いきいき!エバーグリーンラブ: 5月 2014

2014年5月26日月曜日

糖類を食べるとおなかがすく?

「ごはんを食べないと、おなかがいっぱいになった感じがしない」と思う人は多いですよね。
だから、糖質制限でごはんやパンを食べなかったら、すぐおなかがすいてしまいそう、と私も思っていました。

ところが、これは反対。
「糖質制限をしたらおなかがすかなくなった」という人が多いんです。
私はといえば、やっぱりおなかはすくし、食事の時間には「何を食べようかな~」なんて考えますが、おなかがすいてすいて気持ち悪くなる・・・ということはなくなりました。
あ、おなかがすいたくらいで気持ち悪くなる人はあんまりいないって?

それはいいとして、ここでは、その訳を科学的に証明した研究がいくつかあるので紹介しますね。
1つ目は、「タンパク質の多い食事、脂質が多い食事は、空腹感を感じにくい」という、アメリカのワシントン大学医学部のFoster-Schubert博士たちの研究です。


食欲中枢を刺激して、「おなかがすいた」と感じさせるホルモンがあります。「グレリン」といって、このホルモンの血中濃度が低いと食欲を感じないのでおなかはすかなくなり、血中濃度が高いと食欲がわきます。

まず、16人の参加者に、次の3種類のドリンクをそれぞれ別の日に飲んでもらいました。
●糖類(グルコース)80%のドリンク
●タンパク質80%のドリンク
●脂質80%のドリンク

そして、グレリンの血中濃度と空腹感を測定しました。
その結果は―

タンパク質80%のドリンクでは、低いグレリン濃度が6時間続きました。
脂質80%のドリンクでは、タンパク質80%のドリンクよりもさらに長い時間、低いグレリン濃度が続きました。
糖類(グルコース)80%のドリンクは、低いグレリン濃度が4時間続き、その後はタンパク質や脂質のときよりも血中濃度がずっと高くなりました。

つまり、タンパク質や脂質が多い食事では、空腹感を感じにくいということですね。
反対に

糖類は食欲を増進させる

のです。

J Clin Endocrinol Metab. 2008 May; 93(5): 1971–1979.Published online 2008 January 15. doi: 10.1210/jc.2007-2289

2つ目の研究は、日本の山梨医科大学の中村美知子氏たちによるものです。
7名の学生に高炭水化物(糖質)食、高タンパク質食、高脂質食を食べてもらい、空腹感~満腹感をを5段階で報告してもらいました。
その結果、満腹感が大きかったのは、高タンパク食>高脂質食>高炭水化物(糖質)食の順でした。
高タンパク食、高脂質食では満腹感が5時間程度続きました。
高炭水化物(糖質)食では、食後5時間でひどい空腹感を感じて、がまんできず横になってしまった人がいたほどでした。

糖類は満腹感が持続しない

ということです。

山梨医大紀要第15巻,35-41(1998)


このように、糖類は食べても食べても、短時間で食欲が湧いてきてまた食べたくなります。
これが「糖類中毒」につながります。おなかがすいているときに、パン屋さんの前を通る時の匂い、たまらないですよね。食べずにはいられない、「中毒」だと思えませんか?

「中毒」っていわれると、脅かされているみたいですよね。
「薬物中毒」みたいに、短期間で人格が変わってしまうようなことはなくても、じわじわと進んでいく、「中毒」とか、「依存症」とか呼ばれる状態があるんです。
糖類の中毒性・依存性・習慣性については、別の機会にお話ししますね。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い

2014年5月18日日曜日

糖質制限で二日酔いから解放?

