⇒りんご型肥満でおなかが炎症 |
また、内臓脂肪や異所性脂肪による過体重や肥満が万病の元であることもお伝えしています。
さらに、体重やBMIよりも、体重に占める筋肉の割合が大切であると考えています。
⇒体重・BMIより筋肉量が大事
⇒BMIが正常でも死亡率が上がる原因?
今日はこれらの考えを証明してくれる新研究が報告されましたので紹介します。
低い運動能力(低心肺フィットネス)はBMIとは独立して、腹部肥満と慢性炎症に関連する
Anne-Sophie Wedell-Neergaard et.al, Low fitness is associated with abdominaladiposity and low-grade inflammation independent of BMI【研究の目的】
肥満者の集団のうち30%程度までは、糖や脂質などの代謝に異常は認められない。
これらの太っているが代謝的に健康な人は、腹部(内臓)肥満がなく、炎症が少なく、メタボリックシンドロームが発症するような代謝異常が認められない。
そこでこの研究では、太っているが代謝的に健康な人は、持久力(心肺フィットネス)が高く、このことによって、腹部(内臓)肥満がなく、炎症が少なくなっていいるとの仮説を立て、それが正しいかどうかを検討した。
【研究方法】
デンマークで行なわれた調査である、The Danish Health Examination Survey 2007-2008のデータから10,976人について、
●腹囲(ウエスト周囲径)
●高感度CRP(高感度C反応性蛋白):炎症の指標
●持久力(自転車エルゴメーターによる心肺フィットネス能力測定:VO2max)
を測定し統計学的に比較・解析した。
【研究の結果】
●性別に関係なく、高い持久力(心肺フィットネス)は、腹囲(ウエスト周囲径)減少と関連し、この関連は、BMI、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められた。
●男性では、持久力(心肺フィットネス)の+5mL/kg/min上昇で腹囲(ウエスト周囲径)は-1.50 cmと減少 (95% 信頼区間: -1.62~ -1.39 cm、 統計学的に有意 p<0.001)し、炎症の指標の高感度CRPは -0.22mg/Lと減少した (95% 信頼区間: -0.255~-0.185mg/L、統計学的に有意 p<0.001)。
●女性では、持久力(心肺フィットネス)の+5mL/kg/min上昇で腹囲(ウエスト周囲径)が-1.26 cm と減少(95%信頼区間: -1.39 ~-1.13cm、統計学的に有意 p<0.001) し、炎症の指標の高感度CRPは -0.26mg/Lと減少した (95% 信頼区間: -0.3~-0.22mg/L、統計学的に有意 p<0.001)。
●大きい腹囲(ウエスト周囲径)は、炎症の指標の高感度CRPの高値と関連し、この関連は性別とBMIに関係なく認められた。
●+1 cm腹囲(ウエスト周囲径)が大きくなると、男性では高感度CRPが0.03mg/L 上昇し(95%信頼区間: 0.02~ 0.037 mg/L、統計学的に有意 p<0.001) 、女性では高感度CRPが0.025mg/L 上昇し(95%信頼区間: 0.017~0.034mg/L、統計学的に有意 p<0.001)、この関連は、BMI、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められた。
【結論】
持久力(心肺フィットネス)は、BMIとは独立して、腹部(内臓)肥満と慢性炎症と逆相関を認めた。
これらのデータは、BMIとは無関係に、持久力(心肺フィットネス)を向上させることで、腹部(内臓)肥満と慢性炎症を改善させることができることを示している。
持久力(心肺フィットネス)を向上させることで、腹部(内臓)肥満と慢性炎症を改善 |
運動能力が高い=持久力が高くミトコンドリアが元気
いかがですか。やはり、運動能力を高め、それを維持することが重要なのです。
運動能力が高い人は、当然、心肺機能が鍛えられていて持久力があり、運動習慣がありますので、同じ体重の肥満者よりも筋肉が多いことが予想できます。
恰幅が良くて、一見、太って見える人でも、健診で問題を指摘されないような元気な人がいますね。
こんな人に訊いてみると、たいていスポーツを趣味にしています。
そんな人は、スポーツで鍛えた強い心肺があり、体重やBMIは高くても、筋肉が豊富にあります。
体重やBMIの増加分が、脂肪よりも筋肉で占められている割合が高いと考えられます。
実際に、筋肉量が多いと、死亡する危険性(リスク)が低下するという報告もあるのです。
⇒体重・BMIより筋肉量が大事 |
同じ体重やBMIでも、それに占める割合が筋肉が多いのか、腹部(内臓)脂肪が多いのかで明暗を分けてしまうというわけです。
言うまでもなく、脂肪細胞は、脂肪をため込み過ぎると、炎症性のサイトカインなどを慢性的に放出する慢性炎症を引き起こします。
⇒脂肪細胞はパンパンに膨らみ、増えて、炎症! |
同じ体重なら、身体の構成として、脂肪ではなく筋肉を多めとすることが大切なのです。
さらに、腹囲(ウエスト周囲径)が増える原因は腹部の内臓脂肪の増加です。
内臓脂肪の蓄積は異所性脂肪とも呼ばれ、本来脂肪を貯める役割を持つ皮下脂肪以外の組織・臓器に脂肪をため込みます。
脂肪の収納場所の皮下脂肪以外にたまる脂肪なので、異所性脂肪と命名されたのです。
これが炎症を引き起こし代謝異常など様々な疾患の原因になると考えられています。
異所性脂肪が恐ろしいのは、軽くても長い時間にわたって炎症性のサイトカインなどが全身を炎症に陥れることです。
この慢性的な炎症が恐ろしいのです。
打撲や虫刺されなどによる炎症は、やがて治癒して、長い時間続くことはありません。
異所性脂肪による炎症は、減量して異所性脂肪をなくさない限り収まりません。
つまり、過体重や肥満であった期間=何年もにわたって炎症が続いてしまうのです。
上記の研究とは別の、5,115人を25年間追跡した最近の研究では、健康な成人で肺機能(呼吸機能)が急速に低下すると、メタボリックシンドロームを発症する危険性があることが分かりました。
これらの人は、胸腔内に内臓脂肪が蓄積していることが分かりました。
Moualla M et.al. Thorax. 2017 Dec;72(12):1113-1120. doi: 10.1136/thoraxjnl-2016-209125. Epub 2017 Jul 20.
運動不足や過食・過飲による影響は、腹部だけではなく全身の異所性脂肪となり、様々な病気の原因となるようです。
運動の仕方のコツ
また、上記の研究で注目すべきなのは、高い持久力(心肺フィットネス)による腹囲(ウエスト周囲径)減少効果は、BMIだけでなく、教育歴、喫煙・飲酒習慣、健康の自己評価に関係なく認められたことです。⇒ミトコンドリアの数で若さが決まる |
忘れてはならないのは、心肺が丈夫で持久力があり、筋肉が豊富ということは、我々に活力を与えてくれるミトコンドリアもたくさんいるということです。
ミトコンドリアがエネルギーを充電してくれるわけです。
運動は、心肺機能を高める有酸素運動と、ミトコンドリアを増やして活性化させる筋トレを並行して行うのがベストですね。