いきいき!エバーグリーンラブ: 安全性
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2018年3月25日日曜日

花粉症に使って問題ない市販の点鼻スプレー

「花粉症に市販の点鼻スプレーを使うと、かえって悪化することがある」という話、聞いたことがあるかと思います。
何故、病院で処方される点鼻スプレーは問題ないのに、市販の点鼻スプレーはよくないのでしょうか?

市販の点鼻スプレーを使わない方が良い理由

その理由は、市販の点鼻スプレーには、血管収縮薬が入っているものが多いからです。
血管収縮薬とは、血管平滑筋という血管を取り囲む筋肉をコントロールする神経(交感神経)に作用して、血管を収縮させる薬です。
花粉症では、鼻の毛細血管が充血することで鼻粘膜が腫れて鼻詰まりを起こしています。
また、充血した鼻の毛細血管からは、水分もしみ出してきます。
これらを抑えることで、血管収縮薬は、鼻の症状を改善します。
即効性があるので効果を感じやすく、また、値段も安いので市販の点鼻スプレーに多く使われています。

しかし、血管収縮薬には、繰り返し使うと、効果が切れた後、使用前よりも血管がさらに拡張して症状が悪化する、という欠点があります。
そのため、病院では血管収縮薬の点鼻スプレーはめったに処方されません。
(安易に血管収縮薬の点鼻スプレーを処方する医師がいたとしたら、信用しない方が賢明です。)

有効な点鼻スプレーを選びましょう

市販の点鼻スプレーがすべてダメかというと、そんなことはありません。
血管収縮薬を含まない点鼻スプレーも、お店で売っています。
主な商品は、表のとおりです。
色々なメーカーから発売されていますが、成分は2つ。
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(ステロイド)と、ケトチフェンフマル酸塩(抗アレルギー薬)です。
"ベクロメタゾン プロピオン酸 エステル" エージーアレルカットEX  ナザールAR  ナザールαAR  ナザールαAR0.1%  コンタック鼻炎スプレー  パブロン鼻炎アタック "ケトチフェン フマル酸塩" ザジテンAL点鼻スプレーα(クール)  ジキナ鼻炎スプレー  タイヨー鼻炎スプレーZ  ナフトレチン  雪の元点鼻スプレーFA一 覧表

ベクロメタゾンプロピオン酸エステル

ステロイド薬です。
鼻粘膜の炎症を強力に抑えます。
特に、抗アレルギー薬が効きにくい鼻づまりに よく効きます。

ステロイドというと副作用が気になるという方もいるかと思いますが、鼻の粘膜から吸収されて局所で作用するので、血液中にはほとんど移行しません。
医療用医薬品でも、ステロイドの点鼻スプレーは、『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2016 年版』で、重症度を問わず使用が勧められています。

副作用も鼻局所のものがほとんどで、鼻内刺激感、鼻内異物感、鼻閉感、嗅覚異常などがまれにみられる程度です。
鼻水に血が混じってしまうような方は、鼻の外側に向かって噴霧すると良いようです。

市販の点鼻スプレーに使われているステロイドは、どれも同じ成分ですが、製品によって濃度が異なります。
100g中0.1gの製品は、医療用医薬品のリノコートパウダースプレー鼻用25μgと同じ成分・同じ濃度です。

1日最大4回まで使えますが、3時間以上、間隔をあけるようにしてください。
続けて2回使ったからといって、効果が2倍になることはありません。

添付文書には、「1年に1か月以上使わないように」 と書かれています。
このように言われると、強い薬で、きつい副作用が起こるのではないかと心配になりますね。

これは、他の治療が必要な人が、ステロイドで症状が治まっているために気付かずに使用し続けてしまうことを懸念した注意書きです。
正しく使えていれば、もっと長く継続しても問題ありません。

医療用医薬品の点鼻スプレーを継続して使うことについては、「副作用の心配はない」と、日本耳鼻咽喉科学会のホームページにも記載されています。
ただし、メーカーが心配するように、他の病気が隠れていることや、他にもっと適した治療がある可能性があるので・・・実際に、そのようなケースはかなり頻繁にあります・・・1か月以上使い続けるときには、耳鼻咽喉科を受診した方が安心でしょう。

ケトチフェンフマル酸塩

抗アレルギー薬です。
ヒスタミンをはじめとする炎症を起こす物質を抑えることで鼻水を止めます。
ステロイド薬ほどではありませんが、鼻づまりにも効果があります。

アレグラFXやアレジオン10・20など、よく効く市販の内服薬の仲間です。
内服薬では眠気が出る可能性がありますが、点鼻スプレーでは眠くなることはありません。

抗アレルギー薬の点鼻スプレーは、どの製品でも同じ濃度の同じ成分が含まれます。
継続して使う日数についても、注意事項は示されていません。


点鼻スプレーをうまく使いましょう

ドラッグストアで売られている点鼻スプレーの中で、これらの薬は比較的お値段が高めです。
しかし、そでだけの価値は十分にあります。
症状のひどい方は、花粉が飛び始める前から継続して薬を使うと、症状が軽減されるというデータもあります。
今日は花粉が飛んでいないな、と思われる日にも、必ず使うのがよいでしょう。

