いきいき!エバーグリーンラブ: インフルエンザ*タミフルよりはリレンザ・イナビルが安心

2015年1月19日月曜日

インフルエンザ*タミフルよりはリレンザ・イナビルが安心

エバーグリーン研究室では、インフルエンザに罹ったら、抗インフルエンザウイルス薬より漢方薬をお勧めしています。

インフルエンザ*漢方薬で早めの対策

とはいえ、抗インフルエンザウイルス薬についてももっと詳しく知っておく必要があるのでは?と思い、誰でも入手できる資料を元に、色々調査してみました。

ここでは、今、A型にもB型にも効果があるとされていて、注射薬ではない3種類の抗インフルエンザウイルス薬を比べてみることにします。
  • タミフル:経口薬(カプセル、ドライシロップ)5日間服用
  • リレンザ:5日間吸入
  • イナビル:1回吸入

剤形が違うとこんなことが違う

まず、投与方法の違いについて。
カプセル、ドライシロップ、吸入などの薬の形を、剤形といいます。

同じ剤形でも、薬によって吸収のされ方が違う場合があるので、一般的な話はすごく複雑になります。
ですから、ここでは、タミフルとリレンザ、イナビルについてお話しします。

幼児、高齢者、肺炎の人はタミフル

吸入はお手軽な感じがしますが、乳幼児や高齢者など、うまく使えない場合には全く効果が得られません。
肺炎を起こしている人や、喘息で気道が狭くなっている人も、薬が肺まで届きにくいために使えません。

経口薬は、飲めば確実に体内に入るので、誰にでも使いやすい剤形といえます。
タミフルが誰にでも勧められるのには、こういった理由があります。

リレンザ・イナビルはのど、タミフルは全身

吸入と経口薬では、使用後、体の中のどこに入っていくかが違います。
  • タミフル(経口薬)の場合:       口→胃→小腸→肝臓→血液→全身
  • リレンザ/イナビル(吸入)の場合:  のど・気道・肺の粘膜→血液→全身
このような体内での薬の動き方を、体内動態といいます。

薬の作用の現れ方 経口投与 吸入の作用箇所の違い 内服、吸入で吸収される部位 口から飲んだ時とスプレーで吸入した時、薬はどうやって効く? のど 肝臓 静脈 動脈 小腸から門脈を通って肝臓へ 体内動態と効果が発現する部位 有効性  吸収 代謝 ADME 図説 イラスト タミフル リレンザ イナビル オセルタミビル ザナミビル ラニナビル インフルエンザの薬は何がいいか イラスト 図説
タミフルを飲んだ時
①飲み込むと
②胃を通過して小腸へ
③小腸から吸収されて、門脈(緑)を通って肝臓へ
④肝臓から肝静脈を通って心臓へ
⑤心臓から全身へ
★全身で作用

リレンザ・イナビルを吸入した時
①吸入すると、のど・気管支・肺の粘膜へ
★のど・気管支・肺で作用
②のど・気管支・肺の粘膜からほんの少し吸収され、全身へ

タミフルも、リレンザ・イナビルも、最終的には血液中に入り全身へ送られますが、その割合が違います。
  • タミフルでは飲んだ量の約80%が血液へ
  • リレンザは吸入した量の約2%が血液へ
これがどういうことかというと・・・

タミフルは

タミフルは、大半(80%)が血液の中に入り全身へいきわたり、全身に作用します。
そのほかは、おそらく吸収されていないと考えられます。

リレンザは

リレンザは、吸入した薬のほとんどはのどや気管支、肺など、吸入した薬が届いた粘膜にとどまって作用します。
インフルエンザウイルスはのどから侵入するので、ここで、戦って体に入るのを食い止めようというわけです。

イナビルは

では、イナビルはどうかというと、示されているデータがちょっと違うので、タミフルやリレンザと並べてお示しできません。

イナビルは、血液中の濃度を1とすると、肺胞粘液中の濃度は約100、肺胞マクロファージの濃度は約14,000になるとされています。

肺を顕微鏡で見ると、小さな袋がたくさん集まってそこで血液中の二酸化炭素を酸素に置き換えています。
この小さな袋が肺胞。
肺胞の表面を覆っている粘液が肺胞粘液、肺胞の中にいるマクロファージ(白血球の一種で、ウイルスと闘う戦闘員)が肺胞マクロファージです。
ですから、イナビルは血液中にはほんのわずかしか入らず、ほとんどが肺胞で作用すると考えられるわけです。

特に、肺胞マクロファージというのは、インフルエンザウイルスが感染した細胞を食べる戦闘員ですから、この中にイナビルがたくさんあるということは、イナビルがインフルエンザウイルスが感染した細胞にたくさんくっついていたのではないかと推測できます。

ただし、インフルエンザウイルスが増殖することができるのは喉の細胞だけで、肺の細胞には入っていくことができません。
ですから、肺胞にイナビルがいくらたくさん分布していても、肺での効果は期待できません。
インフルエンザ治療薬 イナビルは本当に有効?

抗インフルエンザウイルス作用について3剤を比べると

これらの薬が効果を発揮するのは、ヒトの細胞の中で増殖したウイルスが細胞から出ていくところです。
インフルエンザウイルスの増え方と薬の作用については、こちらを見てください。

ということは、いったん血液中に入ってから、体中を回ってのどの粘膜にたどり着いた薬が効果を発揮するタミフルよりも、投与した薬のほとんどがのどの粘膜で効果を発揮するリレンザやイナビルの方が効率がよさそうに思えますね?

中枢神経系副作用について3剤を比べると

ここでは、特に問題視されている中枢神経系の副作用についてお話しします。
錯乱してしまったり、飛び降りてしまったりした原因ではないかとされる副作用のことです。

血液中で作用するタミフルは、脳の中に入る可能性があるけれども、リレンザ、イナビルは、そもそも血液中に入る量が少ないので、脳に作用する可能性はほとんどない、と考えられますね。

これに対してタミフルには、脳の中に入るかもしれない、というデータがいくつかあります。
参考 インフルエンザ*タミフルで予防できる?

さらに、イギリスの研究者が発表したコクラン共同研究の報告では、次のように、タミフルが中枢神経系副作用の原因ではないかと疑っています。
Jefferson T, et al. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 4. Art. No.: CD008965. DOI: 10.1002/14651858.CD008965.pub4http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD008965.pub4/abstract
  • タミフルが炎症促進性サイトカインの濃度を低下させることで、免疫反応が治まり、インフルエンザの症状が改善していることが考えられる。
  • とすると、タミフルには中枢神経(脳の神経)抑制作用があり、その結果、熱が下がり、見かけ上、症状が改善したようになっているという可能性がある。
ちなみに、厚生労働省の見解は、インフルエンザに罹ってタミフルを飲んでいた人と飲んでいなかった人とで、中枢神経系の異常が現れた割合に統計学的に差がないことから、タミフルはこれらの副作用の原因ではない、としています。

血液中に入る薬の量について3剤を比べると

そもそも、血液の中に入らなければ、中枢神経系の副作用は起こるはずがありません。
そこで、タミフル、リレンザ、イナビルが、投与した後どのくらい血液中に入るかを調べてみました。
抗インフルエンザウイルス薬3剤の体内動態を比べると、吸入薬は経口薬に比べてAUCが約1/20 剤形 1回投与量 半減期 AUC 分子量  タミフル オセルタミビル リレンザ ザニナミビル ラニナミビル 活性体 効果 安全性 精神科副作用 脳内に入る 中枢神経 AUC(血中濃度-時間曲線下面積、area under the blood concentration-time curve)

血液中の薬の量は、時間の経過とともに変化するので、血液中の濃度と時間からAUC(血中濃度-時間曲線下面積、area under the blood concentration-time curve)というものを計算して求めます。

