いきいき!エバーグリーンラブ: 健康的な食事
ラベル 健康的な食事 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 健康的な食事 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年10月20日木曜日

たくさん動いていれば何を食べてもOK

秋です。
スポーツと食欲の季節ですね。

エバーグリーン研究室では、病気を避けて、いつまでも健康で過ごすための勉強を続けています。
これまで、運動と、適切な食事について様々なお勧めをしてきました。

今日は、健康でいるための大きなヒントとなる研究が報告されましたので、ご紹介しながら、もう一度、運動と食生活の関係について学びたいと思います。

ここで質問です。

下のイラストで、運動するタイミングはどちらが良いと思いますか?

運動, 運動不足, 栄養学, 栄養素, 血糖値, 健康的な食事, 消費社会, 食後高血糖, 糖尿病, 食後の運動で、2型糖尿病患者の食後高血糖を管理できる

Reynolds, A.N., Mann, J.I., Williams, S. et al. Advice to walk after meals is more effective for lowering postprandial glycaemia in type 2 diabetes mellitus than advice that does not specify timing: a randomised crossover study. Diabetologia (2016). doi:10.1007/s00125-016-4085-2

Short walks after meals may prove important tool in managing diabetes

【研究の参加者】
41人の2型糖尿病患者( 年齢60 ± 9.9歳、糖尿病の罹病の平均値10年)

【研究の方法】
41人を、
①特に時間を決めずに毎日30分のウォーキングをするグループ
②毎日3回の食後に10分ウォーキングをするグループ
に分けて、2週間運動をしてもらい、その後1か月運動を休み、その後、のウォーキング方法を入れ替えた。
アクセロメータ(加速度センサー)で身体の活動度と、持続血糖測定器で血糖値を5分ごとに継続して1週間以上測定して、運動を行う前後で比較した。

【研究の結果】
  • ②の毎日3回の食後に10分ウォーキングは、①の特に時間を決めずに毎日30分のウォーキングに比べて、食後の血糖値を12%減少(幾何平均 0.88, 95%信頼区間 0.78-0.99)した。
  • 食事中の炭水化物の割合が最も多く、座っている時間が最も長かった夕食後のウォーキングが血糖値を22%減少(幾何平均 0.78,  95%信頼区間 0.67-0.91)させ特に効果があった。

【研究から考えられること】
  • 特に炭水化物の割合の多い食事をとる場合、食後の運動の指導をすべきである。
  • 現在の糖尿病の運動指導では、食後30分から2時間にかけて運動を行うと効果的としているものの、実行が難しい場合は、患者のライフスタイルに合わせて、実施しやすい時間を選んで行う、という指導内容を訂正し、食後の運動を推奨すべきである。 

食休みは身体に良くない

いかがですか?

この研究は無作為化クロスオーバー介入研究ですので、①も②も同じメンバーが試験対象となっています。
ですから、参加者はそれほど多くはないものの、かなり信頼できる結果だと思われます。

エバーグリーン研究室では、以前から、炭水化物、特に糖質(遊離糖質、単純糖質)は、「早い栄養素」とか「エネルギー密度・エネルギー効率の高い栄養素」として、アスリート、代謝の活発な若者以外は、あまりたくさん摂るべきではないとお勧めしてきました。
運動不足の人は、なおさらです。
⇒早い、うまい、安いが身を滅ぼす
⇒吸収が速い栄養素は老化を進める?
⇒速い栄養にご注意
⇒主食の罠

この研究からもわかる通り、炭水化物、特に糖質は食後の血糖値を急速に上げます。

しかし、それは、活動的でなく、運動をせずに、体を安静にし過ぎている場合に問題となるのです。

運動をしたり、家事をして活動的になり、筋肉や赤血球や脳が、血中のグルコース(ブドウ糖=血糖)を消費してくれれば、血糖値は上がらずに済み、インスリンも余計に分泌されずに、太らずに済むわけです。

要するに、炭水化物は直ちに血糖となり、血糖をエネルギーとして使わないと体が脂肪としてため込もうとするため、ため込むすきを与えないように常に活動的でいて、エネルギーを使ってしまえばよい、ということです。
⇒糖をためる仕組み、脂肪を消費する仕組み

文明社会の利便性→運動不足→不健康

農業・畜産業・林業・漁業など一次産業が主な就労であった時代には、特に運動(スポーツ)を意識しなくても、普通に生活をしていれば、活動的になり、血糖値などを気にせずに、炭水化物を食べても問題になりませんでした。

それどころか、汗をかいて体を使う仕事をする人々には、即時にエネルギー源となる炭水化物はぴったりの栄養素だったのです。

日本でも、戦前は一次産業の就労人口が多く、自家用車などが普及する以前には、2型糖尿病は現在ほど多くはありませんでした。

ところが、約300年前に起こった産業革命以降、文明社会に住むヒトは、利便性と引き換えに、慢性的な運動不足に陥っています。
⇒文明が病気を作った!

都市への一極集中が加速し、移動には車や自転車、階段は使わず、最近では買い物さえ宅配で荷物も持ちません。
家事や買い物さえもロボット技術とITにより自動化が進んでいます。
仕事もデスクワークが多く、趣味でスポーツする方も減っているようです。
昼休みにバレーボールやキャッチボールをしている光景も珍しくなりました。
1日1回軽く汗をかく活動をしていますか?

糖尿病、肥満、高血圧、動脈硬化、がん、認知症などの生活習慣病の主原因は、実は食事内容よりも、運動不足です。
運動習慣あるヒトや毎日の運動量が多いヒトでは、食事内容をそれほど気にせず健康を維持できるということです。

消費社会に騙されない!

では、なぜ運動の重要性が認識しにくいのでしょう。

エバーグリーン研究室では、その原因は、資本主義が生み出した現在の消費社会のシステムにあると考えます。

消費社会では、企業活動に代表される、消費者の貨幣による消費が重要視され優先されるので、企業は利得のために消費者に消費を促します。

消費を促すためには、消費者の欲望、安易さと不安と恐怖を刺激するのが常道です。

「美味しいもの、美しい容姿や、健康を、労力を使わず、この商品を使えば得ることができる」などと盛んに製品を売り出し、宣伝広告しています。

また、「これは便利だ」「楽ができる」などとの誘い文句で、掃除・洗濯・片付けなどをしなくてもよい安楽商品もたくさんあります。
ルンバなどの自動掃除ロボットや、乾燥機能付き洗濯機、使い捨ての商品などがその典型ですね。

また一方で、
「これを食べていると健康に悪い」
「これを飲まないと健康に悪い」
「サプリを使わないと太る、醜くなる」
「化粧品を使わないと美容に悪い」
などとというキャッチコピーを使って、不安と恐怖を刺激して、安心のために製品を買わせようとする企業や宣伝は数え切れません。

医療保険なども同様です。
「病気になったらお金がかかる」と不安をあおって加入させようとしています。
いくら保障の厚い保険に入ろうとも、病気になったら、まず幸福にはなれません。

そして、マスメディアやインターネットにはびこる広告やマーケティングによって、
欲望、安易さと不安と恐怖を刺激され続け、これらの商品・製品を必要以上に消費するため、
ヒトは貨幣の虜になっています。

そのため、長時間の労働を強いられ、その内容も、会社員であればデスクワークや単純作業の比率が多く、体を使う就労は少なくなっています。
多忙と疲労のためにエレベーター・エスカレーターはもちろんご近所への移動も車やタクシー。
やっと迎えた週末には、疲れていて、趣味やスポーツどころか、ちょっとしたストレッチをする気力もない。

貨幣の獲得のために、仕事優先の思考になり、休日も取らず、ストレスが多くなり、不健康な食事や飲酒・喫煙などで憂さを晴らす、といった方も多いと思います。

消費社会と貨幣にとらわれ、時間を奪われ、安心することに脅迫されて、本質を見抜く思考ができなくなってはたいへんです。
生き物が本来守るべき、自分の健康な命を見失ってしまわないようにしたいものです。
健康を損なえば、自分だけではなく周りの人間も不幸になります。
病気になって喜ぶのは医療従事者と医療産業だけです。

保険に入っても病気予防はできない

医療・医学は未完成です。
現在の医療技術で、一度かかってしまった病気を完治させることはまだまだ困難です。

保険に入っても病気は予防できません。
保険をかけて、発病してからお金をかけて高級な医療を受けても、根治しないことが多いのです。
病気にならないことが大切です。

そして、あらゆる生活習慣病に共通して最も有効な予防法は、運動であることを忘れてはなりません。

人生は限られています。
誰にとっても時間は等しく過ぎていき、貨幣を出しても買い足せません。
なるべく多く健やかな時間を過ごすことが、貨幣には代えられない幸せではないでしょうか。

さあ、今日は17:00に退社して、自宅の最寄り駅から1つ前の駅で降りて、歩いて自宅に帰りましょう。
エレベーターもエスカレーターも使わないようにしましょう。
きっと新たな風景や発見を楽しめますよ。
帰ったら軽いストレッチをしましょう。
これだけでもかなりの運動量です。
そうすれば風呂上がりのビールも格別ですよ。

週末はきちっと仕事を休んで、趣味やスポーツに汗を流しましょう。
美味しい料理をたくさん楽しめますよ!!!

