いきいき!エバーグリーンラブ: 習慣性
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2015年6月1日月曜日

睡眠薬でアルツハイマー型認知症になる?

不眠症の方、多いですね。
特に高齢者で昼間の活動量が少ない方は、なかなか眠れないことが多いようです。

不眠症については厚生労働省も対策をいろいろ考えています。
みんなのメンタルヘルス「睡眠障害」
e-ヘルスネット「不眠症」
わかりやすく書かれているので、不眠症対策についての解説は厚生労働省に譲ることにします。

高齢者が睡眠薬を使いすぎると認知症になる

ここでは、高齢者がベンゾジアゼピン系薬と呼ばれる睡眠薬を長い期間使うとアルツハイマー型認知症になりやすいというお話をします。

カナダで66歳以上の高齢者を対象にして行った調査の結果、3か月以上ベンゾジアゼピン系薬を使用した場合にアルツハイマー型認知症に罹りやすくなることがわかりました。

Benzodiazepine use and risk of Alzheimer’s disease: case-control study
BMJ 2014; 349 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g5205 (Published 09 September 2014)
Cite this as: BMJ 2014;349:g5205

【対象】
66歳以上のアルツハイマー型認知症患者群 1796名、対照群 8784名

【方法・結果1】
アルツハイマー型認知症患者群と対照群のそれぞれを
  1. 累積ベンゾジアゼピン系薬使用期間:3か月以下
  2. 累積ベンゾジアゼピン系薬使用期間:3~6か月
  3. 累積ベンゾジアゼピン系薬使用期間:6か月以上
の3群に分けて解析したところ、ベンゾジアゼピン系薬の使用はアルツハイマー型認知症のリスク上昇に関係することがわかりました。

具体的には、
  1. 累積ベンゾジアゼピン系薬使用期間:3か月以下群は、オッズ比1.09(統計学的にみると関連性なし)
  2. 累積ベンゾジアゼピン系薬使用期間:3~6か月群は、オッズ比1.31
  3. 累積ベンゾジアゼピン系薬使用期間:6か月以上群は、オッズ比1.84
オッズ比とは何かというと…
「オッズ比1」のとき、ベンゾジアゼピン系薬使用者と非使用者の認知症発症率が同じくらい、
オッズ比が1より大きければ大きいほど、ベンゾジアゼピン系薬使用者の方が認知症を発症しやすいことを意味します。

【方法・結果2】
さらに、ベンゾジアゼピン系薬の効いている時間の長さによる違いを見るために
  1. 短時間型ベンゾジアゼピン系薬使用者(半減期20時間未満)
  2. 長時間型ベンゾジアゼピン系薬使用者(半減期20時間以上)
の2群に分けたところ、
  1. 短時間型ベンゾジアゼピン系薬使用者では、オッズ比1.43
  2. 長時間型ベンゾジアゼピン系薬使用者では、オッズ比1.70
と、長時間型の方がアルツハイマー型認知症を発症しやすいという結果になりました。

ベンゾジアゼピン系薬の使用は、短期間に

ベンゾジアゼピン系薬では、高齢者でなくても、耐性や依存性が生じる危険があるために、短期間の使用にとどめるべきということは、以前から指摘されていました。

簡単にいうと、耐性とは、薬剤がだんだん効かなくなること、依存性とは、薬剤を止められなくなることです。

この試験の結果から、アルツハイマー型認知症になる危険性から考えても、ベンゾジアゼピン系薬は、長くとも3か月の使用にとどめるべき、ということが確認されました。

また、

どうしても使用を続けなくてはいけない場合は、短時間型が良い

ともいえますが、短時間型の薬剤は長時間型に比べて耐性・依存性が形成されやすいという傾向もあります。
主治医とよく相談する必要がありますね。

ベンゾジアゼピン系薬とは

ベンゾジアゼピン骨格
従来、ベンゾジアゼピン系薬とは、ベンゾジアゼピン骨格と呼ばれる化学構造をもつ薬を指します。
これらの薬が脳の神経細胞のベンゾジアゼピン受容体に作用すると、脳神経の活動を鈍らせるので、眠くなります。

新しいタイプの睡眠薬では、非ベンゾジアゼピン薬と呼ばれ、ベンゾジアゼピン骨格を持たないものもあります。
とはいっても、これらの薬の多くはベンゾジアゼピン受容体に作用します。
結局、脳神経の活動を低下させるという作用は同じなので、アルツハイマー型認知症になる危険性は同じと考えられます。

ベンゾジアゼピン系薬の作用

 ベンゾジアゼピン系薬がどのようにして眠くさせるのかについて、もう少し詳しく説明しましょう。

私たちの神経細胞は、細い線維でできています。
この線維にカリウムイオン(K+)やナトリウムイオン(Na+)などのプラスイオンが入ってくると、神経細胞は興奮した状態になります。
この興奮が伝わっていくことで、私たちが熱いと感じたり、喜んだり、怒ったりする情報が伝わります。


