いきいき!エバーグリーンラブ: 脂肪
ラベル 脂肪 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 脂肪 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年6月23日木曜日

食品中の脂肪は気にしなくてもOK

私たちエバーグリーン研究室では、単純糖質(遊離糖質=砂糖、グルコース、果糖)などを多く含む“高エネルギー効率”“高エネルギー密度”の食品から、たくさんカロリーを摂取することに警鐘を鳴らしています。
⇒“エネルギー効率”“エネルギー密度”の問題点

脂肪制限や糖質制限など、ダイエットや健康管理のやり方はいろいろ議論になりますが、今日はちょっと注目すべき研究をご紹介します。


高脂肪の地中海食は体重とウエストサイズを減らす

Effect of a high-fat Mediterranean diet on bodyweight and waist circumference: a prespecified secondary outcomes analysis of the PREDIMED randomised controlled trial

The Lancet Diabetes & Endocrinology: Mediterranean diet high in healthy fat does not lead to weight gain, according to randomized trial

【研究の参加者】 
 ・2003~2010年に、スペインの11の病院で2型糖尿病と診断されたり、心臓病・血管病の危険因子(喫煙、高血圧、肥満、脂質異常症、メタボリックシンドローム)を3つ以上持つと診断された55-80歳の男女7447人で、全体の90%以上が過体重または肥満。

【研究の方法】
 ・参加者7447人を

 ①オリーブオイルが多く、摂取カロリー制限をしない野菜の多い地中海食に2,543人
 ②ナッツが多く、摂取カロリー制限をしない野菜の多い地中海食に2,454人
 ③脂肪をすべて避けるように指導された低脂肪食に2,450人
 
の3グループにランダムに分けて、

 ・その中から一部をサンプルとして、ランダムに選んで血液と尿検査を行った。
 ・5年間観察して、5年経過した時点での、体重、ウエストサイズ、食事内容を摂取総カロリーなどを測定して比較した。

【研究の結果】
 5年経過した時点での、
 ・脂肪摂取量が、
   ①のオリーブオイルが多いグループでは増加(+1.8%)
   ②のナッツが多いグループでは増加(+1.8%)
   ③の低脂肪食グループでは減少(-2.6%)

 ・たんぱく質と炭水化物からのエネルギー摂取量の割合は、
   ①のオリーブオイルが多いグループでは減少
   ②のナッツが多いグループでは減少
 
 ・平均すると、どのグループでも体重は少し減少した。
 ・体重減少
   ①のオリーブオイルが多いグループ(-0.88kg)
   ②のナッツが多いグループ(-0.40kg)
   ③の低脂肪食グループ(-0.60kg)
 
 ・体重減少は、
   ③の低脂肪食グループに比べて、①のオリーブオイルが多いグループで統計学的に明らかに減少していた。
 
 ・平均すると、どのグループでもウエストサイズは増加した。
 ・ウエストサイズは   
   ①のオリーブオイルが多いグループ(+0.85cm)
   ②のナッツが多いグループ(+0.37cm)
   ③の低脂肪食グループ(+1.2cm)

 ・ウエストサイズの増加は、
③の低脂肪食グループに比べて、
①のオリーブオイルが多いグループと
②のナッツが多いグループ(+0.37cm)で統計学的に明らかに少なかった。

【研究のスポンサー】
Spanish Government(スペイン政府), CIBERobn(肥満と栄養関連疾患の研究機関), Instituto de Salud Carlos III(公的生物医学研究所), Hojiblanca(オリーブオイルメーカー), Patrimonio Comunal Olivarero(オリーブオイルメーカー), California Walnut Commission(カリフォルニア クルミ協会), Borges SA(オリーブオイルメーカー), Morella Nuts(ナッツ供給企業).

【研究から考えられること】 
  • 脂肪の総摂取量について、食事の指導を修正する必要がある。
  • 脂肪摂取を制限しなければならないとの強迫観念を改め、植物油、ヨーグルト、チーズなどの食品からもカロリーを摂取すべきである。
  • デンプン、糖、塩、トランス脂肪酸を多く含む食品を少なくすべきである。
と、研究者たちはコメントしている。

脂肪を制限しても体重やウエストは減らない

いかがですか?
この研究は、オリーブオイルメーカー、ナッツ供給企業などがスポンサーになっていることを割り引いてみても、研究の参加者が多く、かつ5年にわたって観察しているので、ある程度説得力があると思います。

脂肪が高カロリーなのは事実ですが、実は脂肪は消化吸収に時間がかかり、エネルギーとして利用しようとすると決して効率の良い栄養素ではありません。
⇒脂肪は消化・吸収が遅い

脂肪が高カロリーなのは、生物がエネルギーを蓄える最も効率的な化学構造の1つが脂肪(脂肪酸+グリセリン)だからです。

進化の過程の中で、人類の食物は文明とともに、加工や調理を経て変わってきましたが、多くの生物はもともと、肉食(ほかの生物を食べる)であったと考えられています。

例外は植物で、植物は、光合成と窒素同化によって自分で栄養素を作り出せます。

自然界の食物を見てみると、例えば肉となる成熟した哺乳動物は、水分 60%、タンパク質 16%、脂質 20%、ミネラル 4%ほどで、糖は0.4%ぐらいしか含まれていません。

一方、野菜などの植物は、水分 70%、タンパク質 4%、脂質 2%、ミネラル 1%ほどで、糖は23%も含まれています。

つまり、エネルギーの貯蔵法として、動物は脂肪、植物は糖を選択したといえます。

我々のような哺乳類は基本的に肉食・雑食で、やがてウシなどの植物食の哺乳類が進化してきたと考えられています。
⇒私たちの祖先は何を食べていたのか?

動物・植物の組成からもわかる通り、ヒトが狩猟採集していた歴史が長いことを考えると、肉食・雑食でのエネルギー摂取に、脂肪の占める役割は大きいことが分かります。

このことから考えても、上の研究は理にかなった結果だと思います。

脂肪を多めにとっても、野菜などを多く食べる食物繊維の多い食事をしていれば、悪影響はないということですね。

脂肪は、味に深みを与えておいしいものです。

もちろん、なんの栄養素にしても偏ってとりすぎはよくありませんが、おいしいものを適量食べるのは健康に良いはずです。

もう、食品中の脂肪を気にしないで食事できますね。

ただし、酸化した脂肪と、食品(未加工の食材)に含まれる以外の油脂の過量摂取は体に毒です。
植物性油脂を多用する揚げ物や炒め物、マリネ、油漬けなどの調理法、ラードや豚脂を多用するラーメンや中華料理など食用油脂を調理で多く使う料理や、油脂を多用するスナック菓子、加工食品、インスタント食品の多食などや、ドレッシングやマヨネーズ、マーガリン、各種レトルト食品などの油脂を使った調味料の多用には依然要注意ですね。
他にも、健康に良いといって、多価不飽和脂肪酸を多く含む油をそのまま飲んだりなど、油脂だけをサプリメントのように摂っている人もいるようですが、加工していない食品に含まれる以外の、油脂の摂りすぎは、良くないと思われます。
食品中の脂はほぼ問題ないといっても、もちろん、食肉の脂がのりすぎている部位、例えばバラ肉、カルビ、背脂などの食べ過ぎも当然、消化器や腸内細菌に負担になりますのでご注意あれ。
焼肉メニューで脂ののったお肉ばかり食べていませんか?

