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2019年1月28日月曜日

インフルエンザにゾフルーザを使って大丈夫??

今年も、インフルエンザが流行っています。
新しい抗インフルエンザウイルス薬、ゾフルーザの人気が高く、医薬品卸や病院などが買い占めてしまって、品薄になっているとか。
副作用がまだよくわからないような使用経験の少ない薬が好まれるというのは、日本独特の現象のようですが、健康に直接関わることだけに見過ごせないように思います。

今日は、ゾフルーザの長所、短所を説明して、タミフルやイナビルを含む抗インフルエンザウイルス薬を本当に使う必要があるかどうかについて考えてみます。

ゾフルーザの長所とされている事柄を鵜呑みにしてよいか?

ゾフルーザの長所とされている点を挙げて、1つ1つ検証してみましょう。

長所1

1回錠剤を服用するだけで治療が終わる。


長所1の問題点

1回飲んだ薬が長時間作用するため、副作用が出たときに、なかなか治まらなくなります。
新薬では、どのような副作用が現れるかの検証は十分にできていません。
ゾフルーザは吸入薬ではなく、内服薬なので、血流を介して全身に薬が届きます。
エイズウイルスの治療薬や、肝炎ウイルスの治療薬など、ウイルスに作用する薬は、副作用が多い傾向があります。
インフルエンザ*タミフルよりはリレンザ・イナビルが安心

確かに1回錠剤を飲むだけの治療には魅力がありますが、未知の内服薬を使うリスクについて、まず、考える必要があるように思います。


長所2

インフルエンザの症状を約1日早く治す。


長所2の問題点

開発時の臨床試験での解析結果であって、平均値です。
何週間も咳や鼻水が続く方もいます。
1日早く症状を回復させるために、副作用の危険を冒してまで抗インフルエンザウイルス薬を使う必要があるか、考える必要があります。
因みに、タミフルでも同じ結果でした。
タミフルについても、有効性には疑問がありますが。
インフルエンザ*タミフルはどのくらい効くの?


長所3

体内からウイルスが検出されなくなるまでの期間を、タミフルや薬を使わなかった場合と比べて2~3日短縮する。


長所3の問題点

ゾフルーザには、耐性化を生じやすいという大きな欠点があります。
どういうことかと言うと、ゾフルーザを飲んだ人では、感染しているインフルエンザウイルスの遺伝子が変異して、ゾフルーザが効きにくくなる場合があるということです。
ゾフルーザ開発時の臨床試験では、成人で約10人に1人、小児では約4.3人に1人に耐性化が認められ、これらの人では、ゾフルーザを使わなかった場合よりウイルスが体内からなくなるまでの時間が長くかかっています1,2)
あなたの体内でインフルエンザウイルス薬がゾフルーザに耐性となり、それがお子さんに感染したら、お子さんはゾフルーザが効きにくくなります。

現在のようにゾフルーザを頻繁に使用し続けたら、あっという間にゾフルーザが効かないウイルスだらけになってしまうでしょう。
実際に、小学生を対象とした検査で、ゾフルーザ耐性ウイルスが見つかっています。
2019/1/24 IASR

以上、もっと詳しく知りたい方は。下記の『日本感染症学会』のページをご参照ください。
日本感染症学会でも、ゾフルーザは勧められていません。
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬(Cap-Dependent Endonuclease Inhibitor)Baloxavir marboxil(ゾフルーザ)について

抗インフルエンザウイルス薬を使わないでもインフルエンザは治る

私は薬局で薬剤師をしていますが、「タミフルやイナビルを使わなくても、インフルエンザは治ります」というと、驚かれる若いお母さんがたくさんいらっしゃいます。
お子さんがタミフルのドライシロップはまずくて飲めず、イナビルの吸入もうまくできないでいると、薬なしでは脳炎にでもなってしまうと思っているような慌てぶりです。

でも、ちょっと前までは、インフルエンザの薬なんてありませんでした。
自分の免疫の力で治すので、免疫がしっかり鍛えられて、同じ型のインフルエンザにはかかりにくくなったものです。

2009年にA(H1N1)pdm09と呼ばれる新しいタイプのインフルエンザが流行したときに、通常では罹患率が高くなる高齢者の罹患が少なかったことは有名です。
A(H1N1)pdm09は、実は昔、流行していた時期があり、高齢者では、同じ型のインフルエンザウイルスに子供のころ罹った際の免疫が残っていたのですね。