脳の中には、神経を休ませようとする物質があります。
γアミノ酪酸(GABA)といって、「ギャバ」とよばれています。


脳の神経は、たくさんの神経線維が複雑につながって、信号を送りあって、働いています。
ベンゾジアゼピン系薬の作用機序 神経終末 GABA受容体 イラスト 睡眠薬はどうして効くのか
脳の神経線維の端からGABAが放出されて
次の神経線維のGABAA受容体に作用すると
「お休みモード」の信号が伝わる
神経線維には、脳の活動を活発にしたりする、興奮性の神経と、活動を鎮静する抑制性の神経があります。

働きすぎてオーバーヒートしないように抑制性の神経線維はたくさん張り巡らされています。


この神経と神経の間には、隙間があって、この隙間にGABAが放出され、受け取る側の神経に「休め」の信号を送ります。

信号を受け取るのは、神経線維の末端にあるGABA受容体です。
GABA受容体には、GABAA受容体とGABAB受容体があり、ベンゾジアゼピン系薬が関係するのはGABAA受容体の方です。

ベンゾジアゼピン系薬の作用機序 神経終末 GABA受容体結合部位 イラスト 睡眠薬はどうして効くのか 睡眠障害 不眠症の薬の効き方 塩素イオン Cl-
GABAA受容体にGABAが作用すると、
塩素イオンが神経線維の中に入って
神経の興奮が抑えられる。
ベンゾジアゼピン系薬はこの作用を強める
GABAA受容体にGABAが作用すると、GABAA受容体の中心にある穴が開いて、ここからマイナスのイオンである塩素イオン(Cl-)が入っていきます。

さっき、「神経線維はプラスのイオンで興奮状態になって信号が伝わる」といいましたが、この塩素イオンが入ってくると、神経線維は興奮しにくい「お休みモード」になります。

ベンゾジアゼピン系薬は、GABAA受容体のGABAとは違った場所に作用します。
そうすると、GABAがGABAA受容体に作用した時に塩素イオンの通る穴が開きやすくなります。

そして、神経の「お休みモード」を増強します。


なんだか難しい話になりましたが、まとめると

私たちの脳は、このGABAが神経の先端にあるGABAA受容体に作用することで、休むことができるシステムになっていて、ベンゾジアゼピン系薬はその作用を助ける

ということです。

ベンゾジアゼピン受容体に働く睡眠薬

これらの薬を表にまとめました。
睡眠薬を使っている方がいらっしゃいましたら、この中に該当する薬がないかどうか、確認してみてください。
「睡眠薬」とは呼ばれず、「精神安定剤」や「抗うつ薬」として使われる薬も含まれます。

眠れない方の中には、不安が強いことが原因になっている方もいるので、医師の判断で使い分けているのですね。

ベンゾジアゼピン系受容体に作用する睡眠薬 作用時間 超短時間 トリアゾラム ハルシオン、トリアゾラム、アスコマーナ、ハルラック ゾピクロン アモバン、ゾピクロン、アモバンテス、 ドパリール、メトローム エスゾピクロン ルネスタ ゾルピデム酒石酸塩 マイスリー、ゾルピデム クロチアゼパム リーゼ、クロチアゼパム リルマザホン塩酸塩水和物 リスミー、リルマザホン 短時間 エチゾラム デパス、パルギン、エチゾラム、 セデコパン、デゾラム ブロチゾラム レンドルミン、ブロチゾラム、グッドミン、 ソレントミン ノクスタール、ネストローム、ブロメトン ロルメタゼパム エバミール、ロラメット アルプラゾラム ソラナックス、コンスタン アルプラゾラム、カームダン ブロマゼパム レキソタン、セニラン クロキサゾラム セパゾン 中間 ニメタゼパム エリミン フルニトラゼパム ロヒプノール、サイレース、 フルニトラゼパム、ビビットエース エスタゾラム ユーロジン、エスタゾラム ニトラゼパム ベンザリン、ネルボン、ニトラゼパム、 ネルロレン オキサゾラム セレナール、オキサゾラム フルジアゼパム エリスパン メキサゾラム メレックス ロフラゼプ酸エチル メイラックス、ロフラゼプ酸エチル、 ジメトックス フルトプラゼパム レスタス 長時間 フルラゼパム塩酸塩 ダルメート ハロキサゾラム ソメリン クアゼパム ドラール、クアゼパム

繰り返しますが、これらの薬を長く使うと、
  • 依存性がある
  • 耐性を生じやすい
  • 認知症になりやすい(高齢者)
と、よくないことがたくさん起こります。

日本老年医学会が発表した、高齢者は使わない方が良い薬のリストにもあげられています。

ただし、今この薬を使っているからと言って、いきなりやめてしまうのも危険です。
まず、
「この睡眠薬は長く使うとよくないと聞いたのですが、止めることはできますか?」
と、お医者さんに相談してみてください。

最近では違った作用を持つ睡眠薬も発売されています。
  • ロゼレム(一般名:ラメテオン)
  • ベルソムラ(一般名:スボレキサント)
どちらも、お医者さんに処方してもらう薬です。

どの睡眠薬が効くかは人によって違います。
薬を変えたいときにもお医者さんに今の症状や、昼寝をしていないか、運動をしているかなど、生活習慣をしっかり伝えるようにしてくださいね。

2015年4月2日木曜日

エナジードリンクは飲んでもOK?