また、もともと体質的に消化器(特に膵臓や腸内細菌のバランス)が弱く、脂っこい食事で胃のもたれや吐き気、軟便などの消化器症状が出てしまう方は、たとえ食品中に含まれる脂肪分であっても、脂肪は制限すべきでしょう。

今回のコンテンツに特に関連が深いのは
脂肪は悪者?
食生活は進化の中で3回変わった
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

の各コンテンツです。

よろしければこちらも読んでください。

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム
空腹感を抑える食べ方

食用油
健康に良い油?悪い油?

2015年3月17日火曜日

米国マクドナルド 抗生物質を与えた鶏肉の使用をやめる


現代文明社会の食べ物事情は、予想よりはるかに厳しいと思ったほうがよさそうです。

飽食の日本では実感しにくいかもしれませんが、世界的には、確実に食料不足の時代に入っていますし、スピードと収益性を重視する現代社会では、「早い」「安い」「うまい」が尊ばれ、ファーストフード、コンビニ、インスタント食品、ジャンクフード全盛の感じがします。

2015年3月5日 10時41分に掲載のNHK News Webで「米マクドナルド 抗生物質与えた鶏肉の使用中止」との報道がなされました(現在NHK元記事のリンクが切れていますのでマクドナルドのプレスリリースをリンクします)。

McDonald's USA Announces New Antibiotics Policy and Menu Sourcing Initiatives

概要は、
  • 世界的に販売不振のマクドナルドは、食の安全に対する消費者の関心にこたえるため、アメリカの店舗で、今後2年を目途に抗生物質(抗菌薬)を用いて飼育した鶏肉を扱わない方針を発表。
  • アメリカでは、家畜の病気予防と生産性向上のため家畜に抗生物質使用することは一般的で、その結果、抗生物質が効かない耐性菌が出現し、人間の健康にも影響を及ぼす危険性があると専門家が指摘している。
  • マクドナルドは、人工の成長ホルモンが与えられた牛から摂った牛乳についても扱わないことを明らかした。
  • これらの取り組みで、消費者に安全性をアピールし客離れの食い止めを図りたい。
    ホルモン剤, 抗菌薬, 抗生物質, 耐性菌, 発がん性, 依存, 報酬系, 文明, 糖質, 習慣性, 肥満, 脂肪, 食べ過ぎ, 食塩, 食欲, 食生活,

さらに、ロイターReutersによると、このマクドナルドの方針は養鶏業者に経済負担を増加させるといいます。
INSIGHT-Chicken growers set to pay price for no-antibiotic McNugget

概要は、
  • 抗菌薬を使用しないと飼育コストは3%ほど上昇する試算で、マクドナルドは世界最大の外食チェーンとしての購買力を盾に、コスト増加の負担を鶏肉供給会社に強いる、と多くアナリストが予測。
  • アメリカで4位の鶏肉会社Perdue Farmsはすでに2002年から抗菌薬の使用を控える取り組みを始め、同社の鶏の95%超はヒトに使用する抗菌薬なしで飼育されている。さらに、半数以上は抗菌薬が一切使われていない。
  • 抗菌薬を控える飼育によって、飼育場の増設、鶏の死亡率の上昇、ワクチン費の増大、飼育期間の延長などの負担が発生した。
今回は、あえて抗菌薬やホルモン剤入りの肉の健康被害については詳しく取り上げません。
こうしてみると、現代社会と食にまつわる問題の根深さが見えてくるように思います。

食品産業が「早い」「安い」「うまい」消費者ニーズを作った

消費者が仕事に追われ、時間に追われ、「早い」「安い」「うまい」を求めた結果、マクドナルドのようなファーストフードの売れ行きが上がったと思われがちですが、実は成り行きは反対です。
食品を作る企業が「早く」「安く」「うまい」製品を売り込み、消費者が宣伝に乗せられて、効率の良さをよしとする価値観が一般化していったのです。

食品産業が行ったのは、効率の良さの普及だけではありません。
より甘い食品、より脂分の多い食品、より塩分の多い食品を好むような嗜好も、食品業界によって研究され、普及しました。
おいしさの罠

抗菌薬、ホルモン剤はなぜよくない?

安さを追求する陰には、抗菌剤やホルモン剤を与えて家畜を育てる畜産業があります。
家畜の最大の敵は病気ですから、感染症にかからないように抗菌剤を与えます。
少しでも早く成長させ、肉の量を増やして食肉にしたり、たっぷりと搾乳するためにホルモン剤も与えます。

大量の抗菌剤を使った結果、家畜の中にその抗菌剤が効かなくなる耐性菌ができます。
また、これらの薬剤は家畜の中に蓄積して、その家畜を食べたヒトに取り込まれます。
知らず知らずのうちに、抗菌薬を取り込み、体内に耐性菌を作っている可能性もあります。

ホルモン剤は、EUを除いて、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで使用が認められていて、日本では国内での使用は禁止されていても、輸入肉のホルモン剤使用にはおとがめなし、という非常に矛盾した立場をとっています。
EUでは、1988年に成長促進を目的としてホルモン剤を牛に使用することを禁止し、1989年以来ホルモン剤を使用して飼育された食肉や乳製品の輸入を認めていません。
ホルモン剤, 抗菌薬, 抗生物質, 耐性菌, 発がん性, 依存, 報酬系, 文明, 糖質, 習慣性, 肥満, 脂肪, 食べ過ぎ, 食塩, 食欲, 食生活,

ホルモン剤は乳癌などのホルモン依存性の癌の原因となっている懸念もあります。
日本での牛肉消費量の増加に伴って、ホルモン依存性癌の患者数が約5倍になったとする報告もあります。
半田 康ら. K3-4 牛肉および癌組織のエストロゲン濃度 : ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生増加との関連(高得点演題6 腫瘍,高得点演題プログラム,第62回日本産科婦人科学会学術講演会).日本産科婦人科學會雜誌 62(2), 614, 2010-02-01

ホルモン剤の使用の是非については、アメリカ+オーストラリア+カナダ+ニュージーランドなどのホルモン承認諸国対EUで、激しい論戦を展開しています。
互いに、畜産、酪農は重要な輸出産業なので、市場の取り合いをしているわけです。
でも、この論戦はEUの言うことに理があるような気がします。
できれば生理的でないホルモン剤を含まないほうが安全でしょう。
冒頭のNHKの記事のリンク切れも、先日発効した日豪EPAと、交渉にもめているTPPとの兼ね合いの報道管制では?と疑いたくなりますね。

健康志向も食品産業の戦略に利用?

