いきいき!エバーグリーンラブ: ドパミン
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2016年11月27日日曜日

解決!?レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

こうしてレストレスレッグス症候群を治しました

レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)ってご存知でしょうか?
「むずむず脚症候群」 「下肢静止不能症候群」とも呼ばれます。

主に脚(腿から下、ふくらはぎ)に不快を感じる病気です。
具体的には、夜眠ろうと寝床に入ったときや、新幹線や飛行機での移動中、会議やコンサートなどで、じっと座ってなければならないときに、脚を動かしたくてたまらなくなったり、脚がムズムズするという、異常な感覚があるといいます。
レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)「むずむず脚症候群」 「下肢静止不能症候群」イラスト歩いたり、脚を動かしたりする動きをすると、不快感がなくなるという特徴があります。
夕方から夜にかけて症状が出やすくなります。

原因がまだはっきりしないため、治療がなかなか難しい病気で、患者さんは困っていることが多いようです。

この病気にかかると、睡眠の質が下がり、昼間の眠気や、疲れやすい、集中できないなど、仕事や勉強に影響することも多いのです。
エバーグリーン研究室では、れい主任研究員がこの病気を持っていて、ずっと解決策を研究してきました。
今日は、その成果をご紹介できる経験を積みましたので、この病気で苦しんでいる方々に情報提供をしたいと思います。

健康な一般の方はあまりご関心がないかと思いますが、ご家族やお友達、職場のお仲間にこの病気の人がいたら、ぜひこのブログを紹介してください。

レストレスレッグス症候群治療の試行錯誤

れい主任研究員からの報告によると、中学生のころ、30分ほどのバス通学で座席に座っていると脚がむずむずして立たずにはいられなくなったのが初めだそうです。

さて、研究室長のちかしは、れい研究員の相談を受けて、まず漢方薬を試してみました。
基本の処方は
  • 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
  • 四物湯(シモツトウ)
です。
これに抑肝散(ヨクカンサン)を追加することもあります。

これでだいぶ良くなりましたが、これに加えて緩い糖質制限をしてもらったところ、さらに良くなったということです。
ここら辺のいきさつは下のリンクをどうぞ。
⇒むずむず脚症候群

漢方薬と糖質制限で昼間の症状はなくなったものの、夜中の症状は抑えきれませんでした。
大事なれい主任研究員のために、ちかしは研究を重ねました。
いろいろ文献を読みましたが、医師も決定的な治療法が見つけられず、苦労していることがわかりました。
この病気の人は下の日本神経治療学会のガイドラインは一読されることをお勧めします。
⇒レストレスレッグス症候群のガイドライン

このガイドラインでも、

診断基準

  1. 脚を動かしたいという強い欲求が存在し,また通常その欲求が,不快な下肢の異常感覚に伴って生じる
  2. 静かに横になったり座ったりしている状態で出現,増悪する
  3. 歩いたり下肢を伸ばすなどの運動によって改善する
  4. 日中より夕方・夜間に増強する

診断を補助する特徴

  1. 家族歴
  2. ドパミン作動薬による効果
  3. 睡眠時のperiodic leg movementsが睡眠ポリグラフ検査上有意に多く出現
となっています。

ニュープロパッチが著効。でも、止めたら悪化・・・

そこで、れい主任研究員は、2013年に薬価収載されたドパミン作動薬の貼り薬ニュープロパッチ(一般名:ロチゴチン)を、試しに、医師に処方してもらい試用したところ、症状はピタリと治まりました。

しかも、 ニュープロパッチの用法は
  • ロチゴチンとして 1 日 1 回 2.25 mg/日からはじめ、以後経過を観察しながら 1 週間以
    上の間隔をあけて 1 日量として 2.25 mg ずつ増量し維持量(標準 1 日量 4.5 mg~6.75 mg)を定める。
となっているところ、2.25mgを2日に1回貼付しただけで、まったく症状が出なくなりました。