ファイト!一発!!のリポビタンDに代表されるいわゆるエナジー(エネルギー)ドリンク(ドリンク剤、栄養剤)の飲みすぎで、健康に危険があると言われています。

日本人やアジア人は特に、エナジードリンクの愛飲者が多いようです。

エナジードリンクって?

エナジードリンクの定義はあいまいですが、肉体疲労時の栄養補給のための商品ということです。

リポビタンDのように、効能として、肉体疲労・病中病後・食欲不振・栄養障害・発熱性消耗性疾患などの場合の栄養補給、滋養強壮、虚弱体質などと表示できる商品は、第2類医薬品、第3類医薬品、医薬部外品(指定医薬部外品)などの指定を厚生労働省から受けていて、薬事法の規制下の製品です。

そのほか、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)としての製品もあるようです。
保健機能食品は認可された効能効果を表示てきます。

元気になりそうで、健康に良さげなイメージで売っているその他の商品は清涼飲料水、炭酸飲料として発売されいて、効能効果を表示できません。

海外でエナジードリンクが問題視された理由

エナジードリンクの問題がクローズアップされたのは、海外、特にアメリカで、カフェイン入りのエナジードリンクを小児や就学児が飲んで、健康被害にあった事例が複数出てきたためです。
アメリカ医師会は、小児や10歳代の青少年への販売を禁止するべきだと表明しました。

各国政府も、エナジードリンクへの規制や課税を強めていて、リトアニアでは未成年者へのエナジードリンク販売を禁止する法律が成立しています。

エナジードリンクに含まれる成分の中で危険性を懸念されている成分は、カフェインです。

カフェインには、中枢神経(脳)を興奮させることから、覚醒作用、強心作用、利尿作用などがあり、コーヒーなどのカフェインを多く含む飲料を飲むと体がシャキッとした気がします。
カフェインの副作用としては、動悸(心臓がバクバクする)、めまい、不眠などがあります。

エナジードリンクの成分

では、実際に売られている代表的なエナジードリンクの成分を見てみましょう。

エナジードリンク, エネルギードリンク, カフェイン, 習慣性, 耐性, 糖質, 糖質量, ナトリウム(塩分),
主なエナジードリンクの成分(組成)

いかがですか?
相当量のカフェインが入っている製品もあるようですね。
ちなみに、レッドブルは、100mL中32mgがカフェインなので、1缶250mLで80mgのカフェイン入りとなります。
参考に、レギュラーコーヒーにどのくらいのカフェインが含まれるかというと、250mLで90mgほどです。

調べた中で、一番カフェイン量が多いレッドブルでも、コーヒー1杯と変わらない…なら、安心だ…とはいかないようです。
これらのドリンクを常用される方の飲み方の中には、疲れているからと言って複数のエナジードリンクを1日に何度も飲んだり、薬局やドラッグストアなどで買い置きしたドリンク剤、栄養剤を2本まとめてグイッ!といく人もいるようです。
1回に飲むカフェイン量がコーヒー以下でも、1日に摂る量が多ければ、副作用が出ても不思議ではありません。

それに、コーヒーなどは、カフェイン飲料を飲んでいる自覚があり、何杯も飲んではいけないと自制が働きます。
一方、エナジードリンクは「元気になる」というメーカーのイメージ戦略に乗せられて身体に良いと思い込み、内容成分を気にして飲んでいる人は少ないようです。
医薬品なら、副作用を警戒しますが、エナジードリンクのお気軽さが、健康被害を引き寄せている気がします。

もう少し知っていただきたいのが、カフェインの習慣性と耐性です。
繰り返しカフェインをとっていると、カフェインなしではいられなくなり(習慣性)、また、カフェインの作用を得るために量がどんどん増えていってしまうのです(耐性)。
これは、アルコールと似ています。

私もそうですが、朝起きぬけのコーヒーが習慣化しているのも、カフェインの習慣性によるものでしょう。

エナジードリンクによる健康被害には、カフェインの習慣性と耐性も一役買っているでしょう。
また、エナジードリンクのメーカーも、これを利用して、リピーターを獲得しようとしているわけです。
消費者が自社製品に習慣化してくれれば、濡れ手に粟というところでしょうね。

エナジードリンクの糖質

さて、もう一度表をご覧ください。

エナジードリンクの成分には体によさげなビタミンなども入っていますが、カフェインのほかに注目すべきは糖質です。

どの製品もおおよそ100mL中10gほどの糖質が含まれています。

デカビタCは100mL中糖質(炭水化物)は13.2gですから、250mL瓶1本でなんと33g!
角砂糖にすれば8.25個です!!