マクドナルドに追随して、早くて安くて旨い食べ物を売る企業が、どんどん出てきました。
市場を独占できなくなって、経営が苦しくなったマクドナルドは、今度は消費者の健康意識を利用し、抗菌薬やホルモン剤の使用をやめたと宣伝して、健康志向のイメージをつけようと考えたのではないかと想像できます。

なぜなら、中止すると発表されたのは鶏肉と牛の乳製品だけ。
本命のハンバーガーの牛肉には、相変わらず抗菌薬やホルモン剤が使われるようです
ホルモン剤, 抗菌薬, 抗生物質, 耐性菌, 発がん性, 依存, 報酬系, 文明, 糖質, 習慣性, 肥満, 脂肪, 食べ過ぎ, 食塩, 食欲, 食生活,

我々の立場で考えれば、多少なりとも怪しい薬が使われなくなることはありがたいことですが。
ただ、理解しておかなければいけないのは、私たちの味覚は、食品・外食産業の戦略によって変えられているということです。

確かに、簡単に食べられる便利な食品ができたことで、女性が社会に出ていくゆとりが生まれた、というように、我々は多くの恩恵を受けています。
忙しいときに、マクドナルドで済ませられるのは実にありがたく、うまく利用すればよいと思います。

ですが、これからは、お手軽な食べ物を目にしたら、そこには危険が潜んでいるということを思い出してください。
リスクを知りつつ「便利さ」「おいしさ」をうまく利用したいものです。

作られたおいしさに左右されない味覚を持とう

本来、食は生き物の生活の基本です。
大事な食事は、自ら食材を仕入れ、場合によっては飼育・栽培して、作って、おいしくいただくものでした。
忙しく、過剰な味のとりこになって、外食や加工食品をこんなに頻繁に利用しているライフスタイルが、消費者の健康を顧みずに利益を追求するこれらの産業・企業・規制当局の暴走を許したのではないのでしょうか?

多くの人が、本来、嗜好品やごちそうとしてたまに食べるものだった、甘味、高カロリー食(揚げ物、炒め物など)、加工食品などに慣れてしまいました。
それでなければ物足りなくなり、味覚もより味の濃いもの(塩、砂糖、油脂)に依存的になってしまっていると思います。
おいしさの罠

人間の味覚は、想像以上に簡単に変わります。
アメリカで食べられている、ショッキングピンクや紫や緑のケーキに違和感を持てるうちに、食品産業の企てに流されない確かな「味覚」を取り戻さないといけませんね。

食べ物・栄養についえはこちらも
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠

2015年3月5日木曜日

食品のコレステロールは気にしなくてOK


健康的な食生活として、「コレステロールを多く含む食品を控える」といった栄養の指導を受けた方や、コレステロールを抑えたマヨネーズなどの商品を利用なさっている方も多いと思います。

エバーグリーン研究室では、食事で摂るコレステロールはあまり気にしなくて良いというお話しをしてきました。
⇒脂肪は悪者?


2015年2月11日のアメリカの新聞ワシントンポストで、
The U.S. government is poised to withdraw longstanding warnings about cholesterol

『アメリカ合衆国農務省の「アメリカ人のための食生活ガイドライン」を作成している委員会が、コレステロールの多い食品を食べることへの注意を取り下げることを決めた。

この注意は過去40年間政府によってアメリカ国民にされてきた。

しかし、健康な成人では、コレステロールが多い食品を食べても、血中のコレステロールに影響しない、心臓病のリスクも上昇しない。』

と報道されました。

今日は、発表された「アメリカ人のための食生活ガイドライン」の内容をざっとみてみましょう。
Scientific Report of the 2015 Dietary Guidelines Advisory Committee

このガイドラインは、改訂を重ねてきていますが、今回の2015年の改訂はワシントンポストの記事のように、コレステロールの扱いが目玉です。

「アメリカ人のための食生活ガイドライン」推奨の概要

  • コレステロールの摂取は制限しない。
  • 果物と野菜、全粒の穀物(精製していない穀物)、低脂肪乳製品、シーフード、豆類とナッツを積極的にとり、加工された肉(ハムやソーゼージ)や赤い色の肉(赤身肉;牛肉、豚肉、ラムなど血の多い肉)、砂糖、加糖食品と加糖飲料、精製した穀物は控える。
  • 添加糖は一日必要カロリーの10%未満、飽和脂肪も一日必要カロリーの10%未満にして、ナトリウムを1日2300mg未満にする。
  • 穀物の摂取量の半分は、全粒の穀物から摂らなければならない。
  • 適度な量のアルコールの摂取は、大部分の成人で健康に好ましい。
  • 一日最高カップ5杯までのコーヒーは、大部分の成人で問題ない。

以前には、このガイドラインでは、コレステロールは1日300mg以上摂るべきではない、としていましたが、この制限をなくしました。
鶏卵1つでだいたい240mgのコレステロールを含むので、卵は1日1個まで、などと言われていたわけですね。
この制限がなくなったのです。

科学的な根拠が集まってきて、以前の見解を訂正する勇気は素晴らしいと思います。
日本の政府機関や学術団体は、情報のアップデートや、正確性の検証が甘いと思います。
アメリカという国には良いことと悪いことと玉石混交と思いますが、これはぜひ見習うべきでしょう。

風評を安易に信じない

テレビや雑誌のタイアップ番組・記事や、製薬会社、食品会社、化粧品会社の広告宣伝が、意図的に間違った情報を流すことは容易に想像出来ますが、政府機関や学術団体などの公的なガイドラインといえども、図らずも間違っていることはあるのです。

最近の科学界では、科学研究と企業などの利害衝突と資金提供が、科学研究の正確性と質に影響することを問題視しています。

また、商品がいかにも科学的な裏付けがあるようにキャッチ―に宣伝して、商品を売り込もうとする企業は無数にあります。
科学という、なんとなく、正しく、権威がありそうな装いに惑わされずに、冷静に情報を判断するようにしましょう。

得体が知れなく、あまりおいしくなく、しかも高い、低コレステロールを謳う商品は必要ないのです。

オムライス オムレツ 卵 イラスト コレステロールうちの奥さん=れい研究員は卵が大好物ですが、コレステロールの摂りすぎを気にして以前は1日、2個くらいまでにしていました。
ものすごく損をした気分だと、怒っています。
我慢した分を取り返すために、先日のおでんには卵が一人3個ずつ割り当てられていました。

ある程度、生命科学を学んでいたって、正しい科学知識のアップデートは、努力して勉強を続けないと、訂正できないものです。

生命科学を学ぶ機会のなかった方々が、食べたいものを我慢して損をしないように、エバーグリーン研究室では、正しいデータ・・・科学的に正しいと思われるデータを紹介していきます。

「アメリカ人のための食生活ガイドライン」の改定内容に関していえば、アルコールの記述以外は概ね間違っていないと思われます。
卵好きの皆さん、卵は心置きなく食べてください。

2015年1月24日土曜日

糖・脂質・塩~おいしさの罠

健康に良い食べ物、良くない食べ物のそれぞれの特徴はなんでしょうか?

