いきいき!エバーグリーンラブ: 報酬系
ラベル 報酬系 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 報酬系 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年7月25日水曜日

脳は美味しさであなたを騙す!!

暑いですね。
熱中症にご注意ですが、食欲も落ち気味だし、涼をとるために、アイスクリームやシェイクの誘惑に負けてしまう人も多いと思います。

暑いと、スイーツも冷たさと喉ごしの良さを求めて、アイスクリームやシェイクなどの流動食を選びがちです。
アイスクリームやシェイクは、冷たさやのどごしの良さだけでなく、糖質と脂質がたっぷり入っていて、とても美味しいものですね。

これ以外にも、様々な状況で人間の生活に楽しみと彩りを与えてくれるように思える、現代先進国での「美味しい」食品は私たちの周りに溢れかえっています。

美味しさについて考える

でも、「美味しさ」って何でしょうか?
もちろんヒトをはじめとする動物は栄養やエネルギーを食事(食餌)の形でとらないと生存できません。

ですので、生物は食べ物の「味」を感じるように味蕾などのセンサーを発達させて、安全に食べることができ、栄養やエネルギーとなる食物を選別できるように進化してきました。
味覚といえば、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味の5味が有名ですね。
この5味は食物に栄養があるか、毒性がないかを判別するのに役立ってきたと考えられます。

例えば、私たちは、塩分(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質)がなければ、生きていけません。
山間・内陸地域では昔から塩は貴重品でした。
土や泥を食べる植物食の動物は少なくありません。
あれは土や泥のなかに塩味を感じて、塩分を補給しているのです。
塩味を感じ取る味覚は、貴重な塩分を摂取するためのセンサーだったのですね。

甘味について言えば、哺乳類の中で、唾液にアミラーゼを含む種は少数です。
アミラーゼはでんぷんを分解して麦芽糖に分解して甘味を感じさせます。
たまたま、唾液中にアミラーゼを分泌する能力を持った種が、ドングリやナッツ、根菜や球根、未精製の穀物のでんぷん中の糖質を甘いと感じるようになり、穀物を食餌として取り入れていったのです。

肉食目の動物として進化してきた野生のネコ科の動物は、酸味、苦味、塩味しか味覚を持っていません。
酸味は腐敗した食物、苦味は毒性のある食物を警告する役割でしょう。
塩味は特に肉食のネコ科動物にとって肉や血の味で、「美味しい」のでしょうね。

もっとも、聞くところによると最近の飼いネコは、甘いものも好むそうですが…。
家畜化による味覚の破壊でしょうかね。

このように、本来、味覚とは、生物の進化の観点から見れば、安全に食餌を確保するために備わった感覚の1つに過ぎません。

例えば、ゾウやキリンは、海から遠く離れたサバンナに住み、塩分をほとんど含まない木の枝や葉、皮、草などを主食とする植物食のため塩分が不足しがちです。
塩分が不足すると何十キロも歩いて、壁から塩が染み出す洞窟に塩を舐めに行くそうです。
ゾウやキリンは、脳が塩味を感じると同時に、それが「美味しい」=「快い」と感じるように進化したおかげで、わざわざ体力を使って洞窟まで行き、生命を維持することができているわけです。

このように、我々の行動を「快い」というご褒美(報酬)で制御する神経システムが脳内に備わっています。
報酬が与えられたときに快感を感じるように働くこの脳のシステムを報酬系といいます。

「美味しさ」とは、進化に伴って、味覚と報酬系が連携して、得難い栄養素やミネラルなどを摂食させる行動を制御しているうちに発達した感覚と思われます。

実は、この報酬系が、現代文明を生き抜く人間にとっていろいろな問題を引き起こしているのです。

今日は、そんな、味覚と嗜好と報酬系の罠を解明した研究をご紹介しようと思います。

脂肪と炭水化物は、同時に摂るとより満足できる

Supra-Additive Effects of Combining Fat and Carbohydrate on Food Reward

DiFeliceantonio et al., 2018, Cell Metabolism 28, 33–44

【研究の参加者】
 206人の成人

【研究の方法】
 全く同じカロリーとなる量の3種類のスナック食品
  ①主に炭水化物(糖質)を含む(例えばキャンディー)
  ②主に脂肪を含む(例えばチーズ)
  ③脂肪と炭水化物を両方を含む(例えばクリームサンドビスケット)
 の写真を参加者に見せて、その時の脳の活動を、脳の機能情報を測定するfMRI
   (functional MRI、機能的MRI)で計測した。

さらに、1、2、3の食品に含まれる、見た目で推定したカロリーの(密度の)順位を聞いた。
また、どのスナック食品にお金を払う気があるか、その順位を聞いた。


【研究の結果】
 ・脂肪と炭水化物を両方を含むクリームサンドビスケットなどを見た時に、報酬系の神経
  回路がより強く活性化されることが分かった。

 ・試験参加者は②の脂肪の多い食品が高カロリーだとの推定はかなり正確にできた
  が、炭水化物を含む食品のカロリーの推定は個人によってばらつきが大きかっ
  た。

 ・また、試験参加者は脂肪と炭水化物を両方を含むクリームサンドビスケットなどが
  一番お金を払ってもよい、と回答した。

【研究の考察】
脳の報酬系は単に摂取できそうなカロリーの増加に比例して活性化するのではない。
脂質と炭水化物(糖質)を両方含む食品を摂取する見込みが立つと相乗作用が発揮され、より報酬系が活性化する。

これが、脂肪と炭水化物の両方を含むクリームサンドビスケットのような加工食品の過剰摂取の原因の1つと考えられる。

炭水化物(糖質)のみ、脂肪のみの食餌と、炭水化物(糖質)+脂肪の食餌への報酬系の反応では異なるメカニズムが存在すると思われる。

実際に、マウスやラットに炭水化物(糖質)のみ、脂肪のみを好きなだけ与える実験を行うと、マウスやラットは食餌量を自ら調整して体重は変わらないが、炭水化物(糖質)+脂肪の食餌を無制限に与えると歯止めがきかず、たちまち太ることが分かっている。

脳の報酬系があなたを騙して炭水化物(糖質)+脂質を食べさせる

いかがですか?