アルコールの吸収

ちょっとお酒を化学的に見てみましょう。お酒の主成分はエチルアルコールです。
下の絵のように、エチルアルコール(以下アルコール)は、ブドウ糖と比べても、小さい(分子量が低い)ので、これ以上消化される必要がありません。
80%は小腸からとても早く吸収されます。
20%は胃からも吸収されます。

また、水によく溶ける性質があるので、血液に溶けて、脂肪組織以外は全身に速やかに行き渡ります。
脂肪には溶けにくいので、脂肪組織にはゆっくりと行き渡ります。

空腹時には胃は働いていません。
ですから、お酒を飲むとアルコールは胃を素通りすることになります。
すぐに小腸に到着してしまい、アルコールの吸収が速くなります。
お酒を飲むときはおつまみを食べながらゆっくりと飲めば、胃にとどまる時間が長くなり、悪酔いしにくくなります。
すきっ腹のお酒が酔いやすいのが分かりますね。

また、がんや潰瘍などで胃を取ってしまった人も、小腸に直行するのでアルコールの吸収が速くなります。

お酒に強い アルコールに弱い 遺伝 肝臓 ペルオキシソーム カタラーゼ、滑面小胞体 シトクロムP-450依存性モノオキシゲナーゼ MEOS シトクロムP-450 2E1 ブドウ糖、果糖、アルコール、アルデヒド、酢酸、ブドウ糖6リン酸 構造 二日酔いにならない 予防 飲みすぎ グルコキナーゼ ヘキソキナーゼ エチルアルコール アルコール脱水素酵素 アルコールデヒドロゲナーゼ ALDH2 アルデヒド脱水素酵素 酢酸 酢 グルコース6リン酸
アルコールと単糖(ブドウ糖、果糖)の化学構造

アルコールの代謝

食べたものは、消化されて胃や小腸から吸収された後、主に肝臓で身体が必要としている形に変えられます。
これを代謝といいます。

アルコールも吸収されると、まず、肝臓に行きます。
そして肝臓の細胞に入り、細胞の中にあるミトコンドリアでアルコール脱水素酵素が働いて、アセトアルデヒドに変わります。
これが、「代謝されてアセトアルデヒドになる」ということです。

このアセトアルデヒドは、還元性(ピンクで囲った部分に還元性がある)があります。
前に、グルコースに還元性があるというお話をしましたね。
⇒ブドウ糖と果糖の毒性

還元性というのは電子を渡す性質ですが、それがどういうことかは説明すると長くなるので、ここでは、体に毒性を示すと考えてください。

毒性を示されては困るので、肝臓の細胞のミトコンドリアはアセトアルデヒドを2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)を使って速やかに酢酸に変えます。
酢酸というのは、皆さんがよく料理に使っている酢のことです。

ミトコンドリアは、2つの反応(代謝といいます)をさせなければいけないので忙しいですね。
だから、飲酒量が多かったり、肝臓が疲れていると、この2つの酵素による代謝が追い付かなくなってしまいます。
その結果、肝臓から血液を通じてアセトアルデヒドが全身へ
こうしてアセトアルデヒドが毒性を発揮した状態が二日酔いです。


人によっては、体質的にALDH2酵素の形が微妙に違うことがあります。
残念ながら、正しい形のALDH2を作る遺伝子を持っていないのですね。
そういう人は、アセトアルデヒドの代謝が上手く行えないので、ほんのちょっとお酒を飲んだだけで、顔が赤くなり、動悸がして、二日酔いになってしまします。
日本人などの黄色人種(モンゴロイド)は、白人(コーカソイド)や黒人(ネグロイド)に比べて、体質的にこのタイプの人の割合が高いそうです。
つまり、お酒は白人や黒人のほうが強いということですね。

また、大量に飲酒を続けている人は、上の2つの酵素以外にも、アルコールの代謝を助ける戦闘員が現れます。
肝臓の細胞のペルオキシソームから出るカタラーゼ、滑面小胞体から出るシトクロムP-450依存性モノオキシゲナーゼ(MEOS)、シトクロムP-450 2E1などの酵素がその戦闘員です。
お酒に強い アルコールに弱い 遺伝 肝臓 ペルオキシソーム カタラーゼ、滑面小胞体 シトクロムP-450依存性モノオキシゲナーゼ MEOS シトクロムP-450 2E1 ブドウ糖、果糖、アルコール、アルデヒド、酢酸、ブドウ糖6リン酸 構造 二日酔いにならない 予防 飲みすぎ グルコキナーゼ ヘキソキナーゼ エチルアルコール アルコール脱水素酵素 アルコールデヒドロゲナーゼ ALDH2 アルデヒド脱水素酵素 酢酸 酢 グルコース6リン酸これらの酵素は、飲酒量と、飲酒の機会が多いほどたくさん出てくるようになります。

これが、お酒は飲みなれると強くなるという仕組みです。
よほど、体はお酒を速く代謝させてしまいたいのですね。

糖質制限すると二日酔いしにくい?