子供のころ、母親にお菓子は控えて、野菜を沢山食べなさいと促された経験は誰しもお持ちと思います。


さて、このように皆さんがイメージする、健康に良い食べ物の典型が、ビタミンと食物繊維が豊富な「野菜」で、健康に悪い食べ物の典型が、味が濃い目のお菓子の類でしょう。

  • 健康に良い食べ物=あまりおいしくない、あまり箸が進まない
  • 良くない食べ物=とてもおいしく、癖になる

どうでしょう、みなさん同意なさるのでは?

行政の健康政策が成功しないのには理由がある

今日は、行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、なぜ、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しないのかを考察したドイツのキール大学での研究を紹介します。
⇒How to Combat the Unhealthy = Tasty Intuition: The Influencing Role of Health Consciousness
⇒Health consciousness: Do consumers believe healthy food always tastes bad?

この研究をした、キール大学のロバート・マイさんとステファン・ホフマンさんは、

「近年、健康的食生活が流行しているが、消費者は相変わらず健康に良くない食品を食べすぎている。原因は、健康に良くないものは、大抵おいしいもので、おいしいかどうかが、(消費者が)食べるものを選ぶ基準だからだ」
と書いています。

【研究テーマ】
  • 行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しない理由は?

【研究の結果、わかったこと】
  • この研究の参加者に、砂糖と脂肪の含まれる量が違うヨーグルトを与えて、どのヨーグルトを選ぶかを観察したところ、含まれる成分が健康に良いという情報があったからといって、健康的なヨーグルトを選ぶとは限らなかった。
  • 健康志向が全くない人は、健康情報にも全く興味がないので、含まれる成分が健康に良いという情報も効果がない。
  • ある食品が健康に良いものだという情報が与えられると健康志向の人たちは少しは食習慣を変えるが、健康志向のない人たちは、情報の量に関わらず、健康的なヨーグルトにおいしいものはないと信じている。
  • これらのことから、おいしいかどうかが、健康志向の人にとっても、そうでない人にとっても食品を選ぶとき重視されて、キャンペーンで健康意識を高めたからといって、簡単にこれを乗り越えられるものではない。
研究者たちは、

  • 「行政機関は、商品の包装表示や食品会社のマーケティングを改善させるだけでなく、味そのものも改善し、また、健康的な食事をすることが、粋で“クール”と消費者が思えるような、消費者の感情に訴える社会活動に資金援助するなどの、これまでとは違う健康的食品の宣伝方法を考えるべきである」
  • 「世界的に流行する肥満を抑えるためには、食品会社、消費者、行政が互いに足を引っ張り合うのをやめ、みなにとってメリットのある方法を見つけ、全体的にアプローチすることが早急に必要だ」

と結論しています。
皆さんはいかがお考えでしょう。

おいしさは砂糖・脂肪・食塩で決まる

この研究で用いられたヨーグルトでは、ヨーグルトに含まれる砂糖と脂肪がおいしさのポイントのようですが、実は、食品の味付けのキーポイントとなるのは、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」であり、これは、食品業界では常識のようです。

おいしくて癖になる食べ物の代表選手、ポテトチップスを思い出してください。
まさに、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」の塊です。

ほかにも、たとえば、ハンバーガーのソースはケチャップの甘さにマヨネーズの油っぽさにそれぞれの調味料中の食塩のしょっぱさがハーモニーとなっています。
天ぷらでも同じです、衣の油に、甘辛い天つゆがよく合いますよね。

この「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」を味付けの基本にして、ほかの風味を加えて、加工食品は開発されています。
これらを基本に消費者が癖になる味付けを日夜研究しているのです。

『フードトラップ』が明かす食品業界の罠

ここで、一冊の本を紹介したいと思います。

マイケル モス 著、 本間 徳子 訳 日経BP社刊
「フードトラップ-食品に仕掛けられた至福の罠」

砂糖・脂肪・塩の習慣性を利用したビジネス

この本の原題は写真の表紙にもあるように“Salt, Sugar,Fat”でまさに、塩、砂糖、脂肪です。

この本は、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性(癖になる)を巧みに利用した、加工食品や清涼飲料水、菓子などを問題視して警告を鳴らしています。

この中にも繰り返し、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性と危険性が登場します。
それらが、食品会社の研究所で研究しつくされている様子がわかります。

アメリカの食品会社が、1980年代以降、消費者が癖になる「砂糖」「脂肪」「塩」を多く含んだ商品を次々に開発して、売り上げを伸ばし、株主の要求に答えていく様子やこれらの商品が肥満や虫歯などを増加させ、ひいては病気の原因となっていることへの、医療従事者や、研究者などからの批判を企業がうまくすり抜ける様子もかかれています。

ビジネスの根底にある文明社会が生み出した欲望

しかし、著者は、一方的に食品会社の「悪」を暴くという論調ではありません。
資本主義と企業間競争、株主への配当、消費者の嗜好と欲望、欲望を利用するマーケティング・メディア、規制当局と企業の駆け引き、農業などの産業と企業と政治など、現代文明社会全体の問題としてとらえているところが真摯さを持っていると思います。

私たちは、改めて、「おいしさ」などの自分の欲望がどのようなものかを考えなければなりません。

少なくとも、味覚と嗅覚が作り出す「おいしさ」は、それをもたらす、糖質、脂肪、塩分などが、人類の歩んだ歴史の中で、長らく得難いものであったからこそ、発達した感覚であることは間違いないことです。

砂糖・脂肪・塩の必要性から「嗜好」が生まれた

私たちは、塩分がなければ、生きていけません。
山間地域では昔から塩は貴重品でした。

脂肪

脂肪は苦労して得た獲物にほんの少し含まれるものでした。
野生の獲物は、家畜と違い脂肪は少ないのです。

搾油技術が発達したのも長い歴史の中でごく最近のことですので、食用植物油は存在しませんでした。

糖類

糖類の精製技術の完成も、同様に長い歴史の中でごく最近のことですので、私たちの祖先は精製されていない炭水化物のほんのりした甘味を感じる能力を時間をかけて発達させました。
ご飯を口にいれて、長く噛むと甘みを感じる実験を経験した方も多いと思います。
これは、ヒトは唾液の中にアミラーゼという消化酵素があるからこそ味わえます。

哺乳類の中で、唾液にアミラーゼを含む種はごく少数です。
たまたま、アミラーゼを分泌する能力を持った種が、ドングリやナッツ、根菜や球根、未精製の穀物の中の糖質を甘いと感じるようになった。
これらの種は、好んで穀物を多く食べたことで、厳しい環境を生き残った。
さらに、火による調理により、糖質を脳の効率の良い栄養素として充分に使えるようになり、人類は脳を発達させることができたと考えられます。

生き残るための報酬系が仇に

報酬が与えられたときに快感を感じるように働く脳のシステムを報酬系といいます。
私たちの味覚・嗅覚のもたらす「おいしさ」は、まさに報酬系が働いた結果得られる快感です。
貴重な栄養素を感知して、それを摂取させるように長い年月をかけて脳が鍛えられてきたといえます。