内服薬は全身に作用してしまうので、眠気をはじめ、思わぬ副作用が出る可能性が否定できませんが、点鼻スプレーにはその心配がありません。
病院に行く暇のない方・・・特に鼻づまりでお困りの方は、内服薬を買う前に、まず、これらの点鼻スプレーを試してみることをお勧めします。

ベクロメタゾンプロピオン酸エステルの点鼻スプレーとケトチフェンフマル酸塩の点鼻スプレーを両方使っても構いません。

点鼻スプレーが効かない方は

鼻水が多すぎてスプレーしてもすぐに流れ出してしまうという方は、お風呂上がりの鼻が通るタイミングに使うのが良いようです。

1週間くらい継続して使ってもよくならない方は、使い方が間違っているかもしれないので、薬局やドラッグストアに行って、相談してください。

症状がひどければ、これらの点鼻スプレーだけでは効きません。
点眼薬や内服薬を一緒に使う必要があります。
点眼薬も内服薬も、ドラッグストアで山になって売られていますが、これらのなかにも、使い続けるとかえって症状を悪化させるものがたくさんあります。
重症な方は、やはり病院にかかられるのが賢明かと思います。
経済的にも、その方がお得です。

2015年4月7日火曜日

高齢者は使わない方がいい薬

年をとれば誰でも故障は多くなるもの。
血圧が高くなれば降圧薬を、腰が痛ければ鎮痛薬を、眠れなければ睡眠薬を、加えて便秘薬、胃薬、目薬、骨粗鬆症の薬・・・・悪くなったところを薬でカバーすればいい、そんな風に思っていませんか?
でも実は、そんなに単純じゃないんです。

一緒に使うと副作用が出やすくなる薬があることはよく知られていますね。
それだけでなく、胃の薬が認知症を悪化させたり、降圧薬が喘息をひどくしたりと、ある疾患を治すために飲んだ薬が別の疾患を悪化させてしまう原因になることもあります。

そんな、高齢者が使うと危険な薬のリストが改訂される予定で、現在パブリックコメントを募っています(2015年4月07日現在)。
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」(案)
日本老年医学会、厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「高齢者の薬物治療の安全性に関する研究 (H25-長寿-一般-001)研究班、国立長寿医療研究センター

高齢者が使ってはいけない薬が調べられる

このリストは、1か月以上続けて使う薬の中で、高齢者が使うべきでないものを「ストップ」、高齢者でも有効性が期待できて副作用が少ないと思われるものを「スタート」として掲載しています。

誰でもインターネットで見ることができるので、高齢のご家族が今使っている薬が該当しないかどうか、確認できます。

ただし、使ってはいけない薬にリストアップされているからといって、すぐに飲むのを止めないで、まず、医師に相談してみましょう。
ずっと飲み続けていた薬を突然やめることは、とても危険です。

高血圧の薬を例にとってみても、これまで、薬の力で血圧が下がっていたわけですから、副作用が出るかもしれないといって自己判断でやめてしまうと、血圧が突然上がってしまいます。
高齢者でも問題なく使える血圧の薬もありますから、そのような薬に変えてもらわなければなりません。

薬によっては、徐々に減らさないとよくない作用が現れることもあります。

高齢者に注意が必要な理由は

このリストは、75歳以上の高齢者と、75歳未満でも筋力が落ちて元気がないような高齢者が対象です。
これらの人たちには、薬が本来期待された効果を示さず、副作用が出やすくなる危険があるためです。
なぜ副作用が出やすいか・・・理由は次のようにたくさんあります。

年をとると、細胞の水分が減る

これは、30代を過ぎたころから誰でも実感することでしょう。
薬には、水に溶けやすいタイプと油に溶けやすいタイプがあります。
血液中に入った水に溶けやすいタイプの薬は、組織の細胞の中に水分がたくさんあれば、毛細血管から組織の中にたくさん入っていきますが、細胞の水分が少なければ、細胞の中に入る量が減るので、血液中の薬の濃度が濃くなります。
血液中の濃度が上がれば、作用を示す場所へたくさん薬が届くことになりますから、作用は強く現れます。

年をとると、脂肪組織の量が増えることが多い

年齢に関係なく、脂肪組織の量が多いなあと思う人は注意が必要です。
ただ、年を取って動くことが少なくなると、筋肉が落ちて脂肪組織が増えることが多いですね。
そうなると、脂肪に溶けやすいタイプの薬が血液中から脂肪組織にたくさん移行してしまいます。
その結果、血液中の薬の量が減るので、作用は弱まります。