ところが、約1週間(4回)使った後、ニュープロパッチをやめると、症状は以前よりひどくなっていたのです。
それまでは夜中、2時ごろに目が覚めてもストレッチをすればそのあとは朝まで症状が治まっていたのに、薬を止めたあとは、朝まで目が覚めるたびにストレッチをしないと眠れなくなりました。

この病気の特徴として、このような、ドパミン作動薬を使用し続けると、使い始めるより前より症状が悪くなることも分かっています。
これは強化現象(augmentation)といわれ、ドパミン作動薬などで刺激を受けると、ドパミン受容体の1つであるD2受容体が壊れやすいことが原因とされています。

ですので、ドパミン作動薬も使い続けたくないですね。
新幹線や飛行機に長く乗らなければならない時、旅行に行く時、お芝居を見るときなどに、頓用で使うのがよさそうです。

レストレスレッグス症候群の原因究明!

以上、れい主任研究員のドパミン作動薬試用経験から、
これまでわかっているレストレスレッグス症候群の原因の学説のなかで、神経伝達物質であるドパミンの生合成異常が一番説得力があるな、と感じました。

図を見てください。
上のガイドラインにも記載されている現在推定されているレストレスレッグス症候群が起こる仕組み(病態生理)を簡単に図にしてみました。
レストレスレッグス(むずむず脚)症候群が起こる仕組み(病態生理)
図の緑色の線がドパミン神経です。
図の青色の線がセロトニン神経です。
図の橙色の線が交感神経です。
図の赤色の線が運動神経です。
図の紫色の線はノルアドレナリン・アドレナリン分泌を表します。

順番に今指摘されているレストレスレッグス症候群の原因を説明します。

脳の中では視床下部から前頭葉に走っているA11神経系がレストレスレッグス症候群に関係していて、ここの神経でのドパミンの働きが低下しているとされます。 

延髄では、ドパミン神経の終末が交感神経と連絡していて、交感神経の興奮を抑える役目をしています。でも①の原因のために、ドパミン神経が十分働けず、交感神経の抑制が障害されているとされます。

セロトニン神経系も、延髄で交感神経と連絡していて、交感神経を興奮させる働きがありますが、セロトニン神経系にも何らかの問題があるのではないかと指摘されています。

交感神経が興奮すると、副腎からルアドレナリン・アドレナリンが多く分泌されます。ルアドレナリン・アドレナリン運動を命令するホルモンです。

最終的に筋肉に動けと命令する運動神経は、①~④の原因で、過度に興奮してしまいます。

前頭葉に走っているA11神経系の働きが十分でないので、前頭葉は情報を正確に処理できずに感覚異常が起こります。

つまり図中の天秤の絵にあるように、興奮が制御を上回ってしまって、それが症状につながると考えられますね。

上のガイドラインにも記載がありますが、レストレスレッグス症候群は機能性障害であり、パーキンソン病のような神経変性(器質性障害)ではないということがポイントだと考えました。
車のトランスミッションに例えると、器質性障害はトランスミッションの歯車が壊れてしまった状態、機能性障害は油が切れている状態です。
歯車を直すのはたいへんですが、油を補うだけならば簡単ですね。

特に、生化学的な視点で考えるとドパミンの生合成異常が原因の1つとして説明できると思いました。
つまり、油の代わりにドパミンを補えばよいわけです。

ドパミンの原料を補えばよいと考えた理由

次の図を見てください。
ちょっと複雑な図ですが、順番に説明しますね。

サプリメント, セロトニン, ドパミン, ドパミン作動薬, フェニルアラニン, むずむず脚症候群, レストレスレッグス症候群, 下肢静止不能症候群,
ドパミン・セロトニン生合成経路

先ず、下から、

食事でとったタンパク質は、消化器で消化され、アミノ酸になって小腸から吸収されて、脳の血管までたどり着きます。
脳の血管では、脳の中に有害なものが入らないように、血液脳関門があります。
血液脳関門にはアミノ酸を血管内から脳にくみ出すポンプ(トランスポーター)があるので、 アミノ酸はこの関門を通り抜けられます。