いいかえれば、「おいしさ」などの欲望は、報酬系の挙動に過ぎません。
欲望を満たすことが「良いこと」と脳に思い込まされているということです。

このように私たちの祖先が、長い時間を経て環境に適応して、安定的に栄養素を獲得できる遺伝子を獲得するうちに、やがて人類となり、厳しい天候をしのぐため、捕食者から逃れ逆にそれを狩るため、飢えを克服するため、火の利用の発明、道具の創意、被服の発明、定住・農耕などを始めとする文明を発達させてきました。
それは、ある意味では、素晴らしい人類の英知の結晶でしょう。

一方で、私たちの英知は、最も基本的な生き物としての自分の身体について、まだ何も理解していないとも言えるでしょう。

生物学的新文明社会を目指す 

私たちの身体は、飽食とほど遠い環境=飢餓を生き抜いてきた遺伝子で設計されています。
欲望をもたらす報酬系の機能は、現代文明社会の飽食に対応したものではありません。

欲望という、古いシステムに騙され、欲望に頼り、それを経済活動などの社会の営みに利用する悪循環をどこかで断ち切らない限り、先に紹介したキール大学の研究者達のいうような、新しい社会システムを作ることはできないと思います。

自然の流れに従って進化を遂げてきた報酬系による欲望を、満たすことで文明が進歩したことも事実です。
でも、欲望をどんどん満たせば、古い遺伝子しか持たない私たちの体はその早い食性の変化についていけずに病気になる。
これに打ち勝つには、欲望に流されない確かな意志で、消費に頼らない新たな価値観、新たなおいしさを創造していくことが大切と思います。

生物の仕組みを理解した、新しい文明社会を目指す必要がありそうです。

食べ物については、こちらもご覧ください。

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
エナジードリンクは飲んでもOK?
加糖飲料の危険性が次々証明
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?

食用油
健康に良い油?悪い油?

2014年12月26日金曜日

健康に良い油?悪い油?

前回は、脂肪(脂質)やコレステロールは、細胞膜を構成する体にとってとても大切なものであることをお話ししました。
脂肪は悪者?

しなやかなでしかも丈夫な細胞膜を保つことは、われわれの体のすべての細胞の健康の基本といえるでしょう。


今日はそのしなやかさを保つための、体に良い脂肪(脂質)と、間違った脂肪と、安全な脂肪の摂り方をお話しますね。

DHA、EPA、アラキドン酸

みなさん、魚の油、魚油が体に良いとお聞きになったことがあるかと思います。
イワシやマグロなどの魚油にはDHAとかEPAなどの多価不飽和脂肪酸とよばれる脂肪の成分を含んでいます。
DHAやEPAはサプリメントなどでも販売されていますね。
薬にもなっています。

なぜ、DHAやEPAは体に良いとされるのでしょう。

下の絵を見てください。

DHA, EPA, アラキドン酸, オメガ(ω)3, オメガ(ω)6, グリセロリン脂質, 動脈硬化, 脂肪, 脂質二重層,
細胞膜と脂質二重層 
脂質二重層を構成するグリセロリン脂質の脂肪酸の7割は多価不飽和脂肪酸といわれる。

この前もお話ししたように、私たちの細胞の細胞膜は脂質二重層でできていて、これを構成するのが脂肪酸です。
脂質二重層の構造について詳しくは下のリンクをお読みください。
⇒脂肪は悪者?

水色の頭に2本の脚のようなものが生えていますね。
これが脂質二重層を作っているグリセロリン脂質とよばれるものです。
グリセロリン脂質の脂肪酸の部分は、水色の玉の下に生えている脚のようなところです。
黄色、ピンク、紫、薄いグリーン、濃いグリーンなどの脚が見えますね。
これはみんな脂肪酸でできています。
EPAとかDHAもこの脂肪酸の仲間です。

ちょっと拡大して見てみましょう。

EPAはこんな感じで細胞膜を構成している

まずは、EPAを含むグリセロリン脂質です。

DHA, EPA, アラキドン酸, オメガ(ω)3, オメガ(ω)6, グリセロリン脂質, 動脈硬化, 脂肪, 脂質二重層,





グリーン色の脚のところがEPAの部分です。
EPAには、化学構造式でC=Cで表される二重結合が5つ含まれ、二重結合の部分で曲がって(ねじれて)います。
ですのでEPAでできているグリセロリン脂質の脚が曲がっているようになっているのです。

この二重結合を2つ以上持っている脂肪酸を多価不飽和脂肪酸と呼びます。

DHAはこんな感じで細胞膜を構成している

次にDHAです。

DHA, EPA, アラキドン酸, オメガ(ω)3, オメガ(ω)6, グリセロリン脂質, 動脈硬化, 脂肪, 脂質二重層,


明るいグリーン色の脚がDHAの部分です。
DHAはEPAと同じように、化学構造式でC=Cで表される、二重結合が6つ含まれ、EPAよりさらに二重結合の部分で曲がって(ねじれて)います。

EPAやDHAでできているグリセロリン脂質は、このように脚の部分がまっすぐでなく、曲がる(ねじれる)ことでスプリングのような柔軟性をもっているとされます。

細胞膜の構成成分である、これらの脂肪酸成分が柔軟性を持つことは、細胞がしなやかであるためにとても大切なことです。

EPAやDHAが体に良い脂肪酸(あぶら)であるとされる1つの理由です。

アラキドン酸はEPA、DHAと似ているけれど・・・

さて、次に、あまり多いと困ってしまう脂肪酸を見ましょう。

アラキドン酸という脂肪酸成分です。

DHA, EPA, アラキドン酸, オメガ(ω)3, オメガ(ω)6, グリセロリン脂質, 動脈硬化, 脂肪, 脂質二重層,


ピンク色の脚がアラキドン酸の部分です。

アラキドン酸も化学構造式でC=Cで表される、二重結合が4つ含まれ、二重結合の部分で曲がって(ねじれて)います。

アラキドン酸でできているグリセロリン脂質も、EPAやDHAでできているグリセロリン脂質と同じように、柔軟性をもち、細胞のしなやかさに役立っていると考えられます。

でも、ちょっとだけ困った性質を持っています。

じつは、アラキドン酸は一部がグリセロリン脂質から離れて、細胞の中で化学的に構造が変化して、炎症などを起こす物質に変わってしまうのです。

DHA, EPA, アラキドン酸, オメガ(ω)3, オメガ(ω)6, グリセロリン脂質, 動脈硬化, 脂肪, 脂質二重層,
図上側が、細胞膜の脂質二重層。
中央左側に点線の丸で囲むピンク色の脚がアラキドン酸。
アラキドン酸は、酵素ホスホリパーゼA2により、細胞膜の脂質二重層から切り出される。
すると、シクロオキシゲナーゼや5-リポキシゲナーゼなどの酵素の働きで、
プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンといった炎症、アレルギー、血栓、喘息など、
多すぎると病気の引き金となる物質に変わる。
図中では、赤い四角で囲ってある物質が、問題の作用を持つもの。
(ブルーの四角は、これらの病気の症状を抑えるために使われている薬)
最近では、アラキドン酸などのω6系の脂肪酸の摂取過多と、うつ病などの精神神経疾患とのかかわりも指摘されている。