食べれば速やかに血糖値が上がり、すぐにエネルギーとなる炭水化物(糖質)と、そのままエネルギーとして貯蔵できる脂質が揃っている食物をヒトやげっ歯類は見分けて、好むということですね。

エバーグリーン研究室では、炭水化物(糖質)と脂質の報酬系への影響は以前も、『糖・脂質・塩~おいしさの罠』でお伝えしてきました。
実はこのことは、食品業界ではよく研究され、加工食品開発では常識のことのようです。

食品企業は、報酬系を刺激する=自社製品にいかに消費者を依存させるかの研究に余念なく、またそれを公表することもなかったわけです。

上記の研究の結果は、研究者への企業の資金提供による利益相反もなく、参加者も多い介入研究で、信頼性が高くかなり説得力があります。

やはり、我々が幸せに感じている「美味しさ」は、脳の報酬系が我々の行動を制御するための、感覚や感情の1つに過ぎないのです。

美味しい食品や料理は、脳の報酬系を刺激する糖・脂質・塩などの要素をそろえていけばいくらでも作り出すことができるわけです。

しかし、そこに、報酬系による「おいしさの罠」があることをお忘れなく。
脳は美味しさであなたを騙す!! のです。

先ほど例に挙げた飼いネコのように、文明による家畜化=飽食=美食の環境は、本来の味覚を破壊してしまうようです。
そして、報酬系の「欲望」を満たすために、甘く、コクがあり(脂質)、塩味の効いた美食をたらふく繰り返す飽食を嗜好し、やがて肥満、高血圧、糖尿病をはじめとする不健康に陥るわけです。

報酬系を活性化させる刺激糖+脂質や塩味ばかりではありません。
薬物、アルコール、タバコ、糖・脂質・塩分にまみれた美味と飽食、ギャンブル、セックス、ゲーム、SNS、収集癖、物欲、ファッション、新しいもの好き、これらを得るための貨幣…報酬系を満たす刺激と欲望とその依存には限りがありません。

糖・脂質・塩分などは、滅多にありつけないけれど、おなじみの物質でしたから、環境に過剰に存在しなければ生物にとって問題にはなりませんでした。
しかし、現代先進国では人々がSNSでその日に食べたグルメ食のスナップを競ってアップするなど、美食・飽食の限りを尽くしているように見えます。

さらに、文明が進んで発明・発見された薬物やアルコール、ニコチン、カフェインや、社会システムが生み出した貨幣などがもたらす優越感・射幸心・安心などの、生物として未経験の刺激に報酬系のA10ドパミン神経系が過剰に活性化するのは容易に想像できます。


報酬系~依存 との戦いに勝って、心と身体の健康を保つ

現代文明社会の先進国に住むヒトにとっての報酬系の問題点は、報酬系が「依存」を生みやすいことです。

先にお話ししたように、もともと報酬系は、得難い栄養素などを苦労を労わずに探させるために、進化に伴って脳が仕組んだものでした。
昔々、塩や、果物の中の糖類などは、容易く手にはいるものではなかったからこそ、報酬系は努力してでも手に入れさせるように仕向けるようになったのです。
ですから報酬系の指令には強力な強制力があります。

しかし、現代文明社会の先進国に住むヒトは上にあげた「欲望」を容易に満たすことができるので、報酬系の指令はだんだんエスカレートしていきます。
「依存」を招く事柄の特徴は、それを満たしてもまた更に「欲望」が「もっと、もっと」と輪をかけて湧いてくることです。
その結果、報酬系の指令を満たし続けざるを得なくなる「依存症」に陥ります。
薬物依存だけでなく、アルコール、ニコチン、カフェイン、美味と飽食、ギャンブル、セックスなど依存症を引き起こす欲望はなんと身近なものでしょうか。
依存症は「病気」というより、報酬系が引き起こす過剰な環境への適応障害という側面が大きいといえるでしょう。

現在の先進諸国と呼ばれるコミュニティの貨幣経済に代表される社会システムも、社会の構成員の多くを占める企業などの様々な法人や、政治・行政組織やその外郭団体などに属する人々が、「貨幣依存症」に陥って行き詰まっているのかもしれません。
個人的には、ヒトは文明を開いて約1万年を経た現在、様々な依存症の1つとして「貨幣依存症」の問題点をやっと認識し始めたところと感じています。
貨幣依存症」は収入や資産の多いお金持ちや、地位が高いとされる人、国家資格取得者や公務員などの身分を保証されているという人に好発しているようですね。
恐らく、これらの人々は、貨幣を手に入れる目算が付くと沢山ドパミンが分泌され、充足感を得るのでしょう。
同時に、裕福であることに強迫されて、失うことが恐ろしくなり、ますます「貨幣依存症」に陥っていくのでしょうね。
単なる依存症より質が悪い気がします。

なぜこんなにも様々な依存が蔓延るのでしょう?
人間は文明を発明し、ヒトの生存に有利な環境を手にしましたが、脳の報酬系に代表される我々の体の生物学的(生理学的)システムは、文明化された環境に適応するためのものではなかったことを忘れてはなりません。
現代文明の利便性に、生物としてのヒトは適応できていないのです。

現代文明社会の先進国に住むヒトの健康と心の豊かさの鍵は、欲望を満たすことに溺れがちな自分を客観視して、報酬系ではなく、前頭葉の機能=理性で判断し自制することにあるようです。
一方で、ホモサピエンスになって初めて発達した前頭葉の新機能としての理性は、古い脳機能である報酬系のA10ドパミン神経系の生理的指令に打ち勝つことが困難のようです。

「欲望」という報酬系の指令を疑うことなく素直に従っていては、健康や心の豊かさは遠のいていくばかりでしょう。

また、「欲望」と、「それを満たせない不安と恐怖」を巧みに刺激し、貨幣獲得や購買行動を制御しようとする他者が発信する「情報」=広告や商品の宣伝、メディアコンテンツあるいは保険などを鵜呑みにしないという、客観性も必要となるでしょう。

貴方が感じている「美味しさ」「愉快」「快楽」「幸福」「裕福」「安心」が、本当に健康や心の豊かさに結び付いているか、点検してみてもよいかもしれません。

自分の感覚や価値観を常に点検する姿勢が必要なようです。

よろしければ下記のコンテンツもどうぞ。

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?
酵素健康食品のウソ
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム
空腹感を抑える食べ方
糖をためる仕組み、脂肪を消費する仕組み
食品中の脂肪は気にしなくてもOK
関節痛サプリのウソ
主食の罠
熱中症対策、誤解していませんか?
たくさん動いていれば何を食べてもOK
夜に炭水化物を食べないほうが良い
人工甘味料は大丈夫?
朝食を食べないと動脈硬化になる!?
加工食品の摂り過ぎでがんになる⁈

2015年7月3日金曜日

カメはなぜ長生きか?

今日は、エバーグリーン研究室の研究員を紹介します。

彼女は人間ではありませんが、健康に生きることを私たちに教えてくれる生物の大先輩です。
私は、彼女のお世話役として、いつも彼女からいろんなことを教わっています。

ご紹介します。

ヨツユビリクガメの うらら 愛称うらちゃん。
甲長17cm、体重1.1Kgです。
たぶん女の子、約10歳です。


ヨツユビリクガメ ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメ


素敵なお家でしょう?れい主任研究員の力作粘土建築です。

ヨツウビリクガメ(ロシアリクガメ)とは

ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメともよばれます。
ロシアといいながらロシアに生息しているわけではなく、野生ではアフガニスタン、イラン、ウズベキスタン南部、カザフスタン、タジキスタン、中華人民共和国(新疆ウイグル自治区西部)、トルクメニスタン東部、パキスタンに生息するそうです。
食性は植物食です。

カメは人間の大先輩

カメの祖先は、約2億年前、ヒトなどの霊長目の祖先は約6500万年前に枝分かれしたと推定されています。
生物として人間より先輩ですね。

カメは長生き

カメと言えば長生きのイメージがありますね。
うらちゃんのヨツユビリクガメも、正確にはわかりませんが野生で寿命は20~60年、条件がよれば飼育例でも40年は生きるとされています。