しかし、多くのアミノ酸は同じトランスポーターを利用するので、アミノ酸同士で競合します。

ドパミンの原料になるフェニルアラニンセロトニンの原料になるトリプトファン脳への入り口で互いに競争するわけです。

まず、ドパミンの原料になるフェニルアラニンの経路を見ましょう。
図の緑の矢印の経路です。
フェニルアラニンから、ドパミンになるまでに、3つの酵素の働きが必要で、ドパミンになるまで4ステップです。

一方、セロトニンの原料になるトリプトファンの経路では、2つの酵素が働きセロトニンになるまで3ステップです。

セロトニンのほうがドパミンより簡単な過程で作れるようですね。

しかも、実は、ドパミンに至る経路の、フェニルアラニン水酸化酵素、チロシン水酸化酵素と、セロトニンに至る経路の、トリプトファン水酸化酵素は、ほぼ同じ形をしていて、しかも、同じ補因子(BH4と酸素)を利用して働きます。

ですので、ドパミン生合成セロトニン生合成が競合しているようにも見えます。

さらに注目なのが、真ん中にブルーグリーンで囲った、芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)です。
AADCは、ドパミンセロトニンを作り上げる最後の段階で共通して働きます。
ここでもドパミンセロトニンは競合しているように見えます。

もちろんドパミン神経系セロトニン神経系のそれぞれの神経細胞の中で、酵素が働くので、酵素を取り合っているわけではないでしょうが、AADCの働きに偏りがあるのかもしれません。

私が注目したのはここです。

脳への取り込みで、セロトニンの原料となるトリプトファンドパミンの原料となるフェニルアラニンは競合する
セロトニンドパミン生合成経路の各酵素は相同で、競合するように見える
レストレスレッグス症候群ではセロトニン神経系ドパミン神経系とでAADC働きに偏りがあるのかもしれない

①+②+③を考えると、

ドパミン作動薬など直接ドパミンレセプターに働きかけるものよりも、生理的にドパミンが作りやすくなる環境を整えたほうが良いと結論しました。

ちなみに、なぜドパミンそのものが医薬品やサプリになっていないかというと、ドパミン血液関門を通れないからです。

なぜ、脳内で必要な神経伝達物質を血液脳関門は通してくれないのでしょう。
それは恐らく、ドパミンのような重要な神経伝達物質は「必要な時、必要な量だけ」作られるべきものだからでしょう。
このことからも、ドパミン作動薬のようなドパミンレセプターに直接働く物質を投与するのはリスクがあると思われます。

ドパミンの材料を補って、身体が必要とする分だけ脳内で身体にドパミンを作らせれば、適当な量のドパミンを補充できるわけです。

ドパミンの材料を摂ってみる

そこで、L-フェニルアラニンのサプリメントを試してもらったのです。
L-フェニルアラニンはチロシンの一段階前のもの(前駆体)ですので、チロシンのサプリメントでもよいのですが、なるべく生理的なドパミン生合成量(ドパミンが多すぎないよう)にしたいので、あえて前駆体のL-フェニルアラニンを使用しました

果たして効いたか?
効きました。
今のところ、症状が全く出ないか、出ても、ベッドから起きて、トイレまで歩くだけで治るレベルに収まっています。
飲み始めて3日目には改善を自覚できたそうです。


まず、1回425mgのL-フェニルアラニンを1日2回、空腹時(朝起きぬけと夕食の2時間前)に飲んでもらいました。
L-フェニルアラニンドパミンになるために必要な、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6が含まれるビタミンB群のサプリメントと、できれば、を補充するサプリも一緒に摂ります。

先に書いたように、多くのアミノ酸は食事と一緒に取ると、ほかのアミノ酸と競合するので、空腹時が良いと思います。

一般に、ビタミン剤やサプリメントの副作用のリスクを減らす取り方のコツとして、通常は食事と一緒に飲むのが良いのですが、今回は治療的に使用するので、より吸収の良い方法を考えました。

しかし、夕方、おなかが張った感じ(腹部膨満感)が現れました。
ドパミンが増えることで考えられる副作用に、吐き気や便秘などの症状があります。
腹部膨満感もドパミンの副作用ではないかと考えました。