中央左側に点線の丸で囲むグリーン色の脚がEPA。
EPAも、アラキドン酸と同じようにプロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンになるが、
EPAから作られるこれらの物質は、病気の引き金なるような作用を持たない。
(緑色の四角は、問題となる作用を持たないもの)

アラキドン酸から生まれる問題児

ちょっと複雑な絵ですみません。
図の上側にあるのが、細胞膜の脂質二重層です。
その真ん中よりちょっと左側にピンク色の脚を点線の丸で囲みました。
アラキドン酸です。

アラキドン酸は、ホスホリパーゼA2という酵素が働くと、細胞膜の脂質二重層から切り出されて、細胞の中に浮かびます。

すると、シクロオキシゲナーゼや5-リポキシゲナーゼなどの酵素の働きで、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンといった炎症、アレルギー、血栓、気管支を縮める作用(喘息)など、多すぎると病気の引き金となる物質に変わってゆきます。
図の中では、赤い四角で囲ってある物質が、問題の作用を持つものです。

これが問題なのです。

もちろん、アラキドン酸から作られる物質がすべて悪いわけではありません。
緑色の四角で囲った、プロスタグランジンE2やI2などは血液の流れを保つためにとても大切な物質ですし、ほかの物質も、身体の機能を保つためには必要な物質です。
ただ、多すぎると、病気の引き金になってしまうのです。

同じプロスタグタンジンでよく似た形をしていても、先ほどのD2やF2αのように問題になるものと、E2やI2のように有用なものがあるのですから、不思議ですね。

EPAからできる物質はみんなよい子

もう一度、上の図を見てください。
今度はEPAです。
真ん中よりちょっと右側にグリーン色の脚を点線の丸で囲んであります。

EPAも、アラキドン酸と同じように酵素によって切り出され、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンになりますが、EPAから作られるこれらの物質は、病気の引き金なるような作用を持っていません。
図の中で、問題となる作用を持たないものを緑色の四角で囲ってあります。

EPAから出てくる物質は、みな緑色の四角で囲われ、問題となる作用を持っていないことがわかります。

ちなみに、先ほど、アラキドン酸から作られたプロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンの数種が、黒い四角で囲んだ炎症、アレルギー、血栓、喘息などの引き金となるとお話ししましたね。
ブルーの四角で囲んだところは、これらの病気の症状を抑えるために使われている薬です。

身体によい油?、悪い油!?

ちょっと複雑で説明が長くなってしまいました。
でもここからが今回の本番、身体に良い油の話です。
もうちょっとお付き合いください。

最後の絵です。

DHA, EPA, アラキドン酸, オメガ(ω)3, オメガ(ω)6, グリセロリン脂質, 動脈硬化, 脂肪, 脂質二重層,

ω3系のαリノレン酸はEPAの原料になり、EPAからはDHAが作られる(グリーン色系の四角で示した)。
ω6系のリノール酸は、アラキドン酸になる(赤系の四角で示した)。
アラキドン酸は細胞内で炎症、アレルギー、血栓、喘息などを引き起こす物質に変わる。
細胞膜の脂質二重層の中のグリセロリン脂質の脂肪酸成分(脚の部分は)、アシル基転移酵素の働きで、必要に応じて入れ替わる。

ω3系とω6系は拮抗しているので、どちらかの摂取が多いと、グリセロリン脂質の脂肪酸成分のω3系とω6系のバランスが崩れてしまう。ω6系が多くなると炎症性疾患、アレルギー性疾患、血栓性疾患などを引き起こす可能性があるとされる。最近では、アラキドン酸などのω6系の脂肪酸の摂取過多と、うつ病などの精神神経疾患とのかかわりも指摘されている。


細胞膜の成分は入れ替わっていく

細胞膜の脂質二重層の中の脂肪酸成分(脚の部分は)、必要に応じて入れ替わります。

先ほど見たように、細胞の中で、EPAやアラキドン酸を出発点に生理的に必要な物質を作り出したりして、脂質二重層の中の脚の部分が取れてしまうと、それを補うように、新たな脂肪酸成分が、取り込まれるのです。

これが、まるで、椅子取りゲームのようで、こぞって、各種の脂肪酸が入り込もうとします。

柔軟な細胞膜には多価不飽和脂肪酸が必要

細胞膜の柔軟性のためには、EPAやアラキドン酸のように、二重結合(C=C)が多く含まれる多価不飽和脂肪酸が適しています。
ですから、細胞膜を構成する脂肪酸の7割ぐらいが、多価不飽和脂肪酸といわれています。

加えて、EPAとアラキドン酸が良い割合で取り込まれることが大事なのです。

アラキドン酸・EPAをバランスよく摂るには

アラキドン酸は、主に肉、卵、魚、に含まれ、EPAは、魚に多く含まれています。

図のように、キャノーラ油(菜種油)、コーン油、大豆油、ひまわり油などの植物オイルに多い、リノール酸は身体に入るとアラキドン酸の原料にもなります。

また、シソ油=エゴマ油、亜麻仁(アマニ)油=フラックスシードオイルなどに多く含まれるαリノレン酸は、身体に入るとEPAの原料にもなります。

近頃、健康に良いとして、シソ油=エゴマ油、亜麻仁(アマニ)油=フラックスシードオイルが注目されていますね。
これは、αリノレン酸がEPAやDHAに変わることが注目されているためです。

普通の食生活では、リノール酸に偏りがち

揚げ物料理や炒め物、サラダドレッシング、マヨネーズ、マーガリン、カレールーやシチューのルー、トマトソースやホワイトソースなどの各種の料理ソース、クリーム、ポテトチップやスナック菓子、揚げおかき、パン、お菓子、ケーキなどのスイーツなど、お手軽でおいしいものは、みなリノール酸を多く含む植物油がふんだんに使われています。

キャノーラ油(菜種油)、コーン油、大豆油、ひまわり油などは家畜の飼料の残りから絞られるので安価なのです。

油脂会社や食品会社はこれらを、食用油やマヨネーズなどをふんだんに使ったおいしい料理のレシピや、加工食品として積極的にマーケティングしています。

テレビのグルメ番組や料理番組、コマーシャルを見れば一目瞭然ですね。

現代の文明社会で、お手軽な一般的な食生活を送ると、リノール酸を多く含む油ばかりを食べることになってしまうのです。
これでは、EPAとアラキドン酸の良いバランスを保てません。

食用の植物油や動物性の油脂がこれほどふんだんにわれわれの食生活に浸透したのも、油脂の搾油技術の進歩に伴う、ほんの最近のことです。

それにつれて、調理法やレシピが変化し、ファストフードなどの外食も増え、加工食品が増加してきたのです。

それまでは、食用の油脂は高価で、油で揚げる、炒めるなどの調理法は、ごちそうのときだけだったはずです。

外食や加工食品をなるべく避けて、魚、肉、卵、野菜などの沢山の種類の食材を、なるべく油を使わずに、煮る、蒸す、焼くなどの昔ながらの方法で調理すれば、EPAとアラキドン酸のバランスを崩さずに済むと思います。

別なページで、脂肪の消化吸収、脂肪細胞への取り込みについてはお話ししました。
リンクをご覧ください。
⇒脂肪の消化吸収はこちらを
⇒脂肪を貯めるしくみ

2014年11月6日木曜日

脂肪は悪者?