もしかすると、私より、うらちゃんのほうが長生きするかも知れません。

うらちゃんの好きな食べ物

うらちゃんの好物は、タンポポの花、ゴーヤの花、パプリカなど黄色い色素を含んだ野菜や花です。
甲羅の色が黄色なので、ビタミンAになるカロテノイドなどの黄色い色素がうらちゃんにとって大事な栄養素のようです。

ほかに、キュウリや、トマト、レタス、モロヘイヤ、カボチャ、ニンジンなどが好きですね。

うらちゃんに倣う正しい食性

給仕として、うらちゃんの食事を毎回観察させていただいていますが、うらちゃんの食事を観察していると、人間やペットなど家畜化された生物の食生活がいかに歪んでいるかがわかります。

うらちゃんは、食に対する依存がありません。

ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメ
足るを知るうらちゃん
決して食べ過ぎず、だいたい1日1回の食事はほぼ一定量しか食べません。

何日か絶食してもこのペースは変わりません。

また、目の前の食物に突然関心をなくす「ごちそうさま」のあとで、人間が沢山食べさせようとして、好きなものを鼻先に持って行っても、絶対にそれ以上食べません。

リクガメフードという、リクガメのための人工餌で、カメが食いつきのよいレシピになっているものもあって、うらちゃんも大好きです。
試しにごちそうさまの後に出してみましたが、これも食べません。

「足るを知る」うらちゃん

カメは「足るを知る」のです。
必要以上に食べれば、健康に悪いということをきちんと脳が認識しています。

脳の中には「快い」と感じる神経回路(これを報酬系といいます)があって、人間は「快い」と感じたことを何度でも繰り返しほしがりますが、カメは必要な分だけ手に入れれば、あとは興味がなくなるようです。
この報酬系と摂食ホルモンが、過剰な食事をとらないように、バランスよくコントロールされているのですね。

うらちゃんの報酬系の「足るを知る」働きは、強固で正確です。
欲望に限りがない・制御できない人間など家畜化された動物とは異なります。

この辺が、カメの長寿の理由の1つのような気がします。

「足ることのない」人間の報酬系

人間は欲望を駆り立てる報酬系を適度にコントロールするよりも、際限なく追求することで進化し・文明を築いてきました。
そこから生まれたイノベーション(発明)は、人間の知性や能力をさらに開発し、さらに脳を進化させたたのは事実です。

しかし、我々は、もともとコントロールされるべき報酬系=欲望を満たすことに血道をあげてきたおかげで、「依存」といういわば文明病を背負ったようです。

薬物、アルコール、タバコ、糖・脂質・塩分にまみれた美味と飽食、ギャンブル、セックス、ゲーム、SNS、収集癖、物欲、ファッション、新しいもの好き、これらを得るための貨幣…報酬系を満たす欲望とその依存には限りがありません。

経済活動が「足ることのない」報酬系をどんどん刺激

現代の文明社会は、これらの報酬系を満たす欲望を刺激することで経済が成り立っています。
現代は情報化社会と言われますが、「情報」は欲望への刺激と読み替えても良いと思います。


文明社会の発展は、「足るを知る」ことで健康で進化の歴史を生き抜いてきた生物の基盤から、どんどん離れています。
それとともに、不自然と不健康を手に入れているようなものです。
しかも、エネルギーと時間とお金を使って…。

ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメ
依存性が高い、タバコ(ニコチン)依存やアルコール依存なら病気という認識があり、治療への道もありますが、毎日の食事で「足るを知る」が働かなくなってしまっているヒトは、いったいどうなるのでしょう。

「足るを知る」で得られる健康と、前頭葉が異常に発達する人間の進化はトレードオフの関係なのでしょうか?

ワイングラス片手の私のそんなつぶやきを、「足るを知る」うらちゃんは、横目(尻目?)で眺めているような気がします。

はい。
今日はこれでワインおしまいにします。
おしりでご指導ありがとう うらちゃん。


報酬系については、大切なのでまた書きますね。

2015年3月17日火曜日

米国マクドナルド 抗生物質を与えた鶏肉の使用をやめる


現代文明社会の食べ物事情は、予想よりはるかに厳しいと思ったほうがよさそうです。

飽食の日本では実感しにくいかもしれませんが、世界的には、確実に食料不足の時代に入っていますし、スピードと収益性を重視する現代社会では、「早い」「安い」「うまい」が尊ばれ、ファーストフード、コンビニ、インスタント食品、ジャンクフード全盛の感じがします。

2015年3月5日 10時41分に掲載のNHK News Webで「米マクドナルド 抗生物質与えた鶏肉の使用中止」との報道がなされました(現在NHK元記事のリンクが切れていますのでマクドナルドのプレスリリースをリンクします)。

McDonald's USA Announces New Antibiotics Policy and Menu Sourcing Initiatives

概要は、
  • 世界的に販売不振のマクドナルドは、食の安全に対する消費者の関心にこたえるため、アメリカの店舗で、今後2年を目途に抗生物質(抗菌薬)を用いて飼育した鶏肉を扱わない方針を発表。
  • アメリカでは、家畜の病気予防と生産性向上のため家畜に抗生物質使用することは一般的で、その結果、抗生物質が効かない耐性菌が出現し、人間の健康にも影響を及ぼす危険性があると専門家が指摘している。
  • マクドナルドは、人工の成長ホルモンが与えられた牛から摂った牛乳についても扱わないことを明らかした。
  • これらの取り組みで、消費者に安全性をアピールし客離れの食い止めを図りたい。
    ホルモン剤, 抗菌薬, 抗生物質, 耐性菌, 発がん性, 依存, 報酬系, 文明, 糖質, 習慣性, 肥満, 脂肪, 食べ過ぎ, 食塩, 食欲, 食生活,

さらに、ロイターReutersによると、このマクドナルドの方針は養鶏業者に経済負担を増加させるといいます。
INSIGHT-Chicken growers set to pay price for no-antibiotic McNugget

概要は、
  • 抗菌薬を使用しないと飼育コストは3%ほど上昇する試算で、マクドナルドは世界最大の外食チェーンとしての購買力を盾に、コスト増加の負担を鶏肉供給会社に強いる、と多くアナリストが予測。
  • アメリカで4位の鶏肉会社Perdue Farmsはすでに2002年から抗菌薬の使用を控える取り組みを始め、同社の鶏の95%超はヒトに使用する抗菌薬なしで飼育されている。さらに、半数以上は抗菌薬が一切使われていない。
  • 抗菌薬を控える飼育によって、飼育場の増設、鶏の死亡率の上昇、ワクチン費の増大、飼育期間の延長などの負担が発生した。
今回は、あえて抗菌薬やホルモン剤入りの肉の健康被害については詳しく取り上げません。
こうしてみると、現代社会と食にまつわる問題の根深さが見えてくるように思います。

食品産業が「早い」「安い」「うまい」消費者ニーズを作った

消費者が仕事に追われ、時間に追われ、「早い」「安い」「うまい」を求めた結果、マクドナルドのようなファーストフードの売れ行きが上がったと思われがちですが、実は成り行きは反対です。
食品を作る企業が「早く」「安く」「うまい」製品を売り込み、消費者が宣伝に乗せられて、効率の良さをよしとする価値観が一般化していったのです。

食品産業が行ったのは、効率の良さの普及だけではありません。
より甘い食品、より脂分の多い食品、より塩分の多い食品を好むような嗜好も、食品業界によって研究され、普及しました。
おいしさの罠

抗菌薬、ホルモン剤はなぜよくない?