そこで、L-トリプトファン(305mg)も時間をずらして、空腹時(15時ごろ)に少量飲んでもらいました。

L-トリプトファンから作られるセロトニンには軟便の副作用がありますが、れい主任研究員は消化管が
動きにくいタイプの便秘気味なので、問題になりませんでした。
腹部膨満感もなくなりました。

これで、れい主任研究員の脳内でのドパミンセロトニンの生合成のバランスが取れたようです。
めでたし、めでたし。

服用した製品

L-フェニルアラニン
リッチパウダー
L-フェニルアラニン (60カプセル 1,188円)

L-トリプトファン
リッチパウダー
L-トリプトファン(120カプセル 1,550円)

金額はアマゾンを参考にしています。
変更があるかもしれませんので、購入の際にはご確認ください。

最後に。
同じ病気で悩む方に、少しでも情報提供できれば幸いです。
用量や飲み方など、ご自分でいろいろ調節されるといいかもしれません。
でも、サプリメントとは言え、上記のように副作用が出ることもあります。
お試しになるときは、少量から初めて、身体の変化を注意深く観察して、体調不良が少しでも出たら飲むのをやめてくださいね。

2015年7月3日金曜日

カメはなぜ長生きか?

今日は、エバーグリーン研究室の研究員を紹介します。

彼女は人間ではありませんが、健康に生きることを私たちに教えてくれる生物の大先輩です。
私は、彼女のお世話役として、いつも彼女からいろんなことを教わっています。

ご紹介します。

ヨツユビリクガメの うらら 愛称うらちゃん。
甲長17cm、体重1.1Kgです。
たぶん女の子、約10歳です。


ヨツユビリクガメ ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメ


素敵なお家でしょう?れい主任研究員の力作粘土建築です。

ヨツウビリクガメ(ロシアリクガメ)とは

ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメともよばれます。
ロシアといいながらロシアに生息しているわけではなく、野生ではアフガニスタン、イラン、ウズベキスタン南部、カザフスタン、タジキスタン、中華人民共和国(新疆ウイグル自治区西部)、トルクメニスタン東部、パキスタンに生息するそうです。
食性は植物食です。

カメは人間の大先輩

カメの祖先は、約2億年前、ヒトなどの霊長目の祖先は約6500万年前に枝分かれしたと推定されています。
生物として人間より先輩ですね。

カメは長生き

カメと言えば長生きのイメージがありますね。
うらちゃんのヨツユビリクガメも、正確にはわかりませんが野生で寿命は20~60年、条件がよれば飼育例でも40年は生きるとされています。

もしかすると、私より、うらちゃんのほうが長生きするかも知れません。

うらちゃんの好きな食べ物

うらちゃんの好物は、タンポポの花、ゴーヤの花、パプリカなど黄色い色素を含んだ野菜や花です。
甲羅の色が黄色なので、ビタミンAになるカロテノイドなどの黄色い色素がうらちゃんにとって大事な栄養素のようです。

ほかに、キュウリや、トマト、レタス、モロヘイヤ、カボチャ、ニンジンなどが好きですね。

うらちゃんに倣う正しい食性

給仕として、うらちゃんの食事を毎回観察させていただいていますが、うらちゃんの食事を観察していると、人間やペットなど家畜化された生物の食生活がいかに歪んでいるかがわかります。

うらちゃんは、食に対する依存がありません。

ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメ
足るを知るうらちゃん
決して食べ過ぎず、だいたい1日1回の食事はほぼ一定量しか食べません。

何日か絶食してもこのペースは変わりません。

また、目の前の食物に突然関心をなくす「ごちそうさま」のあとで、人間が沢山食べさせようとして、好きなものを鼻先に持って行っても、絶対にそれ以上食べません。

リクガメフードという、リクガメのための人工餌で、カメが食いつきのよいレシピになっているものもあって、うらちゃんも大好きです。
試しにごちそうさまの後に出してみましたが、これも食べません。

