行うグループ
  3. 中等度の運動を週あたり75分程度行うグループ
  4. 中等度の運動を週あたり225分程度行うグループ
  • 研究の開始時に参加者の心肺機能と脳機能をテストして測定した。
  • 研究参加者は26週間、それぞれのグループの運動を続けた。
  • 研究参加者は研究の終了時にも同じテストをして、それぞれの成績を比較した。
  • 脳機能は言語の記憶、視覚空間認知機能、注意力・集中力、問題への柔軟性・対応力、論理力・推察力の脳機能についてテストした。

【研究の結果】
  • 中等度の運動を行う2、3、4のどのグループでも、程度の差はあるが、脳機能が改善した。
  • なかでも、特に4の週あたり225分運動行うグループは、視覚空間認知機能の成績が良くなった。この機能は、物体がどこにあるかを理解し、そこまでの距離などの見当をつける能力。
  • 注意力・集中力も2、3、4のどのグループでも改善していた。         

【研究から考えられること】
  • 脳の機能は、運動量が多いほど改善する傾向があった。
  • しかし、単純に運動量を増やすため運動時間を長くすればいいのではなく、運動時間よりも運動の強度のほうが大切である可能性がある。
  • 運動に慣れてきて、以前の運動の強度が楽に感じるようなら、ダンベルを重くするなど運動の強さをだんだん上げていかないと、脳機能の改善には効果が発揮されないと考えられた。

いかがでしょう?

運動で脳機能が改善するなんて、とても心強いですね。
認知症を予防するには、運動は欠かせないようです。

運動のステップアップが脳の快感に

筋トレをしているとわかりますが、たとえばダンベルの重さを慣れに従って少しずつ重くしていかないと、筋肉は付いてきません
また、骨折などで動けない期間など、身体の機能を使わない期間があると、筋肉をはじめとして、体の機能はどんどん落ちていきます。

⇒筋肉を保つためにはどの程度の運動が必要か
⇒筋肉を維持するにはどうすれば良いか

身体の機能を使わない期間が長い寝たきりの患者さんなどでは、廃用症候群といって(生活不活発病ともいいます)、筋肉が大幅に落ちて、床ずれがでてきたりして、身体の機能がどんどん落ちていくのですが、身体の機能だけでなく、精神的な機能も落ちることが知られています。

運動と脳機能の関係もきっと同じですね。

運動を始めて、慣れてきたころに、さらに強さを上げて運動することで、目標を達成した快感を繰り返し得ることができます。
これが脳にとって刺激になるのでしょう。
刺激を受け続けることが、脳の機能を維持するカギなのでしょうね。

身体の運動や、脳の運動も続けて、その強度を上げていくことは、言い換えれば、チャレンジし続けることです。



 重い植木鉢を力いっぱい押しのけて障害物を乗り越え、達成感に浸る 
エバーグリーン研究室所属リクガメ うらら研究員(愛称:うらちゃん)
カメにも運動は欠かせない。リクガメの空間認知機能は優れている。



こうすることで、我々は歳をとっても常に新たな目標を得ます。
理想の体型に一歩ずつ近づく。
素敵なことです。
目標に向かって、ささやかにでも努力を続ければ、体はそれに応えて機能を維持してくれるようです。

また、慣れてくれば、運動の後の爽快感は格別です。
この爽快感は、運動により脳の報酬系が活性化されドパミンが分泌されるためです。
報酬系は、目標を定め、努力して、それを達成することで活性化されます。
この達成感は、アスリートはみな経験しています。

運動を習慣化すれば目標ができて、ストレスを解消でき、かつボケ防止にも役立つ。

もう運動しない手はありませんね。

2015年7月18日土曜日

ミトコンドリアが活発な筋肉を保つためには

ミトコンドリアの
ミトちゃん
エバーグリーン研究室では、いつまでも健康で若さを保つために、運動の大切さをお伝えしています。

運動すると、筋肉がつきます。
定期的な運動によって筋肉を保つことが大切です。
⇒体重・BMIより筋肉量が大事
⇒筋肉は脚から落ちる

なぜなら、筋肉は我々ヒトに活力=エネルギーを生み出して、与えてくれるミトコンドリアの住処だからです。
筋肉量が多ければ、ミトコンドリアの量と質が良い状態と言えるでしょう。
⇒ミトコンドリアの数で若さが決まる
でも、いったいどれくらいの頻度で運動をすれば筋肉を保てるのでしょう?

