いきいき!エバーグリーンラブ: 食欲
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2017年11月10日金曜日

朝食を食べないと動脈硬化になる!?

皆さんおはようございます。
朝からもりもり、食事が美味しいですか?

今日は、朝食を抜く人では動脈硬化になりやすくなるという研究を紹介しながら、生活習慣と健康について考えてみたいと思います。


動脈硬化と朝食の関係

The Importance of Breakfast in Atherosclerosis Disease: Insights From the PESA Study.

【研究の目的】
朝食の摂食パターンと、心筋梗塞・脳卒中の原因となる動脈硬化の関係を調べる。

【研究の参加者】
40~54歳で、研究開始時に心臓や脳など血管が原因の疾患がないスペインのマドリードにある国際的な銀行の本社の人々4,052人

【研究の方法】
参加者から聞き取り調査をして、以下の①~③のグループに分類した。

①高カロリー朝食:朝食が1日の総エネルギー摂取量(kcal)の20%超の割合を占めていた(全体の27%が該当)
②低カロリー朝食:朝食が1日の総エネルギー摂取量(kcal)の5~20%の割合を占めていた(全体の70%が該当)
③朝食抜き:朝食が1日の総エネルギー摂取量(kcal)の5%未満の割合を占めていた(全体の3%が該当)

そのうえで、首の動脈(両側頸動脈)、下腹部の腎臓のあたりの大きな動脈(腎動脈下腹部大動脈)、太ももの動脈(両側大腿動脈)などについて、血管の中の様子を超音波で解析する画像診断法などで、血管の内側の壁に瘤(小さなコブ、 プラーク)がないかを調べた。

【研究の結果】
③の朝食抜きグループは①の高カロリー朝食グループに比べて、
・下腹部の腎臓のあたりの大きな動脈で1.79倍
・首の動脈で1.76倍
・太ももの動脈で1.72倍
血管の内側の壁に瘤を見つけやすく、動脈硬化になりやすいと考えられた。

また、全身の血管が動脈硬化になっている可能性も2.57倍高かった。
他にも、心臓に栄養を運ぶ動脈(冠動脈)が固くなる現象である石灰化も③の朝食抜きグループで多かった。

これらの傾向は、動脈硬化の危険因子である、年齢、ウエストサイズ(ウエスト周囲径)、喫煙、糖尿病の有無とは関係なく認められた。
CPAP, ライフスタイル, 飲酒, 交感神経, 高血症, 自律神経, 食欲, 心筋梗塞, 睡眠障害, 朝食, 動脈硬化, 脳卒中, 副交感神経, 便秘, 朝食抜き
朝食の摂食パターンと動脈硬化の関係



【研究のから考えられること】
研究者たちは、朝食を抜くことは、不健康な生活習慣の指標のようなもので、朝食を抜くようなライフスタイルが、巡り巡って動脈硬化を進展させてしまうのであろう、と述べています。

朝に食欲がないことは怖い

いかがですか。
この研究は単に朝食を抜くことが健康に悪く動脈硬化になるということを証明しているのではありません。
研究者たちのコメントのように、おそらく、朝食を抜くようなライフスタイル全般が、不健康でその結果、動脈硬化になる、と考えるほうが自然です。

では、朝食を抜くようなライフスタイルについて考えてみましょう。

残業続きで、夕食を夜遅く外食などで済ませていれば、翌朝の食欲がないのは当たり前ですね。
晩酌の範囲を超えて、寝る前まで飲酒をすれば、二日酔いにならなくても、お酒によるカロリーオーバーと、胃や膵臓・肝臓の疲れで、翌朝の食欲がないのも頷けます。

上の研究でも、動脈硬化になりやすいのは、図のように、③の朝食抜き、②の低カロリーの朝食、①の高カロリーの朝食の順でした。
このことは、朝に食欲がなければないほど、動脈硬化になりやすい、と読み替えられます。