検査キットを使った診断の問題点

熱が高くて異常にだるいので受診したところ、検査キットでインフルエンザウイルスが陰性だったから、「明日も熱があればもう一度受診してください」と医師に言われ、翌日、熱は下がり始めているのに改めて受診して検査したら陽性になったからといって、抗インフルエンザウイルス薬が処方された、とうい患者さんも多くいらっしゃいます。

検査キットで陰性でも、症状からインフルエンザと診断できれば、抗インフルエンザウイルス薬を処方することは、保健適応上、可能です。
抗インフルエンザウイルス薬は感染初期に投与したほうが効果が高いのに、翌日まで待たせるというのはおかしな話です。
そもそも、自分の力で熱が下がり快復してきているのであれば、もう、抗インフルエンザウイルス薬は必要ないでしょう。
先ほども言いましたが、あえて副作用の危険を冒すことのリスクに、もっと意識を向けるべきです。

辛くて苦しいときには薬を出してもらえず、治り始めてから薬を出す・・・何のための医師だかわかりませんね。
あなたの主治医が、検査などせずに、ご自身の診療の経験からインフルエンザの診断を迅速に行い、合併症がなく、高齢でもない患者に対しては抗インフルエンザウイルス薬は処方しない方針であれば、その医師はとても信用できると思ってよいでしょう。

なぜ、皆、抗インフルエンザウイルス薬を使いたがるのか

こんなに抗インフルエンザウイルス薬を使いたがるのは、日本人だけです。
なぜ、このような状況になったのでしょう。

国民皆保険制度で国民の医療費の負担が少なくて済むのも一因でしょう。
抗インフルエンザウイルス薬は高額です。
特に、新しい薬ほど高い薬価が付いています。

タミフルはジェネリック医薬品も発売されて安価になりましたが、今の主流はイナビルとゾフルーザ。
両剤とも1回の治療で済みますが、タミフルやリレンザを決められた日数使うより、高額です。
医療費を抑制しようとしている国の政策に逆行していますね。

いくら保険で自己負担額が少なくて済むとはいえ、国民一同、検査にお金をかけたうえ、わざわざ高い薬を使いたがる・・・そのように仕向けている仕掛けがありそうです。

ゾフルーザは塩野義製薬、イナビルは第一三共の製品で、両剤とも日本のメーカーが開発して販売しています。
製薬メーカーが宣伝しているのに加え、マスメディアでも、新薬を大げさなまでにセンセーショナルに取り上げています。
とても不自然な印象を受けます。
もしかしたら、厚生労働省や政府が、画期的な新薬を出せないでいる日本国内の製薬メーカーを守るために、陰ながら応援しているのでは?と考えてしまいます。

因みに、イナビルは、十分な有効性が証明できなかったことから、海外では発売されていません。
日本でこの薬の承認をおろしたのは、当然ながら厚生労働省です。
詳しくは下記をご参照ください。
インフルエンザ治療薬 イナビルは本当に有効?

「でも、やっぱり少しでも早く楽になりたい」という方に

そうはいっても、いつも忙しい日本の皆さん、辛い症状を我慢するのは嫌だし、やはり1日でも早く良くなりたいと思われても当然です。

そこでお勧めなのが漢方薬の麻黄湯です。
タミフル以上の効果も検証されています。
Nabeshima S, J Infect Chemother 2012; 18: 534-43 

費用も圧倒的に安く、タミフルのジェネリック医薬品を使った場合の1/10程度です。
医師の処方箋なしに、薬局で買うこともできます。

抗インフルエンザウイルス薬はインフルエンザ以外のウイルスや細菌による風邪には効きませんが、麻黄湯ならば、風邪の引き初めに正しく使用すれば、風邪の病原体が何であっても有効です。

麻黄湯が有効な症状や使い方については、下記をご参照ください。
麻黄湯が合わないと思われる方と、体質に合わせた別の漢方薬の選択についても解説しています。
インフルエンザ*漢方薬で早めの対策

麻黄湯に関しては、最近、作用メカニズムも、研究されています。
麻黄湯に含まれる4種類の生薬が、それぞれの作用機序で炎症を抑えることがわかってきました。
Nishi A et al. NPJ Syst Biol Appl. 2017; 3 32.