2015年10月5日月曜日

レシピ*低糖質紅茶パン

ホームベーカリーで、大豆とふすまがメインの低糖質紅茶パンを焼きました。
大豆と紅茶というと、合わないような気もしますが、紅茶は香りが強いので、大豆臭さが打ち消されておいしくできました。

家庭用パン焼き器 HB で作った低糖質パン 糖質制限ダイエットにどうぞ  ホームベーカリー(パナソニックSD-BH105 HB)で焼きました 低糖質 糖質制限 ダイエット メニュー 作り方 レシピ  パン焼き機 全粒粉 低糖類 ラカント パルスウィート バイタミックス ミキサー 乾燥大豆 大豆粉 卵 たまご  砂糖を使わない 簡単 グルテン 少な目 ふすま 衾 ブラン ラカンカット バター 
クリームチーズ(分量外)を添えて



【材料】
全粒粉           30g         
大豆(乾燥大豆として) 50g
小麦ふすま(ブラン)  60g
グルテン         40g 
クリームチーズ     50g
紅茶の葉        大さじ2
卵              2コ
ラカンカット        大さじ2
塩              小さじ1/2
バター           20g
ドライイースト      小さじ2.5 
ナッツ(ここではかぼちゃの種) 20g
       
糖質合計 約36g

【作り方】
1.大豆の水煮を作る。
 大豆は煮る前の重さで50g。
2.紅茶の葉をすりつぶす。
 ティーバックならば、つぶさなくても大丈夫かもしれません。

3.ミキサーに水煮大豆と卵入れて、トロトロになるまで撹拌する。
 ミキサーはバイタミックスを使っています。」

4.パン焼き器のお窯に3と、その他の材料をすべて加える。

5.パン焼き器の「ドライイースト、早焼き、淡」で焼く。
パン焼き器は、ホームベーカリー パナソニックSD-BH105を使っています。

6.10分くらい混ぜたところで、壁面に生地がついていたら、ヘラで取る。

7.「材料投入」の合図で、ナッツを入れる。
 ここではかぼちゃの種を使いましたが、くるみがお勧めです。
家庭用パン焼き器 HB で作った低糖質パン 糖質制限ダイエットにどうぞ  ホームベーカリー(パナソニックSD-BH105 HB)で焼きました 低糖質 糖質制限 ダイエット メニュー 作り方 レシピ  パン焼き機 全粒粉 低糖類 ラカント パルスウィート バイタミックス ミキサー 乾燥大豆 大豆粉 卵 たまご  砂糖を使わない 簡単 グルテン 少な目 ふすま 衾 ブラン ラカンカット バター  くるみは大きめに砕いてから入れてください。

8.「材料投入」の合図からひと捏ねしたところで羽根を取りだすと、よりふっくら焼けるようです。

9.焼き上がりの10分前に取り出すと、焦げ具合が良い感じです。
 ちょっと焦げたくらいがお好みの方は、最後まで焼いてください。


これで450gのパンができました。
この間、ローソンで買った低糖質パンは、糖質30%くらいでしたから、8%というのはかなり優秀です。

(ラカンカットは糖質ですが、血糖を上げないので、ここでは糖質としてカウントしていません)
糖質と血糖値の関係についてはこちらをご覧ください。
⇒「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い


パンのレシピ


2015年5月9日土曜日

短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る


アフリカ系アメリカ人が大腸がんになる割合は10万人あたり65人で、同じ人種の南アフリカの田舎の人の大腸がんになる割合は10万人あたり5人だそうです。
同じ人種で、遺伝子も近いのにずいぶん違いますね。

何が、大腸がんの発生を促しているのでしょうか?
今日は、短期間でも、不適切な食生活が大腸がんの発生に大きな影響を与えることを明らかにした最近の研究をご紹介します。



アフリカの食事とアメリカの食事を交換して食べたらどうなる?

【研究参加者】
アフリカ系アメリカ人と南アフリカの田舎の人 各20人

【方法】
まず、それぞれの参加者に大腸内視鏡検査を行い、大腸がんのリスクと考えられる小腸ポリープの有無を確認した。
それぞれの参加者の自宅での普段の食事内容を評価した。

そのうえで、ピッツバーク大学とアフリカの宿泊施設で、お互いの相手国の調理方法や食材を使って調理された一般的な食事を2週間食べてもらった。
つまり、2週間お互いの食事を交換して食べてもらった。

2週間経った時点で、参加者に大腸内視鏡検査をして、便や大腸内部を調べた。

【結果】
1.2週間、食事を交換した後、

  • 食べた食物繊維の醗酵具合
  • 腸内細菌の代謝活性
  • がんのリスクに関連する炎症の指標値
  • 腸の内皮細胞の代謝回転率

などが、相手国の人のものに互いに近づいた。
つまり、アフリカ系アメリカ人の腸内環境は南アフリカ人に近くなり、反対に南アフリカ人の腸内環境はアフリカ系アメリカ人に近くなった。

2.研究前、大腸がんのリスクと考えられる小腸ポリープは、南アフリカ人には20人全員なかったが、アフリカ系アメリカ人20人中9人にあった。
この、アフリカ系アメリカ人9人の小腸ポリープが、見事に消えていた。

【結論と考察】
研究者らは、大腸がんのリスクを減らすとみられる、腸内細菌による酪酸発酵が、南アフリカ人の食事をとったアメリカ人で増えたことと、ポリープが消えたことを重要視して、
「わずか2週間でも健康的な食事をすれば、がんのリスクが減ることを明らかにした」
としている。

さらに、アメリカ人が食べたアフリカ人の食事は食物繊維が多く、食物繊維が約10gから50g以上に増加した。
このことが、がんリスクの低下した要因となっているようだ。

また、アメリカ人の食事よりもアフリカ人の食事は動物性脂質やたんぱく質が少なく、それらの摂取量が減ったことも有益である可能性がある、と考察している。

西洋の食事から伝統的なアフリカの食物繊維を多く含む低脂質の食事に変えることが、がんリスクを減少させると思われる。

先進国の食事は何がいけない?

いかがですか?
たった2週間の食事でも、こんなにがんのリスクに影響するなんてとても驚きです。


アメリカに限らず、先進国の食事内容は、高カロリー、高脂質、高単純糖質、高塩分の傾向があります。
つまり、手軽でおいしい食事が常態化してしまっているのです。


例えば白米と玄米を比べると

たとえば、米飯を考えてみても、白米のごはんと玄米ごはんを比べてみると、玄米ごはんでは食物繊維の量が100g中1.4g、一方、白米ごはんでは100g中たったの0.3gです。
実に4.7倍も差があるわけです。

第二次大戦前は、白米のごはんは「ハレ」の日のお祝いなどに食べる特別なものでした。
その特別な白米のご飯を、どんぶり物や、カレーなどでまるで掻っ込むように食べるのが、日本人の一般的な食生活になってしまいました。

これに加えて、高カロリー、高脂質、高単純糖質、高塩分の料理や味付けです。
玄米ご飯を食べればわかりますが、玄米は炊いてあっても、歯ごたえがあって、よく噛まないと呑み込めません。
食物繊維リッチな玄米の効果に加えて食事をゆっくりとることになり、血糖値の上昇も緩やかでしょう。



食物繊維を見てみると

ちなみに、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015 年版)では食物繊維の一日推奨摂取量は、18歳以上で男性20g以上、女性19g 以上です。
また、平成25年 国民健康・栄養調査結果の概要によると日本人の食物繊維一日摂取量は、
20-29歳で12.0g 
30-39歳で13.0g 
40-49歳で12.8g 
50-59歳で14.1g
60-69歳で16.5g
70-79歳で16.3g
となっていて、必要量に全く届いていません。

これまでも、食物繊維の摂取量と病気との関連が数多く研究されてきました。
心筋梗塞、糖尿病、肥満、血圧、血中LDLコレステロール値などの生活習慣病に良い影響があるという研究が沢山あります。

食物繊維と大腸がんの関係は?