不健康なライフスタイル=自律神経の乱れ

朝に食欲ないとはどういうことかを生理学的に考えてみましょう。

ここでは、身体がリラックスしているときに働く副交感神経と、興奮したり、活動的になっているときに働く交感神経の働きがカギになります。
交感神経も副交感神経も、ヒトの意思とは関係なく体をコントロールしている神経で、両方を合わせて自律神経と呼ばれます。


CPAP, ライフスタイル, 飲酒, 交感神経, 高血症, 自律神経, 食欲, 心筋梗塞, 睡眠障害, 朝食, 動脈硬化, 脳卒中, 副交感神経, 便秘, 朝食抜き
自律神経の働き

人間の1日のリズムでは、夜~就寝中~朝は本来リラックスする神経の副交感神経の支配になるのですが、寝不足や睡眠障害があると、就寝中も副交感神経の支配にならず、興奮の神経の交感神経の支配になってしまいます。

朝食を抜くということは=朝食を食べたくない、ということです。
朝に食欲がないということは、朝に交感神経支配になっていることが考えられます。
交感神経支配になると食欲を感じないのです。
人間の1日の正常なリズムでは、夜~就寝中~朝までは、副交感神経支配であることが自然です。
副交感神経支配では、食欲もわくし、消化・吸収も進むし、排便・排尿も進みます。

朝起きてしばらくすると、喉が渇いて、おしっこに行きたくなり、お腹がすき、食後には大便通があるのが本来のリズムです。

実は、便秘の原因の大半は、多忙なライフスタイルでの夜遅くの食事・寝不足・睡眠障害による交感神経・副交感神経、つまり自律神経支配の乱れです。
女性で、OL時代にはひどい便秘だったのに、結婚して、規則正しい生活になったらいつの間にか下剤はいらなくなったという人は多いのです。
交感神経は消化管を麻痺させる作用があります。

おそらく、朝食を食べない人の朝起きぬけの血圧は、特に高く、高血圧の人も多いと思われます。
交感神経は血圧を上げる作用があります。

高血圧気味の人は、喫煙や、過剰な飲酒や、睡眠障害などによる自律神経の乱れで、夜~就寝中~朝からずっと1日中交感神経支配になってしまっていることが1つの大きな原因でしょう。
実は動脈硬化と高血圧は鶏と卵の関係のように互いにリスク因子です。

実際に、いびきをかく人で、睡眠障害があり、高血圧で薬を飲んでも血圧が下がらない人が、就寝中に鼻に装着したマスクから空気を送りこむ治療(CPAP「シーパップ」と言います)で睡眠障害を改善すると、血圧がスーッと下がり、降圧薬が不要になることも多いのです。

リラックスするには副交感神経が働く必要があります。
リラックスのために無意識に深呼吸することがありますよね。
あれは、十分な酸素を取り込むことで副交感神経が働けるようにしているのです。
睡眠中に十分な酸素を送り込むと、交感神経の緊張がなくなり副交感神経が働くことからよく眠れるようになります。

このほかにも、ストレスが多いと交感神経支配になりがちです。
ストレスが多い仕事や、多忙、気晴らしのない生活や、喫煙、不規則な食事と暴飲暴食(食べ過ぎ・飲み過ぎ、夜中に飲食する)、慢性的な運動不足は自律神経の乱れを招きます。

朝食を食べることが大切なのではない

このように、朝食を抜いたか食べたかではなく、不健康なライフスタイルやストレスの多い生活が原因で、朝に食欲がわかないことが問題と考えるのが論理的です。

よく考えてみてください。
夕食から朝食までは8時間以上間隔があいているのが普通でしょう。
なのに、お腹が減らないというのはとても不自然で不健康な感じがしませんか?