年をとると、血液中のアルブミンの量が減る

血清アルブミンという名前を聞いたことがあると思います。

イラストでみる 経口薬の体内動態 ADME健康診断で、肝機能のマーカーとして測定する、「Alb」と書かれているものです。
肝臓で作られて血液中に放出されるタンパク質なので、肝機能が落ちたり、栄養失調になると減少します。
年を取っても減少します。
肝機能が落ちてくるのですから、仕方ありませんね。

血清アルブミンには、薬を吸着する性質があります。

どのくらい吸着するかは薬によって異なりますが、血清アルブミンに吸着していると組織に入っていかないので効果を示しません。
言い換えると、薬が目的の臓器に到達して作用を示すためには、血清アルブミンに吸着していないフリーの状態である必要があります。

ですから、血清アルブミンに吸着する割合が高い薬では、血清アルブミンが少なくなるとフリーの薬が増えて、作用が強く現れます。

年をとると肝臓で薬が代謝されにくくなる

薬物を飲んでから胃、小腸を通って肝動脈 肝臓 全身 イラストで見ると
①薬を飲むと
②胃を通過して小腸へ
③小腸から吸収されて、門脈(緑)を通って肝臓へ
☆肝臓で代謝
④肝臓から肝静脈を通って心臓へ
⑤心臓から全身へ
⑥肝臓へ戻って、もう一度代謝
飲み薬は、小腸から吸収されると、まず肝臓へ行き、それから全身の血管を巡ります。
数%が壊されたり、形を変えられたりして本来の作用を示せなくなります。

これを肝臓における代謝といいます。
小腸から取り込んだ食べ物などの中に、身体に体に害を与えるものがあるといけないので、まず、肝臓でチェックする仕組みになっているのですね。

1回目に肝臓を通ったときに代謝されなくても、血液中をぐるぐる回って何度か肝臓を通過するうちに効果を示す形の薬はなくなっていきます。

年を取ると、この代謝の力が落ちるので、排泄されるまで、効果を示す形の薬が血液中を回ります。
そのために、本来期待する以上の強い作用が現れてしまいます。

薬によっては、肝臓で代謝されることで効果を示す形になるものもあります。
この場合は反対で、なかなか効果を示す形になれず、期待したほどの効果が得られません。

年をとると、腎臓からの排泄が遅くなる

体中の血管を巡る薬は、肝臓で代謝されるのと同時に、腎臓から尿として排泄されたり、肝臓から腸管へ便として排泄されたりして、最終的にはすべて体の外へ出されます。

どこから排泄されるかは薬によって違いますが、腎臓から排泄される方が多いです。

年を取ると腎臓の機能も落ちてくるので、一度に排泄される量が減って、長い時間体の中にとどまるようになり、作用が強く、しかも長い時間現れるようになります。

これは、糖尿病など、他の原因で腎臓の機能が低下した人も同じです。

年をとると、薬に対する体の反応が変わる

薬によっては、血液中の濃度が同じでも、身体の反応が変わってくるものがあります。

例えば、交感神経に働く薬は効果が強く現れることがあります。
血圧の薬や、喘息の薬、排尿障害の薬などのなかに、そのような薬がありますが、すべてが該当するわけではありません。

反対に、睡眠薬や、副交感神経に働く薬の効果が弱くなる場合があります。
排尿障害の薬や便秘の薬などに該当するものがありますが、やはりすべてではありません。

同じ疾患に効く薬でも、効き方はいろいろあるので、医師や薬剤師に確認してみるとよいでしょう。

色々な疾患の薬を飲んでいる人は、相互作用にも注意

これも高齢者に限ったことではありませんが、一緒に飲んだ薬が別の薬の作用を弱めたり、強めたりすることがあります。
薬が影響しあうのは、胃や腸管の中だったり、肝臓での代謝に際してだったり、血液の中だったり、様々です。
同時に飲まなくても、影響してしまう場合もあります。

ひとりの医師が処方する薬の中にそのような薬が混ざっていることは少ないと思いますが、別の病院でもらった薬には注意が必要です。

皮膚科でもらった薬だから皮膚にしか効かないだろうと思ったら、大きな間違いです。
特に、皮膚の感染症の薬には、一緒に飲んだ薬の作用が強く現れてしまうものが多いので、よその病院で別の薬をもらうときには、必ず、自分が他の病院でもらっている薬について伝えてください。

最近は薬局で「お薬手帳」をもらいますね?
この手帳は、こういう時に医師や薬剤師に見せるためにあるので、活用してみてください。

少しずつ変わっていくので気づきにくい

このように色々な要素が重なって、年を取るにしたがって適切な薬の量や、使ってはいけない薬の種類が変わってきます。

ただ、この変化は少しずつ起こるので、だんだん副作用が強くなってきていたりしても、薬のせいだとは感じることは難しいです。
医師も、薬のせいだとは思わずに、原因となる薬を減らすことは思い至らず、さらに薬を追加してしまうことが多いといいます。