今日は、筋肉を保つためのヒントになる研究をご紹介します。

筋肉を保つためにはどの程度の運動が必要か

Six weeks’ aerobic retraining after two weeks’ immobilization restores leg lean mass and aerobic capacity but does not fully rehabilitate leg strenght in young and older men

【研究の目的】
  • 運動をしないとどの程度の割合で筋肉が落ちるか、そして、筋肉を回復させるにはどの程度の運動が必要かを若者と高齢者で調べる。
【研究の参加者】
  • 17人の男性若者(平均23歳)と15人の男性高齢者(平均68歳)。

【研究の方法】
  • 2週間、片方の脚に脚枷(脚が動かないような装具)をつけたあと、脚力、筋肉量を調べてそれぞれ比較した。
  • その後、筋力リハビリのため、1週あたり3~4回の自転車漕ぎトレーニングを6週間して、筋肉の回復を測定した。
【研究結果】
2週間の足枷で、
  • 若者グループでは脚の筋肉の収縮力(脚力)が平均28 %低下し、高齢者グループでは平均23%低下した。
  • 若者グループでは脚の筋肉量が平均で485g減少し、高齢者グループでは平均250g減少した。     
6週間の自転車漕ぎ筋力リハビリトレーニングで、
  • 若者グループでは脚力が平均34 %回復し、高齢者グループでは平均17%回復した。
  • 脚の筋肉量は、若者グループでのみ、平均669g回復した。
【研究から考えられること】
  • 足枷によって不活動にして2週間過ごさせると、若者では最大で筋力の約3分の1が失われ、高齢者では約4分の1を失った。
  • 若者では2週間の不活動によって40~50代の筋力と同程度にまで筋力が低下したことになる。
  • これは、若者のほうが高齢者より片脚につき1kgずつ筋肉量が多いためと考えられる。
  • 若者では筋肉が多い分、運動しないと筋肉の減少が激しいようだ。
  • しかし、高齢者では、筋肉の絶対量が少なく、運動能力が落ちているため、筋肉量の減少幅は若者より少なくてもその悪影響は大きいと思われる。
  • 筋力リハビリのための、週あたり3~4回の自転車漕ぎトレーニングは、6週間続けても、若者グループの一部を除いて、以前の筋力に戻るには十分な運動と言えなかった。
  • 一度失った筋力を取り戻すには、有酸素運動である自転車漕ぎトレーニングにプラスして、筋トレが必要であると考えられた。
  • わずか2週間の不活動な状態による筋力低下を、ある程度まで回復させるにも、自転車漕ぎトレーニング6週間という3倍の期間が必要であった。
健康な人でも、ケガなどをすれば否応なく不活動な期間ができてしまう。

いったん落ちた筋力の回復にこれだけの時間がかかることを考えると、不活動による筋力の急速な低下の仕組みが理解できる。

高齢者では筋肉を失うと、回復が難しい

いかがですか、
日常的な運動の大切さがわかる研究ですね。
筋肉の維持には、定期的な有酸素運動だけでなく、筋トレが大切なことも理解できる研究ですね。

特に注目すべきなのは、週3~4回の自転車漕ぎトレーニングを6週間続けても、高齢者では元の筋力まで戻らなかったことです。

高齢者では一度、筋肉・筋力を失うと、回復が簡単ではないことがわかります。

これは、感覚的にもわかりますね。

若者は、まだ細胞に活力があるので、細胞分裂が活発になって、回復が早いのでしょう。

歳をとってくると、いろいろなことに気力が起きなくなって、億劫になり、不活動になりがちです。

歳をとったらなおさら意識して運動に励まなくてはならないと研究は教えてくれたのです。

若いときから運動する習慣を

歳を取ってから一念発起して運動を始めるというのは現実的ではありませんから
中年に差し掛かったくらいから定期的な有酸素運動+筋トレをはじめて、準備しておくほうがよさそうですね。
腕に付けられるタイプもあって、アンクルリストウエイトといいます。 500gなら、女性でも使えますよ。
女性でも使える、アンクルリストウエイト。これでラジオ体操はいかが?