とはいえ、抗インフルエンザウイルス薬を使うことが勧められる場合もあります。
詳細は下記をご参照ください。
インフルエンザにタミフルやイナビルは本当に必要?
  1. Omoto S, et al. Sci Rep 8: 9633, 2018 
  2. Hayden FG, et al. N Engl J Med 379: 913-923, 2018

2018年2月1日木曜日

インフルエンザにタミフルやイナビルは本当に必要?

インフルエンザに罹ったら、抗ウイルス薬を使わないといけない、と思っていませんか?

「病院でインフルエンザウイルスの迅速診断キットで調べてもらったらインフルエンザ陽性だった」
といって、タミフルやイナビルを処方された方がたくさん薬局に来られます。

中には熱があってだるそうな方もいますが、「もう、熱は下がった」とか、「具合はたいして悪くないんだけど、学校で流行っているから念のため検査をした」という方も多いようです。

インフルエンザに感染している方が学校や職場へ行くと感染を広げてしまうので、インフルエンザかどうかを調べることには意義があると思います。
ですが、検査で陽性だったら、必ず抗インフルエンザウイルス薬を使わなければならないわけではありません。

若くて健康な人であれば、むしろ、使わない方が身体によいと思われます。
その理由は次のとおり。
抗インフルエンザウイルス薬を使わなくてもインフルエンザは治る 抗インフルエンザウイルス薬を使わない方がインフルエンザウイルスに対する免疫が付く 抗インフルエンザウイルス薬を使っても早くウイルスが消失するわけではない 抗インフルエンザウイルス薬を使っても効果はたいしたことはない 抗インフルエンザウイルス薬は使うタイミングが遅ければ効かない 抗インフルエンザウイルス薬にも副作用のリスクがある  リスクが高い人は抗インフルエンザウイルス薬の使用が勧められる イナビル タミフル リレンザ

    それぞれの理由については、あとで1つずつ説明しましょう。

    抗ウイルス薬の使用が勧められる方

    抗インフルエンザウイルス薬を投与が勧められるのは次のような方です。
    亀田総合病院の作っているガイドラインを参考にしました。)
    ただし、症状が現れてから48時間以内でなければ効果は保障されません。
    • 肺炎になっている人
    • 5歳未満の小児(特に2歳以下)
    • 65歳以上の人
    • 妊婦
    • 以下の基礎疾患のある人:慢性呼吸器疾患(喘息を含む)、慢性心疾患(高血圧症以外)、慢性腎疾患、慢性肝疾患、血液疾患、慢性神経疾患、慢性神経筋疾患、代謝異常(糖尿病を含む)、肥満(BMIが30以上)
    • リウマチなどで免疫抑制剤投与中の人
    • がんを治療中の人
    このような方には、迅速診断の結果を問わず、抗ウイルス薬の投与が勧められます。
    迅速診断では、感染していても30~90%で検査結果が陰性になる可能性があるとされています。

    抗ウイルス薬の使用が勧められない方

    高リスクにあたらない健康な5歳以上の小児や65歳未満の成人に対しては、WHO(国際保健機関)やCDC(アメリカ疾病管理予防センター)は抗インフルエンザウイルス薬の投与を推奨していません。

    日本感染症学会は重症化を防ぐために投与を推奨していますが、その根拠となるデータが十分にあるわけではありません
    日本(厚生労働省も、日本の製薬会社も、関連学会も、国民皆保険があるために自己負担の少ない国民も)は、薬を使うのが好きですね。
    当面のあるかないかわからない重症化の可能性を防ぐために一様に抗インフルエンザウイルス薬を使うことで、先々、リスクが生じる可能性については議論に上がりません。

    抗ウイルス薬を使わない方が良いと考えられる理由

    健康な5歳以上の小児や65歳未満の成人で入院を要しない軽症患者に、抗インフルエンザウイルス薬を使わない方が良いと考えられる理由を説明しましょう。


    1.抗ウイルス薬を使わなくてもインフルエンザは治る

    当たり前ですね。
    抗インフルエンザウイルス薬がなかったころは、誰も使わなかったのですから。

    抗インフルエンザウイルス薬を使ったことで、重症化が防げたという報告は見つけられませんでした。
    もっとも重篤な「脳症」は、抗インフルエンザウイルス薬を使っても減らないことが、確認されています。
    抗インフルエンザウイルス薬を使っても使わなくても、治る人は治るし、治らない人は治らないのです。