安さを追求する陰には、抗菌剤やホルモン剤を与えて家畜を育てる畜産業があります。
家畜の最大の敵は病気ですから、感染症にかからないように抗菌剤を与えます。
少しでも早く成長させ、肉の量を増やして食肉にしたり、たっぷりと搾乳するためにホルモン剤も与えます。

大量の抗菌剤を使った結果、家畜の中にその抗菌剤が効かなくなる耐性菌ができます。
また、これらの薬剤は家畜の中に蓄積して、その家畜を食べたヒトに取り込まれます。
知らず知らずのうちに、抗菌薬を取り込み、体内に耐性菌を作っている可能性もあります。

ホルモン剤は、EUを除いて、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで使用が認められていて、日本では国内での使用は禁止されていても、輸入肉のホルモン剤使用にはおとがめなし、という非常に矛盾した立場をとっています。
EUでは、1988年に成長促進を目的としてホルモン剤を牛に使用することを禁止し、1989年以来ホルモン剤を使用して飼育された食肉や乳製品の輸入を認めていません。
ホルモン剤, 抗菌薬, 抗生物質, 耐性菌, 発がん性, 依存, 報酬系, 文明, 糖質, 習慣性, 肥満, 脂肪, 食べ過ぎ, 食塩, 食欲, 食生活,

ホルモン剤は乳癌などのホルモン依存性の癌の原因となっている懸念もあります。
日本での牛肉消費量の増加に伴って、ホルモン依存性癌の患者数が約5倍になったとする報告もあります。
半田 康ら. K3-4 牛肉および癌組織のエストロゲン濃度 : ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生増加との関連(高得点演題6 腫瘍,高得点演題プログラム,第62回日本産科婦人科学会学術講演会).日本産科婦人科學會雜誌 62(2), 614, 2010-02-01

ホルモン剤の使用の是非については、アメリカ+オーストラリア+カナダ+ニュージーランドなどのホルモン承認諸国対EUで、激しい論戦を展開しています。
互いに、畜産、酪農は重要な輸出産業なので、市場の取り合いをしているわけです。
でも、この論戦はEUの言うことに理があるような気がします。
できれば生理的でないホルモン剤を含まないほうが安全でしょう。
冒頭のNHKの記事のリンク切れも、先日発効した日豪EPAと、交渉にもめているTPPとの兼ね合いの報道管制では?と疑いたくなりますね。

健康志向も食品産業の戦略に利用?

マクドナルドに追随して、早くて安くて旨い食べ物を売る企業が、どんどん出てきました。
市場を独占できなくなって、経営が苦しくなったマクドナルドは、今度は消費者の健康意識を利用し、抗菌薬やホルモン剤の使用をやめたと宣伝して、健康志向のイメージをつけようと考えたのではないかと想像できます。

なぜなら、中止すると発表されたのは鶏肉と牛の乳製品だけ。
本命のハンバーガーの牛肉には、相変わらず抗菌薬やホルモン剤が使われるようです
ホルモン剤, 抗菌薬, 抗生物質, 耐性菌, 発がん性, 依存, 報酬系, 文明, 糖質, 習慣性, 肥満, 脂肪, 食べ過ぎ, 食塩, 食欲, 食生活,

我々の立場で考えれば、多少なりとも怪しい薬が使われなくなることはありがたいことですが。
ただ、理解しておかなければいけないのは、私たちの味覚は、食品・外食産業の戦略によって変えられているということです。

確かに、簡単に食べられる便利な食品ができたことで、女性が社会に出ていくゆとりが生まれた、というように、我々は多くの恩恵を受けています。
忙しいときに、マクドナルドで済ませられるのは実にありがたく、うまく利用すればよいと思います。

ですが、これからは、お手軽な食べ物を目にしたら、そこには危険が潜んでいるということを思い出してください。
リスクを知りつつ「便利さ」「おいしさ」をうまく利用したいものです。

作られたおいしさに左右されない味覚を持とう

本来、食は生き物の生活の基本です。
大事な食事は、自ら食材を仕入れ、場合によっては飼育・栽培して、作って、おいしくいただくものでした。
忙しく、過剰な味のとりこになって、外食や加工食品をこんなに頻繁に利用しているライフスタイルが、消費者の健康を顧みずに利益を追求するこれらの産業・企業・規制当局の暴走を許したのではないのでしょうか?

多くの人が、本来、嗜好品やごちそうとしてたまに食べるものだった、甘味、高カロリー食(揚げ物、炒め物など)、加工食品などに慣れてしまいました。
それでなければ物足りなくなり、味覚もより味の濃いもの(塩、砂糖、油脂)に依存的になってしまっていると思います。
おいしさの罠

人間の味覚は、想像以上に簡単に変わります。
アメリカで食べられている、ショッキングピンクや紫や緑のケーキに違和感を持てるうちに、食品産業の企てに流されない確かな「味覚」を取り戻さないといけませんね。

食べ物・栄養についえはこちらも
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠

2015年1月24日土曜日

糖・脂質・塩~おいしさの罠

健康に良い食べ物、良くない食べ物のそれぞれの特徴はなんでしょうか?

子供のころ、母親にお菓子は控えて、野菜を沢山食べなさいと促された経験は誰しもお持ちと思います。


さて、このように皆さんがイメージする、健康に良い食べ物の典型が、ビタミンと食物繊維が豊富な「野菜」で、健康に悪い食べ物の典型が、味が濃い目のお菓子の類でしょう。

  • 健康に良い食べ物=あまりおいしくない、あまり箸が進まない
  • 良くない食べ物=とてもおいしく、癖になる

どうでしょう、みなさん同意なさるのでは?

行政の健康政策が成功しないのには理由がある

今日は、行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、なぜ、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しないのかを考察したドイツのキール大学での研究を紹介します。
⇒How to Combat the Unhealthy = Tasty Intuition: The Influencing Role of Health Consciousness
⇒Health consciousness: Do consumers believe healthy food always tastes bad?

この研究をした、キール大学のロバート・マイさんとステファン・ホフマンさんは、

「近年、健康的食生活が流行しているが、消費者は相変わらず健康に良くない食品を食べすぎている。原因は、健康に良くないものは、大抵おいしいもので、おいしいかどうかが、(消費者が)食べるものを選ぶ基準だからだ」
と書いています。

【研究テーマ】
  • 行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しない理由は?