不健康なライフスタイルは、実は自律神経の乱れを招くことが最もいけないことで、食欲も、便通も、血圧も、睡眠も、その他、生物が無意識に規則正しく行っている生活のリズムと恒常性をかき乱してしまうのです。

上記の研究は、朝食を食べたくないようなライフスタイルが、実は動脈硬化だけでなく、万病のもとであることを示してくれていると考えられます。

科学研究は正しく読み解こう

最後に、このような科学研究の読み解き方が大切です。
上記の研究を、「やっぱり朝食を抜くことは健康に悪い」とか「動脈硬化にならないように朝食を食べよう」などと解釈するのはあまりにも一面的です。
「朝に食欲が湧くような健康なライフスタイルにしよう」という解釈が妥当でしょう。

一般メディアはもとより、医療や健康の専門家や、医療・健康関係のメディア等でも、科学研究をきちんと読み解かずに、表面的で一面的だったり、偏向した解釈をしているものが多いようです。
メディアは記事や番組にしたときに、話題になりそうな、キャッチーでセンセーショナルな解釈をすることが問題ですし、専門家は、自分の専門分野での見方に偏りがちなことを忘れてはなりません。
情報は吟味して、正しく解釈したいものです。

2015年3月17日火曜日

米国マクドナルド 抗生物質を与えた鶏肉の使用をやめる


現代文明社会の食べ物事情は、予想よりはるかに厳しいと思ったほうがよさそうです。

飽食の日本では実感しにくいかもしれませんが、世界的には、確実に食料不足の時代に入っていますし、スピードと収益性を重視する現代社会では、「早い」「安い」「うまい」が尊ばれ、ファーストフード、コンビニ、インスタント食品、ジャンクフード全盛の感じがします。

2015年3月5日 10時41分に掲載のNHK News Webで「米マクドナルド 抗生物質与えた鶏肉の使用中止」との報道がなされました(現在NHK元記事のリンクが切れていますのでマクドナルドのプレスリリースをリンクします)。

McDonald's USA Announces New Antibiotics Policy and Menu Sourcing Initiatives

概要は、
  • 世界的に販売不振のマクドナルドは、食の安全に対する消費者の関心にこたえるため、アメリカの店舗で、今後2年を目途に抗生物質(抗菌薬)を用いて飼育した鶏肉を扱わない方針を発表。
  • アメリカでは、家畜の病気予防と生産性向上のため家畜に抗生物質使用することは一般的で、その結果、抗生物質が効かない耐性菌が出現し、人間の健康にも影響を及ぼす危険性があると専門家が指摘している。
  • マクドナルドは、人工の成長ホルモンが与えられた牛から摂った牛乳についても扱わないことを明らかした。
  • これらの取り組みで、消費者に安全性をアピールし客離れの食い止めを図りたい。
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さらに、ロイターReutersによると、このマクドナルドの方針は養鶏業者に経済負担を増加させるといいます。
INSIGHT-Chicken growers set to pay price for no-antibiotic McNugget

概要は、
  • 抗菌薬を使用しないと飼育コストは3%ほど上昇する試算で、マクドナルドは世界最大の外食チェーンとしての購買力を盾に、コスト増加の負担を鶏肉供給会社に強いる、と多くアナリストが予測。
  • アメリカで4位の鶏肉会社Perdue Farmsはすでに2002年から抗菌薬の使用を控える取り組みを始め、同社の鶏の95%超はヒトに使用する抗菌薬なしで飼育されている。さらに、半数以上は抗菌薬が一切使われていない。
  • 抗菌薬を控える飼育によって、飼育場の増設、鶏の死亡率の上昇、ワクチン費の増大、飼育期間の延長などの負担が発生した。
今回は、あえて抗菌薬やホルモン剤入りの肉の健康被害については詳しく取り上げません。
こうしてみると、現代社会と食にまつわる問題の根深さが見えてくるように思います。

食品産業が「早い」「安い」「うまい」消費者ニーズを作った

消費者が仕事に追われ、時間に追われ、「早い」「安い」「うまい」を求めた結果、マクドナルドのようなファーストフードの売れ行きが上がったと思われがちですが、実は成り行きは反対です。
食品を作る企業が「早く」「安く」「うまい」製品を売り込み、消費者が宣伝に乗せられて、効率の良さをよしとする価値観が一般化していったのです。

食品産業が行ったのは、効率の良さの普及だけではありません。
より甘い食品、より脂分の多い食品、より塩分の多い食品を好むような嗜好も、食品業界によって研究され、普及しました。
⇒おいしさの罠

抗菌薬、ホルモン剤はなぜよくない?