エナジードリンク, エネルギードリンク, カフェイン, 習慣性, 耐性, 糖質, 糖質量, ナトリウム(塩分), 指定医薬部外品のリポビタンDですら、100mL中19gが糖質(白糖:砂糖=ブドウ糖+果糖)ですから、1本で、角砂糖4.75個です!!

コーヒーにお砂糖を入れて飲む人もいるでしょうが、角砂糖5個も8個も入れますか!

糖質制限していなくても、これらの飲み物の糖質には十分ご注意あれ。

最後に、減塩中の人では、ナトリウムの量も気になりますね。
エナジードリンクのナトリウムの量も、食塩に換算すればそれほど多くはありませんが、ちりも積もれば何とかです。

エナジードリンクに限らず、加工された食品や製品を購入すとるときは、せめて内容表示をよく見て、内容をよく吟味してから、納得して利用しましょう。

こんなにカフェインや糖が入っているなんて知らなかった…、とならないように…。

2015年3月17日火曜日

米国マクドナルド 抗生物質を与えた鶏肉の使用をやめる


現代文明社会の食べ物事情は、予想よりはるかに厳しいと思ったほうがよさそうです。

飽食の日本では実感しにくいかもしれませんが、世界的には、確実に食料不足の時代に入っていますし、スピードと収益性を重視する現代社会では、「早い」「安い」「うまい」が尊ばれ、ファーストフード、コンビニ、インスタント食品、ジャンクフード全盛の感じがします。

2015年3月5日 10時41分に掲載のNHK News Webで「米マクドナルド 抗生物質与えた鶏肉の使用中止」との報道がなされました(現在NHK元記事のリンクが切れていますのでマクドナルドのプレスリリースをリンクします)。

McDonald's USA Announces New Antibiotics Policy and Menu Sourcing Initiatives

概要は、
  • 世界的に販売不振のマクドナルドは、食の安全に対する消費者の関心にこたえるため、アメリカの店舗で、今後2年を目途に抗生物質(抗菌薬)を用いて飼育した鶏肉を扱わない方針を発表。
  • アメリカでは、家畜の病気予防と生産性向上のため家畜に抗生物質使用することは一般的で、その結果、抗生物質が効かない耐性菌が出現し、人間の健康にも影響を及ぼす危険性があると専門家が指摘している。
  • マクドナルドは、人工の成長ホルモンが与えられた牛から摂った牛乳についても扱わないことを明らかした。
  • これらの取り組みで、消費者に安全性をアピールし客離れの食い止めを図りたい。
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さらに、ロイターReutersによると、このマクドナルドの方針は養鶏業者に経済負担を増加させるといいます。
INSIGHT-Chicken growers set to pay price for no-antibiotic McNugget

概要は、
  • 抗菌薬を使用しないと飼育コストは3%ほど上昇する試算で、マクドナルドは世界最大の外食チェーンとしての購買力を盾に、コスト増加の負担を鶏肉供給会社に強いる、と多くアナリストが予測。
  • アメリカで4位の鶏肉会社Perdue Farmsはすでに2002年から抗菌薬の使用を控える取り組みを始め、同社の鶏の95%超はヒトに使用する抗菌薬なしで飼育されている。さらに、半数以上は抗菌薬が一切使われていない。
  • 抗菌薬を控える飼育によって、飼育場の増設、鶏の死亡率の上昇、ワクチン費の増大、飼育期間の延長などの負担が発生した。
今回は、あえて抗菌薬やホルモン剤入りの肉の健康被害については詳しく取り上げません。
こうしてみると、現代社会と食にまつわる問題の根深さが見えてくるように思います。

食品産業が「早い」「安い」「うまい」消費者ニーズを作った

消費者が仕事に追われ、時間に追われ、「早い」「安い」「うまい」を求めた結果、マクドナルドのようなファーストフードの売れ行きが上がったと思われがちですが、実は成り行きは反対です。
食品を作る企業が「早く」「安く」「うまい」製品を売り込み、消費者が宣伝に乗せられて、効率の良さをよしとする価値観が一般化していったのです。

食品産業が行ったのは、効率の良さの普及だけではありません。
より甘い食品、より脂分の多い食品、より塩分の多い食品を好むような嗜好も、食品業界によって研究され、普及しました。
おいしさの罠

抗菌薬、ホルモン剤はなぜよくない?