なので、たくさん薬を飲んでいる方は、「こういうふうに体調が悪いのですが、薬のせいではありませんか?」と医師に相談してみましょう。


薬を開発するときの臨床試験は、65歳未満の成人を対象に行われることがほとんどなので、高齢者にどのような作用を示すかは、発売になって使われてみないとわかりません。
つまり、高齢者にどのような副作用が現れやすいかは科学的に確かめられていないので、医師だって知りようがないのです。

今回のリストは、使用経験に基づいて作られていますが、高齢者を対象とした試験は実施しにくく、エビデンスが得られにくいという問題点があります。

睡眠薬についてみてみよう

リストで取り上げられた薬を、睡眠薬を例にとって紹介しましょう。

薬剤と注意事項

ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬

( )は商品名、青字はジェネリック医薬品
  • フルラゼパム(ダルメート、ベノジール)
  • ハロキサゾラム(ソメリン)
  • ジアゼパム(セルシン、ホリゾン、エリスパン、ジアパックス
  • トリアゾラム(ハルシオン、アスコマーナ、ハルラック
  • エチゾラム(デパス、パルギン
注意事項
  • 長時間作用型の薬剤(フルラゼパム、ハロキサゼパム、クアゼパムなど)は使用すべきでない。
  • 他のベンゾジアゼピン系薬もできるだけ使用しない。
  • 使用する場合、最低必要量をできるだけ短期間使用に限る。
  • 長時間作用型は翌日まで作用が続く持ち越し効果、短時間作用型(トリアゾラム、エチゾラムなど)では健忘、依存のリスクがある。
  • 代替薬として、非ベンゾジアゼピン系薬、ラルメテオンがあげられる。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

  • ゾピクロン(アモバン、メトロール、ドパリール
  • ゾルピデム(マイスリー)
  • エスゾピクロン(ルネスタ)

注意事項
  • 漫然と長期投与せず、減量・中止を検討する。
  • 少量の使用にとどめる。

●以上の睡眠薬の主な副作用
  • 過鎮静:必要以上に薬物の鎮静効果が出現した結果,日中にボーっとして動きが少なくなったり傾眠傾向となる状態。注意力が落ちる。
  • 認知機能低下:いわゆる「ぼけ」の症状
  • せん妄:幻覚・錯覚を伴う意識障害
  • 転倒・骨折
  • 運動機能低下

睡眠薬はどうしても必要な場合に限って短期的に使う

睡眠障害では、まず、薬以外の方法で対応するように指導されています。
運動をしたり、昼寝を止めたり、睡眠時の環境を整えたり・・・それでも眠れない場合には、短期間に限って睡眠薬を使うようにします。

長期間睡眠薬を使い続けると、認知機能や運動機能が低下するほか、夜間のせん妄が現れることがあります。
睡眠薬は、脳の活動を抑制する作用を持つので、認知症のリスクが高くなります。
夜間のせん妄でころんで骨折する場合もあります。

また、睡眠薬には筋肉の力を緩める作用があるので、筋力が低下した高齢者が睡眠薬を飲むと、ふらついて、転倒・骨折につながります。
さらに、高齢者では代謝が遅いので、翌朝まで効果が残ってしまい、起きて立ち上がった途端に倒れて骨折、ということもあります。

高齢者の骨折は寝たきりの最大の原因です。


このリストには取り上げられていないものも含めて、同じようにベンゾジアゼピン受容体に作用する薬をまとめましたので、ご覧ください。
作用機序についても解説しました。
睡眠薬でアルツハイマー型認知症になる?

薬が原因で普通の生活が送れなくなることがないように

睡眠薬の例を見ても、薬の服用が寝たきりの生活につながるケースが多いことがわかります。

感染症などの急性疾患は別ですが、慢性疾患に対しては、まず、運動や食事を見直すことが肝心。
薬は、最終手段だと思いましょう。

すでに使用中の薬についても、このリストを参考に、主治医に相談してみてはいかがでしょうか?
ただし、今まで飲み続けていた薬を突然やめるのは危険なことなので、自己判断で止めないでくださいね。

2015年1月19日月曜日

インフルエンザ*タミフルよりはリレンザ・イナビルが安心

エバーグリーン研究室では、インフルエンザに罹ったら、抗インフルエンザウイルス薬より漢方薬をお勧めしています。

インフルエンザ*漢方薬で早めの対策

とはいえ、抗インフルエンザウイルス薬についてももっと詳しく知っておく必要があるのでは?と思い、誰でも入手できる資料を元に、色々調査してみました。

ここでは、今、A型にもB型にも効果があるとされていて、注射薬ではない3種類の抗インフルエンザウイルス薬を比べてみることにします。
  • タミフル:経口薬(カプセル、ドライシロップ)5日間服用
  • リレンザ:5日間吸入
  • イナビル:1回吸入