    2.抗ウイルス薬を使わない方が、抵抗力が付く

     コクラン共同計画という、世界的に様々なデータを集めて解析して薬剤などの有効性を検討する計画があります。その1つとして、2014年に抗インフルエンザウイルス薬に関する解析結果が報告されました。
    Jefferson T, et al. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 4. Art. No.: CD008965. DOI: 10.1002/14651858.CD008965.pub4

    この中で、オセルタミビル(商品名:タミフル)の試験20件(対象患者 9,623人)、ザナミビル商品名:リレンザ)の試験26件(対象患者 14,628人)の有効性・安全性を検討した結果、
    • タミフルを使った成人・小児には、感染と戦うための抗体を作る力が低下した人が、使わなかった人に比べて多く見られた
    と、報告されました。

    どういうことかというと・・・
    病原体が感染すると、ヒトの免疫細胞はその病原体と闘う戦闘員である抗体を作ります。
    抗体ができるのには1週間から10日と時間がかかるので、インフルエンザだと、多くの人は治りかけた頃に戦闘員が充実してくることになり・・・ちょっと遅い感じですね。
    でも、一度抗体を作ると、2度目に同じ病原体が感染した時には、すぐに出動して、感染を防いでくれます。

    この抗体は血液中に流れているので、どのくらいあるか、採血して調べることができます。
    インフルエンザに罹った後に血液検査をしたところ、タミフルを使った人は使わなかった人に比べて抗体が少ない場合が多かったのです。

    同じシーズンに2回もインフルエンザに罹ったという話を聞くことがありますが、そういう人は、ひょっとしたら、抗インフルエンザウイルス薬を使ったために抗体があまり作られなかったのかもしれません。

    3.抗ウイルス薬を使っても、早くウイルスが消失するわけではない

    抗インフルエンザウイルス薬を使っても使わなくても、体の中からウイルスがいなくなるまでにかかる期間は変わりません 

    現時点で発売されている抗インフルエンザウイルス薬には、ウイルスそのものを破壊して消し去る薬効はありません。
    インフルエンザウイルスが増殖するのを邪魔する作用があるだけです。
    インフルエンザウイルスを排除するには、感染した人の細胞を免疫細胞がお掃除してくれるまで待つしかありません。
    抗インフルエンザウイルス薬の作用機序については、下記をご参照ください。
    インフルエンザ*タミフルで予防できる?

    ですので、病院で「熱が下がってから2日間は外出しないように」と言われるかと思いますが、この期間は、薬を使っても使わなくても変わりません。

    4.抗ウイルス薬を使っても、効果はたいしたことはない

    先ほどのコクラン共同計画の報告から、抗インフルエンザウイルス薬の効果について紹介しましょう。
    • 成人でインフルエンザ様症状が現れている期間を、タミフルは7日間から6.3日間に、リレンザは6.6日間から6日間に短縮した
    • 小児での効果は成人よりも不確かだった
    • リレンザは成人で気管支炎の発症を約1.8%減らした
    インフルエンザ様症状とは、「頭痛、筋肉または関節痛、疲労感、悪寒または発汗、鼻症状、喉の痛み、咳」を指します。
    それが、抗インフルエンザウイルス薬で半日くらい早く良くなるという結果でした。
    発熱に関しては、統計学的に分析して意味のある差が認められなかったようです。

    5.抗ウイルス薬を使うタイミングが遅ければ、効かない

    何れの抗インフルエンザウイルス薬も、症状発現から48時間以内に投与開始しなければ、効果は保障されません
    これは、抗インフルエンザウイルス薬の作用機序を見てもわかります。

    家族がインフルエンザに罹っていて、自分も寒気がしてきて「移ったかな?」と思いすぐに受診した患者さんに、「検査の結果が今はまだ陰性だから、明日、症状がひどくなったらまた来てください」 と言う医師がいます。
    全く、何のための医師なのか?と思ってしまいます。

    薬の効果が一番得られやすいタイミングをわざわざ逃して、症状が重くなって、薬が効きにくくなるまで待たせるのですから。

    薬はいつ使っても、同じように100%効果があるものではありません。
    頃合いや、さじ加減…言葉を換えれば患者さんの状態を見て、使うかどうかを判断するのが、本来の医師の役目です。
    それを判断できない医師は、やがてAIに先を越されるでしょうね。

