いきいき!エバーグリーンラブ: 9月 2015

2015年9月27日日曜日

インフルエンザ*予防接種が効くのは小児では1~12歳


インフルエンザ予防接種がどのくらい効くのか、毎年話題になりますね。
2015年8月に、小児に対する効果についての研究結果が発表されたのでご紹介します。

小児に対するインフルエンザ予防接種の効果

試験期間
  • 2013年11月~2014年3月
試験実施機関
  • 慶応大学関連 22施設
対象
  • 生後6か月~15歳で、38℃以上の発熱があって受診した小児、4727名
試験方法
  • 38℃以上の発熱で来院した小児にインフルエンザ迅速診断キットを用いて診断を行い、インフルエンザ感染が認められた群と、認められなかった群とに分けて、予防接種の有無を確認した。
結果
  • 50%以上の発症予防効果は、A型に対して、1~12歳において認められた(1~2歳:72%、3~5歳:73%、6~12歳:58%)。
  • A型に対して、6~11か月および13~15歳では効果は認められなかった。
  • B型に対しては、いずれの年齢でも効果は認められなかった。
  • A(H1N1)に対する予防効果は、対象症例が少なかったが、1~12歳で認められた。
Shinjoh M, Sugaya N, Yamaguchi Y,TomidokoroY, Sekiguchi S, Mitamura K, et al. (2015) Effectivenessof Trivalent Inactivated Influenza Vaccinein Children Estimated by a Test Negative Case-ControlDesign Study Based on Influenza RapidDiagnostic Test Results. PLoSONE 10(8):e0136539.doi:10.1371/journal.pone.0136539 グラフ38℃以上の発熱で来院した小児にインフルエンザ迅速診断キットを用いて診断を行い、インフルエンザ感染が認められた群と、認められなかった群とに分けて、予防接種の有無を確認した。菅谷憲夫 2014年 95%CI(95%信頼区間)

図の読み方

【グラフ】
「感染なし」は、38℃以上の発熱で来院したけれど、検査の結果、インフルエンザに感染していなかった人の人数です。
これは、「A型」と「B型」のデータと比較するために示しています。

「感染なし」の「予防接種あり(ピンク)」の人数の割合が、「A型」や「B型」の「予防接種あり」の人数の割合と変わらなければ、「予防接種をしてもしなくても、同じだけの確率でインフルエンザに罹る」
ことを意味します。

例えば、「6~11か月のA型」のグラフを見てみると、水色が「33」で、ピンクは「6」です。
これは、「6~11か月でA型インフルエンザに罹った人は合計39人いて、そのうち、33人は予防接種を受けていなくて6人は受けていた」ということです。

【表(紫)】
例えば、6~11か月のA型は、「有効率(95%CI)」が「30%(-85%~74%)」です。

これは、生後6~11か月で38℃以上の発熱で来院し、検査の結果A型インフルエンザウイルスに感染していることが分かった人のうち、予防接種を受けた人と受けなかった人の割合を比較したら、受けた人の方が30%A型インフルエンザに罹りにくかった、ということです。

具体的に数で示すと、全体を100人と仮定すると
  • 予防接種を受けた人:7人が感染
  • 予防接種を受けなかった人:10人が感染
となります。

95%CI(95%信頼区間)が「-85~74」なので、
例えば、有効率が60%とは
どういうことかというと・・・
生後6~11か月の人が100人いたとして、95人の人は有効率が-85%~74%の範囲に入る
といえます。

「-85%」の有効率とは、
「予防接種を受けたほうが、85%インフルエンザに罹りやすい」
ことを示すことになってしまいますから、
「生後6~11か月の人が予防接種を受けても、特定の効果は期待できない」
といえるでしょう。

ひとことでまとめれば、この年齢では予防接種を受けても意味がない、と読み解けます。

有効率の計算の仕方についてはこちらをご覧ください。

6~11か月のB型の「NA」とは、「Not analyzed because few patients developed influenza.」、つまり、数が少なくて解析できなかったことを示しています。