仕事が忙しい中でも週末にはスポーツジムに通っている!という習慣は重要です。

これにプラスして、毎日少しの時間でも筋トレができれば理想的です。
お勧めは、体力・筋力に合わせたダンベルを使ってラジオ体操をすること。

腕に付けられるタイプもあって、アンクルリストウエイトといいます。
500gなら、女性でも使えますよ。

2014年9月10日水曜日

脂肪細胞の正体

前回はリンゴ型肥満と内臓脂肪についてお話ししました。
⇒リンゴ型肥満と内臓脂肪について

ここでは、内臓脂肪が病気に結びつくワケを順を追ってお話ししますね。

まずは脂肪細胞について知りましょう。

内臓脂肪と皮下脂肪の違い


下の図を見てください。
前回もお話ししたように、内臓脂肪はお腹の中の膜に脂肪組織が多くなってしまうことで出来上がります。
でも、この内臓脂肪は、皮下脂肪と比べて、カロリー摂取を控えて運動すれば、比較的簡単に減ります。

内臓脂肪が「貯まりやすく、減らしやすい」のには理由があります。

内臓脂肪がたまる腸間膜には小腸から肝臓に栄養を運ぶ血管がたくさんあり、栄養の通り道が近いため、脂肪がたまりやすいのです。
反対にエネルギーが足りなくなったときには、内臓脂肪の中の脂肪から脂肪酸としてエネルギーを取り出しやすいため、運動で減りやすいとされています。

一方で皮下脂肪はダイエットしても、運動してもなかなか減りません。

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内臓脂肪と皮下脂肪

脂肪細胞の種類と役割


脂肪細胞と聞くと、「なければいい存在」のように思ってしまいますが、そんなことはありません。
脂肪細胞にはいくつかの種類があり、それぞれ体に必要な働きをしています。
詳しくみてみましょう。


脂肪組織には、脂肪細胞がたくさんあります。
上の絵のように、脂肪細胞の集落に毛細血管が張り巡らされています。
血液の中の脂肪酸や中性脂肪やグルコース(ブドウ糖)がここまで運ばれてきて、脂肪細胞に取り込まれ、脂肪となります。

脂肪細胞には種類があります。
白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞です。

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脂肪を燃やす褐色脂肪細胞と脂肪を貯める白色脂肪細胞

褐色脂肪細胞

褐色脂肪細胞は、首の周りや、肩甲骨のあたり、わきの下などに少数存在する脂肪細胞で、脂肪を燃焼させる働きがある、ちょっと変わり種の脂肪細胞。
脂肪を燃やすので、そのためのミトコンドリアがたくさんいます。

ミトコンドリアが多い細胞といえば筋肉ですね。
実は、褐色脂肪細胞と筋肉は同じ起源から分かれてくる兄弟であることが最近の研究でわかりました。

褐色脂肪細胞の役割は体温を監視して、体温が落ちそうになると脂肪を燃やして体温を保つ役割をしていると考えられます。

褐色脂肪細胞は赤ちゃんのころが割合が一番多いのです。
これは、赤ちゃんはまだ筋肉が発達していないので、筋肉からの発熱量が低いため、これを補うために褐色脂肪細胞の割合が高いと考えられます。

褐色脂肪細胞は、成人では低温にさらされたときに活発になることがわかっています。


白色脂肪細胞

白色脂肪細胞は、全身の皮下や内臓にあり、数も多く、飢餓に備えてエネルギーを脂肪にして貯める役割をしています。
また、必要時には蓄えている脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解して血液に放出して、全身の細胞のエネルギー源にします。

白色脂肪細胞のなかには図のように大きな脂肪滴と呼ばれる中性脂肪を貯めておくプールがあります。
白色脂肪細胞は貯める役割なので、燃やすためのミトコンドリアが少ないわけです。


ベージュ脂肪細胞

2012年にすごい発見がありました。
ベージュ脂肪細胞という褐色脂肪細胞に似た、ミトコンドリアの多い、脂肪を燃やす細胞が発見されたのです。

さらに、脂肪を貯める専門だと思われていた白色脂肪細胞も、筋トレなどの運動すると筋肉からイリシンというホルモンが出て、このイリシンでベージュ脂肪細胞に変化することがわかりました。


内臓脂肪と皮下脂肪はほとんど白色脂肪細胞です。
運動すれば、白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変化させられます。

お話しした通り、内臓脂肪は特に、「貯まりやすく、減らしやすい」性質を持っています。
運動すれば、内臓脂肪の白色脂肪細胞がベージュ脂肪細胞になって、蓄えていた脂肪を消費してくれる可能性があるわけです。

運動の習慣がいかに大切かを脂肪細胞は教えてくれているのです。


ところで・・・
褐色脂肪細胞を活性化して脂肪を燃やすという触れ込みの『肩甲骨ダイエット』なるものがはやっているようですが、褐色脂肪細胞は運動では活性化されません。
ということは・・・????

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