安さを追求する陰には、抗菌剤やホルモン剤を与えて家畜を育てる畜産業があります。
家畜の最大の敵は病気ですから、感染症にかからないように抗菌剤を与えます。
少しでも早く成長させ、肉の量を増やして食肉にしたり、たっぷりと搾乳するためにホルモン剤も与えます。

大量の抗菌剤を使った結果、家畜の中にその抗菌剤が効かなくなる耐性菌ができます。
また、これらの薬剤は家畜の中に蓄積して、その家畜を食べたヒトに取り込まれます。
知らず知らずのうちに、抗菌薬を取り込み、体内に耐性菌を作っている可能性もあります。

ホルモン剤は、EUを除いて、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで使用が認められていて、日本では国内での使用は禁止されていても、輸入肉のホルモン剤使用にはおとがめなし、という非常に矛盾した立場をとっています。
EUでは、1988年に成長促進を目的としてホルモン剤を牛に使用することを禁止し、1989年以来ホルモン剤を使用して飼育された食肉や乳製品の輸入を認めていません。
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ホルモン剤は乳癌などのホルモン依存性の癌の原因となっている懸念もあります。
日本での牛肉消費量の増加に伴って、ホルモン依存性癌の患者数が約5倍になったとする報告もあります。
半田 康ら. K3-4 牛肉および癌組織のエストロゲン濃度 : ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生増加との関連(高得点演題6 腫瘍,高得点演題プログラム,第62回日本産科婦人科学会学術講演会).日本産科婦人科學會雜誌 62(2), 614, 2010-02-01

ホルモン剤の使用の是非については、アメリカ+オーストラリア+カナダ+ニュージーランドなどのホルモン承認諸国対EUで、激しい論戦を展開しています。
互いに、畜産、酪農は重要な輸出産業なので、市場の取り合いをしているわけです。
でも、この論戦はEUの言うことに理があるような気がします。
できれば生理的でないホルモン剤を含まないほうが安全でしょう。
冒頭のNHKの記事のリンク切れも、先日発効した日豪EPAと、交渉にもめているTPPとの兼ね合いの報道管制では?と疑いたくなりますね。

健康志向も食品産業の戦略に利用?

マクドナルドに追随して、早くて安くて旨い食べ物を売る企業が、どんどん出てきました。
市場を独占できなくなって、経営が苦しくなったマクドナルドは、今度は消費者の健康意識を利用し、抗菌薬やホルモン剤の使用をやめたと宣伝して、健康志向のイメージをつけようと考えたのではないかと想像できます。

なぜなら、中止すると発表されたのは鶏肉と牛の乳製品だけ。
本命のハンバーガーの牛肉には、相変わらず抗菌薬やホルモン剤が使われるようです。
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我々の立場で考えれば、多少なりとも怪しい薬が使われなくなることはありがたいことですが。
ただ、理解しておかなければいけないのは、私たちの味覚は、食品・外食産業の戦略によって変えられているということです。

確かに、簡単に食べられる便利な食品ができたことで、女性が社会に出ていくゆとりが生まれた、というように、我々は多くの恩恵を受けています。
忙しいときに、マクドナルドで済ませられるのは実にありがたく、うまく利用すればよいと思います。

ですが、これからは、お手軽な食べ物を目にしたら、そこには危険が潜んでいるということを思い出してください。
リスクを知りつつ「便利さ」「おいしさ」をうまく利用したいものです。

作られたおいしさに左右されない味覚を持とう

本来、食は生き物の生活の基本です。
大事な食事は、自ら食材を仕入れ、場合によっては飼育・栽培して、作って、おいしくいただくものでした。
忙しく、過剰な味のとりこになって、外食や加工食品をこんなに頻繁に利用しているライフスタイルが、消費者の健康を顧みずに利益を追求するこれらの産業・企業・規制当局の暴走を許したのではないのでしょうか?