安さを追求する陰には、抗菌剤やホルモン剤を与えて家畜を育てる畜産業があります。
家畜の最大の敵は病気ですから、感染症にかからないように抗菌剤を与えます。
少しでも早く成長させ、肉の量を増やして食肉にしたり、たっぷりと搾乳するためにホルモン剤も与えます。

大量の抗菌剤を使った結果、家畜の中にその抗菌剤が効かなくなる耐性菌ができます。
また、これらの薬剤は家畜の中に蓄積して、その家畜を食べたヒトに取り込まれます。
知らず知らずのうちに、抗菌薬を取り込み、体内に耐性菌を作っている可能性もあります。

ホルモン剤は、EUを除いて、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで使用が認められていて、日本では国内での使用は禁止されていても、輸入肉のホルモン剤使用にはおとがめなし、という非常に矛盾した立場をとっています。
EUでは、1988年に成長促進を目的としてホルモン剤を牛に使用することを禁止し、1989年以来ホルモン剤を使用して飼育された食肉や乳製品の輸入を認めていません。
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ホルモン剤は乳癌などのホルモン依存性の癌の原因となっている懸念もあります。
日本での牛肉消費量の増加に伴って、ホルモン依存性癌の患者数が約5倍になったとする報告もあります。
半田 康ら. K3-4 牛肉および癌組織のエストロゲン濃度 : ホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生増加との関連(高得点演題6 腫瘍,高得点演題プログラム,第62回日本産科婦人科学会学術講演会).日本産科婦人科學會雜誌 62(2), 614, 2010-02-01

ホルモン剤の使用の是非については、アメリカ+オーストラリア+カナダ+ニュージーランドなどのホルモン承認諸国対EUで、激しい論戦を展開しています。
互いに、畜産、酪農は重要な輸出産業なので、市場の取り合いをしているわけです。
でも、この論戦はEUの言うことに理があるような気がします。
できれば生理的でないホルモン剤を含まないほうが安全でしょう。
冒頭のNHKの記事のリンク切れも、先日発効した日豪EPAと、交渉にもめているTPPとの兼ね合いの報道管制では?と疑いたくなりますね。

健康志向も食品産業の戦略に利用?

マクドナルドに追随して、早くて安くて旨い食べ物を売る企業が、どんどん出てきました。
市場を独占できなくなって、経営が苦しくなったマクドナルドは、今度は消費者の健康意識を利用し、抗菌薬やホルモン剤の使用をやめたと宣伝して、健康志向のイメージをつけようと考えたのではないかと想像できます。

なぜなら、中止すると発表されたのは鶏肉と牛の乳製品だけ。
本命のハンバーガーの牛肉には、相変わらず抗菌薬やホルモン剤が使われるようです
ホルモン剤, 抗菌薬, 抗生物質, 耐性菌, 発がん性, 依存, 報酬系, 文明, 糖質, 習慣性, 肥満, 脂肪, 食べ過ぎ, 食塩, 食欲, 食生活,

我々の立場で考えれば、多少なりとも怪しい薬が使われなくなることはありがたいことですが。
ただ、理解しておかなければいけないのは、私たちの味覚は、食品・外食産業の戦略によって変えられているということです。

確かに、簡単に食べられる便利な食品ができたことで、女性が社会に出ていくゆとりが生まれた、というように、我々は多くの恩恵を受けています。
忙しいときに、マクドナルドで済ませられるのは実にありがたく、うまく利用すればよいと思います。

ですが、これからは、お手軽な食べ物を目にしたら、そこには危険が潜んでいるということを思い出してください。
リスクを知りつつ「便利さ」「おいしさ」をうまく利用したいものです。

作られたおいしさに左右されない味覚を持とう

本来、食は生き物の生活の基本です。
大事な食事は、自ら食材を仕入れ、場合によっては飼育・栽培して、作って、おいしくいただくものでした。
忙しく、過剰な味のとりこになって、外食や加工食品をこんなに頻繁に利用しているライフスタイルが、消費者の健康を顧みずに利益を追求するこれらの産業・企業・規制当局の暴走を許したのではないのでしょうか?

多くの人が、本来、嗜好品やごちそうとしてたまに食べるものだった、甘味、高カロリー食(揚げ物、炒め物など)、加工食品などに慣れてしまいました。
それでなければ物足りなくなり、味覚もより味の濃いもの(塩、砂糖、油脂)に依存的になってしまっていると思います。
おいしさの罠

人間の味覚は、想像以上に簡単に変わります。
アメリカで食べられている、ショッキングピンクや紫や緑のケーキに違和感を持てるうちに、食品産業の企てに流されない確かな「味覚」を取り戻さないといけませんね。

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おいしさの罠

2015年1月24日土曜日

糖・脂質・塩~おいしさの罠

健康に良い食べ物、良くない食べ物のそれぞれの特徴はなんでしょうか?