【研究の結果、わかったこと】
  • この研究の参加者に、砂糖と脂肪の含まれる量が違うヨーグルトを与えて、どのヨーグルトを選ぶかを観察したところ、含まれる成分が健康に良いという情報があったからといって、健康的なヨーグルトを選ぶとは限らなかった。
  • 健康志向が全くない人は、健康情報にも全く興味がないので、含まれる成分が健康に良いという情報も効果がない。
  • ある食品が健康に良いものだという情報が与えられると健康志向の人たちは少しは食習慣を変えるが、健康志向のない人たちは、情報の量に関わらず、健康的なヨーグルトにおいしいものはないと信じている。
  • これらのことから、おいしいかどうかが、健康志向の人にとっても、そうでない人にとっても食品を選ぶとき重視されて、キャンペーンで健康意識を高めたからといって、簡単にこれを乗り越えられるものではない。
研究者たちは、

  • 「行政機関は、商品の包装表示や食品会社のマーケティングを改善させるだけでなく、味そのものも改善し、また、健康的な食事をすることが、粋で“クール”と消費者が思えるような、消費者の感情に訴える社会活動に資金援助するなどの、これまでとは違う健康的食品の宣伝方法を考えるべきである」
  • 「世界的に流行する肥満を抑えるためには、食品会社、消費者、行政が互いに足を引っ張り合うのをやめ、みなにとってメリットのある方法を見つけ、全体的にアプローチすることが早急に必要だ」

と結論しています。
皆さんはいかがお考えでしょう。

おいしさは砂糖・脂肪・食塩で決まる

この研究で用いられたヨーグルトでは、ヨーグルトに含まれる砂糖と脂肪がおいしさのポイントのようですが、実は、食品の味付けのキーポイントとなるのは、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」であり、これは、食品業界では常識のようです。

おいしくて癖になる食べ物の代表選手、ポテトチップスを思い出してください。
まさに、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」の塊です。

ほかにも、たとえば、ハンバーガーのソースはケチャップの甘さにマヨネーズの油っぽさにそれぞれの調味料中の食塩のしょっぱさがハーモニーとなっています。
天ぷらでも同じです、衣の油に、甘辛い天つゆがよく合いますよね。

この「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」を味付けの基本にして、ほかの風味を加えて、加工食品は開発されています。
これらを基本に消費者が癖になる味付けを日夜研究しているのです。

『フードトラップ』が明かす食品業界の罠

ここで、一冊の本を紹介したいと思います。

マイケル モス 著、 本間 徳子 訳 日経BP社刊
「フードトラップ-食品に仕掛けられた至福の罠」

砂糖・脂肪・塩の習慣性を利用したビジネス

この本の原題は写真の表紙にもあるように“Salt, Sugar,Fat”でまさに、塩、砂糖、脂肪です。

この本は、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性(癖になる)を巧みに利用した、加工食品や清涼飲料水、菓子などを問題視して警告を鳴らしています。

この中にも繰り返し、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性と危険性が登場します。
それらが、食品会社の研究所で研究しつくされている様子がわかります。

アメリカの食品会社が、1980年代以降、消費者が癖になる「砂糖」「脂肪」「塩」を多く含んだ商品を次々に開発して、売り上げを伸ばし、株主の要求に答えていく様子やこれらの商品が肥満や虫歯などを増加させ、ひいては病気の原因となっていることへの、医療従事者や、研究者などからの批判を企業がうまくすり抜ける様子もかかれています。

ビジネスの根底にある文明社会が生み出した欲望

しかし、著者は、一方的に食品会社の「悪」を暴くという論調ではありません。
資本主義と企業間競争、株主への配当、消費者の嗜好と欲望、欲望を利用するマーケティング・メディア、規制当局と企業の駆け引き、農業などの産業と企業と政治など、現代文明社会全体の問題としてとらえているところが真摯さを持っていると思います。

私たちは、改めて、「おいしさ」などの自分の欲望がどのようなものかを考えなければなりません。

少なくとも、味覚と嗅覚が作り出す「おいしさ」は、それをもたらす、糖質、脂肪、塩分などが、人類の歩んだ歴史の中で、長らく得難いものであったからこそ、発達した感覚であることは間違いないことです。

砂糖・脂肪・塩の必要性から「嗜好」が生まれた

私たちは、塩分がなければ、生きていけません。
山間地域では昔から塩は貴重品でした。

脂肪

脂肪は苦労して得た獲物にほんの少し含まれるものでした。
野生の獲物は、家畜と違い脂肪は少ないのです。

搾油技術が発達したのも長い歴史の中でごく最近のことですので、食用植物油は存在しませんでした。

糖類

糖類の精製技術の完成も、同様に長い歴史の中でごく最近のことですので、私たちの祖先は精製されていない炭水化物のほんのりした甘味を感じる能力を時間をかけて発達させました。
ご飯を口にいれて、長く噛むと甘みを感じる実験を経験した方も多いと思います。
これは、ヒトは唾液の中にアミラーゼという消化酵素があるからこそ味わえます。

哺乳類の中で、唾液にアミラーゼを含む種はごく少数です。
たまたま、アミラーゼを分泌する能力を持った種が、ドングリやナッツ、根菜や球根、未精製の穀物の中の糖質を甘いと感じるようになった。
これらの種は、好んで穀物を多く食べたことで、厳しい環境を生き残った。
さらに、火による調理により、糖質を脳の効率の良い栄養素として充分に使えるようになり、人類は脳を発達させることができたと考えられます。

生き残るための報酬系が仇に

報酬が与えられたときに快感を感じるように働く脳のシステムを報酬系といいます。
私たちの味覚・嗅覚のもたらす「おいしさ」は、まさに報酬系が働いた結果得られる快感です。
貴重な栄養素を感知して、それを摂取させるように長い年月をかけて脳が鍛えられてきたといえます。

いいかえれば、「おいしさ」などの欲望は、報酬系の挙動に過ぎません。
欲望を満たすことが「良いこと」と脳に思い込まされているということです。

このように私たちの祖先が、長い時間を経て環境に適応して、安定的に栄養素を獲得できる遺伝子を獲得するうちに、やがて人類となり、厳しい天候をしのぐため、捕食者から逃れ逆にそれを狩るため、飢えを克服するため、火の利用の発明、道具の創意、被服の発明、定住・農耕などを始めとする文明を発達させてきました。
それは、ある意味では、素晴らしい人類の英知の結晶でしょう。

一方で、私たちの英知は、最も基本的な生き物としての自分の身体について、まだ何も理解していないとも言えるでしょう。

生物学的新文明社会を目指す 

私たちの身体は、飽食とほど遠い環境=飢餓を生き抜いてきた遺伝子で設計されています。
欲望をもたらす報酬系の機能は、現代文明社会の飽食に対応したものではありません。

欲望という、古いシステムに騙され、欲望に頼り、それを経済活動などの社会の営みに利用する悪循環をどこかで断ち切らない限り、先に紹介したキール大学の研究者達のいうような、新しい社会システムを作ることはできないと思います。

自然の流れに従って進化を遂げてきた報酬系による欲望を、満たすことで文明が進歩したことも事実です。
でも、欲望をどんどん満たせば、古い遺伝子しか持たない私たちの体はその早い食性の変化についていけずに病気になる。
これに打ち勝つには、欲望に流されない確かな意志で、消費に頼らない新たな価値観、新たなおいしさを創造していくことが大切と思います。

生物の仕組みを理解した、新しい文明社会を目指す必要がありそうです。

食べ物については、こちらもご覧ください。

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
エナジードリンクは飲んでもOK?
加糖飲料の危険性が次々証明
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?