この試験から考えられること

インフルエンザの予防接種は
  • 1~12歳では、受ける意味がありそうです。
  • 1歳までと、12~15歳では受けても受けなくても同じと考えられます。

この試験では、来院しなかった小児は対象に含まれません。
つまり、予防接種の有無にかかわらず、インフルエンザを発症しなかった小児は対象となっていません。

でも、症例数が多く、インフルエンザ感染群と非感染群を比較しているという点で、これまでに行われた試験の中では、確度の高いデータだと考えられます。

12~15歳で予防接種の有効性が認められなかった理由に関しては、研究者は「今後の検討課題である」と言っています。

で、予防接種を受けるべきかどうかというと

残念ながら、「ぜひ、受けるべきです」と自信を持ってお勧めするほどの効果は期待できません。
でも、1~12歳のお子さんは受ける価値はあります
これまでのデータを見ても、6割程度は効くようです。

私見ですが、1歳までの乳児は受けない方が良いと思います。
今回の試験で効果が認められなかったのは、1歳くらいにならないと免疫が発達しないことが理由ではないかと考えます。
ですから、副反応の可能性を考えると、むしろ受けない方が良いと思います。

1歳未満のお子さんのいる家庭では、家族が予防することが大切です。
特に、妊婦さんには、予防接種が勧められています。
インフルエンザ*妊娠したら予防接種を

12~15歳の方は「もし、受けていれば罹らなかったかもしれない」と後悔しそうな事情があれば、受けてよいと思います。

ただし、副反応の可能性など把握したうえで判断することが大切です。
詳細はこちらをご覧ください。
インフルエンザ*予防接種は受けた方がいい?

その他、インフルエンザについて
インフルエンザ*予防接種はいつ受ける?
インフルエンザ*予防接種は効くの?
インフルエンザ*予防接種がもう1つ効かない理由
インフルエンザ*妊娠したら予防接種を
インフルエンザ*予防接種は受けた方がいい?
インフルエンザ*脳症って?
インフルエンザ*細菌性肺炎対策
インフルエンザ*タミフルはどのくらい効くの?
インフルエンザ*タミフルで予防できる?
インフルエンザ*漢方薬で早めの対策
インフルエンザ*タミフルよりはリレンザ・イナビルが安心
インフルエンザ*予防接種が効くのは1歳から小学生まで

2015年9月18日金曜日

酵素健康食品のウソ

ローフード(加熱しない食べ物)などの食品やジュース、サプリメントで酵素をとれば、健康に良いといっている宣伝は数多くあります。

「酵素栄養学」などと呼んで、一見科学っぽく装っていますね。
他にも、どのような狙いがあるのかわかりませんが、「◎×酵素」などと発酵食品の健康食品にわざわざ「酵素」とネーミングした商品もあります。

このブログをお読みの皆さんは、酵素栄養学、酵素ダイエット、酵素ドリンク…などのキーワードに騙されない方々だと思いますが、酵素についておさらいしておきましょう。

酵素って何?

まず、酵素とはなんでしょうか?

私たち生物は、呼吸や食事によって外から物質を取り込んで、物質を自分たちに必要な形に変えて身体の部品としたり、物質の形を変えることでエネルギーを取り出したりしています。

物質が変化するとき、必ず化学反応が起こっています。
生きることは、この化学反応を常に行って行くことと言っても良いでしょう。

酵素は「触媒」

この化学反応を起こすための「触媒」が酵素です。

理科の授業を思い出してください。
過酸化水素水(プツプツ泡立つ透明な液体)に二酸化マンガン(黒い粉)を入れて酸素がでる実験をした方も多いのでは?
この反応では二酸化マンガンが触媒で、二酸化マンガンは変化しません。

触媒は化学反応の反応する速さや効率に作用する物質で、触媒自体は反応の前後で変化しないものです。

上の実験の触媒は、試験管の中で働いていますが、酵素は生物での化学反応で働く触媒なのです。

生物は、生きていくために必要な化学反応を効率よく行うために、必要に応じて触媒である酵素を作ります。

酵素は身体の活動すべてに関わっている

酵素というと、アミラーゼやペプシンといった消化酵素を思い浮かべる方も多いでしょうが、消化吸収だけでなく、排泄や、呼吸すること、身体を動かすこと、見ること、聞くこと、感じること、喜ぶこと、悲しむこと、考えることにも、化学反応が関わり、そこには必ず酵素が触媒として働いています。