子供のころ、母親にお菓子は控えて、野菜を沢山食べなさいと促された経験は誰しもお持ちと思います。


さて、このように皆さんがイメージする、健康に良い食べ物の典型が、ビタミンと食物繊維が豊富な「野菜」で、健康に悪い食べ物の典型が、味が濃い目のお菓子の類でしょう。

  • 健康に良い食べ物=あまりおいしくない、あまり箸が進まない
  • 良くない食べ物=とてもおいしく、癖になる

どうでしょう、みなさん同意なさるのでは?

行政の健康政策が成功しないのには理由がある

今日は、行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、なぜ、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しないのかを考察したドイツのキール大学での研究を紹介します。
⇒How to Combat the Unhealthy = Tasty Intuition: The Influencing Role of Health Consciousness
⇒Health consciousness: Do consumers believe healthy food always tastes bad?

この研究をした、キール大学のロバート・マイさんとステファン・ホフマンさんは、

「近年、健康的食生活が流行しているが、消費者は相変わらず健康に良くない食品を食べすぎている。原因は、健康に良くないものは、大抵おいしいもので、おいしいかどうかが、(消費者が)食べるものを選ぶ基準だからだ」
と書いています。

【研究テーマ】
  • 行政などの行う健康意識を向上させるキャンペーンが、肥満やそれに伴う病気の防止に成功しない理由は?

【研究の結果、わかったこと】
  • この研究の参加者に、砂糖と脂肪の含まれる量が違うヨーグルトを与えて、どのヨーグルトを選ぶかを観察したところ、含まれる成分が健康に良いという情報があったからといって、健康的なヨーグルトを選ぶとは限らなかった。
  • 健康志向が全くない人は、健康情報にも全く興味がないので、含まれる成分が健康に良いという情報も効果がない。
  • ある食品が健康に良いものだという情報が与えられると健康志向の人たちは少しは食習慣を変えるが、健康志向のない人たちは、情報の量に関わらず、健康的なヨーグルトにおいしいものはないと信じている。
  • これらのことから、おいしいかどうかが、健康志向の人にとっても、そうでない人にとっても食品を選ぶとき重視されて、キャンペーンで健康意識を高めたからといって、簡単にこれを乗り越えられるものではない。
研究者たちは、

  • 「行政機関は、商品の包装表示や食品会社のマーケティングを改善させるだけでなく、味そのものも改善し、また、健康的な食事をすることが、粋で“クール”と消費者が思えるような、消費者の感情に訴える社会活動に資金援助するなどの、これまでとは違う健康的食品の宣伝方法を考えるべきである」
  • 「世界的に流行する肥満を抑えるためには、食品会社、消費者、行政が互いに足を引っ張り合うのをやめ、みなにとってメリットのある方法を見つけ、全体的にアプローチすることが早急に必要だ」

と結論しています。
皆さんはいかがお考えでしょう。

おいしさは砂糖・脂肪・食塩で決まる

この研究で用いられたヨーグルトでは、ヨーグルトに含まれる砂糖と脂肪がおいしさのポイントのようですが、実は、食品の味付けのキーポイントとなるのは、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」であり、これは、食品業界では常識のようです。

おいしくて癖になる食べ物の代表選手、ポテトチップスを思い出してください。
まさに、「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」の塊です。

ほかにも、たとえば、ハンバーガーのソースはケチャップの甘さにマヨネーズの油っぽさにそれぞれの調味料中の食塩のしょっぱさがハーモニーとなっています。
天ぷらでも同じです、衣の油に、甘辛い天つゆがよく合いますよね。

この「砂糖=甘さ」「脂肪=油っぽいコク」「食塩=しょっぱさ」を味付けの基本にして、ほかの風味を加えて、加工食品は開発されています。
これらを基本に消費者が癖になる味付けを日夜研究しているのです。

『フードトラップ』が明かす食品業界の罠

ここで、一冊の本を紹介したいと思います。

マイケル モス 著、 本間 徳子 訳 日経BP社刊
「フードトラップ-食品に仕掛けられた至福の罠」

砂糖・脂肪・塩の習慣性を利用したビジネス

この本の原題は写真の表紙にもあるように“Salt, Sugar,Fat”でまさに、塩、砂糖、脂肪です。

この本は、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性(癖になる)を巧みに利用した、加工食品や清涼飲料水、菓子などを問題視して警告を鳴らしています。

この中にも繰り返し、「砂糖」「脂肪」「塩」のもつ習慣性と危険性が登場します。
それらが、食品会社の研究所で研究しつくされている様子がわかります。

アメリカの食品会社が、1980年代以降、消費者が癖になる「砂糖」「脂肪」「塩」を多く含んだ商品を次々に開発して、売り上げを伸ばし、株主の要求に答えていく様子やこれらの商品が肥満や虫歯などを増加させ、ひいては病気の原因となっていることへの、医療従事者や、研究者などからの批判を企業がうまくすり抜ける様子もかかれています。