食用油
健康に良い油?悪い油?

2014年12月20日土曜日

砂糖入り飲料のリスク~テロメアが短縮?



エバーグリーン研究室でも、適度な糖質制限をおすすめしていますが、今日は、特に砂糖入りの飲料が身体に悪い決定的な研究報告がありましたので、紹介します。
この研究を理解するためにちょっと基礎知識を勉強しましょう。

テロメアの短縮で老化する

身体が成熟した後(つまり大人になった後)も、私たちの体は、必要に応じて細胞分裂して体を修復しています。
組織を構成する細胞が傷ついたり、寿命を迎えたりして、組織の細胞が欠落するとそれを補うわけですね。

この時に働くのがご存知の遺伝子DNAです。

遺伝子DNAは細胞の細胞核の中で普段は、立体的によじれるよううにして染色体の形をとっています。

テロメア、老化、アンチエイジング、細胞核、糖質制限、テロメラーゼ、砂糖、リスク、細胞分裂、細胞老化
コイルのようなDNA二重らせんの先っぽに濃いブルーと水色で書かれているのがテロメア。
細胞分裂が起こると二重らせんが紐解かれて、DNAのコピーを作るが、その際テロメアが短くなる。
短くなったテロメアを伸長させる酵素、テロメラーゼの働きが悪くなることが、老化の一因と考えられている。


ヒトでは46本ある染色体は、細胞分裂のときにほどかれて、コピーされます。

この染色体の4つの端っこにテロメアがついています。

コピーして複製されたDNAは端っこのテロメアがちょっとだけ短くなりますが、これを修復する酵素があって、のばされて元と同じ長さになります。

細胞分裂を繰り返すたびに、端っこのテロメアが短くなり、これを修復するわけですが、この修復が働きにくくなることが老化の1つの原因と考えられています。

砂糖入り炭酸飲料で、テロメアが短縮

今回の研究は、このテロメアの長さを、アメリカの20歳から65歳の成人5309人について調べました。
その結果、

  • 砂糖入りの炭酸飲料をよく飲む人は、白血球のテロメアがより短い


ことがわかりました。

100%のフルーツジュース、ダイエットソーダ、非炭酸の砂糖入り飲料(コーヒーや紅茶に砂糖を入れて飲むなど)を飲むことは、テロメアの長さと統計学的にあきらかな関連はありませんでした。

研究者は、砂糖入りの炭酸飲料を常飲することは、細胞を老化させてメタボリックシンドロームになりやすくすると結論しています。


砂糖入りの飲料のリスクを明らかにした研究はこのほかにもたくさんあります。

リスクとなる疾患も、2型糖尿病、高血圧、肥満、脳卒中、心疾患、癌などたくさんあります。

砂糖など糖類のリスクについては、下のページもご覧ください。
⇒ブドウ糖と果糖の毒性
⇒糖類の依存性
⇒糖類を食べるとおなかがすく?
⇒グルコーススパイクに注意
⇒糖毒性で糖尿病予備軍に??
⇒果糖はブドウ糖より危険
⇒インスリンは肥満ホルモン?!
⇒「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い

砂糖は味覚を変えてしまう

砂糖は味覚も変えてしまうようです。
こんな研究もあります。
Taste perception and implicit attitude toward sweet related to body mass index and soft drink supplementation

  • 肥満ないし太り過ぎの人は、正常体重の人に比べて、塩味や甘味の感受性が鈍く、より強い甘味を好むようになる

という研究です。

もともとは、砂糖の味を特に好きではなかった人が、1か月間、砂糖入りソフトドリンクを飲み続けた結果、砂糖への嗜好度合い(好んで摂取する)が2.3倍になりました。

このように、砂糖入りソフトドリンクを飲み続けると正常体重の人も味覚が鈍って甘味を好むように変化することが研究で示されました。

砂糖を規制しないのはなぜ?

では、このような砂糖の有害性を政府は規制していないのでしょうか?

アメリカではニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ前市長が中心となり、大きなサイズ(473ミリリットル以上)の砂糖入り炭酸飲料と砂糖入りコーヒーや紅茶などを映画館やファーストフード店、飲食店で販売することを禁止する条例をニューヨーク市が施行しようとしました。

しかし、米国飲料協会がこの条例は違法だとして提訴して、ニューヨーク市が敗れました。
ニューヨーク市は控訴し、再び敗れ、上告していて、いまだに決着がついていません。

また、カリフォルニア州では、砂糖入りの清涼飲料に、肥満、糖尿病、虫歯の警告表示を義務付ける法案が州議会に提出されましたが、2014年7月に僅差で廃案になりました。

食品・飲料・外食産業による圧力と、規制当局とのいたちごっこのようです。

一方で、カリフォルニア州では2005年に砂糖入り炭酸飲料やファーストフードを公立学校で販売することを規制しています。

また、イギリスの新しい学校での食事基準では、
  • 甘いものや揚げ物など脂肪分に富む食品は抑制
  • お菓子は禁止
  • 飲み物は水が基本
  • 飲料への砂糖や蜂蜜などを添加は全量の5%まで
  • フルーツジュースは150mLまでに制限
など、かなり厳しく糖質を制限しています。
Education Secretary Michael Gove announces a new set of standards for food served in schools.

自己責任で砂糖の誘惑と戦う


大人は、自己責任で健康管理をするしかなさそうです。
私たちに備わっている報酬系に自分で打ち勝たないと、われわれの欲望を、様々な方法で刺激し続ける、産業界の餌食になってしまいますよ。

日本人は欧米の人に比べれば、野菜をたくさん食べるし、甘すぎるお菓子は食べていないと感じられるかもしれませんね。
でも、私たちが子供のころお店で売っていたお菓子を思い出してください。
今、スーパーに並ぶラインナップがとがどれほど充実して、おいしく、魅力的になったことか。

行政が私たちの健康を考えて規制してくれていると思うのは大きな間違いです。
自己責任という言葉で行政はそれとなく言い訳しているのです。
産業界が稼いで税金を納めてくれなければ、行政は成り立ちませんからね。
私たちは、お金を払っておいしい思いをしたお釣りに、不健康をもらっているわけです。

とはいえ、やっぱりスイーツは食べたい!