実は生物の生命活動のほとんどすべてに酵素が関わっているといっても良いのです。

これらの酵素は、臓器や組織の細胞の膜や細胞の中(細胞質)、細胞核やミトコンドリアなどの細胞の小器官で必要な時に必要な分だけ作られて、それぞれ必要な化学反応を進めます。

消化管では

例えば胃や小腸などの消化管では、食べ物を消化(分解)する消化酵素(正しくは分解酵素)を消化管の中に分泌して、食べ物を消化する化学反応を起こさせます。

ミトコンドリアでは

細胞内のミトコンドリアでは、ブドウ糖などの栄養素からエネルギーを取り出すための化学反応が活発に起こっています。
その一連の化学反応を進めるのに10個の酵素が精密に関わっています。

このような酵素を代謝酵素と呼ぶこともあります。
酵素反応の模式図 酵素が触媒して化学反応して変化する物質を基質と呼ぶ。酵素反応には様々なものがあるが、ここでは、分解、生合成、修飾の反応を表した。図のように、酵素には、基質がぴったりと嵌るクラフトというくぼみがあり、そこに基質を導いて反応を進める。図のように反応の前後で基質は変化するが、酵素は変化せず、再利用される。イラスト
酵素反応の模式図

酵素が触媒し化学反応して変化する物質を基質と呼ぶ。
酵素反応には様々なものがあるが、ここでは、生合成、分解、修飾の反応を表した。

図のように、酵素には、基質がぴったりと嵌るクラフトというくぼみがあり、そこに基質を導いて反応を進める。
この仕組みにより、酵素が触媒する基質を選択していると考えられる。

図のように反応の前後で基質は変化するが、酵素は変化せず、再利用される。

また、通常は1つの反応に1つの専用の酵素が対応する。
酵素反応は、条件(温度やpHなど)によって矢印のどちらにも進めることができる。
これを可逆反応という。

酵素の多くはアミノ酸が立体的に結合したタンパク質である。
酵素のタンパク質の立体構造が熱、pH、塩分濃度などで変化すると酵素の作用が減弱したり、消失する(失活という)。

酵素は身体の中で作られるもの

「酵素栄養学」などでは、一生のうちで酵素が作られる量に限りがあり、酵素を浪費すると健康によくないので、酵素を食べ物や健康食品で補う必要があるとしていますが、酵素の作られる量に限りがあるかは解っていません。

それに、酵素は再利用されますし、ほとんどの酵素はタンパク質でできているので、外から摂っても消化されてしまい、酵素の形では吸収されません。

もし、酵素を食べて酵素の形で吸収され、酵素が働いてしまったら、余計な酵素となり、化学反応が進みすぎたり、起こるべきではないところで反応が進んだりして、身体にとって害になるでしょう。

ちなみに、ボツリヌス菌や破傷風菌、コレラ菌などが作り出す細菌毒の多くは、酵素です。

酵素はオーダーメード。

必要な場所で、必要なだけ作られる

例えば、胃に分泌されるタンパク質分解酵素のペプシンは、胃の粘膜の細胞の中では、ペプシンンに形を変える前のペプシノーゲンというタンパク質として作られています。
ペプシノーゲン自体は酵素として消化(分解)を触媒しません。
胃の中の酸によってペプシノーゲンがペプシンンに形を変えて初めて、酵素として働きます。
最初からペプシンとして作られてしまったら、胃の粘膜の細胞のタンパク質も分解してしまうでしょう。

このように酵素は適材適所でその状況と必要に応じて作られることが大切なのです。
食べ物やサプリで補えるような単純なものではないのです。

さらに、「酵素栄養学」などでは、消化酵素を服用して補えば、代謝酵素にその分のエネルギーを回せるので健康に良いといいますが、これも根拠が曖昧です。

外から消化酵素を補い続ければ、自分で酵素を生合成して分泌する能力が失われかねません。
生物は、使わないようになった身体の機能には無駄にエネルギーを使わないようにする特性を持っているからです。