「足るを知る」うらちゃん

カメは「足るを知る」のです。
必要以上に食べれば、健康に悪いということをきちんと脳が認識しています。

脳の中には「快い」と感じる神経回路(これを報酬系といいます)があって、人間は「快い」と感じたことを何度でも繰り返しほしがりますが、カメは必要な分だけ手に入れれば、あとは興味がなくなるようです。
この報酬系と摂食ホルモンが、過剰な食事をとらないように、バランスよくコントロールされているのですね。

うらちゃんの報酬系の「足るを知る」働きは、強固で正確です。
欲望に限りがない・制御できない人間など家畜化された動物とは異なります。

この辺が、カメの長寿の理由の1つのような気がします。

「足ることのない」人間の報酬系

人間は欲望を駆り立てる報酬系を適度にコントロールするよりも、際限なく追求することで進化し・文明を築いてきました。
そこから生まれたイノベーション(発明)は、人間の知性や能力をさらに開発し、さらに脳を進化させたたのは事実です。

しかし、我々は、もともとコントロールされるべき報酬系=欲望を満たすことに血道をあげてきたおかげで、「依存」といういわば文明病を背負ったようです。

薬物、アルコール、タバコ、糖・脂質・塩分にまみれた美味と飽食、ギャンブル、セックス、ゲーム、SNS、収集癖、物欲、ファッション、新しいもの好き、これらを得るための貨幣…報酬系を満たす欲望とその依存には限りがありません。

経済活動が「足ることのない」報酬系をどんどん刺激

現代の文明社会は、これらの報酬系を満たす欲望を刺激することで経済が成り立っています。
現代は情報化社会と言われますが、「情報」は欲望への刺激と読み替えても良いと思います。


文明社会の発展は、「足るを知る」ことで健康で進化の歴史を生き抜いてきた生物の基盤から、どんどん離れています。
それとともに、不自然と不健康を手に入れているようなものです。
しかも、エネルギーと時間とお金を使って…。

ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、ホルスフィールドリクガメ、ロシアリクガメ
依存性が高い、タバコ(ニコチン)依存やアルコール依存なら病気という認識があり、治療への道もありますが、毎日の食事で「足るを知る」が働かなくなってしまっているヒトは、いったいどうなるのでしょう。

「足るを知る」で得られる健康と、前頭葉が異常に発達する人間の進化はトレードオフの関係なのでしょうか?

ワイングラス片手の私のそんなつぶやきを、「足るを知る」うらちゃんは、横目(尻目?)で眺めているような気がします。

はい。
今日はこれでワインおしまいにします。
おしりでご指導ありがとう うらちゃん。


報酬系については、大切なのでまた書きますね。

2014年5月17日土曜日

お酒と糖類の依存性

「酒は百薬の長」は本当でしょうか?


冬の熱燗、夏のビール、お酒がおいしいシーンは多いですよね。また、お酒が持つ作用で、楽しくなったり、リラックスできたり、メリットもあります。
でも、お酒の飲みすぎで二日酔いになったり、長期に大量に飲酒すると肝臓病や膵炎、喉頭がん、食道がんや大腸がんになったり、デメリットも多いようです。

アルコールと糖は似た化学構造


糖とアルコールの化学構造

ここでも、ちょっとお酒を化学的に見てみましょう。
お酒の主成分はエチルアルコールです。
私たちが普段「アルコール」と呼んでいるのは、「エチルアルコール」のことです。
上の図を見ると、アルコールも果糖やブドウ糖も同じ形を持っているのが分かります。
エチルアルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに変えられます。
上の図の青とピンクで囲った部分に注目です。
青い部分のC-OHはアルコール性水酸基といって、条件がそろえば簡単にピンクで囲った部分のH-C=Oの形に変換されます。
H-C=Oの形はアルデヒド基といって、酸化されやすく(還元性があるともいう)、ほかのものと反応しやすい性質をもっています。
そのために、体に吸収されると、体の構成成分であるDNAやタンパク質と結びつきやすい性質があります。
糖がくっつくので「糖化」と呼びます。
糖化されるということは、余計なものが結合(付加体産生)するのですから、DNAやタンパク質は正常に働けなくなります。
これがアルデヒドの毒性です。
AGE(エージーイー)って聞いたことがありませんか?
タンパク質に糖が結合(「糖によるタンパク質の糖化」といいます)したもので、老化物質とされています。