剤形が違うとこんなことが違う

まず、投与方法の違いについて。
カプセル、ドライシロップ、吸入などの薬の形を、剤形といいます。

同じ剤形でも、薬によって吸収のされ方が違う場合があるので、一般的な話はすごく複雑になります。
ですから、ここでは、タミフルとリレンザ、イナビルについてお話しします。

幼児、高齢者、肺炎の人はタミフル

吸入はお手軽な感じがしますが、乳幼児や高齢者など、うまく使えない場合には全く効果が得られません。
肺炎を起こしている人や、喘息で気道が狭くなっている人も、薬が肺まで届きにくいために使えません。

経口薬は、飲めば確実に体内に入るので、誰にでも使いやすい剤形といえます。
タミフルが誰にでも勧められるのには、こういった理由があります。

リレンザ・イナビルはのど、タミフルは全身

吸入と経口薬では、使用後、体の中のどこに入っていくかが違います。
  • タミフル(経口薬)の場合:       口→胃→小腸→肝臓→血液→全身
  • リレンザ/イナビル(吸入)の場合:  のど・気道・肺の粘膜→血液→全身
このような体内での薬の動き方を、体内動態といいます。

薬の作用の現れ方 経口投与 吸入の作用箇所の違い 内服、吸入で吸収される部位 口から飲んだ時とスプレーで吸入した時、薬はどうやって効く? のど 肝臓 静脈 動脈 小腸から門脈を通って肝臓へ 体内動態と効果が発現する部位 有効性  吸収 代謝 ADME 図説 イラスト タミフル リレンザ イナビル オセルタミビル ザナミビル ラニナビル インフルエンザの薬は何がいいか イラスト 図説
タミフルを飲んだ時
①飲み込むと
②胃を通過して小腸へ
③小腸から吸収されて、門脈(緑)を通って肝臓へ
④肝臓から肝静脈を通って心臓へ
⑤心臓から全身へ
★全身で作用

リレンザ・イナビルを吸入した時
①吸入すると、のど・気管支・肺の粘膜へ
★のど・気管支・肺で作用
②のど・気管支・肺の粘膜からほんの少し吸収され、全身へ

タミフルも、リレンザ・イナビルも、最終的には血液中に入り全身へ送られますが、その割合が違います。
  • タミフルでは飲んだ量の約80%が血液へ
  • リレンザは吸入した量の約2%が血液へ
これがどういうことかというと・・・

タミフルは

タミフルは、大半(80%)が血液の中に入り全身へいきわたり、全身に作用します。
そのほかは、おそらく吸収されていないと考えられます。

リレンザは

リレンザは、吸入した薬のほとんどはのどや気管支、肺など、吸入した薬が届いた粘膜にとどまって作用します。
インフルエンザウイルスはのどから侵入するので、ここで、戦って体に入るのを食い止めようというわけです。

イナビルは

では、イナビルはどうかというと、示されているデータがちょっと違うので、タミフルやリレンザと並べてお示しできません。

イナビルは、血液中の濃度を1とすると、肺胞粘液中の濃度は約100、肺胞マクロファージの濃度は約14,000になるとされています。

肺を顕微鏡で見ると、小さな袋がたくさん集まってそこで血液中の二酸化炭素を酸素に置き換えています。
この小さな袋が肺胞。
肺胞の表面を覆っている粘液が肺胞粘液、肺胞の中にいるマクロファージ(白血球の一種で、ウイルスと闘う戦闘員)が肺胞マクロファージです。
ですから、イナビルは血液中にはほんのわずかしか入らず、ほとんどが肺胞で作用すると考えられるわけです。

特に、肺胞マクロファージというのは、インフルエンザウイルスが感染した細胞を食べる戦闘員ですから、この中にイナビルがたくさんあるということは、イナビルがインフルエンザウイルスが感染した細胞にたくさんくっついていたのではないかと推測できます。

ただし、インフルエンザウイルスが増殖することができるのは喉の細胞だけで、肺の細胞には入っていくことができません。
ですから、肺胞にイナビルがいくらたくさん分布していても、肺での効果は期待できません。
インフルエンザ治療薬 イナビルは本当に有効?

抗インフルエンザウイルス作用について3剤を比べると

これらの薬が効果を発揮するのは、ヒトの細胞の中で増殖したウイルスが細胞から出ていくところです。
インフルエンザウイルスの増え方と薬の作用については、こちらを見てください。

ということは、いったん血液中に入ってから、体中を回ってのどの粘膜にたどり着いた薬が効果を発揮するタミフルよりも、投与した薬のほとんどがのどの粘膜で効果を発揮するリレンザやイナビルの方が効率がよさそうに思えますね?