でも、食物繊維をとれば大腸がんになりにくい、とは単純には言えないと思います。
大腸がんとの関連について観察した結果は各研究で一貫していません。

食物繊維を倍の量食べていれば、大腸がんの危険性が40%減るという研究もあれば、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12737858

食物繊維を食べていても、大腸がんのリスク減少とは関連がなかったとする研究もあります。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16352792
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9895396

食物繊維が、生活習慣病に良い影響があるとの結果がある一方で、大腸がんに関してはっきりしないのは、おそらく、調べ方と解釈の仕方に問題があると思います。

医学、栄養学の研究の読み解き方

観察研究と介入研究

医学や栄養学などで行われる、このような研究は疫学研究と言います。
疫学研究には、大きく分けて観察研究介入研究があります。

観察研究とは、病気や健康が発生する要因をできるだけ大規模な集団で統一的に観察して調べようという研究、
介入研究とは、観察者が条件をそろえた集団をあらかじめいくつか用意して、一定期間に病気や健康が発生しそうな要因に人為的に差をつけ(食べ物の有無や治療など行う・行わないなど)、比較して調べる研究です。
最初にご紹介した研究は疫学研究のなかでも、観察ではなく介入研究です。

大集団を研究する場合、介入研究はとてもコストがかかってしまうので、多くの疫学研究は観察研究です。
観察研究は、すでに結果の出ている集団を分析するだけなので、短期間に結論が出て、低コストですみます。

観察研究にも欠点があります。
比較する集団の細かい条件まではそろえられないので、要因と結果の関連性の強さを明らかにはできますが、はっきりと証明することができないことです。

食物繊維に関する研究を見てみると

食物繊維と大腸がんの関連を見た①~③の3つの試験は観察研究です。
食物繊維と大腸がんのリスクの関連性の程度を分析していますが、関連の強さを数字で表そうとすると、分析の仕方と、その解釈で変わってしまいます。

一方で、最初のアフリカとアメリカで食事を入れ替えたのは、介入試験です。
がんのリスクに関連する炎症の指標値が改善したり、ポリープが消えたという事実が、食物繊維を多くとったことが要因であると、因果関係をほぼ同定できます。

観察研究でも介入研究でも、研究には限界が

しかし、病気や健康の要因は1つではありません。
様々な要素が絡み合って病気になったり、元気でいられたりするのです。

科学の思考方法は分析的です。
つまり、事柄(現象)を細かく切り分けて、再構成して読み解こうとします。

でも、生物は複雑です。
何か1つの原因や要因で、生きざまに簡単に影響があるほど、生き物は単純ではないと思います。

食物繊維が多い食事をとっている人は、食物繊維だけを意識して食べているのではなく、食習慣そのものが健康的だと考えられます。
食物繊維だけに注目して分析すると、このような一貫しない結果になるのだと思います。

確かに言えるのは、
  • 栄養素を1つだけ取り出して良し悪しを議論することに限界がある
  • 現代文明社会での食べ物・食事は、調理・加工や品種改良されすぎて、また、収穫量や1回の食事量(カロリー)が多すぎて、食物や食事に含まれる栄養バランスとカロリーが本来の食物・食事からかけ離れている
ということでしょう。

本来の生き物の姿に真実が・・・

玄米の話をしましたが、生物にとって、たとえば穀物は、全粒で食べるのが、長い歴史では当たり前でした。
穀物を食べれば自然に糖質と一緒に食物繊維を摂ることになっていたのです。
⇒全粒粉や玄米はなぜ体に良い?

水鳥が魚を食べる姿を思い出してください。
丸のみですね。
タンパク質も、脂質も、ビタミンも、ミネラルも、糖質も、魚に含まれるすべての栄養素をそのままのバランスで水鳥はとることになります。

1つの栄養素を取り出したり、加えたりする調理・加工は人類だけが行います。
そしてそれは、長い生命進化の歴史上で始まったばかりです。
調理をすることで、食中毒や感染症のリスクを減らすことには成功しました。

しかし、素材の組成(成分)と消化吸収効率(食品のエネルギーの密度)を極端に変えてしまうような食品の加工には、人間やペットの身体は対応しきれていないようです。
生活習慣病やがんは、人間だけでなく加工食品をご主人とともによく食べるペットにも激増しています。
さらに、調理・加工は、人間の欲望=報酬系を満たす革新的な技術でしたが、同時に“おいしい”という食に対する依存を作ってしまいました。
この依存に気づいていないで、食生活を送っている人はリスクが大きいと思います。
おいしさの罠


70年前の日本と現代日本では病気が異なる

つい70年前の戦前には、日本人に珍しかった大腸がん。
今では、全がん死に占める大腸がんによる死亡の割合は、女性では1位で、男性でも3位です。


2015年3月5日木曜日

食品のコレステロールは気にしなくてOK


健康的な食生活として、「コレステロールを多く含む食品を控える」といった栄養の指導を受けた方や、コレステロールを抑えたマヨネーズなどの商品を利用なさっている方も多いと思います。

エバーグリーン研究室では、食事で摂るコレステロールはあまり気にしなくて良いというお話しをしてきました。
⇒脂肪は悪者?


2015年2月11日のアメリカの新聞ワシントンポストで、
The U.S. government is poised to withdraw longstanding warnings about cholesterol

『アメリカ合衆国農務省の「アメリカ人のための食生活ガイドライン」を作成している委員会が、コレステロールの多い食品を食べることへの注意を取り下げることを決めた。

この注意は過去40年間政府によってアメリカ国民にされてきた。

しかし、健康な成人では、コレステロールが多い食品を食べても、血中のコレステロールに影響しない、心臓病のリスクも上昇しない。』

と報道されました。

今日は、発表された「アメリカ人のための食生活ガイドライン」の内容をざっとみてみましょう。
Scientific Report of the 2015 Dietary Guidelines Advisory Committee

このガイドラインは、改訂を重ねてきていますが、今回の2015年の改訂はワシントンポストの記事のように、コレステロールの扱いが目玉です。

「アメリカ人のための食生活ガイドライン」推奨の概要

  • コレステロールの摂取は制限しない。
  • 果物と野菜、全粒の穀物(精製していない穀物)、低脂肪乳製品、シーフード、豆類とナッツを積極的にとり、加工された肉(ハムやソーゼージ)や赤い色の肉(赤身肉;牛肉、豚肉、ラムなど血の多い肉)、砂糖、加糖食品と加糖飲料、精製した穀物は控える。
  • 添加糖は一日必要カロリーの10%未満、飽和脂肪も一日必要カロリーの10%未満にして、ナトリウムを1日2300mg未満にする。
  • 穀物の摂取量の半分は、全粒の穀物から摂らなければならない。
  • 適度な量のアルコールの摂取は、大部分の成人で健康に好ましい。
  • 一日最高カップ5杯までのコーヒーは、大部分の成人で問題ない。

以前には、このガイドラインでは、コレステロールは1日300mg以上摂るべきではない、としていましたが、この制限をなくしました。
鶏卵1つでだいたい240mgのコレステロールを含むので、卵は1日1個まで、などと言われていたわけですね。
この制限がなくなったのです。

科学的な根拠が集まってきて、以前の見解を訂正する勇気は素晴らしいと思います。
日本の政府機関や学術団体は、情報のアップデートや、正確性の検証が甘いと思います。
アメリカという国には良いことと悪いことと玉石混交と思いますが、これはぜひ見習うべきでしょう。

風評を安易に信じない

テレビや雑誌のタイアップ番組・記事や、製薬会社、食品会社、化粧品会社の広告宣伝が、意図的に間違った情報を流すことは容易に想像出来ますが、政府機関や学術団体などの公的なガイドラインといえども、図らずも間違っていることはあるのです。

最近の科学界では、科学研究と企業などの利害衝突と資金提供が、科学研究の正確性と質に影響することを問題視しています。

また、商品がいかにも科学的な裏付けがあるようにキャッチ―に宣伝して、商品を売り込もうとする企業は無数にあります。
科学という、なんとなく、正しく、権威がありそうな装いに惑わされずに、冷静に情報を判断するようにしましょう。

得体が知れなく、あまりおいしくなく、しかも高い、低コレステロールを謳う商品は必要ないのです。

オムライス オムレツ 卵 イラスト コレステロールうちの奥さん=れい研究員は卵が大好物ですが、コレステロールの摂りすぎを気にして以前は1日、2個くらいまでにしていました。
ものすごく損をした気分だと、怒っています。
我慢した分を取り返すために、先日のおでんには卵が一人3個ずつ割り当てられていました。

ある程度、生命科学を学んでいたって、正しい科学知識のアップデートは、努力して勉強を続けないと、訂正できないものです。

生命科学を学ぶ機会のなかった方々が、食べたいものを我慢して損をしないように、エバーグリーン研究室では、正しいデータ・・・科学的に正しいと思われるデータを紹介していきます。

「アメリカ人のための食生活ガイドライン」の改定内容に関していえば、アルコールの記述以外は概ね間違っていないと思われます。
卵好きの皆さん、卵は心置きなく食べてください。

2015年1月6日火曜日

糖質制限 糖質は何gまでOK?