糖質制限している健康な人から、「二日酔いしなくなった」という声が多く聞かれます。
これは、カタラーゼ、シトクロムP-450依存性モノオキシゲナーゼ(MEOS)とシトクロムP450 2E1が関係している可能性があります。
なぜなら、糖質制限をしていると、これらの酵素が出やすくなるからです。

さらに、糖質制限していると、肝臓のミトコンドリアのTCA回路がグルコース(ブドウ糖)の代謝に関わる割合が少なくなるので、アルコールの代謝が進みます。
ですので、アルコールの代謝が活発になり、二日酔いしにくいというわけですね。
また、糖質を代謝するためにはビタミンB1が必要です。
糖質をたくさん取ると、ビタミンB1が消費されてしまいます。

実はビタミンB1はアルコールをミトコンドリアのTCA回路で代謝するときに必要なビタミンでもあるのです。
ですから、普段から糖質をたくさん取っている人はビタミンB1が不足しがちで、アルコールの代謝もよくなくて、二日酔いになりがちなのです。

一方で、肝臓はブドウ糖を作る「糖新生」の作業もしています。
大量に飲めば、アルコールの代謝に忙しい肝臓は「糖新生」がおろそかになるので、人によっては飲んでいるときに不意に意識が遠のいたり(ブラックアウト)、急にあくびが出たりして眠くなる低血糖症状が見られることもあります。
お酒を飲んだ後に、これらの症状がある人は、肝臓が疲れている可能性があります。

このように、飲酒の常習者では、低血糖になりやすくなり、血糖値が低いことに脳が適応して、脳のエネルギー源がブドウ糖からアルコールの代謝物である酢酸に切り替わることが分かっています。
糖質制限をして血糖値が低い状態が定常化すると、一層この傾向になると考えられます。
脳の主要なエネルギー源が酢酸になると、脳内のミトコンドリアでアデノシンが多く作られるため
アルコールへの依存が高まります。
ひどい場合は認知機能の低下も引き起こしかねません。

糖質制限を行う場合には、肝臓と膵臓の負担を考えて、飲酒は避けたほうが良いと思います。
また、糖質制限を行う場合は、深酒は厳禁です。
お酒を飲むときは、タンパク質豊富で、糖質も含んだ食事をしっかりとしながら、適量にすべきですね。

複合炭水化物・脂質も二日酔いに

炭水化物の中でもグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)などの単糖類が長くつながったものを複合炭水化物といいます。

複合炭水化物であるご飯・パン・うどん・そば・いもなどは、胃を通過して小腸に行くまでに時間がかかります。
これらをお酒のシメなどに食べると、消化液を分泌する胃や膵臓に負担がかかり翌朝のムカつきやもたれの原因となります。

天ぷらやフライ、から揚げなどの揚げ物をつまみにするのも考え物です。
揚げ物の衣は小麦粉や片栗粉、パン粉などの複合炭水化物が、揚げ油をたっぷり吸った状態です。
消化吸収の遅く、消化液が多く必要となる複合炭水化物と脂質のそろい踏み。
これではやはり、胃や膵臓に負担がかかり翌朝のムカつきの可能性濃厚ですね。

ラーメンを食べたあとの人の胃に内視鏡を入れて覗くと、おもにタンパク質でできているチャーシューは跡形もないのに、おもに複合炭水化物でできている麺は残っているそうです。
消化器内視鏡を行う医師には、よく知られています。

お酒を飲んだ翌朝を快適に過ごしたければ、軽度な糖質制限は効果的と思われます。
とはいっても、上記のように、お酒に強くなったと喜んで飲みすぎてしまうのも危険。
お酒は適量が大事です。
くれぐれもご注意ください。

二日酔い対策はまた今度書きますね。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
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インスリンは肥満ホルモン?!
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糖尿病予備群は癌リスクが15%高い

アルコール飲料 角砂糖いくつ分?