多くの人が、本来、嗜好品やごちそうとしてたまに食べるものだった、甘味、高カロリー食(揚げ物、炒め物など)、加工食品などに慣れてしまいました。
それでなければ物足りなくなり、味覚もより味の濃いもの(塩、砂糖、油脂)に依存的になってしまっていると思います。
⇒おいしさの罠

人間の味覚は、想像以上に簡単に変わります。
アメリカで食べられている、ショッキングピンクや紫や緑のケーキに違和感を持てるうちに、食品産業の企てに流されない確かな「味覚」を取り戻さないといけませんね。

食べ物・栄養についえはこちらも
食生活は進化の中で3回変わった
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飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠

2015年1月24日土曜日

糖・脂質・塩~おいしさの罠

健康に良い食べ物、良くない食べ物のそれぞれの特徴はなんでしょうか?

子供のころ、母親にお菓子は控えて、野菜を沢山食べなさいと促された経験は誰しもお持ちと思います。


さて、このように皆さんがイメージする、健康に良い食べ物の典型が、ビタミンと食物繊維が豊富な「野菜」で、健康に悪い食べ物の典型が、味が濃い目のお菓子の類でしょう。

  • 健康に良い食べ物=あまりおいしくない、あまり箸が進まない
  • 良くない食べ物=とてもおいしく、癖になる

どうでしょう、みなさん同意なさるのでは?

行政の健康政策が成功しないのには理由がある

今日は、行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、なぜ、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しないのかを考察したドイツのキール大学での研究を紹介します。
⇒How to Combat the Unhealthy = Tasty Intuition: The Influencing Role of Health Consciousness
⇒Health consciousness: Do consumers believe healthy food always tastes bad?

この研究をした、キール大学のロバート・マイさんとステファン・ホフマンさんは、

「近年、健康的食生活が流行しているが、消費者は相変わらず健康に良くない食品を食べすぎている。原因は、健康に良くないものは、大抵おいしいもので、おいしいかどうかが、(消費者が)食べるものを選ぶ基準だからだ」
と書いています。

【研究テーマ】
  • 行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しない理由は?

【研究の結果、わかったこと】
  • この研究の参加者に、砂糖と脂肪の含まれる量が違うヨーグルトを与えて、どのヨーグルトを選ぶかを観察したところ、含まれる成分が健康に良いという情報があったからといって、健康的なヨーグルトを選ぶとは限らなかった。
  • 健康志向が全くない人は、健康情報にも全く興味がないので、含まれる成分が健康に良いという情報も効果がない。
  • ある食品が健康に良いものだという情報が与えられると健康志向の人たちは少しは食習慣を変えるが、健康志向のない人たちは、情報の量に関わらず、健康的なヨーグルトにおいしいものはないと信じている。
  • これらのことから、おいしいかどうかが、健康志向の人にとっても、そうでない人にとっても食品を選ぶとき重視されて、キャンペーンで健康意識を高めたからといって、簡単にこれを乗り越えられるものではない。
研究者たちは、

  • 「行政機関は、商品の包装表示や食品会社のマーケティングを改善させるだけでなく、味そのものも改善し、また、健康的な食事をすることが、粋で“クール”と消費者が思えるような、消費者の感情に訴える社会活動に資金援助するなどの、これまでとは違う健康的食品の宣伝方法を考えるべきである」
  • 「世界的に流行する肥満を抑えるためには、食品会社、消費者、行政が互いに足を引っ張り合うのをやめ、みなにとってメリットのある方法を見つけ、全体的にアプローチすることが早急に必要だ」