    6.副作用のリスクがある

    抗インフルエンザウイルス薬にも、もちろん副作用があります。
    先ほどのコクラン共同計画の報告では、
    • タミフルでは、成人で約4%、小児で約5%、吐き気と嘔吐の副作用リスクが増加した
    とされています。

    異常行動を心配される方がいらっしゃいますね。
    異常行動は、抗インフルエンザウイルス薬を使っても使わなくても、インフルエンザで高熱が出ることで現れるとされています。
    薬の使用との因果関係は認められていません。

    ここで、副作用について考えていただきたいことが、他にあります。
    体内に共生しているウイルスを人為的にむやみに排除することが、思わぬ被害を身体に与えている可能性についてです。

    細菌、ウイルスのサイズ 肺炎球菌、ミトコンドリア、人の細胞 ヘモグロビンの大きさ イラストで比較これまで、抗菌薬が腸内細菌に作用することで生涯を通して、悪影響を及ぼすというお話をしてきました。
    抗ウイルス薬も同じです。
    ウイルスは、細菌のように顕微鏡で見ることができないほど小さいので、細菌以上に未知の存在です。
    細菌以上に、私たちの身体に深いかかわりを持っているかもしれません。

    生物の進化にウイルスが関わっているという学説もあります。
    そんな、人類よりはるかに昔から存在している偉大な存在に、浅はかな人知でむやみに手を出して、大丈夫なのでしょうか?

    インフルエンザでは家で安静にするのがおすすめ

    ということで、具合が悪いのに病院に行って痛い検査をされて、たいして効かない薬を出されるより、家でしっかり休むことをお勧めします。

    特に小さなお子さんには、検査はかわいそうですね。
    そのうえ、タミフルの散剤は量が多くてまずいし、イナビルはむせて苦しいです。

    病院や薬局へ行けば、そこに集まるお年よりなど、もっとインフルエンザに感染しては困る方々にうつしてまいます。 

    効果が期待できるインフルエンザ対策

    個人的には漢方薬を使った対策をお勧めします。
    薬局で売っている薬で対応できます
    詳細は、こちらをご覧ください。

    コクラン共同計画の報告については、こちらに詳しくまとめましたので、ご参照ください。
    インフルエンザ*タミフルはどのくらい効くの?

    今、一番よく使われているイナビルについて触れませんでしたね。
    イナビルは効くのでしょうか?

    イナビルは発売されたのが最近なので、コクラン共同計画の報告では調査対象になっていません。
    それに、イナビルは、海外では有効性が認められなかったために開発が中止された薬です。
    海外でレビューされるはずがありませんね。

    詳細はこちらをご覧ください。
    インフルエンザ治療薬 イナビルは本当に有効?

    R1と豆乳、牛乳で作るインフルエンザ予防ヨーグルト
    ご参考まで・・・
    インフルエンザの予防に、ヨーグルトのレシピをご紹介します。

    本当に効くかどうかは・・・? 
    これを食べ始めて3シーズン目ですが、薬局勤務にもかかわらず、予防接種を受けなくても一度もインフルエンザに罹っていません。
    R1ヨーグルトでインフルエンザ&風邪対策

     

    2016年1月17日日曜日

    インフルエンザ治療薬 イナビルは本当に有効?

    タミフル オセルタミビル イナビル リレンザ 吸入 作用機序 使い方 ザナミビル ラニナミビル ペラミビル 経口薬 ノイラミニダーゼ阻害薬イナビル(一般名:ラニナミビル)は2010年に発売された抗インフルエンザウイルス薬です。

    2016年現在、日本で保険適応が認められている、A型にもB型にも有効で、経口で投与できる抗インフルエンザウイルス薬は、タミフル、リレンザ、イナビルの3剤です。

    このうち、リレンザとイナビルは吸入薬。

    なかでも、イナビルは、1回吸入するだけで有効、という手軽さからか、今年はよく使われているようです。

    海外でイナビルは効果を認められなかった

    ところが、このイナビル、海外での開発が中止になりました。
    アメリカのビオタ(Biota Pharmaceuticals Inc)という製薬メーカーが行った臨床試験で、効果が認められなかったのがその理由です。