みなさん脂肪(脂質)にどのようなイメージをお持ちですか?
脂肪をとると太る、とか、酸化した脂肪が体に悪いとか、悪いイメージが定着しているのではないでしょうか?

でも、栄養素の中で、脂肪はとても大切です。
脂肪の構成成分の脂肪酸には、体内で作れないために食べ物でとるのが必須なものもあります。

人間の細胞の成分の割合(重さの%)は、おおよそ、水分66%、 タンパク質16%、脂肪13%、無機物4.4%、炭水化物0.4%、核酸(微量、遺伝子の成分)と言われています。
水分を除くと、脂肪はタンパク質とともに体の成分として大きな割合を占めていることがわかります。

別なページで、脂肪の消化吸収、脂肪細胞への取り込みについてはお話ししました。
⇒脂肪の消化吸収はこちらを
⇒脂肪を貯めるしくみ

今日は、脂肪が私たちの体でどのように利用されているかを順に見ていきましょう。

脂肪は細胞膜の材料

下の絵を見てください。
私たちの細胞です。
脂肪酸, 脂肪,脂質二重層,コレステロール,グリセロリン脂質,細胞膜,しなやか、いい油、悪い油、両親媒性分子、動脈硬化、高脂血症、脂質異常症、エンドサイト―シス、エキソサイトーシス、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質
細胞と細胞膜(脂質二重層)

上の絵のように、細胞膜は脂質二重層という脂肪の成分からできていて、脂肪は細胞膜の材料として使われています。
脂肪細胞に脂肪滴となってエネルギー源として蓄えられるだけではないのです。
むしろ、こちらの働きのほうがずっと大切。
約40兆個といわれる、私たちのすべての生きた細胞の細胞膜はこの脂質二重層でできています。
そう、脂肪は不可欠なものなのです。

体組成計測ができるヘルスメーターで、体脂肪率を気にするあなた!
体脂肪率は低ければ低いほどいいと思っていませんか?
30歳以上 の女性で、体脂肪率の正常範囲20~27%ぐらいが適正値とされいて、20%以下だとちょっと痩せすぎで問題アリ、とされるのにはこういうわけがあるのです。

細胞膜はシャボン玉に似ている?


私たちの体はカチカチではなく、しなやかで、やわらかで、しかも丈夫です。
特に動き回る生物(動物)である私たちにはこのしなやかさはとても大切です。
細胞もしなやかに動いていて(流動的で)、自由に形や大きさを変えることができなければ機能しません。
その細胞の膜も同じ性質が必要です。

じゃあ、細胞膜をどのようにイメージすればよいでしょう。

ちょっと想像しにくいかもしれませんが、丈夫なシャボン玉のようなものと考えてみてください。
シャボン玉も膜でできていますし、シャボン玉になる石鹸水の成分は脂肪酸塩です。
シャボン玉は状況に合うように自由に形や大きさが変わりますよね。
それによく見ると表面に虹色の渦が見えて、常に動いているのがわかるはずです。
シャボン玉はずぐに割れてしましますが、これをとても丈夫にして、簡単には割れないようになったものが細胞膜といっていいでしょう。

実はシャボン玉と細胞膜の化学構造は似ているのです!!
シャボン玉と細胞膜の構造の最大の違いは、膜を構成する分子の向きが逆なことで、二重層であることもよく似ています。
ここら辺は機会があればまたお話しします。

細胞膜で脂肪が果たす役割

さて、細胞膜の脂質二重層はとても大切な役割があることがわかっています。
脂肪についてもっと理解するために、ちょと詳しく見てみましょう。

脂肪酸, 脂肪,脂質二重層,コレステロール,グリセロリン脂質,細胞膜,しなやか、いい油、悪い油、両親媒性分子、動脈硬化、高脂血症、脂質異常症、エンドサイト―シス、エキソサイトーシス、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質
細胞膜(脂質二重層)

上の絵のように細胞膜はおもに脂質で構成された二重の膜です。
上と下に水色の丸が並んでいて、それにオレンジ色、黄色とか緑、ピンクの足が生えていますね。
この凧のようなものが細胞膜のおもな基本単位で、グリセロリン脂質といいます。

左の絵はグリセロリン脂質の一種を拡大したものです。


青い部分は、頭のようなので頭部とよばれています。


頭部は水になじみ、油(脂質)をはじく性質をもっています。

黄色の部分は、しっぽのようなので尾部とよばれます。

尾部は油(脂質)になじみ、水をはじく性質をもっています。

つまり頭部と尾部では、性質が反対なんです。

この性質によって私たちの体は自然に細胞の中と外を隔てているのです。


上の絵のように頭部と頭部、尾部と尾部、はお互いにくっついて、頭部は膜の外方向、尾部は膜の内方向に集まって、並んでいます。

物理化学的に、同じ性質を持つ分子や形が似た分子どうしは引き付け合う法則があります。
こうして二重の膜が出来上がっているわけです。


細胞の外は、体液(リンパ液)や血液などがあり、これらは水分を多く含みます。
また、細胞の内側は、細胞液(細胞質)に満たされていて、これも水分が多いので、細胞の外側と内側には、水になじむ頭部(青い丸)が自然と並んでいきます。

一方、黄色い尻尾のような尾部は細胞膜の内側に集まっていますね。
ここでは、油(脂質)になじむ性質の尾部が、お互いに引き合っています。

このように頭部と尾部の物理化学的な性質によって、大事な細胞の中に外から勝手に余計なものが入ってこないようになると同時に、大切な細胞の中のものが出ていかないようにバリアーとなることができます。

脂質を作る脂肪酸には、いくつかの種類と役割がある


さて、この大切な細胞膜を作るグリセロリン脂質は、実は脂肪(中性脂肪)を構成している脂肪酸が部品になってできています。

下の絵を見てください。

グリセロリン脂質(ホスファチジルコリン)と中性脂肪



赤い点線で囲んだように、グリセロリン脂質は脂肪の脂肪酸の1つが、別な成分に入れ替わった形になっています。

40兆個ある細胞の膜にたくさんのグリセロリン脂質があるのですから、その原料の脂肪がとても大切なことがわかりますね。

この細胞の脂質二重層はとても高性能です。

穴が開いているわけではないのに、細胞外から必要なものを取り込み、細胞内の不必要なものは出してしまう機能をもっています。
さらに、ほかの細胞との信号をやりとりして、チームプレイもできます。
細胞の形を変えるのも上手で、自分を複製(細胞分裂)するときだって、柔軟に対応します。