産業界や行政に惑わされず、正しい知識を読み解く力を持って、健康で美味しい人生を送りましょう。

糖質を制限したレシピ、エバーグリーン研究室では れい 研究員がいろいろトライしています。
ご覧ください。

クッキー
低糖質チョコレートクッキー
低糖質アーモンドクッキー
低糖質ゴマクッキー
低糖質ジンジャークッキー
低糖質カシューナッツ アイスボックスクッキー
低糖質 ごまのビスコッティ
ケーキ
低糖質チョコレートブラウニー
低糖質クルミケーキ
低糖質バナナケーキ
低糖質リンゴ&ヨーグルトケーキ
低糖質小麦粉なし!リンゴケーキ
低糖質みかんケーキ
低糖質かぼちゃケーキ
サイリウムのお菓子
低糖質サイリウム黒豆大福
低糖質マンゴーババロア
豆乳ブラマンジェ
和菓子
低糖質サイリウム黒豆大福
低糖質黒豆羊羹
パン
低糖質大豆パン 
低糖質ごま大豆パン
低糖質チーズ大豆パン
低糖質ガーリック大豆パン
低糖質大豆&にんじんパン
低糖質ごぼう大豆パン
低糖質シナモンパン
低糖質シナモンロール
低糖質紅茶パン
低糖質ラズベリー&クリームチーズパン
低糖質 小麦粉なし!チョコパン
蒸しパン
低糖質チーズ蒸しパン
低糖質きなこ蒸しパン

よろしければ下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
エナジードリンクは飲んでもOK?
加糖飲料の危険性が次々証明
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の恐ろしい結果、終末糖化産物(AGEs)とは?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備群!
糖毒性で糖尿病予備群に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の末路、終末糖化産物(AGEs)とは?
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

2014年9月22日月曜日

脂肪細胞が食欲をコントロールする


前回は脂肪細胞が脂肪滴(脂肪)に脂肪をため込んで、肥大化脂肪細胞となると脂肪組織が炎症して、全身に悪影響を与えることをお話ししました。

⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!

今日は、脂肪細胞が食欲をコントロールしていることをお話しします。
この仕組みがわかると、なぜ人が太って行くのかが理解できると思います。

正常な食欲のコントロール

下の絵を見てください。
実は、脂肪組織の成熟脂肪細胞はホルモンを出して食欲をコントロールしています。

ダイエット 痩せない 内臓脂肪 食欲 コントロール 満腹中枢 摂食中枢 脂肪を燃やす 成熟細胞 太る 体質 カロリー レプチン アディポネクチン 脂肪細胞 脂肪燃焼 摂食中枢 満腹中枢 肥満 痩せホルモン イラスト おにぎり 脂肪が燃える エネルギー摂りすぎ おなかいっぱい 
レプチンと脂肪細胞の関係

適度に脂肪を貯えた成熟脂肪細胞は、食事でのカロリー摂取をモニターしていて、

①エネルギー摂りすぎた! もう十分

の信号を感知します。
すると、のように、脂肪細胞から出るホルモンの1つで、痩せホルモンとも俗に呼ばれるレプチンを出します。

レプチンは血液に入って、脳で

③満腹中枢を働かせて、同時に、摂食中枢を抑えてくれます。

すると、

④のように、もう十分おなかいっぱい、身体に悪いからもう食べるな!!信号を出して、

同時に体中の脂肪細胞に、脂肪を燃やしなさい!!信号を送ります。


こうして、成熟脂肪細胞は自分自身を含めて、余計な脂肪をため込まないように、食欲と脂肪燃焼をコントロールして、肥満を防いでくれているのです。

食べ過ぎが続くと食欲がコントロールできなくなる


ところが、このレプチンが出ているのに、食事を続け、食べ過ぎ、カロリーオーバーが続くとどうなるでしょう。

もちろん、成熟脂肪細胞はせっせと脂肪を貯め続けて、太り、やがて肥大化脂肪細胞になります。
ここら辺の仕組みはこちらをご覧ください⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!


遺伝子 快感 報酬系 ダイエット 痩せない 内臓脂肪 食欲 コントロール 満腹中枢 摂食中枢 脂肪を燃やす 成熟細胞 太る 体質 カロリー レプチン アディポネクチン レプチン アディポネクチン 脂肪細胞 脂肪燃焼 摂食中枢 満腹中枢 肥満 痩せホルモン イラスト おにぎり 脂肪が燃える エネルギー摂りすぎ おなかいっぱい 
肥満の悪循環 満腹感がなくなる

すると、上の絵のように
(1)エネルギー摂りすぎた! もう十分 信号

を受けて、肥大化脂肪細胞はどんどんレプチンを出します(2)。
しかし、
多すぎるレプチンに脳の満腹中枢と摂食中枢は鈍感になり(3)

もう十分おなかいっぱい、身体に悪いからもう食べるな!!信号と、
脂肪を燃やしなさい!!信号(4)

出さなくなってしまいます。

こうなると、(5)のようにまた食欲が出て、全身の脂肪は燃えにくくなる。
さらに、エネルギー源がどんどん入ってくるので、脂肪細胞は脂肪を貯め、また、レプチンを出す……。

これが肥満の悪循環です。


人は本来、突然太ったりしない生物

人は急に太るのではありません。
長年の運動不足と過食を積み重ねて、満腹感が麻痺してきてだんだん太り、それとともに皮下脂肪と内臓脂肪の肥大化脂肪細胞が増えます。

これが続いて、人は太り続け、さらに、内臓脂肪では炎症が起こり続けているのです。

これが肥満が万病の元といわれるメカニズムです。


私たちは、自分の身体が求めてくる食欲などの、欲求や欲望をそのまま信じてはなりません。
欲求があっても、それは本当に必要でなく、害になることも多いのです。

欲求や欲望を満たされることを追い求める脳の報酬系が出来上がったのは、太古のこと。
飢餓に苦しみ、寒さに耐え、冬眠の必要があった生物の時代の遺伝子を、私たちは受け継いでいます。

食物に定期的には出会えなかった時代を思い描いてください。
お腹がすいたと感じたときに、一生懸命食物を探して食べたヒトは、生き残ることができました。
このような、「お腹がすいたら食べることで幸福感を感じた」ヒトの遺伝子が、後世に生き残ったわけです。

この「快感」を感じる脳の仕組みを報酬系といいます。
報酬系には、その快感を追い求めさせる性質があります。

空腹感を満たすという快感を追い求めること、つまり、積極的に食物を探して食べることは、太古の環境に合わせて、報酬系が仕組んだものなのです。

残念なことに、この報酬系は、(お金があるなどの条件がそろえば)食物がいくらでも食べられる現代の先進国に住むヒトでも、同じように働いています。
そして、私たちを着々と太らせていきます。

食品産業だけでなく、この報酬系のおかげで成り立っている産業もたくさんありますね・・・
その罠にはまらないように、しっかりと理性を働かせることが、現代を生き抜くということなのでしょう。

よろしければこちらも読んでください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
エナジードリンクは飲んでもOK?
加糖飲料の危険性が次々証明
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の恐ろしい結果、終末糖化産物(AGEs)とは?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備群!
糖毒性で糖尿病予備群に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の末路、終末糖化産物(AGEs)とは?
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム


2014年5月17日土曜日

お酒と糖類の依存性

「酒は百薬の長」は本当でしょうか?