と結論しています。
皆さんはいかがお考えでしょう。

おいしさは砂糖・脂肪・食塩で決まる

この研究で用いられたヨーグルトでは、ヨーグルトに含まれる砂糖と脂肪がおいしさのポイントのようですが、実は、食品の味付けのキーポイントとなるのは、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」であり、これは、食品業界では常識のようです。

おいしくて癖になる食べ物の代表選手、ポテトチップスを思い出してください。
まさに、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」の塊です。

ほかにも、たとえば、ハンバーガーのソースはケチャップの甘さにマヨネーズの油っぽさにそれぞれの調味料中の食塩のしょっぱさがハーモニーとなっています。
天ぷらでも同じです、衣の油に、甘辛い天つゆがよく合いますよね。

この「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」を味付けの基本にして、ほかの風味を加えて、加工食品は開発されています。
これらを基本に消費者が癖になる味付けを日夜研究しているのです。

『フードトラップ』が明かす食品業界の罠

ここで、一冊の本を紹介したいと思います。

マイケル モス 著、 本間 徳子 訳 日経BP社刊
「フードトラップ-食品に仕掛けられた至福の罠」

砂糖・脂肪・塩の習慣性を利用したビジネス

この本の原題は写真の表紙にもあるように“Salt, Sugar,Fat”でまさに、塩、砂糖、脂肪です。

この本は、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性(癖になる)を巧みに利用した、加工食品や清涼飲料水、菓子などを問題視して警告を鳴らしています。

この中にも繰り返し、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性と危険性が登場します。
それらが、食品会社の研究所で研究しつくされている様子がわかります。

アメリカの食品会社が、1980年代以降、消費者が癖になる「砂糖」「脂肪」「塩」を多く含んだ商品を次々に開発して、売り上げを伸ばし、株主の要求に答えていく様子やこれらの商品が肥満や虫歯などを増加させ、ひいては病気の原因となっていることへの、医療従事者や、研究者などからの批判を企業がうまくすり抜ける様子もかかれています。

ビジネスの根底にある文明社会が生み出した欲望

しかし、著者は、一方的に食品会社の「悪」を暴くという論調ではありません。
資本主義と企業間競争、株主への配当、消費者の嗜好と欲望、欲望を利用するマーケティング・メディア、規制当局と企業の駆け引き、農業などの産業と企業と政治など、現代文明社会全体の問題としてとらえているところが真摯さを持っていると思います。

私たちは、改めて、「おいしさ」などの自分の欲望がどのようなものかを考えなければなりません。

少なくとも、味覚と嗅覚が作り出す「おいしさ」は、それをもたらす、糖質、脂肪、塩分などが、人類の歩んだ歴史の中で、長らく得難いものであったからこそ、発達した感覚であることは間違いないことです。

砂糖・脂肪・塩の必要性から「嗜好」が生まれた

塩

私たちは、塩分がなければ、生きていけません。
山間地域では昔から塩は貴重品でした。

脂肪

脂肪は苦労して得た獲物にほんの少し含まれるものでした。
野生の獲物は、家畜と違い脂肪は少ないのです。

搾油技術が発達したのも長い歴史の中でごく最近のことですので、食用植物油は存在しませんでした。

糖類

糖類の精製技術の完成も、同様に長い歴史の中でごく最近のことですので、私たちの祖先は精製されていない炭水化物のほんのりした甘味を感じる能力を時間をかけて発達させました。
ご飯を口にいれて、長く噛むと甘みを感じる実験を経験した方も多いと思います。
これは、ヒトは唾液の中にアミラーゼという消化酵素があるからこそ味わえます。