私たちエバーグリーン研究室では、ずっと健康でいるために、食生活と運動習慣の大切さをお伝えしています。

今日は、食生活のなかでも、最近注目されている糖質についてお話します。

糖質制限、低糖質、糖質制限ダイエット、糖質0、などのキーワードがいろいろなメディアで取り上げられていますが、みなさんこんな疑問はありませんか?
糖質を制限するといっても、どのくらいまでなら摂ってもOKなのでしょう?

糖質はどれくらいまでならOK?

これが難問なのです。

推奨される糖質の摂取量は示されていない

実は、2015年1月現在、日本で、行政や学術団体などの公的な機関が推奨する糖質の摂取量は存在しません。

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の報告書には、糖類について、
「糖類については、日本人においてその摂取量の測定が困難であることから」基準を作成しない
と記述されています。

でも、糖質、特に単純糖質の取りすぎは、肥満、糖尿病、がん、認知症など様々な病気や障害の原因となるという科学的な報告はたくさんあります。

なのに、糖質の摂取量の基準を作成しないのは、納得ができませんね。
本来、厚生労働省は、国民の健康を維持するための政府機関なのですから。

WHOが示した基準は「糖類の摂取量1日約25g」

では、海外ではどうなのでしょう

世界保健機関(WHO)は、2014年の3月に、糖類(sugars)の摂取量の指針案を発表しました。
参考⇒WHO opens public consultation on draft sugars guideline

それによると、肥満や虫歯などの公衆衛生の点から、糖類の摂取量は1日のエネルギー摂取量の5%未満に制限すべきだとしています。

標準的な体格(BMI)の成人でおおよそ25g(角砂糖6個分)の糖類の量です。

ここで注意しなければならなのは、WHOは「糖質」ではなく、糖類(sugars)の摂取量について提示していることです。

イヌリン、ポリデキストロース、セルロース、 難消化性デキストリン、多糖類、グルコース、ぶどう糖、 フルクトース、果糖、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン、糖アルコール、還元麦芽糖水飴、エリスリトール、キシリトール、 マルチトール、ラクチトール、アセスルファムK、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、砂糖、ショ糖、スクロース、 乳糖、ラクトース、麦芽糖、マルトース、 トレハロース、異性化糖、高果糖コーンシロップ、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖
赤字:血糖値を上げる成分
紫字:血糖値を少しだけ上げる成分
黒字:血糖値を上げない成分
図のように、糖類とは砂糖や麦芽糖などの二糖類とグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)など単糖のことを言います。

また、でんぷんを加工して単糖にした、異性化糖(高果糖コーンシロップ)も糖類です。

WHOは、砂糖や麦芽糖とグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)や、甘味料として飲み物などに入っている異性化糖(高果糖コーンシロップ)などの摂取量を1日25g以下にしなさいと言っているわけです。
でんぷんなどの糖質まで含めてはいません。

WHOは、加工食品が大量の糖類を含んでいることを問題視していて、これを警告しているのですね。

たとえばスプーン1杯のケチャップには約4g、1缶の甘味炭酸飲料には約40gの砂糖が含まれていることを例にとって注意しています。

食品中の糖分の量は調べられない

さらに「糖質はどれくらいまでならOK?」が難問である理由に、食品中の糖類や糖質の量が確認できないということがあります。

例えば、WHOの基準「糖類25g」を守ろうと思っても

話が複雑になるので、まず、WHOの推奨する糖類25gについて、考えてみましょう。

1日のエネルギーの5%=1日約25gの糖類という目安があっても、日本に住む私たちがこのこの勧告を利用するのは難しいのです。

なぜなら、食品中の糖類の含有量がわかる公的な資料は現在ありません。

糖質の量は推算できるけれど、糖類の量はわからない

私たちエバーグリーン研究室が糖質(糖類ではありません)の含有量を計算するときは、文部科学省の、 日本食品標準成分表2010、日本食品標準成分表2010準拠 アミノ酸成分表、五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編をデータべース化したwebサイトの情報から推算しています。
⇒参考サイト 食品成分データベース

現在このデータベースの項目には糖質や糖分はなく、炭水化物の項目しかありません。
(文部科学省は2015年以降の日本食品標準成分表に糖分含有量の記載を始めるそうです。)

そこで、私たちエバーグリーン研究室が食品の糖質を推算する場合は、炭水化物から食物繊維を引き算して出しています。

上のベン図のように炭水化物量から食物繊維を除けば、ほぼ糖質の量になると思われるからです。
それでも、求められるのは糖質ですから、その中にどの位の糖類が含まれているかはわからないわけです。

食料品については、最近では日本でも、食料品の栄養成分表示に糖質や糖類が表示されているものもありますが、まだまだ少なく、仮に糖類を25g以内に制限しようとしても、食料品にどれだけの糖類が含まれているかわかりません。

ちなみに、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国では糖類の栄養成分表示が義務化されていますが、日本では栄養成分表示はまだ義務化されていません(消費者庁が中心になって義務化を検討中です。なぜ厚労省ではないのか疑問です)。

糖類でない糖質でも、デンプン、オリゴ糖などは血糖値を上げる

また、糖類でなければ血糖値を上げないかというと、そうではありません。
私たちが主食としている小麦やお米の主成分であるでんぷんは、消化されてブドウ糖(グルコース)になります。

他にも、上の図の赤い文字の成分は、すべて血糖値を上げます。
もう一度、復習しましょう。

糖質

  • でんぷん、オリゴ糖、デキストリン、還元麦芽糖水飴、キシリトール、マルチトール、ラクチトール

糖質の中で、特に糖類と呼ばれるもの

  • 砂糖(ショ糖=スクロース)、乳糖(ラクトース)、麦芽糖(マルトース)、トレハロース、グルコース(ぶどう糖)、フルクトース(果糖)、異性化糖(グルコース+フルクトース)≒高果糖コーンシロップブドウ糖果糖液糖果糖ブドウ糖液糖高果糖液糖砂糖混合異性化液
これらは、全部、血糖値を上げます。
糖の仲間の呼び方と血糖値についてはこちらを…
⇒「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い

お菓子や清涼飲料水などには、水飴、キシリトールやマルチトールなどが成分として表示されているので、確認して避けることができますね。
生鮮食料品の中に入っている糖質(糖類も含む)は、さきほどの食品成分データベースで「炭水化物-食物繊維」で推算してください。

問題点をまとめると

このように、

・厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」に糖質や糖分をどれだけとればよいかの指針の記載がなく

・WHOは糖類は一日のエネルギーの5%=1日約25g未満を勧告してるけれど、でんぷんを含む糖質には触れていない

・文部科学省の、 日本食品標準成分表には糖分含有量の記載は現時点ではない

・栄養成分表示には糖質や糖分の表示が義務化されていない。

問題がたくさんあって、「糖質はどれくらいまでならOK?」に解決が困難なことが実感できますね。

予想どおり、お役人さんや専門家は、利害関係を含めて、いろいろなご事情がおありのようで、はっきりせず、やはり頼りないものです。

では、糖質の量をとうやってコントロールするかというと

自分の健康は自分で守るがポリシーの私たちエバーグリーン研究室では、情報の制限のある中で、「糖質はどれくらいまでならOK?」のヒントを出しましょう。

その方法は、
  • 糖類については、WHOの一日のエネルギーの5%=1日約25g(角砂糖6個分)未満という勧告を守る。25gには、飲み物、アルコール飲料、調味料を含めて計算。

     ⇒アルコール飲料 角砂糖いくつ分?