炭酸飲料 コーラ サイダー キュラソー ミント 蒸留酒 ライム梅酒 甘酒 ビール スタウト 黒ビール 発泡酒 エールビール 紹興酒 清酒 本醸造 純米吟醸 葡萄酒 ぶどう酒 ワイン ジン ラム ウォッカ 焼酎 ウイスキー ブランデー マオタイ 角砂糖 換算 糖質量 日本食品成分表 

お酒には角砂糖がこんなに!?


糖質を控えようかな~と思っても、何にどのくらい糖質が入っているのかがわからないと、無駄な努力をしてしまいかねません。
それはもったいない!
ということで、飲み物・・・特にアルコールを中心に糖質の量を調べました。
お酒は美味しく、心置きなくのみたいですからね。
炭酸飲料 コーラ サイダー キュラソー ミント 蒸留酒 ライム梅酒 甘酒 ビール スタウト 黒ビール 発泡酒 エールビール 紹興酒 清酒 本醸造 純米吟醸 葡萄酒 ぶどう酒 ワイン ジン ラム ウォッカ 焼酎 ウイスキー ブランデー マオタイ 角砂糖 換算 糖質量 日本食品成分表 
主なアルコール飲料の糖質含有量
ただ、糖質の重さを見たのではわかりにくいので、角砂糖の量に置き換えてみました。

油断できないですね。夏のビアホールでビールをジョッキでゴキュゴキューッと駆けつけ三杯!なんて飲んでしまったら角砂糖9個!
こうしてビール腹が作られるわけです。

糖質4g=角砂糖1個=小さじ1

角砂糖にもいろいろありますが、だいたいこんな感じ。
お酒のグラスの中に角砂糖がコロコロ入っているところを思い浮かべると、あと一杯をがまんできるかも。

お酒は甘さを感じにくい

ビールにこんなに糖質が入っているなんて驚きませんでしたか?ビールは麦芽の甘味を緩和するためにホップの苦味を効かせているんです。
だから、表のように角砂糖がコロコロしてしまうんです。

プラス、お酒はアルコールの刺激で甘さを感じにくくなるので、それも、糖質で補うことになります。
詳しくいうと、糖質の中でも果糖は冷やしても甘味が減らないのですが、そのお話は別の機会に。

レモンやライム、梅干しなどを添えて飲む場合も甘さが分かりにくくなります。
それでもカクテルが甘くておいしいのは、フルーツの酸っぱさを補って余りある糖質が入っているっていうことですね。

それから、騙されやすいのがトニックウォーター。
トニックウォーターの糖質は、250mL中22.5g、角砂糖5.5個分です。サワーなども注意が必要ですね。

じゃあどうすればいいかというと、ジンやウイスキーといった蒸留酒(表中の薄いブルー範囲のお酒)がおすすめです。

ミントの葉を入れたり、糖質の入っていない炭酸水で割ったり、アレンジできるところも魅力。
果物のレモンやライムを絞って入れてみるのもきれいですね。

個人的には、やっぱりビールが飲みたいので、糖質0のものを常備しています。
各社競って商品開発をしているので、結構おいしくなってきましたよ。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
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糖毒性で糖尿病予備軍に??
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スポーツドリンクで糖尿病に? 