ビジネスの根底にある文明社会が生み出した欲望

しかし、著者は、一方的に食品会社の「悪」を暴くという論調ではありません。
資本主義と企業間競争、株主への配当、消費者の嗜好と欲望、欲望を利用するマーケティング・メディア、規制当局と企業の駆け引き、農業などの産業と企業と政治など、現代文明社会全体の問題としてとらえているところが真摯さを持っていると思います。

私たちは、改めて、「おいしさ」などの自分の欲望がどのようなものかを考えなければなりません。

少なくとも、味覚と嗅覚が作り出す「おいしさ」は、それをもたらす、糖質、脂肪、塩分などが、人類の歩んだ歴史の中で、長らく得難いものであったからこそ、発達した感覚であることは間違いないことです。

砂糖・脂肪・塩の必要性から「嗜好」が生まれた

私たちは、塩分がなければ、生きていけません。
山間地域では昔から塩は貴重品でした。

脂肪

脂肪は苦労して得た獲物にほんの少し含まれるものでした。
野生の獲物は、家畜と違い脂肪は少ないのです。

搾油技術が発達したのも長い歴史の中でごく最近のことですので、食用植物油は存在しませんでした。

糖類

糖類の精製技術の完成も、同様に長い歴史の中でごく最近のことですので、私たちの祖先は精製されていない炭水化物のほんのりした甘味を感じる能力を時間をかけて発達させました。
ご飯を口にいれて、長く噛むと甘みを感じる実験を経験した方も多いと思います。
これは、ヒトは唾液の中にアミラーゼという消化酵素があるからこそ味わえます。

哺乳類の中で、唾液にアミラーゼを含む種はごく少数です。
たまたま、アミラーゼを分泌する能力を持った種が、ドングリやナッツ、根菜や球根、未精製の穀物の中の糖質を甘いと感じるようになった。
これらの種は、好んで穀物を多く食べたことで、厳しい環境を生き残った。
さらに、火による調理により、糖質を脳の効率の良い栄養素として充分に使えるようになり、人類は脳を発達させることができたと考えられます。

生き残るための報酬系が仇に

報酬が与えられたときに快感を感じるように働く脳のシステムを報酬系といいます。
私たちの味覚・嗅覚のもたらす「おいしさ」は、まさに報酬系が働いた結果得られる快感です。
貴重な栄養素を感知して、それを摂取させるように長い年月をかけて脳が鍛えられてきたといえます。

いいかえれば、「おいしさ」などの欲望は、報酬系の挙動に過ぎません。
欲望を満たすことが「良いこと」と脳に思い込まされているということです。

このように私たちの祖先が、長い時間を経て環境に適応して、安定的に栄養素を獲得できる遺伝子を獲得するうちに、やがて人類となり、厳しい天候をしのぐため、捕食者から逃れ逆にそれを狩るため、飢えを克服するため、火の利用の発明、道具の創意、被服の発明、定住・農耕などを始めとする文明を発達させてきました。
それは、ある意味では、素晴らしい人類の英知の結晶でしょう。

一方で、私たちの英知は、最も基本的な生き物としての自分の身体について、まだ何も理解していないとも言えるでしょう。

生物学的新文明社会を目指す 

私たちの身体は、飽食とほど遠い環境=飢餓を生き抜いてきた遺伝子で設計されています。
欲望をもたらす報酬系の機能は、現代文明社会の飽食に対応したものではありません。

欲望という、古いシステムに騙され、欲望に頼り、それを経済活動などの社会の営みに利用する悪循環をどこかで断ち切らない限り、先に紹介したキール大学の研究者達のいうような、新しい社会システムを作ることはできないと思います。

自然の流れに従って進化を遂げてきた報酬系による欲望を、満たすことで文明が進歩したことも事実です。
でも、欲望をどんどん満たせば、古い遺伝子しか持たない私たちの体はその早い食性の変化についていけずに病気になる。
これに打ち勝つには、欲望に流されない確かな意志で、消費に頼らない新たな価値観、新たなおいしさを創造していくことが大切と思います。

生物の仕組みを理解した、新しい文明社会を目指す必要がありそうです。

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2014年5月17日土曜日

お酒と糖類の依存性

「酒は百薬の長」は本当でしょうか?