    効かない薬を開発するのは無駄ですから、当然の判断でしょう。

    この試験結果をご紹介します。

    IGLOO試験

    試験期間 : 2013年6月~14年4月
    対象 : 12か国 639例(うち248例にPCRによりインフルエンザウイルス感染を確認)
    試験方法 : ①イナビル80㎎投与群 
             ②イナビル40㎎投与群(日本での成人に対する投与量)
             ③プラセボ群(偽薬群)
            の3群にランダムに分け、二重盲検法により比較試験を実施
    結果

    • プラセボ群に比べ、イナビル40mg群、80mg群のいずれも、予後調査票によるインフルエンザ症状が改善するまでの期間(中央値)の有意な短縮は見られなかった(40㎎群:102.3時間 p=0.248、80㎎群:103.2時間 p=0.776、プラセボ群:104.1時間)。 
    • 定量的RT-PCR法による試験開始から3日時点でのウイルス排出量は、プラセボ群に比べ、イナビル40mg群(p<0.001)、80mg群(p=0.070)と有意な改善が見られた。
    • 試験開始から3日時点におけるウイルス陰性化率は、プラセボ群に比べ、イナビル40mg群(p=0.002)、80mg群(p=0.020)と有意な改善が見られた。
    • イナビル40mg群ではプラセボ群に比べ細菌二次感染の有意な減少(p=0.013)が確認された。 
    つまり、イナビルによって、患者から検出されるウイルスの量は若干減ったけれど、症状の改善の具合はイナビルを使っても使わなくても変わらなかったということです。

    Biota Reports Top-Line Data From Its Phase 2 "IGLOO" Trial of Laninamivir Octanoate

    日本の臨床試験でも、イナビルはプラセボ群と有意差なし

    では、日本では効果が認められたのでしょうか。
    疑問に思ったので、調べてみました。


    開発段階で日本の製薬メーカーが行った臨床試験の結果でも、プラセボ(偽薬)と比較した試験で、イナビル投与群とプラセボ群の効果に、差は認められませんでした。

    日本では、タミフルと同等の有効性が確認されたことを理由にして、イナビルが承認されていたのです。

    イナビルとプラセボを比較して差がなかった、という臨床試験についてご紹介します。

    この試験は、台湾で行われています。
    日本では、インフルエンザの患者さんにプラセボを投与するのが難しかったのでしょう。
    日本人は、抗インフルエンザウイルス薬を盲信していますから(笑)


    対象 : A型またはB型のインフルエンザウイルス感染症患者
    試験方法 : ①イナビル20㎎投与群 47例
             ②イナビル10㎎投与群 53例
             ③プラセボ群(偽薬群) 47例
            の3群にランダムに分け、二重盲検法により比較試験を実施
    結果:

    • 体温が平熱(37.2℃以下に下がるまでの時間の中央値は次の通り
    ①イナビル20㎎投与群 38.5時間
    ②イナビル10㎎投与群 39.7時間
    ③プラセボ群(偽薬群) 41.0時間

    • イナビル投与群とプラセボ群に統計学的に有意な差は認められなかった(一般化ウイルコクソン検定)
    • 副次評価項目であるインフルエンザ罹病期間の中央値についても、イナビル投与群とプラセボ群に統計学的に有意な差は認められなかった(一般化ウイルコクソン検定)
    注意:日本での成人に対する投与量は40㎎です。

    この試験については論文が投稿されていません。
    下記の厚生労働省の審議結果報告書のp55に書かれている内容が、一番詳しい情報だと思います。

    日本では、開発段階のデータを学術論文として公表しなくても済むというのも、おかしな話です。
    2000年までは、このようなデータを学術論文として公表することが義務付けられていたのですが、規制緩和によって、撤廃されてしまいました。

    ナビル第Ⅱ相臨床試験
    厚生労働省医薬食品局審査管理課 審議結果報告書 平成22年8月3日 P55 台湾第Ⅱ相臨床試験

    第Ⅲ相臨床試験では、患者の主観で効果を判定

    前述の日本の第Ⅱ相臨床試験では、主要評価項目として「体温が平熱(37.2℃以下)に回復するまでの時間」を見ていたのですが、統計学的に有意差が認められなかったためか、その後に日本で行われた臨床試験では、主要評価項目が「インフルエンザ罹病時間」に変更されました。