今日は、糖質がとても多い清涼飲料水、スポーツドリンク、ジュースのリスクについてお話します。

ジュース 角砂糖いくつ分
主な飲料中に含まれる糖質の量


上の表は主な飲料100g中に含まれる糖質の量を並べたものです。
正確には各飲料の比重によりますが、だいたい100gは飲料100mLに相当すると考えていいでしょう。

例として、コーラ1缶350mLはこの表の糖質量の11.4×3.5=39.9gの糖質を含んでいることになります。

参考にコップ1杯180mLに含まれる糖質の量を推算して、それを角砂糖(4g)に換算しました。
ちなみにアップルパイ100g(小さ目に一切れぐらいですかね)で31.4gの糖質が含まれているそうです(文部科学省 食品成分データーベースより計算)。
コーラ1缶はアップルパイ一切れ以上の糖質を含むわけです。

表からもわかる通り、各種果汁のジュースに負けないくらい、炭酸飲料、コーラ、サイダーには糖質がてんこ盛りです。
注意しなければならないのは、缶コーヒーなどのコーヒー飲料も加糖タイプでは糖質が多いことです。

表にはありませんが、スポーツドリンクにも意外に多くの糖質が含まれていることも知られていません。
参考に代表的なスポーツドリンクの100mL当たりの成分(各メーカー発表値)は、

  • ポカリスエット 炭水化物:6.7 g
  • アクエリアス   炭水化物:4.7 g

です。

炭水化物=食物繊維+糖質。
これらのスポドリの中には食物繊維はほとんど含まれていないでしょうから、ペットボトル500mLでは、糖質量は

  • ポカリスエット 33.5g
  • アクエリアス  23.5g

コーラ350mLに近い糖質量ですね。

私が学生の頃は、部活中は飲み物禁止だったので、夏には部活の終わった後に2Lのポカリを一気飲みしていましたが、恐ろしいことですね。


糖質ゼロ食の提唱者の1人で、ご自身もアスリートだった釜池豊秋医師(2013年現在、今は医師をやられていないそうですが)も、アスリートに高血糖の人が多いことを著書のなかで指摘していて、その原因はスポーツドリンクだと推察されていました。
スポーツ時には汗をかき暑いので、冷たいものが渇きをいやします。
それに加えて、甘いものは疲れをいやしてくれるように感じます。

皆さんも感じられたことがあると思いますが、特に冷たい飲み物は甘さを感じにくいので、のどの渇きを解消するために、甘い味の飲料をたくさん飲む機会も多いのかもしれませんね。

また、冷やして飲む飲料の甘味づけには果糖や高果糖コーンシロップを使うことが多いようです。これは、果糖は冷やしても甘みが弱くならない性質があるからです。

果糖については別のページで解説してありますが、果糖の摂りすぎは身体によくないことを知ってください。
ブドウ糖と果糖の毒性
⇒果糖はブドウ糖より危険
⇒果糖は別腹

一方、同じ嗜好飲料でも、レギュラーコーヒーやお茶類には糖質はほとんど含まれてません。
ジュース 角砂糖いくつ分?
加糖飲料の危険性が次々証明
のどの渇きを潤すには砂糖の入っていないレギュラーコーヒーやお茶類が良いようです。

また、野菜ジュースやトマトジュースは健康にいいって思っていませんか?
ところが、これも注意しないと、結構な糖質が含まれています。
飲む前に、成分を確かめたようがよさそうです。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
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2014年5月17日土曜日

お酒と糖類の依存性

「酒は百薬の長」は本当でしょうか?


冬の熱燗、夏のビール、お酒がおいしいシーンは多いですよね。また、お酒が持つ作用で、楽しくなったり、リラックスできたり、メリットもあります。
でも、お酒の飲みすぎで二日酔いになったり、長期に大量に飲酒すると肝臓病や膵炎、喉頭がん、食道がんや大腸がんになったり、デメリットも多いようです。

アルコールと糖は似た化学構造


糖とアルコールの化学構造

ここでも、ちょっとお酒を化学的に見てみましょう。
お酒の主成分はエチルアルコールです。
私たちが普段「アルコール」と呼んでいるのは、「エチルアルコール」のことです。
上の図を見ると、アルコールも果糖やブドウ糖も同じ形を持っているのが分かります。
エチルアルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに変えられます。
上の図の青とピンクで囲った部分に注目です。
青い部分のC-OHはアルコール性水酸基といって、条件がそろえば簡単にピンクで囲った部分のH-C=Oの形に変換されます。
H-C=Oの形はアルデヒド基といって、酸化されやすく(還元性があるともいう)、ほかのものと反応しやすい性質をもっています。
そのために、体に吸収されると、体の構成成分であるDNAやタンパク質と結びつきやすい性質があります。
糖がくっつくので「糖化」と呼びます。
糖化されるということは、余計なものが結合(付加体産生)するのですから、DNAやタンパク質は正常に働けなくなります。
これがアルデヒドの毒性です。
AGE(エージーイー)って聞いたことがありませんか?
タンパク質に糖が結合(「糖によるタンパク質の糖化」といいます)したもので、老化物質とされています。