  • 一日三食食べている場合は、まず、主食(ご飯、パン、麺類)を一食分やめるか量を減らす。まずは夕食分の主食をやめるのがおすすめ。
  • 糖質制限を始めたら、体重を定期的に測り、記録する。3日おきぐらいがおすすめ。
  • 糖質制限に慣れてきた(2-3週間を目安)ら、最低週に3回45分以上のうっすら軽く汗をかく程度の運動をする。筋トレ+有酸素運動がおすすめ。息が上がり、汗が滴るような激しい運動はNG.。
  • 体重が落ちてきて、自分の理想の体重(BMI22ぐらい)になるまで、主食と糖類を減らす。たとえば最初に夕食のご飯をやめても体重が落ちてこなければ、ケチャップなどの糖類が多い調味料の使用を見直したり、昼食の主食も量を調節して、体重が落ちてくるまで様子をみる。
  • 体重が目標値に到達したら、我慢していた糖質を1つ許可してみる。たとえば、昼食の定食のごはんを1/3だけ食べてみて、体重が増えてこないなら、その量の糖質は許容範囲となる。

つまり、体と相談して、糖質を制限していくのです。

糖質制限の効果

糖質制限は、厳しく行えば短期間で劇的に体重が減り、血圧が下がります。
特に体重は2週間もすれば減ってきます。

これは、糖質を制限すると、食後の高血糖がなくなり、インスリンが過剰に出なくなって、体のむくみが取れるためです。

インスリンは、腎臓にナトリウムを再吸収するシグナルを送り、水分を排出しないように働き、その結果血圧を上昇させ、むくみの分体重が増えているからです。

尿として排泄する体の中の成分(水分やミネラルなど)は、すぐには排泄しないで、一旦、腎臓に蓄えられた後、インスリンなどの指令を受けて、必要と判断した分だけもう一度血液中に戻されている(再吸収)のですね。

糖質制限の副作用と対策

しかし、糖質制限を始めると、体が慣れていないので、一時的に不調に陥る方もいます。

具体的な症状としては、

  • めまい・立ちくらみ・意識がふっとなくなる(起立性低血圧、低血糖症状)、疲労、虚脱(弱)感、イライラしやすい、怒りっぽくなる、筋力低下、手足の冷え・しびれ、吐き気、便秘、下痢、脱水

などです。

身体がエネルギー源をスイッチする

糖質を制限すると、糖を主要エネルギー源としていた身体が、脂肪(脂肪酸)やケトン体を主要エネルギー源に変更するようになります。
このように糖質制限で身体がエネルギー源を脂肪(脂肪酸)やケトン体にすることを「ケト適応keto-adaptation」とよびます。

特に1日の糖質量を60g以下にするような厳しい糖質制限を行うと、ケト適応に伴う副作用として上にあげたような症状が現れるとされます。

このような症状が現れたら、過剰な糖質制限ですので、主食の量を調節するなどして、症状が現れないようにしてください。
ナッツたっぷりの
低糖質クッキーのレシピはこちら

ミネラルバランスに注意

また、お話ししたように、糖質を制限するとインスリンが過剰に出なくなるため、体内のナトリウムの量が減ります。
むくみが取れて血圧も下がりよいのですが、人によっては、ナトリウムの欠乏と体が判断してしまい、ナトリウムとカリウムのバランスを保とうとして、カリウムを排泄してしまう場合があります。

カリウム不足になると、お話しした副作用の症状が出やすくなるので、糖質制限を行うときは、カリウムの多い食品、アーモンド、ピーナツなどのナッツ類、緑色の野菜、ワカメ、昆布などの海藻を摂ることをお勧めします。

水分補給を

レモンミント水
レシピはこちら
さらに、むくみが取れ、血圧が下がるのは歓迎ですが、これが効きすぎてしまうと、脱水の可能性があります。
ですので糖質制限中は、水分の補給を心がけてください。
目安は、食事以外で、1日1~2Lの糖質を加えていない飲み物で水分補給をしてください。

カフェインが入っているコーヒーやお茶、紅茶などは、利尿作用があるのであまりたくさん飲むとかえって水分を失います。

エバーグリーン研究室では、レモンやライム、スダチを絞った柑橘フレーバー水をお勧めします。

柑橘類にはミネラルも入っていますので、カリウムやナトリウムのバランスを保つのにも役立ちます。
トマト水レシピはこちら

ミネラル補給の切り札

カリウム不足と脱水予防にエバーグリーン研究室では、アミノ酸スープをお勧めします。
糖質制限中の副作用防止に、削り節と昆布でとっただし汁の、
アミノ酸スープを1日2回(朝と夜)250mL(お椀1杯)ほど飲んでみてください。
アミノ酸スープは、カリウム、ナトリウムなどのミネラルたっぷりで、水分補給もできます。
もちろん糖質も少ないです。
具として、ホウレンソウや、ワカメを入れれば効果抜群です。
アミノ酸スープの作り方はこちらを…
⇒アミノ酸スープ

アミノ酸スープ
レシピはこちら
また、だし汁をとるのが面倒な方は、カリウム豊富な昆布茶や、青汁を1日2回(朝と夜)飲むのも良いと思います。

便秘対策

最後に、糖質制限をすると、腸内の常在細菌が栄養にする糖質と食物繊維が減るので、常在細菌が元気がなくなり、便の量が少なくなり、便秘になる人もいます。

この場合を踏まえて、意識して食物繊維を摂るように心がけてください。
大豆、玉ねぎなどの野菜、ワカメ、ヒジキ、昆布などの海藻、キノコなどが糖分も少なくお勧めです。

血糖降下薬、降圧薬服用中は医師に相談

とき玉アミノ酸スープ
レシピはこちら
ここでお話しした、糖質摂取の目安は、生活習慣、運動量、筋肉量(ミトコンドリアの量と質)などの個人差がありますので、その点はご理解ください。

また、ここで、紹介する糖質制限のやり方はあくまでも、病気を持っていない人を想定しています。
糖尿病や高血圧などの病気をお持ちの方は、医師と糖質制限について相談してから行ってください。

特に、血糖降下薬、降圧薬を飲んでいる方は、糖質を制限すると、低血糖、昏睡(意識がなくなる)、過剰な血圧低下によるめまい・立ちくらみ(起立性低血圧)、転倒、転倒による事故やけがが起こる危険性があります。
充分ご注意ください。

糖質制限に興味をお持ちの方は下記もどうぞ。

糖質
文明が病気を作った!
ミトコンドリア イラスト
ミトコンドリアについては
こちらをご覧ください
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い

2015年1月3日土曜日

レシピ*胃腸炎にアミノ酸スープ


半年くらい前のこと。
どうも朝から胃の調子が悪い日がありました。
胃腸はめっぽう逞しく、具合が悪くなることは珍しいので、「昨日、そんなに飲んでないのに」と不思議に思っていたところ、午後になって、今度はおなかが痛くなってきました。

普段は便秘がひどくて困っているので、まあいいか、と思ったのですが、時間がたっても腹痛は治まりません。
トイレに行くと、その時は治るのですが、またすぐに痛くなるので、どこにも出かけられません。
でも、食欲はあったので、普通に食事をして早く寝ました。

かつお いわし あじ ぶり グルタミン酸 イノシン酸 ATP だし汁 おすまし アミノ酸スープ OS-1 経口補水液 熱中症 脱水 下痢 水分補給 暖かい飲み物 カリウム・カルシウム・ナトリウム・マグネシウムなどのミネラル ヒスチジン、タウリン、アンセリン、アラニン、カルノシン 細菌感染 ウイルス感染 吐き気 嘔吐 悪心 下痢 おなかを壊して食べられない時 食欲がない 夏バテ 熱中症 ノロ ロタ ATP 病気 すましじる 一番だし 水分がとれない おなかをこわす 気分が悪くて吐き続ける子どもにどうやって水分をとらせる 気持ち悪くて起きられない高齢者 翌朝も普通に起きて、普通に朝ご飯を食べて・・・そこまでは普通でした。
が、10:00頃になって突然、吐き気とひどい腹痛に襲われたのです。
どうやら、ウイルス感染症による胃腸炎のようでした。
起き上がることも出来なくなって、水分を摂っても、たちまち、下から出ていく状態。
そのうち、冷や汗が出てきて、呼吸まで苦しくなってきました。
脱水状態による軽いショック症状だったのですね。

心臓がばくばくした状態は、1時間くらいじっとしていてようやく治まりました。

そのあと、飲んだのがアミノ酸スープです。
空っぽの胃と腸に優しくしみ込んでいくのがわかりました。
そして、みるみる力が出てきたのです。

なんて書くと、怪しいCMのようですね。
でも、全然怪しいものではありません。
単純明快、アミノ酸スープは誰でも知っているだし汁です。
いろいろな病気で吐いたり、下痢したりして、水分や栄養を補給しにくい時の特効食といえます。
具は入れないほうが胃腸にやさしいです。

アミノ酸スープの作り方

カツオ ブリ アジ イワシ グルタミン酸 イノシン酸 ATP だし汁 おすまし アミノ酸スープ OS-1 経口補水液 熱中症 脱水 下痢 水分補給 暖かい飲み物 カリウム・カルシウム・ナトリウム・マグネシウムなどのミネラル ヒスチジン、タウリン、アンセリン、アラニン、カルノシン 細菌感染 ウイルス感染 吐き気 嘔吐 悪心 下痢 おなかを壊して食べられない時 食欲がない 夏バテ 熱中症 ノロ ロタ ATP 病気 すましじる 一番だし
【材料】(1人分)
  • 削り節(かつお、ぶり、いわし、あじ) 合計20g
  • 昆布    5cm×10cm 1枚
  • 日本酒(純米酒)   大さじ3
  • 塩    ひとつまみ
  • 醤油   小さじ1.5
  • 水    カップ2
かつお いわし あじ ぶり グルタミン酸 イノシン酸 ATP だし汁 おすまし アミノ酸スープ OS-1 経口補水液 熱中症 脱水 下痢 水分補給 暖かい飲み物 カリウム・カルシウム・ナトリウム・マグネシウムなどのミネラル ヒスチジン、タウリン、アンセリン、アラニン、カルノシン 細菌感染 ウイルス感染 吐き気 嘔吐 悪心 下痢 おなかを壊して食べられない時 食欲がない 夏バテ 熱中症 ノロ ロタ ATP 病気 すましじる 一番だし【作り方】
  1. 水2カップに昆布を1枚、30分以上浸す
  2. 1を火にかけ、沸騰する寸前に昆布を取り出す
  3. 2が沸騰したところに、削り節20gを入れ、火を止める
  4. 2~3分経ったら、削り節をこす
  5. 鍋に日本酒を入れてアルコールを飛ばす
  6. 4のこしただし汁を5の鍋に戻し入れて火にかけ、醤油、塩で味付けする