冬の熱燗、夏のビール、お酒がおいしいシーンは多いですよね。また、お酒が持つ作用で、楽しくなったり、リラックスできたり、メリットもあります。
でも、お酒の飲みすぎで二日酔いになったり、長期に大量に飲酒すると肝臓病や膵炎、喉頭がん、食道がんや大腸がんになったり、デメリットも多いようです。

アルコールと糖は似た化学構造


糖とアルコールの化学構造

ここでも、ちょっとお酒を化学的に見てみましょう。
お酒の主成分はエチルアルコールです。
私たちが普段「アルコール」と呼んでいるのは、「エチルアルコール」のことです。
上の図を見ると、アルコールも果糖やブドウ糖も同じ形を持っているのが分かります。
エチルアルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに変えられます。
上の図の青とピンクで囲った部分に注目です。
青い部分のC-OHはアルコール性水酸基といって、条件がそろえば簡単にピンクで囲った部分のH-C=Oの形に変換されます。
H-C=Oの形はアルデヒド基といって、酸化されやすく(還元性があるともいう)、ほかのものと反応しやすい性質をもっています。
そのために、体に吸収されると、体の構成成分であるDNAやタンパク質と結びつきやすい性質があります。
糖がくっつくので「糖化」と呼びます。
糖化されるということは、余計なものが結合(付加体産生)するのですから、DNAやタンパク質は正常に働けなくなります。
これがアルデヒドの毒性です。
AGE(エージーイー)って聞いたことがありませんか?
タンパク質に糖が結合(「糖によるタンパク質の糖化」といいます)したもので、老化物質とされています。

話がそれました。
アルコールからできるアセトアルデヒドが悪者だというところから仕切り直します。
アセトアルデヒドができたことを察知すると、肝臓は2型アルデヒド脱水素酵素を使って、アセトアルデヒドを毒性の低い酢酸の形にしてから、血中に放出します。
酢酸は皆さんご存知の「お酢」で、毒性はありません。

このように栄養や成分の形を体内で変えることとを代謝といいます。
飲んだアルコールの量が多いと、どんなに肝臓ががんばって働いても代謝が追いつかなくなります。
そうなるとアセトアルデヒドを酢酸の形にしきれずに、血中にアセトアルデヒドが出てきてしまいます。
アセトアルデヒドの血中濃度が高いと顔が赤くなり、頭痛、吐き気、嘔吐などの中毒症状がでます。
そう、これが二日酔いです。
糖と同様に、アルコールも取りすぎるとよくないようです。

依存性・習慣性=アルコールと糖の怖い共通点

アルコール依存症(中毒)という病気があります。
お酒を飲まずにいられなくなる病気です。
怖いですよね。

アルコールと糖には、
摂らないでいることができなくなる=依存性
繰り返し摂りたくなる=習慣性
という点が共通しています。

誰でも褒められると嬉しくて、また次も頑張ろうと思いますよね。
これは脳の「報酬系」と呼ばれる神経回路が働くためです。
もう少し詳しくお話しすると、脳の報酬系が刺激されると、快楽物質と呼ばれるドパミンが脳内に放出されます。
このドパミンこそ、「気もちよい」と感じさせる物質。
ドパミンは他にも、達成感、やる気、集中力を高める作用を持っています。
アルコールも糖も、吸収されて脳に入ると脳のこの回路を刺激してドパミンを放出させる作用を持っているので、脳は心地よさ、楽しさを感じます。
お酒で楽しくなったり、気が大きくなったりするのもドパミンのこの作用です。
脳と報酬系では、ドパミンによる快楽を得るために、ドパミンを放出させるものをさらに、繰り返し求める性質があります。
これが依存性・習慣性の原因です。
このような、「報酬系」よる欲望の仕組みは、生物の進化の歴史上で、生物が常に飢餓と欠乏に見舞われていたために獲得した性質です。
これらの仕組みを理解して節制しないと、脳が発する際限ない欲望に負けて、必ず健康を損なうことを覚えておいてください。

さらに、アルコールにも、糖にも、耐性といってだんだん欲しがる量が増えてゆく共通点もあります。
同じ刺激を繰り返し受けているうちに、慣れてしまい、もっと欲しくなるのですね。

お酒は毎日飲んでいると、肝臓のアルコールを代謝させる酵素が多くなって、だんだんお酒に強くなり、同じ酒量では酔いにくくなり酒量が増えてゆきます。
糖類が入った甘いものでも、同様です。甘いものをちょっとだけ食べると、もっと食べたいと思いませんか。
そして、今食べたスイーツより、さらに甘いスイーツを求めて、量も甘さも増えてゆくことが多いはずです。

まとめると、
糖類とアルコールには

○依存性(中毒性)・習慣性があり、摂らないでいることができなくなる
○繰り返し摂りたくなる
○だんだん満足するために必要な量が増えていく

という怖い性質があります。

アルコールの場合は、飲みすぎれば二日酔いになったり下痢をしたりして、アルコールの毒性を自覚してブレーキがかかりやすいですが、糖類は甘くおいしいだけで、短期的には毒性を自覚しにくいので、より危険だとも言えますね。
そして、時間をかけて太っていくのです・・・。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い

果糖は別腹

果糖は別腹の理由を説明しましょう。

果糖は、文字通り果物に多く含まれる単糖ですが、その美味しさのために多くの加工食品にふんだんに使われています。
言うまでもなく美味しいものは、食べ過ぎの危険と裏腹です。
果糖の性質と果糖に対する生物の生理ををよく理解しておくとよいと思います。

①満腹を感じにくい
果糖を摂っても、直ぐには血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が上がらないため、インスリンが出てきません。
インスリンは脳の満腹中枢に働いて「もう食べるな」という信号を出しますが、これが働かないのです。

②果糖を摂るともっと食べたくなる(食欲亢進)

果糖は脳の視床下部という食欲をコントロールする場所でAMPKという酵素を活性化させて、食欲を亢進させることが分かりました。
さらにAMPKが活性化すると、肝臓で作られるブドウ糖の量も多くなることがわかりました。

Cha SH, Wolfgang M, Tokutake Y et al: Differential effects of central fructose and glucose on hypothalamic malonyl-CoA and food intake. Proc
Natl Acad Sci USA 2008; 105: 16871-5.

Yang CS, Lam CK, Chari M et al: Hypothalamic AMP-activated protein kinase regulates glucose production. Diabetes 2010; 59: 2435-43.

Kinote A, Faria JA, Roman EA et al: Fructose-induced hypothalamic AMPK activation stimulates hepatic PEPCK and gluconeogenesis due to
increased corticosterone levels. Endocrinology 2012; 153: 3633-45.

③痩せホルモンが出てこない

食欲や体重をコントロールする、俗に「痩せホルモン」とも呼ばれるホルモンがあります。
レプチンといって、脂肪組織から分泌されるホルモンです。
レプチンは、満腹のときのようにエネルギーが余っていると、脳の視床下部に作用して、全身の細胞にエネルギー(カロリー)を消費させるようにシグナルを出します。
このとき、「もうおなかが一杯だから食べなくていいよ~」という満腹サインも出します。
レプチンの濃度は血液中のブドウ糖の濃度、つまり血糖値が上がると上がります。
ところが、果糖を摂っても直ぐには血糖値は上がらないためにレプチンの分泌は増えません。
ということは、満腹サインも出ませんし、カロリーを消費させるシグナルも出ないのです。

④食欲が湧くホルモンを下げない

レプチンとは反対に、食欲が湧くホルモンがあります。
グレリンといって、血糖値(血中ブドウ糖値)が上がると濃度が下がり、満腹サインを脳に出してくれます。
でも、果糖は摂っても直ぐには血糖値が上がらないので、グレリンが下がらず、満腹サインが出ません。

①~④をまとめると、

果糖を摂ると、満腹を感じにくく、もっと食べたくなり、カロリーが消費しにくくなる、

つまり、果糖は別腹、ということです。


糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い