話がそれました。
アルコールからできるアセトアルデヒドが悪者だというところから仕切り直します。
アセトアルデヒドができたことを察知すると、肝臓は2型アルデヒド脱水素酵素を使って、アセトアルデヒドを毒性の低い酢酸の形にしてから、血中に放出します。
酢酸は皆さんご存知の「お酢」で、毒性はありません。

このように栄養や成分の形を体内で変えることとを代謝といいます。
飲んだアルコールの量が多いと、どんなに肝臓ががんばって働いても代謝が追いつかなくなります。
そうなるとアセトアルデヒドを酢酸の形にしきれずに、血中にアセトアルデヒドが出てきてしまいます。
アセトアルデヒドの血中濃度が高いと顔が赤くなり、頭痛、吐き気、嘔吐などの中毒症状がでます。
そう、これが二日酔いです。
糖と同様に、アルコールも取りすぎるとよくないようです。

依存性・習慣性=アルコールと糖の怖い共通点

アルコール依存症(中毒)という病気があります。
お酒を飲まずにいられなくなる病気です。
怖いですよね。

アルコールと糖には、
摂らないでいることができなくなる=依存性
繰り返し摂りたくなる=習慣性
という点が共通しています。

誰でも褒められると嬉しくて、また次も頑張ろうと思いますよね。
これは脳の「報酬系」と呼ばれる神経回路が働くためです。
もう少し詳しくお話しすると、脳の報酬系が刺激されると、快楽物質と呼ばれるドパミンが脳内に放出されます。
このドパミンこそ、「気もちよい」と感じさせる物質。
ドパミンは他にも、達成感、やる気、集中力を高める作用を持っています。
アルコールも糖も、吸収されて脳に入ると脳のこの回路を刺激してドパミンを放出させる作用を持っているので、脳は心地よさ、楽しさを感じます。
お酒で楽しくなったり、気が大きくなったりするのもドパミンのこの作用です。
脳と報酬系では、ドパミンによる快楽を得るために、ドパミンを放出させるものをさらに、繰り返し求める性質があります。
これが依存性・習慣性の原因です。
このような、「報酬系」よる欲望の仕組みは、生物の進化の歴史上で、生物が常に飢餓と欠乏に見舞われていたために獲得した性質です。
これらの仕組みを理解して節制しないと、脳が発する際限ない欲望に負けて、必ず健康を損なうことを覚えておいてください。

さらに、アルコールにも、糖にも、耐性といってだんだん欲しがる量が増えてゆく共通点もあります。
同じ刺激を繰り返し受けているうちに、慣れてしまい、もっと欲しくなるのですね。

お酒は毎日飲んでいると、肝臓のアルコールを代謝させる酵素が多くなって、だんだんお酒に強くなり、同じ酒量では酔いにくくなり酒量が増えてゆきます。
糖類が入った甘いものでも、同様です。甘いものをちょっとだけ食べると、もっと食べたいと思いませんか。
そして、今食べたスイーツより、さらに甘いスイーツを求めて、量も甘さも増えてゆくことが多いはずです。

まとめると、
糖類とアルコールには

○依存性(中毒性)・習慣性があり、摂らないでいることができなくなる
○繰り返し摂りたくなる
○だんだん満足するために必要な量が増えていく

という怖い性質があります。

アルコールの場合は、飲みすぎれば二日酔いになったり下痢をしたりして、アルコールの毒性を自覚してブレーキがかかりやすいですが、糖類は甘くおいしいだけで、短期的には毒性を自覚しにくいので、より危険だとも言えますね。
そして、時間をかけて太っていくのです・・・。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
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果糖は別腹