哺乳類の中で、唾液にアミラーゼを含む種はごく少数です。
たまたま、アミラーゼを分泌する能力を持った種が、ドングリやナッツ、根菜や球根、未精製の穀物の中の糖質を甘いと感じるようになった。
これらの種は、好んで穀物を多く食べたことで、厳しい環境を生き残った。
さらに、火による調理により、糖質を脳の効率の良い栄養素として充分に使えるようになり、人類は脳を発達させることができたと考えられます。

生き残るための報酬系が仇に

報酬が与えられたときに快感を感じるように働く脳のシステムを報酬系といいます。
私たちの味覚・嗅覚のもたらす「おいしさ」は、まさに報酬系が働いた結果得られる快感です。
貴重な栄養素を感知して、それを摂取させるように長い年月をかけて脳が鍛えられてきたといえます。

いいかえれば、「おいしさ」などの欲望は、報酬系の挙動に過ぎません。
欲望を満たすことが「良いこと」と脳に思い込まされているということです。

このように私たちの祖先が、長い時間を経て環境に適応して、安定的に栄養素を獲得できる遺伝子を獲得するうちに、やがて人類となり、厳しい天候をしのぐため、捕食者から逃れ逆にそれを狩るため、飢えを克服するため、火の利用の発明、道具の創意、被服の発明、定住・農耕などを始めとする文明を発達させてきました。
それは、ある意味では、素晴らしい人類の英知の結晶でしょう。

一方で、私たちの英知は、最も基本的な生き物としての自分の身体について、まだ何も理解していないとも言えるでしょう。

生物学的新文明社会を目指す 

私たちの身体は、飽食とほど遠い環境=飢餓を生き抜いてきた遺伝子で設計されています。
欲望をもたらす報酬系の機能は、現代文明社会の飽食に対応したものではありません。

欲望という、古いシステムに騙され、欲望に頼り、それを経済活動などの社会の営みに利用する悪循環をどこかで断ち切らない限り、先に紹介したキール大学の研究者達のいうような、新しい社会システムを作ることはできないと思います。

自然の流れに従って進化を遂げてきた報酬系による欲望を、満たすことで文明が進歩したことも事実です。
でも、欲望をどんどん満たせば、古い遺伝子しか持たない私たちの体はその早い食性の変化についていけずに病気になる。
これに打ち勝つには、欲望に流されない確かな意志で、消費に頼らない新たな価値観、新たなおいしさを創造していくことが大切と思います。

生物の仕組みを理解した、新しい文明社会を目指す必要がありそうです。

食べ物については、こちらもご覧ください。

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
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糖質
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加糖飲料の危険性が次々証明
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食用油
健康に良い油?悪い油?

2014年9月22日月曜日

脂肪細胞が食欲をコントロールする


前回は脂肪細胞が脂肪滴(脂肪)に脂肪をため込んで、肥大化脂肪細胞となると脂肪組織が炎症して、全身に悪影響を与えることをお話ししました。

⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!

今日は、脂肪細胞が食欲をコントロールしていることをお話しします。
この仕組みがわかると、なぜ人が太って行くのかが理解できると思います。

正常な食欲のコントロール

下の絵を見てください。
実は、脂肪組織の成熟脂肪細胞はホルモンを出して食欲をコントロールしています。

ダイエット 痩せない 内臓脂肪 食欲 コントロール 満腹中枢 摂食中枢 脂肪を燃やす 成熟細胞 太る 体質 カロリー レプチン アディポネクチン 脂肪細胞 脂肪燃焼 摂食中枢 満腹中枢 肥満 痩せホルモン イラスト おにぎり 脂肪が燃える エネルギー摂りすぎ おなかいっぱい 
レプチンと脂肪細胞の関係