中枢神経系副作用について3剤を比べると

ここでは、特に問題視されている中枢神経系の副作用についてお話しします。
錯乱してしまったり、飛び降りてしまったりした原因ではないかとされる副作用のことです。

血液中で作用するタミフルは、脳の中に入る可能性があるけれども、リレンザ、イナビルは、そもそも血液中に入る量が少ないので、脳に作用する可能性はほとんどない、と考えられますね。

これに対してタミフルには、脳の中に入るかもしれない、というデータがいくつかあります。
参考 インフルエンザ*タミフルで予防できる?

さらに、イギリスの研究者が発表したコクラン共同研究の報告では、次のように、タミフルが中枢神経系副作用の原因ではないかと疑っています。
Jefferson T, et al. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 4. Art. No.: CD008965. DOI: 10.1002/14651858.CD008965.pub4http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD008965.pub4/abstract
  • タミフルが炎症促進性サイトカインの濃度を低下させることで、免疫反応が治まり、インフルエンザの症状が改善していることが考えられる。
  • とすると、タミフルには中枢神経(脳の神経)抑制作用があり、その結果、熱が下がり、見かけ上、症状が改善したようになっているという可能性がある。
ちなみに、厚生労働省の見解は、インフルエンザに罹ってタミフルを飲んでいた人と飲んでいなかった人とで、中枢神経系の異常が現れた割合に統計学的に差がないことから、タミフルはこれらの副作用の原因ではない、としています。

血液中に入る薬の量について3剤を比べると

そもそも、血液の中に入らなければ、中枢神経系の副作用は起こるはずがありません。
そこで、タミフル、リレンザ、イナビルが、投与した後どのくらい血液中に入るかを調べてみました。
抗インフルエンザウイルス薬3剤の体内動態を比べると、吸入薬は経口薬に比べてAUCが約1/20 剤形 1回投与量 半減期 AUC 分子量  タミフル オセルタミビル リレンザ ザニナミビル ラニナミビル 活性体 効果 安全性 精神科副作用 脳内に入る 中枢神経 AUC(血中濃度-時間曲線下面積、area under the blood concentration-time curve)

血液中の薬の量は、時間の経過とともに変化するので、血液中の濃度と時間からAUC(血中濃度-時間曲線下面積、area under the blood concentration-time curve)というものを計算して求めます。

表の「総AUC」の所を見てください。
この値で、それぞれの薬が投与期間を通して血液中に入る総量を比較できます。

タミフルとリレンザは1日2回5日間、計10回投与するので、1回投与した時の投与後12時間のAUCの値を10倍しました。
ですから、だいたいこのくらいかな、と思ってみてください。

結果は・・・
全投与期間に血液中に入る量は、タミフルは、リレンザ、イナビルの約20倍でした。

化学に強い方は、薬の1分子の重さが違えば、濃度(ng/mL)では比較できないのでは?という疑問を持たれるのではないかと思い、分子量を調べましたが、どれも同じくらいでした。

つまり・・・
タミフルは、リレンザ、イナビルに比べて圧倒的に血液中に入る量が多いので、脳の中に作用する可能性も他の2剤より高いといえそうです。

参考までに、血中濃度半減期も調べました。
血中濃度半減期というのは、血液中の薬の濃度が一番高くなったところから半分になるまでにかかる時間のことです。

タミフル、リレンザに比べて、イナビルは血中濃度半減期が10倍以上長いですね。
イナビルは、ゆっくり吸収されて長い時間作用することがわかります。
だから、1回の吸入で効果が得られるわけです。

インフルエンザの症状を抑える作用について3剤を比べると

薬が発売されるためには、臨床試験(治験)といって、実際に患者さんに使った時の効果や副作用を確認する試験を行う必要があります。
臨床試験の結果は、薬ごとに作られているインタビューフォームと呼ばれる冊子に書かれています。
インタビューフォームは「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」の
「医療用医薬品の添付文書情報
から検索できます。

ここで調べたところ、タミフル、リレンザ、イナビルとも、似たり寄ったりの成績で、薬を使わない時と比べて発熱やその他のインフルエンザ様症状を、半日~1.5日くらい早く治す、というものが多いようです。
海外の臨床試験では、効果が認められなかったものもあります。

さらに、タミフルの臨床試験方法をじっくり読むと、効いたようにみえて実は効いていないのではないかという疑問も出てきます。

というのは、タミフルには免疫の力を抑える作用があると考えられるためです。

詳しく説明すると…
免疫力が弱い人はインフルエンザに罹っていても、抗体が上手に作れないためにインフルエンザかどうか調べる抗体検査の結果が陰性になってしまう可能性があります。

臨床試験は抗体検査でインフルエンザであることが確認された患者さんだけを対象にします。
ということは、タミフル投与群には、タミフルを使っても検査でインフルエンザだと認められた免疫力の強い人、つまり、治りやすい人が多かった可能性があるわけです。