発酵と酵素

よく誤解されているのは、発酵と酵素の関係です。

発酵とは

発酵とは、微生物を利用して、食品を製造することを言います。
発酵食品とは、イースト・麹や乳酸菌などの発酵菌(真菌・細菌)を使用して発酵させた食品です。

お酒やパン、ヨーグルト、チーズ、糠漬け、納豆など、みなさんおなじみですね。

発酵で発酵菌が作り出して利用するのも酵素です。

図 イラスト 米のでんぷんから麹菌と清酒酵母で日本酒を作る 酵素 アミラーゼ ピルビン酸デカルボキシラーゼ ブドウ糖
発酵で日本酒を作る仕組み

例えば、日本酒を作るとき


日本酒は、
①麹菌と呼ばれる発酵菌が、アミラーゼを作り、お米の中のでんぷんをブドウ糖に分解して、
②ブドウ糖を今度は清酒酵母という発酵菌がピルビン酸デカルボキシラーゼなどを使ってアルコールと二酸化炭素に分解して作ります。

日本酒は2種類の発酵菌を使って作られるのですね。

発酵で細菌はエネルギーを作っている

このように、発酵菌が生み出した酵素で発酵菌の食べ物を分解する化学反応を触媒して、このときに出るエネルギーを発酵菌自身が利用することが発酵なのです。

その結果できたもの(生成物)を我々は食品として利用しているわけです。

ちなみに、発酵菌が酵素を使って「発酵菌にとっての食物」を分解することで、人間がその生成物を利用できる場合を『発酵』と呼び、生成物の多くが毒性を持ち、人間が利用できない場合を『腐敗』というのです。

発酵食品は身体に良い?

発酵食品は体に良いといわれていますが、現時点ではこれも根拠が曖昧です。
ヨーグルトや味噌、漬物、納豆などの乳酸菌や麹菌、納豆菌が腸内菌叢を整えて、免疫力を増強させる可能性も指摘されていますが、科学的に十分には解明されていません。
人によっては、発酵食品が下痢や便秘の原因になることもあるようです。
発酵食品と腸内菌の関係については、充分な科学的な解明を待たないと、良いとも悪いとも言えません。

酵素については、あたかも発酵食品の中に入っている酵素が良さそうに思えますが、先ほどお話ししたように、発酵食品の中の酵素も、食べれば分解されますので、酵素としては吸収されません。

「酵素栄養学」などに基づいて「酵素が入っているから身体に良い」と宣伝する健康食品、サプリの類は、すべて信じない方がよさそうです。

2015年9月8日火曜日

全粒粉や玄米はなぜ体に良い?

健康に良いとされる食べものは、沢山ありますね。
食物繊維が豊富な野菜や全粒粉もその1つでしょう。

今の日本人の食生活では食物繊維が足りない、と言われて、努力して野菜ばかり食べたり、場合によっては食物繊維のサプリをお使いの方もいらっしゃるかもしれません。

食生活や運動習慣に気をつけて、実践して、いつまでも元気でいることはとても素敵なことです。
でも、情報を吟味しないで、そのまま鵜呑みにすると、せっかくの努力が無駄になりかねません。

食物繊維や全粒粉の効果的な利用方法

今日は、食物繊維や全粒粉のより効果的な利用方法についての研究を2つご紹介します。

1つ目の研究は、
2型糖尿病を予防するには食物繊維をどの食物(野菜、果物、穀物)からどのようにとればよいのかについての研究です。
 Matthias B. Schulze et al. Fiber and Magnesium Intake and Incidence of Type 2 Diabetes A Prospective Study and Meta-analysis. Arch Intern Med. 2007;167(9):956-965. doi:10.1001/archinte.167.9.956.