適度に脂肪を貯えた成熟脂肪細胞は、食事でのカロリー摂取をモニターしていて、

①エネルギー摂りすぎた! もう十分

の信号を感知します。
すると、②のように、脂肪細胞から出るホルモンの1つで、痩せホルモンとも俗に呼ばれるレプチンを出します。

レプチンは血液に入って、脳で

③満腹中枢を働かせて、同時に、摂食中枢を抑えてくれます。

すると、

④のように、もう十分おなかいっぱい、身体に悪いからもう食べるな!!信号を出して、

同時に体中の脂肪細胞に、脂肪を燃やしなさい!!信号を送ります。


こうして、成熟脂肪細胞は自分自身を含めて、余計な脂肪をため込まないように、食欲と脂肪燃焼をコントロールして、肥満を防いでくれているのです。

食べ過ぎが続くと食欲がコントロールできなくなる


ところが、このレプチンが出ているのに、食事を続け、食べ過ぎ、カロリーオーバーが続くとどうなるでしょう。

もちろん、成熟脂肪細胞はせっせと脂肪を貯め続けて、太り、やがて肥大化脂肪細胞になります。
ここら辺の仕組みはこちらをご覧ください⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症!


遺伝子 快感 報酬系 ダイエット 痩せない 内臓脂肪 食欲 コントロール 満腹中枢 摂食中枢 脂肪を燃やす 成熟細胞 太る 体質 カロリー レプチン アディポネクチン レプチン アディポネクチン 脂肪細胞 脂肪燃焼 摂食中枢 満腹中枢 肥満 痩せホルモン イラスト おにぎり 脂肪が燃える エネルギー摂りすぎ おなかいっぱい 
肥満の悪循環 満腹感がなくなる

すると、上の絵のように
(1)エネルギー摂りすぎた! もう十分 信号

を受けて、肥大化脂肪細胞はどんどんレプチンを出します(2)。
しかし、
多すぎるレプチンに脳の満腹中枢と摂食中枢は鈍感になり(3)、

もう十分おなかいっぱい、身体に悪いからもう食べるな!!信号と、
脂肪を燃やしなさい!!信号(4)

を出さなくなってしまいます。

こうなると、(5)のようにまた食欲が出て、全身の脂肪は燃えにくくなる。
さらに、エネルギー源がどんどん入ってくるので、脂肪細胞は脂肪を貯め、また、レプチンを出す……。

これが肥満の悪循環です。


人は本来、突然太ったりしない生物

人は急に太るのではありません。
長年の運動不足と過食を積み重ねて、満腹感が麻痺してきてだんだん太り、それとともに皮下脂肪と内臓脂肪の肥大化脂肪細胞が増えます。

これが続いて、人は太り続け、さらに、内臓脂肪では炎症が起こり続けているのです。

これが肥満が万病の元といわれるメカニズムです。


私たちは、自分の身体が求めてくる食欲などの、欲求や欲望をそのまま信じてはなりません。
欲求があっても、それは本当に必要でなく、害になることも多いのです。

欲求や欲望を満たされることを追い求める脳の報酬系が出来上がったのは、太古のこと。
飢餓に苦しみ、寒さに耐え、冬眠の必要があった生物の時代の遺伝子を、私たちは受け継いでいます。

食物に定期的には出会えなかった時代を思い描いてください。
お腹がすいたと感じたときに、一生懸命食物を探して食べたヒトは、生き残ることができました。
このような、「お腹がすいたら食べることで幸福感を感じた」ヒトの遺伝子が、後世に生き残ったわけです。

この「快感」を感じる脳の仕組みを報酬系といいます。
報酬系には、その快感を追い求めさせる性質があります。

空腹感を満たすという快感を追い求めること、つまり、積極的に食物を探して食べることは、太古の環境に合わせて、報酬系が仕組んだものなのです。

残念なことに、この報酬系は、(お金があるなどの条件がそろえば)食物がいくらでも食べられる現代の先進国に住むヒトでも、同じように働いています。
そして、私たちを着々と太らせていきます。

食品産業だけでなく、この報酬系のおかげで成り立っている産業もたくさんありますね・・・
その罠にはまらないように、しっかりと理性を働かせることが、現代を生き抜くということなのでしょう。

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