グルタミン酸 イノシン酸 ATP だし汁 おすまし アミノ酸スープ OS-1 経口補水液 熱中症 脱水 下痢 水分補給 暖かい飲み物 カリウム・カルシウム・ナトリウム・マグネシウムなどのミネラル ヒスチジン、タウリン、アンセリン、アラニン、カルノシン 細菌感染 ウイルス感染 吐き気 嘔吐 悪心 下痢 おなかを壊して食べられない時 食欲がない 夏バテ 熱中症 ノロ ロタ ATP 病気 すましじる 一番だし

削り節

使っているのは、はなかつおヤマヒデの業務用だし
ヤマビデの業務用だしの原材料は、「さばのふし、いわしの煮干し、むろあじのふし」と書かれています。

このように、4種類の魚の削り節を使うのには訳があります。
魚によって、含まれるアミノ酸が異なるためです。
細かい分析をした研究者がいて、結果が報告されていますので、詳細はこちらをご覧ください。


削り節、特に鰹節にはイノシン酸が豊富に含まれています。
イノシン酸は、細胞のエネルギー源となるATPの原料です。

感染症や病気になると、細胞がイノシン酸(イノシン一リン酸)を作り出すことができにくくなるので、エネルギー源であるATPが減ってしまい、細胞の元気がなくなると考えられます。

アミノ酸スープはこの点に効果的と考えられます。

ただし、突然具合が悪くなったときに何種類も削り節が揃えられなければ、鰹節だけでもOKです。

昆布

昆布にはグルタミン酸が豊富に含まれます。
昆布のグルタミン酸と、削り節のイノシン酸がそろうと、ヒトにはとてもおいしいと感じられるようです。

アミノ酸スープは経口補水液と何が違う?

脱水症状にOS-1のような経口補水液が勧められていますね。
この経口補水液にはいろいろ誤解があるようですが、それは別の機会に。

脱水症状に対して経口補水液の代わりにお勧めしたいのが、アミノ酸スープです。
OS-1よりずっと体に浸み込んでいくような気がします。

それに、OS-1より圧倒的においしい!

OS-1に含まれる成分は、下記の通り。
  • 糖類(ブドウ糖、果糖、コーンシロップ)
  • 食塩
  • 乳酸ナトリウム
  • 塩化カリウム
  • 乳酸
  • 硫酸マグネシウム
  • リン酸ナトリウム
  • グルタミン酸ナトリウム
  • 香料(一部にオレンジ由来の成分を含む)
  • 甘味料(スクラロース)

これらの中で、アミノ酸は、グルタミン酸ナトリウムだけです。
アミノ酸スープには、30種以上のアミノ酸が含まれています。
旨み成分として有名なイノシン酸も含まれます。
イノシン酸はアミノ酸の仲間ではなくて、核酸系の旨みで、うまみ調味料としても利用されます。

もちろん、ビタミンやミネラルも、OS-1よりたくさんの種類が含まれています。

カリウム・カルシウム・ナトリウム・マグネシウムなどのミネラルは、微量なのですが、体にとってなくてはならないものです。
たとえば熱中症では、汗をたくさんかいてしまうので、ナトリウムなどのミネラルが欠乏しがちです。

でも、ミネラルは、それだけでは、小腸から十分には吸収されません。
ミネラルは、アミノ酸やグルコース(ブドウ糖)と一緒に摂取することで効率よく吸収されます。

OS-1も、そのことを考えて、ミネラルを吸収しやすいように糖類や、グルタミン酸ナトリウムや、乳酸などの、アミノ酸の仲間を配合しているようですね。

でも、自然の素材を使ったこのアミノ酸スープは、さらにきめ細かいレシピになっています。
削り節にはたっぷりのアミノ酸、お酒には十分な糖類が入っています。
これらが、昆布と削り節の中の豊富なミネラルがしっかり吸収される手助けをしてくれるのです。

アミノ酸がお腹に優しい理由

では、アミノ酸は、なぜ、弱った胃腸に優しいのでしょうか?

アミノ酸は、タンパク質を構成する成分です。
タンパク質は、色々な種類のアミノ酸が立体的に連なった形をしています。
胃の消化酵素ペプシンや、膵液の中のトリプシン、キモトリプシン、ペプチダーゼ類でタンパク質が分解され、アミノ酸になって、小腸から吸収されます。

はじめからアミノ酸の形をしていれば、胃や膵臓に負担をかけずに、吸収することができます。

削り節では、発酵によって魚を構成するタンパク質がアミノ酸に分解されています。
ですから、これを煮出すことで、ヒスチジン、タウリン、アンセリン、アラニン、カルノシンをはじめとする、多くの種類のアミノ酸を抽出できます。
これらは、みんな何の消化酵素の助けも借りずに、消化管から吸収されるのですね。

ノロウイルス、ロタウイルス・・・感染性の胃腸炎にもアミノ酸スープ

なんだか理由のわからない胃腸炎ばかりでなく、細菌やウイルスの感染による胃腸炎のときにも、アミノ酸スープは活躍します。

病気に関するメディア情報を見ていると、「お腹を壊して嘔吐や下痢が続くときには水分補給を」といわれていますね。
でも、本当に何を食べてもすぐ吐き戻したり、下痢してしまうようなときは、胃腸に負担をかけてしまう分だけ、無理やり水分を摂るのはかえってよくありません。

もう少し待って、ちょっと口にできそうかな、と思ったくらいの時に飲むようにしてください。


熱中症にもアミノ酸スープ

アミノ酸スープは、熱中症対策にも有効です。

熱中症には冷たいものを飲んで体を冷やすのがいいと思われがちですが、それは間違いです。
体温以下の飲み物や食べ物は、胃で体温まで温まってから、はじめて、腸に送られます。
冷たいものは、そのままでは吸収されません。

ですから、いくら暑くても、冷たいものを多く摂るとかえって体力を消耗します。
覚えておくと、役に立ちますね。

夏バテしたなと思ったら、温かいアミノ酸スープを、ゆっくり飲んでみてください。
きっと、身体が喜んでくれます。

二日酔いにもアミノ酸スープ

アミノ酸スープの応用編「とき玉アミノ酸スープ」
レシピはこちら
二日酔いで気持ちが悪いときも、アミノ酸スープが活躍します。
脱水症状を改善することで効果を示しますので、たくさん飲むのがよいです。

また、二日酔いの状態では、肝臓が疲れているので、アミノ酸をたっぷり補給してあげれば肝臓の回復が早まります。

もし、飲みすぎて起きられないあなたに、愛情をこめてアミノ酸スープを作ってくれる人がいれば、お願いしてみてください。

二日酔いについては糖質制限で二日酔いから解放?をご覧ください。


2014年12月20日土曜日

砂糖入り飲料のリスク~テロメアが短縮?