【研究の方法】

  • 健康な人の食生活を調べて、その後その人たちが2型糖尿病になったかどうかを追跡調査した研究をデータベースで検索して
  • そのなかで、食物繊維をどの食物(野菜、果物、穀物)からどれだけ摂っっていたかと、糖尿病の発病の関係を調べていた信頼性の高い研究を9つ選んで、まとめて統計学的に分析した。

【研究の結果】

  • 穀物から摂った食物繊維の量が多い人では、2型糖尿病の発病が予防できる。
  • 野菜や果物から摂った食物繊維の量が多い人では、2型糖尿病の発病が予防できない。

と分析できた。

いかがでしょう。

食物繊維を摂れば身体にいいという先入観がありませんか?

イラスト 全粒粉 小麦 胚芽 胚乳 穀物からの食物繊維が多いということは、パンであれば全粒粉などの精製度の低い小麦粉を使ったパンを多く食べていたということです。

全粒粉は絵のように、胚乳、胚芽、表皮(ふすま)を全部粉にしています。

胚乳には糖質が、ふすまには食物繊維が多く含まれます。
つまり、糖質を摂るときに、一緒に食物繊維を摂ることが大切なようです。

食物繊維を糖質と一緒にとれば、食物繊維が糖質の消化・吸収を遅らせて、血糖値の急激な上昇を抑える効果があると考えられます。

野菜や果物をたくさん食べて食物繊維を摂っても、2型糖尿病の予防の効果がみられなかったということは、野菜や果物を単独で食べても、糖質と一緒に摂らなければ食物繊維の血糖値への効果が発揮されないということです。

例えば、食物繊維を多くとろうと思って、サラダや温野菜だけをたくさん昼食で食べても、夕食に糖質の多い食事をして、同時に食物繊維を摂らなければ、1日の食物繊維の摂取量は増えるかもしれませんが、夕食時の急激な血糖上昇は防げないわけです。

この研究からわかることは、

  • 糖質を摂るときに食物繊維を一緒に摂るのが良い
  • 野菜や果物などを単独で多く食べても2型糖尿病の予防にはならない
  • 食物繊維のサプリメントを使うなら、食事と一緒に摂るのがよさそう

ということですね。

食品を加工しすぎるのは危険?!

次の研究は、同じ小麦粉でも、製粉の仕方によって血糖値の上がり方が変わるというものです。
⇒Cathrina H Edwards, et al. Manipulation of starch bioaccessibility in wheat endosperm to regulate starch digestion, postprandial glycemia, insulinemia, and gut hormone responses: a randomized controlled trial in healthy ileostomy participants. Am J Clin Nutr doi: 10.3945/ajcn.114.106203.

【研究の方法】

  • 研究の参加者は、ストーマ(お腹に便を排泄する人工的な排泄口)を持つ健康な9人。
  • 9人をランダムに、①2mmの粒子になるように小麦の胚乳を製粉した小麦粉(粗挽き)で作ったお粥、②0.2mmの粒子になるように製粉した小麦粉(普通の小麦粉)で作ったお粥を食べるグループに割り付けて、
  • 少なくとも1週間、お粥を食べてもらって、血糖値やインスリンの値を測定し、
  • そのあと、同じグループで①と②を入れ替えて1週間お粥を食べてもらって、血糖値やインスリンの値を測定しそれぞれ比較した。

【研究の結果】
粗挽き小麦粉のお粥を食べた人は、通常の小麦粉のお粥を食べた人に比べて、

  • 食後2時間以内の血糖値の上昇が33%抑えられた。
  • インスリンの分泌も43%抑えられた。
  • インスリンの過剰な分泌による「低血糖」の状態を起こすことも少なかった。
  • ストーマからの小腸の内容物を調べると、未吸収の小麦粉の大きな粒子が沢山残っていた。粒子が大きいほど天然の細胞壁の構造(食物繊維)がより多く残されていた。

【研究から考えられること】

  • 粗挽きも粗挽きでなくても、小麦粉の成分は全く同じなのに、粗挽きだとでんぷんの消化・吸収の速度が遅くなって、急激な血糖値の上昇を抑えられると考えられる。
  • 小麦は植物なので、細胞壁があり、でんぷんの周りを細胞壁=食物繊維で取り囲まれている。普通に挽かれた小麦粉は細胞壁=食物繊維が破壊されているため、でんぷんは速やかに消化されて糖類になり、吸収されて、血糖値が急速にあがる。
  • 天然の食物繊維の構造を破壊しないような製粉(製造法)によって、食後の血糖値の上昇を抑えることができそうだ。

いかがですか?