冬の熱燗、夏のビール、お酒がおいしいシーンは多いですよね。また、お酒が持つ作用で、楽しくなったり、リラックスできたり、メリットもあります。
でも、お酒の飲みすぎで二日酔いになったり、長期に大量に飲酒すると肝臓病や膵炎、喉頭がん、食道がんや大腸がんになったり、デメリットも多いようです。

アルコールと糖は似た化学構造


糖とアルコールの化学構造

ここでも、ちょっとお酒を化学的に見てみましょう。
お酒の主成分はエチルアルコールです。
私たちが普段「アルコール」と呼んでいるのは、「エチルアルコール」のことです。
上の図を見ると、アルコールも果糖やブドウ糖も同じ形を持っているのが分かります。
エチルアルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに変えられます。
上の図の青とピンクで囲った部分に注目です。
青い部分のC-OHはアルコール性水酸基といって、条件がそろえば簡単にピンクで囲った部分のH-C=Oの形に変換されます。
H-C=Oの形はアルデヒド基といって、酸化されやすく(還元性があるともいう)、ほかのものと反応しやすい性質をもっています。
そのために、体に吸収されると、体の構成成分であるDNAやタンパク質と結びつきやすい性質があります。
糖がくっつくので「糖化」と呼びます。
糖化されるということは、余計なものが結合(付加体産生)するのですから、DNAやタンパク質は正常に働けなくなります。
これがアルデヒドの毒性です。
AGE(エージーイー)って聞いたことがありませんか?
タンパク質に糖が結合(「糖によるタンパク質の糖化」といいます)したもので、老化物質とされています。

話がそれました。
アルコールからできるアセトアルデヒドが悪者だというところから仕切り直します。
アセトアルデヒドができたことを察知すると、肝臓は2型アルデヒド脱水素酵素を使って、アセトアルデヒドを毒性の低い酢酸の形にしてから、血中に放出します。
酢酸は皆さんご存知の「お酢」で、毒性はありません。

このように栄養や成分の形を体内で変えることとを代謝といいます。
飲んだアルコールの量が多いと、どんなに肝臓ががんばって働いても代謝が追いつかなくなります。
そうなるとアセトアルデヒドを酢酸の形にしきれずに、血中にアセトアルデヒドが出てきてしまいます。
アセトアルデヒドの血中濃度が高いと顔が赤くなり、頭痛、吐き気、嘔吐などの中毒症状がでます。
そう、これが二日酔いです。
糖と同様に、アルコールも取りすぎるとよくないようです。

依存性・習慣性=アルコールと糖の怖い共通点

アルコール依存症(中毒)という病気があります。
お酒を飲まずにいられなくなる病気です。
怖いですよね。

アルコールと糖には、
摂らないでいることができなくなる=依存性
繰り返し摂りたくなる=習慣性
という点が共通しています。

誰でも褒められると嬉しくて、また次も頑張ろうと思いますよね。
これは脳の「報酬系」と呼ばれる神経回路が働くためです。
もう少し詳しくお話しすると、脳の報酬系が刺激されると、快楽物質と呼ばれるドパミンが脳内に放出されます。
このドパミンこそ、「気もちよい」と感じさせる物質。
ドパミンは他にも、達成感、やる気、集中力を高める作用を持っています。
アルコールも糖も、吸収されて脳に入ると脳のこの回路を刺激してドパミンを放出させる作用を持っているので、脳は心地よさ、楽しさを感じます。
お酒で楽しくなったり、気が大きくなったりするのもドパミンのこの作用です。
脳と報酬系では、ドパミンによる快楽を得るために、ドパミンを放出させるものをさらに、繰り返し求める性質があります。
これが依存性・習慣性の原因です。
このような、「報酬系」よる欲望の仕組みは、生物の進化の歴史上で、生物が常に飢餓と欠乏に見舞われていたために獲得した性質です。
これらの仕組みを理解して節制しないと、脳が発する際限ない欲望に負けて、必ず健康を損なうことを覚えておいてください。

さらに、アルコールにも、糖にも、耐性といってだんだん欲しがる量が増えてゆく共通点もあります。
同じ刺激を繰り返し受けているうちに、慣れてしまい、もっと欲しくなるのですね。

お酒は毎日飲んでいると、肝臓のアルコールを代謝させる酵素が多くなって、だんだんお酒に強くなり、同じ酒量では酔いにくくなり酒量が増えてゆきます。
糖類が入った甘いものでも、同様です。甘いものをちょっとだけ食べると、もっと食べたいと思いませんか。
そして、今食べたスイーツより、さらに甘いスイーツを求めて、量も甘さも増えてゆくことが多いはずです。

まとめると、
糖類とアルコールには

○依存性(中毒性)・習慣性があり、摂らないでいることができなくなる
○繰り返し摂りたくなる
○だんだん満足するために必要な量が増えていく

という怖い性質があります。

アルコールの場合は、飲みすぎれば二日酔いになったり下痢をしたりして、アルコールの毒性を自覚してブレーキがかかりやすいですが、糖類は甘くおいしいだけで、短期的には毒性を自覚しにくいので、より危険だとも言えますね。
そして、時間をかけて太っていくのです・・・。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
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果糖はブドウ糖より危険
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