このお話は、
インフルエンザ*タミフルで予防できる?
で、予防投与の効果を例に詳しく説明しましたので、ご参照ください。

インフルエンザの薬って、よく効くって言われているのに・・・と思われる方が多いかもしれません。
私も、そういう評判を信じていましたが、試験の成績をよく見ると、そんなことはないんです。
ムリして医者に行ってもらうほどの価値があるとは、ちょっと思えません。

私の感想

で、どうすればいい?と思われるかと。
色々調べた結果の個人的な意見をお伝えしますね。
じゃあ、インフルエンザ対策は何もしないか、というとそんなことはありません。
詳しくはこちらを。


ところで、日本では、新型インフルエンザに備えてタミフルを備蓄しています。
厚生労働省のお役人は、この薬の有効性も副作用もご存じでしょうから、どうして、そんなことをするのか疑問です。

で、理由を考えてみました。
ここからは、全くの想像です。

新型インフルエンザ対策を何もしないと、いざというときに、パニックに陥ってしまうので、やむを得ず、タミフルを備蓄しているのではないでしょうか。
タミフルを選んだ理由は、もう、耐性ウイルスが出てきているので、新型ウイルスに全国で使われて耐性ウイルスだらけになってしまっても、惜しくないから・・・でしょうかね??


2014年7月28日月曜日

電子レンジは安全?



今日はいつもとちょっと気分を変えて、日々使っている電子レンジのお話をしましょう。
 ⇒電子レンジの原理(しくみ)についてはこちら

オーガニック系??の人たちのなかには電子レンジでの調理やマイクロ波の危険を言う人もいます。

電子レンジが危険だという論拠としては、以下のものがあげられているようです。

それぞれ調べで見ました。

さて、次の問はホント?うそ?


1.電子レンジのマイクロ波により食品中のタンパク質の化学構造と性質が変わる(変性する)のでよくない?

答え:うそ

これは、Hans Hertelというスイス人の食品化学者が提唱していましたが、どうやって実験したのか詳しいことが明確ではなく、本当かウソか検証できないものです。
さらに、科学論文として審査を受けて発表されてもいないものです。

根拠がないといってもよいでしょう。

また、焼いたり煮たり、蒸したりといった、電子レンジ以外の方法で加熱しても、タンパク質は約60℃以上の熱で「熱変性」します。
ですので、電子レンジでの加熱が特に悪いということはありません。
タンパク質が変性をしなければ、目玉焼きも、ウエルダンのステーキもできないのです。
タンパク質の変性を嫌うなら食品を加熱しないで生で食べるのがよいでしょう。


2.電子レンジのマイクロ波により食品中に発癌性の物質ができるので電子レンジで調理されたものは体に悪い?

答え:うそ


電子レンジの加熱では、水の温度は100℃までしか上がりません。
ですので通常の食品(油が極端に多いものは除く)は電子レンジをかけても焦げません。

食品の調理でできる可能性のある発癌性物質の代表はジメチルニトロソアミンです。
これは焦げるぐらいの高温で調理したときにできる物質です。
フライパンで焼いたり、オーブンで焼いたり、油で揚げるような高温での調理のほうがジメチルニトロソアミンができやすいです。
一方、通常の食品を電子レンジにかけた場合は、食品中の水が最高100℃になって、ほかの成分(タンパク質など)を温めるので、高温になりにくく、発癌物質もできにくいといえます。
水は100℃より高温にはなれないからです。

ガスで調理した魚のジメチルニトロソアミン量は、電子レンジで調理した場合より多いというデーターもあります。

ちなみに、揚げ物など油を多く含む食品をを電子レンジで加熱すると、油は、電子レンジのマイクロ波を受けて100℃以上の高温になり、油が酸化されやすくなります。
これはオーブンなどで揚げ物を再加熱しても同じです。

3.電子レンジからマイクロ波が漏れ、癌を誘発するのでよくない?

答え:どちらともいえない

マイクロ波は、テレビ、携帯電話、電子レンジと同じ波長帯の電(磁)波です。

これらのパワー(量子エネルギー)は低く、分子を揺らすことはできても、分子の構造を変えるような力はありません。
癌を引き起こす原因となるDNAを傷つける(DNAの分子構造を変化させる)ほどの力はないと考えられます。

ただし、同じ波長帯の電(磁)波を出す、携帯電話と脳腫瘍の関連を示した研究がいくつかあります。

今のところ、癌を誘発するという決定的な証拠もなければ、癌を誘発しないという決定的な証拠もないので、安全を取って、電子レンジでの調理中には電子レンジから1mから2m離れれば安心です。マイクロ波の物理的性質を考えれば、これくらいの距離を取れば実質的に影響はないと思われます。


4.食品中のビタミンなどの栄養素が壊れる?