エバーグリーン研究室でも、適度な糖質制限をおすすめしていますが、今日は、特に砂糖入りの飲料が身体に悪い決定的な研究報告がありましたので、紹介します。
この研究を理解するためにちょっと基礎知識を勉強しましょう。

テロメアの短縮で老化する

身体が成熟した後(つまり大人になった後)も、私たちの体は、必要に応じて細胞分裂して体を修復しています。
組織を構成する細胞が傷ついたり、寿命を迎えたりして、組織の細胞が欠落するとそれを補うわけですね。

この時に働くのがご存知の遺伝子DNAです。

遺伝子DNAは細胞の細胞核の中で普段は、立体的によじれるよううにして染色体の形をとっています。

テロメア、老化、アンチエイジング、細胞核、糖質制限、テロメラーゼ、砂糖、リスク、細胞分裂、細胞老化
コイルのようなDNA二重らせんの先っぽに濃いブルーと水色で書かれているのがテロメア。
細胞分裂が起こると二重らせんが紐解かれて、DNAのコピーを作るが、その際テロメアが短くなる。
短くなったテロメアを伸長させる酵素、テロメラーゼの働きが悪くなることが、老化の一因と考えられている。


ヒトでは46本ある染色体は、細胞分裂のときにほどかれて、コピーされます。

この染色体の4つの端っこにテロメアがついています。

コピーして複製されたDNAは端っこのテロメアがちょっとだけ短くなりますが、これを修復する酵素があって、のばされて元と同じ長さになります。

細胞分裂を繰り返すたびに、端っこのテロメアが短くなり、これを修復するわけですが、この修復が働きにくくなることが老化の1つの原因と考えられています。

砂糖入り炭酸飲料で、テロメアが短縮

今回の研究は、このテロメアの長さを、アメリカの20歳から65歳の成人5309人について調べました。
その結果、

  • 砂糖入りの炭酸飲料をよく飲む人は、白血球のテロメアがより短い


ことがわかりました。

100%のフルーツジュース、ダイエットソーダ、非炭酸の砂糖入り飲料(コーヒーや紅茶に砂糖を入れて飲むなど)を飲むことは、テロメアの長さと統計学的にあきらかな関連はありませんでした。

研究者は、砂糖入りの炭酸飲料を常飲することは、細胞を老化させてメタボリックシンドロームになりやすくすると結論しています。


砂糖入りの飲料のリスクを明らかにした研究はこのほかにもたくさんあります。

リスクとなる疾患も、2型糖尿病、高血圧、肥満、脳卒中、心疾患、癌などたくさんあります。

砂糖など糖類のリスクについては、下のページもご覧ください。
⇒ブドウ糖と果糖の毒性
⇒糖類の依存性
⇒糖類を食べるとおなかがすく?
⇒グルコーススパイクに注意
⇒糖毒性で糖尿病予備軍に??
⇒果糖はブドウ糖より危険
⇒インスリンは肥満ホルモン?!
⇒「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い

砂糖は味覚を変えてしまう

砂糖は味覚も変えてしまうようです。
こんな研究もあります。
Taste perception and implicit attitude toward sweet related to body mass index and soft drink supplementation

  • 肥満ないし太り過ぎの人は、正常体重の人に比べて、塩味や甘味の感受性が鈍く、より強い甘味を好むようになる

という研究です。

もともとは、砂糖の味を特に好きではなかった人が、1か月間、砂糖入りソフトドリンクを飲み続けた結果、砂糖への嗜好度合い(好んで摂取する)が2.3倍になりました。

このように、砂糖入りソフトドリンクを飲み続けると正常体重の人も味覚が鈍って甘味を好むように変化することが研究で示されました。

砂糖を規制しないのはなぜ?

では、このような砂糖の有害性を政府は規制していないのでしょうか?

アメリカではニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ前市長が中心となり、大きなサイズ(473ミリリットル以上)の砂糖入り炭酸飲料と砂糖入りコーヒーや紅茶などを映画館やファーストフード店、飲食店で販売することを禁止する条例をニューヨーク市が施行しようとしました。

しかし、米国飲料協会がこの条例は違法だとして提訴して、ニューヨーク市が敗れました。
ニューヨーク市は控訴し、再び敗れ、上告していて、いまだに決着がついていません。

また、カリフォルニア州では、砂糖入りの清涼飲料に、肥満、糖尿病、虫歯の警告表示を義務付ける法案が州議会に提出されましたが、2014年7月に僅差で廃案になりました。

食品・飲料・外食産業による圧力と、規制当局とのいたちごっこのようです。

一方で、カリフォルニア州では2005年に砂糖入り炭酸飲料やファーストフードを公立学校で販売することを規制しています。

また、イギリスの新しい学校での食事基準では、
  • 甘いものや揚げ物など脂肪分に富む食品は抑制
  • お菓子は禁止
  • 飲み物は水が基本
  • 飲料への砂糖や蜂蜜などを添加は全量の5%まで
  • フルーツジュースは150mLまでに制限
など、かなり厳しく糖質を制限しています。
Education Secretary Michael Gove announces a new set of standards for food served in schools.

自己責任で砂糖の誘惑と戦う


大人は、自己責任で健康管理をするしかなさそうです。
私たちに備わっている報酬系に自分で打ち勝たないと、われわれの欲望を、様々な方法で刺激し続ける、産業界の餌食になってしまいますよ。

日本人は欧米の人に比べれば、野菜をたくさん食べるし、甘すぎるお菓子は食べていないと感じられるかもしれませんね。
でも、私たちが子供のころお店で売っていたお菓子を思い出してください。
今、スーパーに並ぶラインナップがとがどれほど充実して、おいしく、魅力的になったことか。

行政が私たちの健康を考えて規制してくれていると思うのは大きな間違いです。
自己責任という言葉で行政はそれとなく言い訳しているのです。
産業界が稼いで税金を納めてくれなければ、行政は成り立ちませんからね。
私たちは、お金を払っておいしい思いをしたお釣りに、不健康をもらっているわけです。

とはいえ、やっぱりスイーツは食べたい!

産業界や行政に惑わされず、正しい知識を読み解く力を持って、健康で美味しい人生を送りましょう。

糖質を制限したレシピ、エバーグリーン研究室では れい 研究員がいろいろトライしています。
ご覧ください。

クッキー
低糖質チョコレートクッキー
低糖質アーモンドクッキー
低糖質ゴマクッキー
低糖質ジンジャークッキー
低糖質カシューナッツ アイスボックスクッキー
低糖質 ごまのビスコッティ
ケーキ
低糖質チョコレートブラウニー
低糖質クルミケーキ
低糖質バナナケーキ
低糖質リンゴ&ヨーグルトケーキ
低糖質小麦粉なし!リンゴケーキ
低糖質みかんケーキ
低糖質かぼちゃケーキ
サイリウムのお菓子
低糖質サイリウム黒豆大福
低糖質マンゴーババロア
豆乳ブラマンジェ
和菓子
低糖質サイリウム黒豆大福
低糖質黒豆羊羹
パン
低糖質大豆パン 
低糖質ごま大豆パン
低糖質チーズ大豆パン
低糖質ガーリック大豆パン
低糖質大豆&にんじんパン
低糖質ごぼう大豆パン
低糖質シナモンパン
低糖質シナモンロール
低糖質紅茶パン
低糖質ラズベリー&クリームチーズパン
低糖質 小麦粉なし!チョコパン
蒸しパン
低糖質チーズ蒸しパン
低糖質きなこ蒸しパン

よろしければ下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?
エナジードリンクは飲んでもOK?
加糖飲料の危険性が次々証明
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の恐ろしい結果、終末糖化産物(AGEs)とは?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備群!
糖毒性で糖尿病予備群に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い
全粒粉や玄米はなぜ体に良い?
高血糖の末路、終末糖化産物(AGEs)とは?
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

食べ物・栄養
食生活は進化の中で3回変わった
50歳超女性は夕食でタンパク50g
飲酒でボケが早まる!
砂糖入り飲料のリスク
おいしさの罠
米国マクドナルド が抗生物質与えた鶏肉の使用をやめる
食品のコレステロールは気にしなくてOK
エナジードリンクは飲んでもOK?
短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る
カメはなぜ長生きか?
早い、うまい、安いが身を滅ぼす
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

2014年10月9日木曜日

厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?

健康的な食生活とか、健康に良い食事、バランスの良い食事をとるべきだといろいろなメディアや人が言いますね。
でも健康的な食生活、バランスの良い食事って具体的にどんなものなのでしょうか?
そして、一般に言われている『健康的な食生活』、『バランスの良い食事』は本当に正しいのでしょうか?
今日はこのことについてご一緒に考えましょう。

日本で勧められている「バランスの良い食事」とは

実は、このページを書き始めたきっかけが、本日2014年 10月6日 15時23分掲載のNHKのNews Web【「健康な食事」コンビニ弁当などに専用マーク】というニュースを見たからです。
要約すると、

厚生労働省では、生活習慣病の予防や健康作のために、1食当たりに必要な栄養素の量を定めた基準を満たせばコンビニなどで販売される弁当などに専用のマークを付けることができる制度を来年度から始めることになった。

というものです。
コンビニのお弁当などに、このお弁当は、「健康な食事」ですよ!のマークがつき始めるということのようです。

そこで、このニュースの元となった、厚生労働省が実施している、

【日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会】

の議事録をみて、内容を確認してみました。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書を取りまとめました

今回の「健康な食事」の基準は、「厚生労働大臣が定める、健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準」として定められた【日本人の食事摂取基準(2015 年版)】に基づくもののようです。

この基準の中で気になることがあります。

下の表を見てください。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
エネルギーとなる栄養素の目標バランス(一日必要エネルギーの何%を占めるか)


この表は、1日に摂るべき栄養素のバランス(%)の目標値を示しています。

わかりやすいように元の表を少し編集していますが、要するに、1日に必要なエネルギーをどの栄養素でとるべきかの割合を%で示しています。

幅がありますが、1日のエネルギーの、13~20%はタンパク質で、20~30%は脂肪で、50~65%は炭水化物(糖質、食物繊維、アルコールも含む)で摂りなさいということです。