果糖は別腹の理由を説明しましょう。

果糖は、文字通り果物に多く含まれる単糖ですが、その美味しさのために多くの加工食品にふんだんに使われています。
言うまでもなく美味しいものは、食べ過ぎの危険と裏腹です。
果糖の性質と果糖に対する生物の生理ををよく理解しておくとよいと思います。

①満腹を感じにくい
果糖を摂っても、直ぐには血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が上がらないため、インスリンが出てきません。
インスリンは脳の満腹中枢に働いて「もう食べるな」という信号を出しますが、これが働かないのです。

②果糖を摂るともっと食べたくなる(食欲亢進)

果糖は脳の視床下部という食欲をコントロールする場所でAMPKという酵素を活性化させて、食欲を亢進させることが分かりました。
さらにAMPKが活性化すると、肝臓で作られるブドウ糖の量も多くなることがわかりました。

Cha SH, Wolfgang M, Tokutake Y et al: Differential effects of central fructose and glucose on hypothalamic malonyl-CoA and food intake. Proc
Natl Acad Sci USA 2008; 105: 16871-5.

Yang CS, Lam CK, Chari M et al: Hypothalamic AMP-activated protein kinase regulates glucose production. Diabetes 2010; 59: 2435-43.

Kinote A, Faria JA, Roman EA et al: Fructose-induced hypothalamic AMPK activation stimulates hepatic PEPCK and gluconeogenesis due to
increased corticosterone levels. Endocrinology 2012; 153: 3633-45.

③痩せホルモンが出てこない

食欲や体重をコントロールする、俗に「痩せホルモン」とも呼ばれるホルモンがあります。
レプチンといって、脂肪組織から分泌されるホルモンです。
レプチンは、満腹のときのようにエネルギーが余っていると、脳の視床下部に作用して、全身の細胞にエネルギー(カロリー)を消費させるようにシグナルを出します。
このとき、「もうおなかが一杯だから食べなくていいよ~」という満腹サインも出します。
レプチンの濃度は血液中のブドウ糖の濃度、つまり血糖値が上がると上がります。
ところが、果糖を摂っても直ぐには血糖値は上がらないためにレプチンの分泌は増えません。
ということは、満腹サインも出ませんし、カロリーを消費させるシグナルも出ないのです。

④食欲が湧くホルモンを下げない

レプチンとは反対に、食欲が湧くホルモンがあります。
グレリンといって、血糖値(血中ブドウ糖値)が上がると濃度が下がり、満腹サインを脳に出してくれます。
でも、果糖は摂っても直ぐには血糖値が上がらないので、グレリンが下がらず、満腹サインが出ません。

①~④をまとめると、

果糖を摂ると、満腹を感じにくく、もっと食べたくなり、カロリーが消費しにくくなる、

つまり、果糖は別腹、ということです。


糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
糖類を食べるとおなかがすく?
糖質は食べ物でとる必要はない?
糖質制限で二日酔いから解放?
アルコール飲料 角砂糖いくつ分?
スポーツドリンクで糖尿病に? 
お酒と糖類の依存性
あなたの1日の糖質量
糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
4~5人に1人が糖尿病予備軍!
糖毒性で糖尿病予備軍に??
グルコーススパイクに注意
インスリンは肥満ホルモン?!
早食いはメタボの元
厚労省お墨付き栄養法で糖尿病?
低GI食品って意味ある?
やっぱりGIはあてにならない
糖尿病予備群は癌リスクが15%高い



果糖はブドウ糖より危険

ブドウ糖はダメでも果糖なら大丈夫なの?