    「インフルエンザ罹病時間」とは
    治験薬の初回投与から患者日記に記載される各インフルエンザ症状(頭痛、筋肉または関節痛、疲労感、悪寒または発汗、鼻症状、喉の痛み、咳)について、
    0~3 の4 段階
     0:なし
     1:ほとんど気にならない[軽度]
     2:かなり気になる[中等度]
     3:がまんできない[重度]
    で、患者自身で評価し、
    すべての症状が「なし」または「軽度」に改善し、それらが21.5時間以上継続する最初の時点までの時間と規定されています。

    つまり、イナビルの効果は最終的に、数値による医師の判定ではなく、患者の主観によって評価されたということです。

    第Ⅲ相臨床試験の結果は、『イナビルはタミフルと同等』

    A型H1N1 H3N3 Sugaya N and Ohashi Y:Antimicrob Agents Chemother 2010;54(6):2575-2582製薬メーカーが行った最終的な臨床試験の結果は、
    イナビルは、タミフルと同等に「インフルエンザ罹病期間を短縮する」
    というものです。

    ただし、このときの対象には、「タミフル抵抗性インフルエンザウイルス(H275Y変異ウイルス)」に罹患した患者さんが、63~66%含まれています。

    なので63~66%の患者さんには、タミフルは効きにくかったと考えられます。

    イナビルは、タミフル抵抗性インフルエンザを含むインフルエンザに対するタミフルの効果と同等の有効性を示す
    と考える必要がありそうですね。

    A型 B型 H1N1 H3N2 Antimicrob Agents Chemother. 2010 Jun;54(6):2575-82. doi: 10.1128/AAC.01755-09. Epub 2010 Apr 5.


    そして、その効果のほどは、表の通りです。

    A型(H1N1)ではタミフル群と同じくらいの効果が認められています。

    特に、小児では、イナビル群の方が罹病期間が短く、イナビル20㎎群では統計学的な有意差が認められています(中央値の差のタミフル群を対照群とした一般化ウイルコクソン検定:P=0.001)。

    しかし、A型(H3N2)に対しては、タミフルの方が効果が高くなっていますね。

    イナビル第Ⅲ相臨床試験
    Long-Acting Neuraminidase Inhibitor Laninamivir Octanoate versus Oseltamivir for Treatment of Influenza: A Double-Blind, Randomized, Noninferiority Clinical Trial Watanabe A, et al.:Clin Infect Dis 2010;51(10):1167-1175

    イナビル第Ⅲ相臨床試験(小児)
    Long-acting neuraminidase inhibitor laninamivir octanoate (CS-8958) versus oseltamivir as treatment for children with influenza virus infection.Antimicrob Agents Chemother. 2010 Jun;54(6):2575-82. doi: 10.1128/AAC.01755-09. Epub 2010 Apr 5.

    イナビルは小児ではA型には効かない?

    小児のA型(H1N1)、A型(H3N2)の結果を見ると、イナビル20㎎の方がイナビル40㎎よりも、罹患期間が短く、高い効果が得られています。

    一般的に、薬は、用量を増やすにしたがって有効性が高くなり、やがて、頭打ちになります。

    ですから、薬を開発するとき、その物質の用量が増えるにしたがって有効性が高くなることを確認することで、その物質が有効であると考えます。

    つまり、小児で見る限り、A型に対してはイナビルは効かない=薬と言えないと考えられるわけです。

    イナビルはどこで効いているか確認できていない

    タミフル リレンザ イナビルがどのくらい血液中に入るか 血中濃度 半減期 AUC 分子量 表 
    タミフル(経口薬)に比べると、リレンザ、イナビルは
    血液中に入る薬剤の量(総AUC)が少ない
    タミフルは経口投与だから、全身性の副作用が現れやすいけれど、イナビルとリレンザは吸入だから全身性の副作用は少ないと思われるというお話を、以前紹介しました。

    インフルエンザ*タミフルよりはリレンザ・イナビルが安心

    健康な成人への投与で、血液中に比べて肺胞粘液中に107倍のイナビル(活性体)が検出されたということです。

    しかし、本当にイナビルがのどの辺りの局所に作用しているかわからないという問題が、厚労省での承認の際に、専門家の間で討議されていました。

    どういうことかというと・・・
    イナビルはどうやって効くのか 本当に効くのか 有効性 イラスト
    インフルエンザウイルスは主に咽頭に感染して増殖。
    イナビルは肺胞に分布することが確認されている
    インフルエンザウイルスは肺ではなくて主にのど(上気道)に感染して、のどで増殖します。
    肺胞中にいくらたくさん薬が到達していても、あまり意味がありません。