このバランスは別名、PFCバランスとも呼ばれます。
Pはタンパク質(protein)の頭文字、Fは脂肪(fat)、Cは炭水化物(carbohydrate)の頭文字からとっています。

では、具体的にどれくらいの量なのかを見てみましょう。

日常生活での身体の活動性が普通の30~49歳の男性で、必要な1日のエネルギーは、2650kcalとされています。
ちなみに同年齢層の女性は2000kcalですので、以下のお話の答えの数字に0.755を掛け算して読んでみてください。

身体活動が普通とは、デスクワーク中心の仕事だけれども、職場内での移動や立ってする作業・接客等、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツなどを合計2時間ほどしていて、1日30分歩行しているくらいの人です。

結構、仕事や家事で体を動かしてますね。

さて、上の割合を当てはめてみましょう。

まず、タンパク質の割合は全体のエネルギーの13~20%とされますので、仮に20%として、

2650kcal(1日の必要エネルギー)×0.2(20%)=530kcal

となります。

では、530kcalのタンパク質はどれ位の量かというと、
タンパク質は1gで4kcalのエネルギーを持っていますので、

530kcal(1日の必要エネルギーの20%)÷4(タンパク質は1gで4kcal)=132.5g

同じようにして、脂肪を30%として計算すると、
脂肪(1日の必要エネルギーの20%)は795kcalとなります。

脂肪は1gで9kcalのエネルギーを持っていますので、

795kcal(1日の必要エネルギーの30%)÷9(脂肪は1gで9kcal)=88g

さらに、炭水化物を50%として、
炭水化物(1日の必要エネルギーの50%)は1325kcalとなります。

炭水化物は1gで4kcalのエネルギーを持っていますので、

1325kcal(1日の必要エネルギーの50%)÷4(炭水化物は1gで4kcal)=331.25g


これらをまとめると

普通の30~49歳の人では、1日の必要エネルギーを、
おおよそ、タンパク質133g、脂肪88g、炭水化物332gの割合で摂ればよいとされているわけです。

鶏もも肉ロースト2枚とごはん6杯

もっとイメージしやすくするために、実際の食品に当てはめてみると、

タンパク質133gは、鶏もも肉のロースト540g分、小さめの鶏もも肉2枚分です。

上の鶏もも肉のローストにも脂肪が入っているので、鶏もも肉のロースト540gには、約71gの脂肪が含まれています。
脂肪88gに17g足りないですね。

炭水化物、332gは、ごはんにすると920gで、ごはん茶碗(150g)として、約6杯分です。
ここでは、単純化するため、食品を2つに絞って、調味料などの実際の食事のことを考慮していませんが…

2枚の鶏もも肉ローストとごはん6杯を1日で食べると聞いて、直観的にどう感じますか?
(女性では、鶏もも肉ロースト1枚半、ごはん4杯半を1日で…

ご飯が、炭水化物が多すぎると思いませんか?

糖質を制限している私からするとめまいがするような炭水化物の量です。

現在の日本の栄養学では、このバランスが推奨されているのです。

白米の過食が2型糖尿病の主な原因なのに?


私たちエバーグリーン研究室の見解では、この基準の勧める割合は、炭水化物が多すぎると考えます。

また、糖尿病患者への食事指導でも、1日の総エネルギーは抑えられますが、上に書いたPFCバランスの割合はだいたい同じ割合で指導されます。

糖尿病というのは、何らかの原因で、インスリンが出なくなったり、インスリンの働きが悪くなり、グルコース(ブドウ糖)を処理できなくなって血糖値が上がってしまう病気です。

それなのに、このような割合の炭水化物を摂ってしまって、大丈夫なのでしょうか?

実は、白米の過食がアジア地域(日本人と中国人)の2型糖尿病の主な原因であることは、明らかになっています。
White rice consumption and risk of type 2 diabetes:meta-analysis and systematic review

このことは、日本食の最大の欠点である主食の習慣とかかわっています。
詳しくは下のリンクで…。
主食の罠

厚生労働大臣お勧めの栄養バランスで糖尿病・糖尿病予備群が増えた?


さて、この疑問が残るPFCバランスを用いた栄養指導で、糖尿病や糖尿病予備群が増えてしまったと考えられる実例があります。

九州の福岡県の久山町という町でのことです。

実は、この久山町という地域では、地元の九州大学の医学部第二内科が中心となって、食生活や運動、飲酒、などの生活習慣と病気についての医学研究を1961年以来行い続けている地域です。

久山町に住む40歳以上の住民の大半は、手厚い健康管理と検診を定期的に受けて、継続して医学的データを提供しています。

この研究は久山町研究と呼ばれて、世界的に注目される研究結果をいくつも出してきました。

ところが、このように医師や栄養士による生活指導や食事指導をきちっと受けている地域で、なぜか糖尿病やその予備軍が増えてしまったのです。

図を見てください。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
久山町40歳以上男性の代謝性疾患の頻度の推移

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
久山町40歳以上女性の代謝性疾患の頻度の推移


上のグラフのように、肥満、高コレステロール血症、糖代謝異常(糖尿病と予備群)について1961年、1974年、1988年、2002年に調査した結果、1974年から1988年の14年間で、男性も女性も高コレステロール血症(赤の棒)と糖代謝異常(グリーンの棒)が非常に増えていました。

さらに詳しく、1988年と2002年の調査結果を比較すると、

男女とも、高コレステロール血症は増加はしませんでした。

これは、1974年から1988年の過去の14年間での高コレステロール血症の増加を重く見て、しっかりと、高コレステロール血症の予防と治療をした成果なのでしょう。

しかし、糖代謝異常(糖尿病とその予備軍)では、

男性では糖代謝異常(糖尿病とその予備軍)が39.3から54.5%に増加し、
女性では糖代謝異常(糖尿病とその予備軍)が30から35.5%に増えました。


高コレステロール血症と同じように、糖代謝異常にも、食事指導などの対策をしたにもかかわらず、大幅に増えました。

さらに、次のグラフを見てください。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
2002年の久山町40歳以上の住民と全国の糖尿病の割合の比較

このグラフは、2002年の久山町と全国の糖尿病(糖尿病の疑いが濃厚な人も含む)の割合を比較したものです。

青い棒が全国で、赤い棒が久山町です。

2002年の久山町の糖尿病の割合の男性23.6%、女性13.4%は、同じ年の日本人全体の糖尿病の割合の男性15.6%、女性8.1%と比べても多いという結果となってしまったのです。

なぜこんなことが起こるのでしょう?

下の表は、久山町住人の栄養素のバランス(%)を1965年、1985年、1994年、2004年に調査した結果です。

栄養素 バランス 目標 タンパク質 脂質 脂肪 炭水化物 PFCバランス 健康的な食事 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
久山町住人の栄養素のバランス(%)を1965年、1985年、1994年、2004年に調査

1965年は研究を始めて間もない時期でしたから、栄養の指導が十分行きわたっていなかったためか、タンパク質が少な目で、脂質も少なく、炭水化物が多めです。




1985年、1994年、2004年の結果では、研究が始まり医師や栄養士による栄養指導が行きわたっていたためか、タンパク質、脂質、炭水化物の全てで、栄養素のバランスの目標の範囲に見事入っています。

この事実からいえることは、現在の日本の栄養学や、糖尿病の専門家や、厚生労働省などが推奨している栄養法では、糖尿病とその予備軍が増えてしまうことになります。

繰り返しますが、私たちエバーグリーン研究室の見解では、このような久山町での事実を踏まえて、【日本人の食事摂取基準(2015年版)】や、糖尿病の食事指導などで勧められている、栄養素のバランスは、炭水化物が多すぎると考えます。
栄養指導をするのなら、少なくとも炭水化物を単純糖質(遊離糖質、単糖類、二糖類)と複合糖質、食物繊維に分けて考えることが最低限必要でしょう。

生活が便利になるほど、私たちは運動不足になっています。
久山町の1985年、1994年、2004年の結果からも明らかなように、糖尿病とその予備軍が時を経るほどに増えている事実からも、運動不足が加速され、そこに加えて、旧態依然とした炭水化物(主食文化=白米を好む)の多い食事指導をしたために、糖尿病とその予備軍が増加したのではないでしょうか?
実は、自家用車の普及率と2型糖尿病の増加も比例しています。
運動不足の現代の日本人では、食後直ちに血糖値を上げる単純糖質の多い食事を控え、代わりに努めて食物繊維を摂るように指導するべきでしょう。

最初のニュースの通り、コンビニで売られている「健康な食事」のマーク入りのお弁当が普及するのがちょっと怖い気がします。

あなたはどうお考えですか?

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い