つまり、細胞膜はこのような高機能を発揮せるために、しなやかで、しかも、丈夫で強いといった性質をもっているのです。
もしも細胞膜がしなやかさを持っていなかったら、あなたの皮膚や内臓はごわごわのカチカチでしょう。

さて、この、しなやかで丈夫な細胞膜で大切な役割をしているのが、今回の主役、脂質二重層の脂肪酸成分です。

下の3枚の絵を見てください。


左の絵では、尾部(オレンジ)の4つの脂肪酸部分はまっすぐです。

頭部(青)は隙間なく並んでいいて、2つのグリセロリン脂質はピッチリと隣り合っています。

左の絵では尾部のオレンジの脂肪酸部分はまっすぐですが、黄色とピンクの脂肪酸部分は足を跳ね上げたように曲がっています。

それに合わせて、2つのグリセロリン脂質の頭部(青)にちょっと隙間ができて並んでいます。













右の絵ではオレンジ色の尾部の2つの脂肪酸部分はまっすぐですが、緑色とピンクの脂肪酸部分は足を跳ね上げたように曲がっています。
特に緑色の方は大きく曲がっています。

そして、それに合わせて、2つのグリセロリン脂質の頭部にさらに隙間ができて並んでいます。






実はこの隙間が「しなやかさ」を保つために大切だと考えられています。

もう一度、脂質二重層の絵を見てみましょう。
脂肪酸, 脂肪,脂質二重層,コレステロール,グリセロリン脂質,細胞膜,しなやか、いい油、悪い油、両親媒性分子、動脈硬化、高脂血症、脂質異常症、エンドサイト―シス、エキソサイトーシス、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質
脂質二重層と脂質ラフト
中央の上の部分(頭部が青色)は脂質ラフトとよばれる多機能を持つ領域で比較的強固な構造。
脂質ラフトをおもに構成するのは、グリセロリン脂質ではなく、スフィンゴ脂質とスフィンゴ糖脂質


絵の中央下部には、オレンジ色で描かれた足のまっすぐな脂肪酸部分を持つグリセロリン脂質が多く、左側と右側には、今見たような、黄色ピンクの脂肪酸部分を持ったグリセロリン脂質が多くなっています。

まず中央下部です。
中央下部のグリセロリン脂質はピッチリと詰まって並んでいます。
そのためグリセロリン脂質どうしの結びつきが強くて丈夫です。

この構造の上には、脂質ラフトとよばれる強固な筏(いかだ)のような構造があります。
ラフトとは英語でまさに筏の意味です。
絵では中央の上の部分(頭部が青色)で尾部が肌色で描かれています。

この脂質ラフトは細胞への信号を受け取ったりするところなのですが、細胞膜の外側に大きな緑色のタンパク質があり、また、細胞膜を貫通しているスプリングのような形のタンパク質があったりするので、これらを支えるために強度が必要なのです。
そこでその下の中央下部には足がまっすぐなグリセロリン脂質が集まっていて、土台のように支えています。
脂質ラフトは必要に応じてしなやかなグリセロリン脂質の海を筏のように浮かんで移動できるようです。


脂肪酸, 脂肪,脂質二重層,コレステロール,グリセロリン脂質,細胞膜,しなやか、いい油、悪い油、両親媒性分子、動脈硬化、高脂血症、脂質異常症、エンドサイト―シス、エキソサイトーシス、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質
コレステロールの構造

コレステロールで細胞膜を強くする

中央部にグレーのタツノオトシゴみたいな形の楔(くさび)のようなものがところどころありますね。
これがコレステロールです。

コレステロールは、柱のように重いものを支えるように入っています。

コレステロールは細胞の強度が必要な個所にこのように配置されます。
コレステロールにはこれ以外にもホルモンの原料にもなります。
実は、コレステロールは体になくてはならないものなのです。

コレステロールが多いと動脈が硬くなる動脈硬化になって心筋梗塞や脳卒中の危険が高まるという話を聞いたことがあるかと思います。

一方で、コレステロールが低すぎると死亡率が上がるという研究もあります。

程度にもよりますがコレステロール値が少々高くても、遺伝的に血中の脂質が高くなる資質がある人や、糖尿病など動脈硬化のリスクが高い人を除いて、ほとんどの場合、薬は必要ないと考えます。

不必要な薬はなるべく使用しないほうが安全です。
もしも、あなたやあなたの家族がコレステロールを低下させる薬を医師から処方されているのなら、本当に必要なのかどうかもう一度、医師に相談してみてください。

話がそれました。

細胞膜の固いところ、柔らかいところ

さて、ちょっと上の細胞膜の絵の左側と右側の部分を見てください。
ここには、黄色ピンクの脂肪酸部分を持ったグリセロリン脂質が多く配置しています。

この部分には、脂質ラフトのような支えるべき重いものがありません。
なので、細胞膜をしなやかに保つため、足の曲がった黄色やピンクや緑の脂肪酸部分を持つグリセロリン脂質が集まっています。
こうして、グリセロリン脂質の隙間が比較的緩やかになり(分子同士の相互作用が弱くなり)、グリセロリン脂質が細胞膜の上を自由に動けるためしなやかになっていると考えられます。

どうですか?

脂肪やコレステロールの物理化学的な性質を自然に利用して、私たちの細胞は体の機能を発揮させていることが、細胞膜1つをとっても鮮やかにわかりますね。

私たちの体は、とても、とーっても理にかなっています。

最初のほうで、細胞膜は丈夫なシャボン玉のようなものとお話ししました。
空気中でできたシャボン玉はすぐに水分が蒸発するので割れてしまいますが、私たちの細胞膜は割れませんね。
それは、細胞の内にも外にもふんだんに水があるためです。
水が豊富な環境ではグリセロリン脂質の物理化学的な性質はかわりません(だから、簡単には割れません!)。
生命に水が必須な一面です。
丈夫なシャボン玉って、ちょっとありえないようなイメージですが、私たちの体はこれを自然の法則に従って実現しているのです。

脂肪やコレステロールが体によくないといった、一面的な迷信を安直に信じてしまっては損をします。

最新の科学の情報をきちんと理解して、自分の健康は自分で守る努力をしましょう。

われわれエバーグリーン研究室は読者=研究員の皆さんと、研究を続けていきます。

さて、今日は脂肪とコレステロールの機能がわかりました。

下の記事では、体に良い脂肪(油脂)と悪い脂肪についてお話しています。
健康に良い油?悪い油?


よろしければこちらも読んでください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
エナジードリンクは飲んでもOK?
加糖飲料の危険性が次々証明
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の恐ろしい結果、終末糖化産物(AGEs)とは?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備群!
糖毒性で糖尿病予備群に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の末路、終末糖化産物(AGEs)とは?
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム