いきいき!エバーグリーンラブ: 12月 2017

2017年12月23日土曜日

薬を飲む前に減量しよう!

生活習慣病は、40歳代後半から50歳代の中年期~高齢初期に発病・診断されることが多いですね。

皆さんご承知の通り、生活習慣病の危険因子=リスクファクターの指標としては、体重(腹囲)増加、血糖値・血圧・血中の脂質の上昇が知られています。


高血圧や糖尿病にならない簡単な方法

定期健診で、これらの上昇や上昇傾向を指摘されるようになるのが、中年期~高齢初期の場合が多いのです。
急に過体重や肥満にはなりません。
若い時からの生活習慣が集積して、特に、運動不足と過食過飲によって少しずつ太っていきます。
それが悪い実を結ぶのが中年期~高齢初期で、体重以外のリスクファクターである血糖値・血圧・血中の脂質も正常上限を超えてくるのです。

もしもあなたが、血圧や血糖値が上がり始め、高血圧や2型糖尿病を発病する境界であることを定期健診などで指摘されたら、ぜひ体重計に乗って、体重とBMIを測る習慣をつけてください。

過体重や肥満になると、全身の脂肪組織が慢性的に炎症をしている状態になり、糖尿病だけでなく、がんや動脈硬化など万病のもとです。
⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!
たとえ適正体重には至らなくても、太っている状態から減量できれば、これらの病気にならないようにできるのです。

今日は、減量で2型糖尿病から薬を使わずに離脱できた、という研究を紹介し、過体重や肥満から減量することの大切さを考えてみたいと思います。

減量すれば、薬なしで2型糖尿病の治療が可能


【研究の目的】

2型糖尿病は発症すると生涯治療が必要な慢性疾患である。
一般診療所などでの指導による集中的な減量で、2型糖尿病が寛解(2型糖尿病の診断基準以下に維持)できるか否かを評価した。

【研究方法】

●実施場所はスコットランド、 イギリス・タインサイド地方の一般診療所など9ヶ所。

●被検者をコンピュータで作成したリストにより、減量管理プログラム(介入グループ)ガイドラインに基づく治療(対照グループ)の2つの群に1:1にランダムに割り付けた。

●研究実施場所(タインサイド、スコットランド)と、被験者のリストのサイズ(5,700超とそれ以下)により層別化した。

●被検者、ケア担当者、アウトカムデータ収集研究アシスタントは、被験者がいずれの群に割り付けられたかを知り得たが、これらの割り付けは研究結果を解析する者には知らされなかった。

●研究開始前の6年間に2型糖尿病と診断された20~65歳の、BMIが 27~45、インスリン未使用の患者を登録した。

●介入グループは、抗糖尿病薬と降圧薬を使用中止し825~853 kcal/日の半消化態栄養剤で3~5ヶ月間食事をとり、その後2~8週間で段階的に普通食を再開する長期的な減量プログラムを実行した。

15kg以上の減量ができたか、糖尿病の寛解としてHbA1c<6.5%を維持できたかを評価した。

【研究の結果】

●2014年7月25日から2017年8月5日まで306人の被験者が研究に参加し、介入グループ157人、対照グループ149人に割り付けられた。

●12ヶ月時点で介入グループでは68人(46%)が糖尿病の寛解を達成し、対照グループでは6人(4%)が糖尿病の寛解を達成した。

●12ヶ月時点で15kg以上の減量 が成功したのは介入グループでは36人(24%)、対照グループでは0人 で統計学的に意味のある差だった(p< 0.0001)。

糖尿病の寛解の成功は、体重増加した76名では0、0~5kgの減量で6/89人(7%)、5~10kgの減量では19/56人(34%)、10~15kgの減量で16/28人(57%)、15kg以上の減量では31/36人(86%)減量の度合いが大きいほど糖尿病の寛解の成功率は高まった。

●介入グループでは 減量の平均は10.0kg(標準偏差 8.0)、対照グループでは 1.0kg(標準偏差3.7)だった。(群間補正差 -8.8 kg、95%信頼区間 -10.3 〜 -7.3 で統計学的に有意 p< 0.001)

生活の質(QOL)を EuroQol 5 Dimensions visual analogue scaleで評価したところ、介入グループ では、試験開始時に比べて7.2ポイント(標準偏差21.3)改善、対照グループでは -2.9ポイントと (標準偏差15.5)悪化していた。
(群間補正差 6.4、95%信頼区間2.5〜10.3で統計学的に有意 p=0.0012)

●研究実施中、重大な有害な副作用は、介入グループで 7件/157人 (4%)、 対照グループ で2件/149人 (1%)に見られた。そのうち胆道疝痛、腹痛が同じ被検者で起こり、介入に関連した副作用である可能性があると見なされた。

●研究終了後に重大な副作用は起こらなかった。

【結論】

研究実施後12ヶ月時点で、被検者の半数が非糖尿病状態へ寛解し、抗糖尿病薬の使用を終了できた。
このような2型糖尿病の寛解が、(患者と)一般診療所などの目標である。
 
いかがでしょう?

糖尿病の方も、その予備軍の方も、減量をすれば、薬なしで、糖尿病から離脱できるのです。

15%の減量で糖尿病から離脱

この研究で注目すべきなのは、15kg以上の減量で86%が糖尿病から離脱できたということです。
研究参加者の研究開始時点での体重が平均約100kgだったことから、おおよそ15%の減量に成功すればよいということになります。
仮に、BMIの値が大きい肥満の方でも、15%の減量を頑張れば、病気を遠ざけることができるのです。
例えば体重80kgの人は、12kgの減量、つまり68kgを目指して実現すればよいのです。
決して実現できない目標ではありませんね。
実際、「若いころはそのくらいの体重だった」と思う人も多いはずです。

いきなり15%の減量は無理!!って思う人も多いでしょう。
でも、この研究では、10~15kgの減量でも57%もの人が糖尿病から離脱できています。
15%の減量に届かなくても、ある程度の効果が得られると考えられます。
確かにダイエットは難しいので、いきなり15%体重を落とすことを目標にするのではなく、リバウンドしないような着実な減量を時間をかけて行うことでも、十分効果は期待できます。
諦めずにじっくり取り組みましょう。
”週末にまとめて運動”でも死亡率は下がる!

ガイドラインにしたがって薬を飲んでいるだけでは、糖尿病は治りません。
生活習慣を変えて、太っている場合は減量しなければ、いくら薬を飲んでも、血液透析や神経障害、認知症へと進んでいきます。
薬を飲む前にやるべきことがあることが分かりますね。
糖尿病ガイドライン 糖尿病治療薬はやめられる
糖尿病で血液透析や神経障害になりたくなければ、まず運動療法・食事療法が勧められる。ガイドラインに従った薬物療法だけではダメ

糖尿病治療で優先すべきなのは服薬ではない!

生活習慣病の薬は、あくまでも減量など生活習慣の改善の補助的な選択肢に過ぎません。
現在の生活習慣病の薬では、生活習慣病の進行を少しは遅らせることはできても、元の健康な身体に戻すことはできません。

薬を使わずに寛解(病気からの離脱)を目指すことが正しい治療目標です。
健診で検査値に問題を指摘されたからといって、病院でいきなり薬を処方してもらうのは考え直さなければなりませんね。

この研究からも明らかなように、糖尿病の薬や降圧薬など、生活習慣病の薬は、1度飲み始めたら止められないというのは間違いです。
医師や薬剤師などの医療従事者や、製薬企業の従業員の中には、「生活習慣病の薬は一生飲まなければならない」という科学的に誤った指導・情報提供をする方もいますが、そのような医療機関や薬は受診・使用しないほうが身のためです。
患者も医療従事者も、「薬を飲んでいれば大丈夫」という誤った認識を改めなければなりません。

この研究のように、良識のある病院・医院は、生活習慣病の治療では、いきなり薬を処方せずに、先ずは食事療法や運動療法を指導してくれるはずです。
生活習慣病予備軍の方は、是非、まずこの方法を選んでください。

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2017年12月6日水曜日

18年のフォローでHRTの安全性を検証

HRTには非常に多くの有用な作用があり、閉経期以降の女性はHRTなしに寿命まで生活を楽しむことはほとんど不可能だと思われます。

HRTについては、こちらをご覧ください。
女性の人生は女性ホルモン次第
更年期を過ぎても元気な秘訣
精巧!女性ホルモン調節システム
女性ホルモンはこうして作られる
ホルモンの非常事態が更年期症状に!
HRTは乳がんの原因になる??
HRTで使われる薬剤~エストロゲン製剤
HRTで使われる薬剤~プロゲスチン製剤
にもかかわらず、日本ではちっともHRTが普及しません。
その理由は、たいへんな副作用があると思われているからでしょう。

特に乳がんに関しては、医師から「HRTを行うときには、必ず毎年乳がんの検査をしてください」と言われるので、そんなに危ないのかしら?と思ってしまうのですね。
さて、HRTを継続するに当たって、毎年の乳がんの検査は必要でしょうか?

18年間の追跡試験の結果

このように言われるようになった根拠に、2002年に発表されたThe Women's Health Initiative(WHI)というアメリカで行われた大規模臨床試験で、HRTを行うことで乳がんが増える可能性があるという結果が報告されたことがあります。

詳細はこちらをご覧ください。
HRTは乳がんの原因になる??

2017年に、同じWHI試験において、新たに18年間の観察期間でのデータが報告されました。
HRTとして結合型エストロゲン(プレマリン®を単独で約8年間投与した後、合計18年間にわたり継続してフォローした成績です。
18年間の死亡例について、死亡率がエストロゲンの投与によって 増えるかどうかを、死因別に検討しました。


【試験期間】
登録期間は19931998年。累積追跡期間は18年。

【対象】
10,739例。登録時50~79歳(平均63.3歳)。子宮を有する閉経後女性。

【方法】
結合型エストロゲン(プレマリン®)0.625mg投与群(5,310例)、あるいはプラセボ群(5,429例)にランダム化。
結合型エストロゲンは平均約8年間、約4%の人は観察期間中も含め約18年間継続して使用していました。

【結果】
主な結果は下の絵の通りです。
HRTを行った群と行わなかった群で、
  • 総ての原因での死亡率(総死亡)に差はなかった。
  • 心血管系の疾患での死亡にも差はなかった。
  • 総てのがんでの死亡率に差はなかった。
  • 乳がんとアルツハイマー型認知症による死亡は統計学的に有意に低下していた。

エストロゲン エストラジオールと乳がん、アルツハイマー型認知症、心血管疾患、冠動脈疾患のかんけい

グラフはHRTを行ったことで各疾患での死亡リスクが増えたか、減ったかをハザード比(ハザード比±調整95%信頼区間)で示しています。
●がハザード比、●についている横線の長さがデータのばらつきの大きさを示します。
ハザード比について説明するのはたいへんなので、グラフの見方のポイントだけ理解してください。

グラフの読み方のポイント
  1. ●が1.0より小さい値(左側)の疾患はHRTで減少したこと、1.0より大きい値(右側)の疾患はHRTで増加したことを示している。
  2. ●についた横線が1.0のラインをまたいでいない場合、『統計学的に有意(意味がある)』と考えられる。
  3. ●についた横線の長さが長い場合は、●の値から離れているデータがたくさん含まれていることを示している。
その結果、乳がんとアルツハイマー型認知症による死亡が有意に減少しました。
大腸がんのリスクは増えていますが、ばらつきが大きく 有意ではありません。

乳がんのリスクはHRTで減少する

つまり、HRTは行わないより行った方が、乳がんによる死亡リスクもアルツハイマー型認知症による死亡リスクも少なくなると考えられます。
 これまで言われていた「乳がんが増える」という説とは反対の結果でした。

この研究結果から、日本でもHRTが普及するといいですね。
もし、未だにHRTでがんが増えるという医療関係者がいたら、ぜひこの研究を紹介してあげてください。
この研究報告を知らないとしたら、その医療関係者はちょっと勉強不足かも…。

「HRTの継続に乳がんの検査は必要か?」という質問に答えるとすれば、
「乳がんで死亡したくなければ、HRTを行っても行わなくても(むしろHRTを行わない人こそ)、乳がん検診を受けたほうがよい」
 ということになります。