表の「総AUC」の所を見てください。
この値で、それぞれの薬が投与期間を通して血液中に入る総量を比較できます。

タミフルとリレンザは1日2回5日間、計10回投与するので、1回投与した時の投与後12時間のAUCの値を10倍しました。
ですから、だいたいこのくらいかな、と思ってみてください。

結果は・・・
全投与期間に血液中に入る量は、タミフルは、リレンザ、イナビルの約20倍でした。

化学に強い方は、薬の1分子の重さが違えば、濃度(ng/mL)では比較できないのでは?という疑問を持たれるのではないかと思い、分子量を調べましたが、どれも同じくらいでした。

つまり・・・
タミフルは、リレンザ、イナビルに比べて圧倒的に血液中に入る量が多いので、脳の中に作用する可能性も他の2剤より高いといえそうです。

参考までに、血中濃度半減期も調べました。
血中濃度半減期というのは、血液中の薬の濃度が一番高くなったところから半分になるまでにかかる時間のことです。

タミフル、リレンザに比べて、イナビルは血中濃度半減期が10倍以上長いですね。
イナビルは、ゆっくり吸収されて長い時間作用することがわかります。
だから、1回の吸入で効果が得られるわけです。

インフルエンザの症状を抑える作用について3剤を比べると

薬が発売されるためには、臨床試験(治験)といって、実際に患者さんに使った時の効果や副作用を確認する試験を行う必要があります。
臨床試験の結果は、薬ごとに作られているインタビューフォームと呼ばれる冊子に書かれています。
インタビューフォームは「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」の
「医療用医薬品の添付文書情報
から検索できます。

ここで調べたところ、タミフル、リレンザ、イナビルとも、似たり寄ったりの成績で、薬を使わない時と比べて発熱やその他のインフルエンザ様症状を、半日~1.5日くらい早く治す、というものが多いようです。
海外の臨床試験では、効果が認められなかったものもあります。

さらに、タミフルの臨床試験方法をじっくり読むと、効いたようにみえて実は効いていないのではないかという疑問も出てきます。

というのは、タミフルには免疫の力を抑える作用があると考えられるためです。

詳しく説明すると…
免疫力が弱い人はインフルエンザに罹っていても、抗体が上手に作れないためにインフルエンザかどうか調べる抗体検査の結果が陰性になってしまう可能性があります。

臨床試験は抗体検査でインフルエンザであることが確認された患者さんだけを対象にします。
ということは、タミフル投与群には、タミフルを使っても検査でインフルエンザだと認められた免疫力の強い人、つまり、治りやすい人が多かった可能性があるわけです。

このお話は、
インフルエンザ*タミフルで予防できる?
で、予防投与の効果を例に詳しく説明しましたので、ご参照ください。

インフルエンザの薬って、よく効くって言われているのに・・・と思われる方が多いかもしれません。
私も、そういう評判を信じていましたが、試験の成績をよく見ると、そんなことはないんです。
ムリして医者に行ってもらうほどの価値があるとは、ちょっと思えません。

私の感想

で、どうすればいい?と思われるかと。
色々調べた結果の個人的な意見をお伝えしますね。
じゃあ、インフルエンザ対策は何もしないか、というとそんなことはありません。
詳しくはこちらを。


ところで、日本では、新型インフルエンザに備えてタミフルを備蓄しています。
厚生労働省のお役人は、この薬の有効性も副作用もご存じでしょうから、どうして、そんなことをするのか疑問です。

で、理由を考えてみました。
ここからは、全くの想像です。

新型インフルエンザ対策を何もしないと、いざというときに、パニックに陥ってしまうので、やむを得ず、タミフルを備蓄しているのではないでしょうか。
タミフルを選んだ理由は、もう、耐性ウイルスが出てきているので、新型ウイルスに全国で使われて耐性ウイルスだらけになってしまっても、惜しくないから・・・でしょうかね??


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