話がそれました。
アルコールからできるアセトアルデヒドが悪者だというところから仕切り直します。
アセトアルデヒドができたことを察知すると、肝臓は2型アルデヒド脱水素酵素を使って、アセトアルデヒドを毒性の低い酢酸の形にしてから、血中に放出します。
酢酸は皆さんご存知の「お酢」で、毒性はありません。

このように栄養や成分の形を体内で変えることとを代謝といいます。
飲んだアルコールの量が多いと、どんなに肝臓ががんばって働いても代謝が追いつかなくなります。
そうなるとアセトアルデヒドを酢酸の形にしきれずに、血中にアセトアルデヒドが出てきてしまいます。
アセトアルデヒドの血中濃度が高いと顔が赤くなり、頭痛、吐き気、嘔吐などの中毒症状がでます。
そう、これが二日酔いです。
糖と同様に、アルコールも取りすぎるとよくないようです。

依存性・習慣性=アルコールと糖の怖い共通点

アルコール依存症(中毒)という病気があります。
お酒を飲まずにいられなくなる病気です。
怖いですよね。

アルコールと糖には、
摂らないでいることができなくなる=依存性
繰り返し摂りたくなる=習慣性
という点が共通しています。

誰でも褒められると嬉しくて、また次も頑張ろうと思いますよね。
これは脳の「報酬系」と呼ばれる神経回路が働くためです。
もう少し詳しくお話しすると、脳の報酬系が刺激されると、快楽物質と呼ばれるドパミンが脳内に放出されます。
このドパミンこそ、「気もちよい」と感じさせる物質。
ドパミンは他にも、達成感、やる気、集中力を高める作用を持っています。
アルコールも糖も、吸収されて脳に入ると脳のこの回路を刺激してドパミンを放出させる作用を持っているので、脳は心地よさ、楽しさを感じます。
お酒で楽しくなったり、気が大きくなったりするのもドパミンのこの作用です。
脳と報酬系では、ドパミンによる快楽を得るために、ドパミンを放出させるものをさらに、繰り返し求める性質があります。
これが依存性・習慣性の原因です。
このような、「報酬系」よる欲望の仕組みは、生物の進化の歴史上で、生物が常に飢餓と欠乏に見舞われていたために獲得した性質です。
これらの仕組みを理解して節制しないと、脳が発する際限ない欲望に負けて、必ず健康を損なうことを覚えておいてください。

さらに、アルコールにも、糖にも、耐性といってだんだん欲しがる量が増えてゆく共通点もあります。
同じ刺激を繰り返し受けているうちに、慣れてしまい、もっと欲しくなるのですね。

お酒は毎日飲んでいると、肝臓のアルコールを代謝させる酵素が多くなって、だんだんお酒に強くなり、同じ酒量では酔いにくくなり酒量が増えてゆきます。
糖類が入った甘いものでも、同様です。甘いものをちょっとだけ食べると、もっと食べたいと思いませんか。
そして、今食べたスイーツより、さらに甘いスイーツを求めて、量も甘さも増えてゆくことが多いはずです。

まとめると、
糖類とアルコールには

○依存性(中毒性)・習慣性があり、摂らないでいることができなくなる
○繰り返し摂りたくなる
○だんだん満足するために必要な量が増えていく

という怖い性質があります。

アルコールの場合は、飲みすぎれば二日酔いになったり下痢をしたりして、アルコールの毒性を自覚してブレーキがかかりやすいですが、糖類は甘くおいしいだけで、短期的には毒性を自覚しにくいので、より危険だとも言えますね。
そして、時間をかけて太っていくのです・・・。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
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厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
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糖尿病予備群は癌リスクが15%高い