    イナビルが、のどにどのくらい到達するかというデータは、報告されていません。


    ちなみに、喘息などに使われる吸入薬では、どのくらいのサイズの粒子が肺まで移行しやすいかという研究が、しっかり行われています。
    吸入器(デバイス)についても、かなり研究されていて、使い勝手がよくなりました。

    局所投与の抗インフルエンザウイルス薬は、肺ではなくて、のどに留まる割合が重要です。
    特に、お子さんや高齢者では、上手に吸入できない可能性もありますから、デバイスや粒子径などの研究も、進めていただきたいですね。

    ちなみに、イナビルの作用部位については、承認後の製薬会社の検討課題として残されています。
    国産の新薬ですから、国も一刻も早く承認を下したかった・・・ということ?でしょうか。

    イナビルは約1/4が血液中に移行

    イナビルの長所は、吸入なので全身性の副作用が現れにくいと考えられるという点にあります。

    「作用がタミフルと同程度ならば、副作用が少ないだけやっぱりイナビルがいい」と考えられそうです。

    そこで、イナビルがどのくらい血液中に入るのかを調べました。

    健康な成人にイナビルを投与したところ、尿中にイナビル(活性体)が投与から6日間で23.1%排泄されました。
    ということは、少なくとも23.1%は血液中に入り活性体となって、全身を回った後、腎臓から排泄されたことになります。

    残念ながら、脳への移行については、人では確認されていません。
    (これは、イナビルに限ったことではありません)

    また、ラットでは、67%が尿中、残りの20数%が糞便中に排泄されています。
    通常、気道で作用した薬は、気道から痰などに混ざって出ていくので、血液中に入ったとしても微量と考えられます。
    ですから、イナビルが本当に気道で作用しているかどうかに疑問を持っている研究者もいるようです。

    イナビル吸入粉末剤20㎎ インタビューフォーム

    血液中に入るということは、全身性の副作用が現れる可能性も考えられます。

    参考までに、イギリスの研究結果では、タミフルの服用で、成人で約4%、小児で約5%、吐き気と嘔吐の副作用リスクが増加したと指摘されています。
    インフルエンザ*タミフルはどのくらい効くの?

    私は・・・「抗ウイルス薬」は怖いです

    では、インフルエンザに罹ったらどうすればよいのでしょう?

    個人的にお勧めする対処法は、こちらをご覧ください。

    これまで、抗菌薬が、腸内細菌に作用することで生涯を通して、悪影響を及ぼすというお話をしてきました。
    抗ウイルス薬も同じです。
    細菌、ウイルスのサイズ 肺炎球菌、ミトコンドリア、人の細胞 ヘモグロビンの大きさ イラストで比較ウイルスは、細菌のように顕微鏡で見ることができないほど小さいので、細菌以上に未知の存在です。
    細菌以上に、私たちの身体に深いかかわりを持っているかもしれません。

    生物の進化にウイルスが関わっているという学説もあります。

    そんな、人類よりはるかに昔から存在している偉大な存在に、浅はかな人知でむやみに手を出すのは恐ろしいと思います。

    抗インフルエンザウイルス薬を投与したところで、インフルエンザ脳症を防げないことは、確認されています。

    たった1日早く、咳や鼻水を鎮めるために、抗インフルエンザウイルス薬を使うことに意味があるかどうか、よく考えましょう。

    感染症の多くは、自然に感染することで免疫が鍛えられて、次に同じ細菌やウイルスに出会ったときに罹りにくくなることを忘れないでください。

    ご参考までに、イナビルを承認した際の、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会の議事録をご紹介します。
    イナビルに関しては、今後の検討課題が残されているようです。
    医薬食品局2010年7月29日 平成22年7月29日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録


    R1と豆乳、牛乳で作るインフルエンザ予防ヨーグルト
    ご参考まで・・・
    インフルエンザの予防に、ヨーグルトのレシピをご紹介しています。
    R1ヨーグルトでインフルエンザ&風邪対策


    2018.02.01