答え:うそ

ビタミンCなどの水に溶けやすい水溶性ビタミンは、たとえば、電子レンジでの調理でもどんぶりの中に水を張って、その中にブロッコリーを入れるなど、大量の水を使って調理した場合は、水(ゆで汁)にビタミンが溶け出してしまいます。
このような調理法は、ガスの火を使ってブロッコリーをゆでるのと変わりません。

でも、ブロッコリーを濡らして容器に入れて加熱するといった通常の電子レンジ使用法では、ゆでるよりビタミンが保持されることが多いようです。
なぜならゆで汁にビタミンが出でいかないからです。
実際に煮た場合と電子レンジでの調理を比較して、ビタミンCとビタミンB1の残っている割合を調べたところ、電子レンジの調理のほうがこれらのビタミンが多く残っていたとのデータもあります。

また、ビタミンには、熱に強いもの(ビタミンA、Eなど)と、弱いもの(ビタミンC、B1など)がありますが、熱に弱いビタミンでも、加熱時間が短ければ問題ないといえます。



5.電子レンジで加熱すると食品に活性酸素などのフリーラジカルが出来るので身体にわるい?

答え:どちらともいえない



何も、電子レンジに限らず、加熱する調理では、食品の成分が熱エネルギーや、電磁気の波のエネルギーをうけて活性酸素やフリーラジカルを出します。

調理法に関係せず、加熱すれば必ず活性酸素やフリーラジカルが出るので、電子レンジだけを悪者にするのはどうかな?と思います。

活性酸素やフリーラジカルの害を避けたいのなら、食品を加熱せず、生で食べることです。

参考図書:肥後温子著 『新版 電子レンジ「こつ」の科学』 柴田書店 2005年

加熱せずに消化吸収できる食品は、生で食べることも一つの方法です。
でも、高温での調理はあまりお勧めできません。
実は、これは大切なポイントで、老化物質AGE高温での調理が関係します。

このことはまたあらためてお話ししますね。


2014年7月19日土曜日

電子レンジでお皿が熱くならない?

日本での電子レンジの普及率ってご存知ですか?
2004年の消費動向調査96.5%でしたので、現在ではほぼ100%といえるのではないでしょうか。
こんなに普及している電子レンジですが、webなどでは有害説も見かけますね。

普段、使うものですので、調べてみました。

まず、電子レンジの加熱の原理を知っておきましょう。
でんしれんじ げんり しくみ まいくろは
電子レンジの原理



電子レンジには、マグネトロンという装置があり、この装置から、マイクロ波という電(磁)波を、1秒間に約24億5千万回のサイクルで食品にあてて加熱します。

1秒間に約24億5千万回のサイクルの電磁波とは、大雑把に言えば、エネルギーの向かう方向が1秒間に12億2千5百万回ずつ入れ変わってやってくるということです。


図では模式的に赤い矢印と青い矢印で表しています。


ここでは、水(H2O)の分子にマイクロ波のエネルギーが伝わり、下方向に押されたり、上方向に押し上げられたりしている様子を模式図と動画にしています。
実際には水分子は振動(方向を細かに変えた回転)をしています。

イメージとしてはこの動画をものすごい早送りで再生する感じでしょうか。

このように食品中の水のような分子構造を持つ分子(双極分子)は、マイクロ波を受けて1秒間に約24億5千万回のサイクルで上下や左右などいろいろな方向に周期的に揺れることになり、この動きが熱となり、加熱するという仕組みです。

つまり食品中の水分と、水と似た分子構造の成分が加熱されて、その周りの成分も温められているということです。


電子レンジで食品を加熱すると、加熱むらが起きることがあります。

これは、食品中の水分に偏りがある場合に起こります。

ごはんなど水分が均一にある場合の調理や加熱は問題ないのですが、水分の少ない固形食品などで起きることがあります。
また、塩味などの味がついた食材や食品は周りから温められる傾向が強くなるので、内側が温められないこともあります。

また、電子レンジは内側(中)から温められると言われることがありますが、これは間違いです。
中から温めるのではなくマイクロ波を吸収しやすいところから温まります。
塩味がついた食品はまず外側の食塩水を含んだ部分にマイクロ波が集まってしまうのです。
電子レンジでの調理に向いているのは、野菜のような水分を均一に含んでいる食材や、塩味のついてない鶏肉の下ごしらえなどでしょう。

また、電子レンジのマイクロ波の波長は、衛星デジタル放送や無線LANと同じ波長帯で、紫外線やX線などのごく短い波長ではないので、分子が大きく強固な固体を通過することはできません。

陶器や耐熱ガラスが温められないのは、陶器の分子構造が大きくて強固なため、マイクロ波を当てても分子が振動しないためです。

コーヒーカップに飲み物を入れて、チン!しても、カップの取っ手は熱くならないのには、こういう理由があったのですね。
カップの本体は、加熱された飲み物に温められて熱くなるのです。

陶器自体がマイクロ波で温められることはありません。

参考図書:肥後温子著 『新版 電子レンジ「こつ」の科学』 柴田書店 2005年

⇒電子レンジの安全性についてはこちらを。