速い栄養にご注意

全粒粉、大豆、ふすまで作ったパン
製粉技術が未熟だった頃には、全粒でしかも粗挽きの小麦粉で焼いたパンなどを、ゆっくり噛んで食べていたでしょう。
玄米飯も噛んで飲み下すのに時間がかかります。

こうした食事では、消化に時間がかかるために、食後の急激な血糖値の上昇が抑えられると考えられます。
食後に急に血糖値が上がってしまうことをグルコーススパイクとか食後高血糖と呼び、動脈硬化などの原因になるとされます。
⇒グルコーススパイクに注意


砂糖や糖類や、みりんやケチャップなど糖類を含む調味料で味付けした食品、加糖飲料や、精製度の高い主食(白飯、パン)、粥、スムージー、麺類(うどん、中華麺、つなぎの多い日本蕎麦)、片栗粉や小麦粉でトロミをつけた料理や流動食などは、消化・吸収が速やかです。
同時にこれらの食品は柔らかく、喉ごしが良く呑み込みやすいものです。

私たちエバーグリーン研究室では、これらに多く含まれる、単純糖質(遊離糖質)を「効率の良すぎる速い栄養素」と呼んでいます。
⇒吸収が速い栄養素は老化を進める?

消化の手間がなく単純糖質を吸収できる食品・飲料や、加工・調理法が、血糖値上昇にとって危険であると言えるでしょう。

永い進化の歴史から見れば、「効率の良すぎる速い栄養素」がふんだんに食べられるようになったのはごく最近のことに過ぎません。
我々の身体と遺伝子は、「効率の良すぎる速い栄養素」にまだ対応できていないと考えます。
⇒短い期間でも、健康な食事でがんのリスクが減る

2015年9月3日木曜日

レシピ*黒ゴマ&豆乳ムース



ゴマと豆乳でムースを作りました。
生クリームを使わなくても、濾さなくても、ちゃんとムースらしい仕上がりになりました。
簡単でおいしいです。


【材料】
  • 黒ゴマ     35g
  • 豆乳      250mL 
  • ラカンカット  大さじ2
  • ゼラチン    5g
  • ごま油     小さじ1
  • 塩        ひとふり
  • 水(ゼラチン用) 大さじ2
【作り方】
  1. ゼラチンを水大匙2でふやかす。
  2. 黒ゴマをミキサーにかける
  3. 2に豆乳、ごま油、ラカンカット、塩ひとふりを加えて撹拌する
  4. 3を鍋に移してゼラチンを加え、火にかける
  5. 沸騰する寸前で火を止めてよく混ぜる
  6. 5を器に入れて冷ます
  7. 冷めたら冷蔵庫へ

生クリームの代わりにごま油を

ムースというと、ふつうは生クリームを加えますね。
生クリームには油脂がたくさん含まれるので、これがムースをふわっとした触感にしてくれます。

ここでは、代わりにごま油を補ってみました。

100gあたりのカロリーは次の通り。
文部科学省食品成分データベースより
  • 豆乳(成分無調整)  46kJ
  • 牛乳         67kJ
  • 生クリーム(動物性) 433kJ
  • 生クリーム(植物性) 392kJ
このレシピで使ったごま油のカロリーを計算して豆乳のカロリーに加えると、だいたい63kJになります。
牛乳と生クリームで作った場合と比べると、カロリーはずいぶん抑えられます。
(ごま油小さじ1は4.6g、ごま油のカロリーは100gあたり921kJ)

ラカントやパルスイートカロリーゼロも、同じように血糖値をあげません

砂糖と甘さは同じですが、比べるとさらっとして後味が残りません。
砂糖の味に慣れていると物足りなく感じるかもしれませんが、「しつこくなくてこっちのほうが好き」という方も少なくありません。
一度お試しください。