果糖というと、いかにも健康によさそうですね。
本当のところはどうなんでしょう?
果糖(フルクトース)ブドウ糖(グルコース)の性質を比較してみましょう。

①果糖はブドウ糖より小腸からの吸収が遅い

ブドウ糖(グルコース)は小腸の細胞膜を通過して体内に吸収されるとき、ブドウ糖専用の門(トランスポーターといいます)を通ります。
しかし、ブドウ糖はひとりで通ることはできず、ナトリウムの助けが必要です。
ナトリウムは積極的にブドウ糖を優先してこの門から吸収させます。

実は、果糖もこの種類の門を通って吸収されるのですが、果糖にはお助けがなく、細胞膜の門を順番を待って通り抜けます。
だから、吸収が遅いのです。
ブドウ糖の吸収速度を100%とすると43%の速さです。

果糖は小腸から吸収された後、肝臓で大半がブドウ糖に変換されますが、吸収が遅いので、食後直ぐの血糖値には影響しません。
しかし、肝臓では果糖が原料となりブドウ糖を作ることが盛んになるので、結局、血糖値は上がります(食後約30分以降)。


②果糖のインスリン分泌刺激はブドウ糖よりはるかに弱い。 でも、ブドウ糖と同時に果糖を摂ると、より多くのインスリンが分泌されてしまう

インスリンは肥満ホルモンと呼ばれ、ブドウ糖を体に蓄えるように働きます。

これまで、果糖はブドウ糖に比べて、膵臓ベーター(β)細胞からのインスリン分泌を促す作用がはるかに低いとされていました。

ところが近年の研究で、ヒトとマウスの膵臓β細胞に果糖とブドウ糖を同時に与えたら、膵臓β細胞の甘味受容体が活性化されて、より多くのインスリンが分泌されました。
また、甘味受容体を不活性にすると、果糖が存在してもインスリンは分泌されませんでした。

つまり膵臓が甘味受容体を通じて果糖を感知したときにブドウ糖がともに存在すると、インスリンを多く分泌することがわかったのです。
PNAS 2012 109 (8) E524–E532; published ahead of print February 6, 2012,doi:10.1073/pnas.1115183109

インスリンは肥満ホルモンですので、果糖+ブドウ糖の組み合わせは、肥満のリスクを上げるといえます。

③果糖はブドウ糖よりも、インスリン抵抗性を増して、血中コレステロールを上げる

健康な21歳から25歳の人に、果糖、ブドウ糖、砂糖(砂糖には果糖とブドウ糖が1:1の割合で含まれています)をそれぞれ食事とともに摂らせて、比較する試験が最近報告されました。

その結果、日常的に摂取している量(1日40g)でさえ、果糖、砂糖(果糖:ブドウ糖=1:1)を摂った場合は、ブドウ糖を同じ量摂った場合に比べて、インスリン抵抗性が増加して、血中のコレステロールと脂肪(遊離脂肪酸)が上昇しました。

インスリン抵抗性を持つことは、糖尿病への第一歩です。

研究者らは、肝臓でのインスリン抵抗性を上げる点で、果糖はブドウ糖に比べて毒性が高く、果糖を摂ることで心臓病や脳卒中などになるリスクが上がると指摘しています。


④果糖はブドウ糖よりも血中の中性脂肪を上げる(高トリグリセリド血症)

ブドウ糖が肝臓に吸収されると、インスリンの作用でブドウ糖を原料にして脂肪酸、中性脂肪(トリグリセリド)、コレステロールという脂質が作られます。

脂質は水に溶けないため、そのままでは血中に入っていけません。
そこで、タンパク質と結びついてVLDLになって、血中に出て全身に行きます。

VLDLというのは、悪玉として有名なLDLコレステロールの仲間で、LDLよりも比重が軽いものです。
脂質を血液に乗せて運搬するための船のようなものだと思ってください。


ブドウ糖の摂取でインスリンが分泌されると、LPL(リポタンパクリパーゼ)という中性脂肪(トリグリセリド)を分解する酵素が働いて、中性脂肪を分解して脂肪酸にして全身の細胞に取り込ませます。
ですので、血中の中性脂肪は増えません。


果糖(フルクトース)は肝臓に吸収されると、肝臓で速やかに代謝されて中性脂肪(トリグリセリド)になります。
そのため、中性脂肪(トリグリセリド)がどんどん産生されて、大きなVLDLが血中に出ていきます。

一方、果糖は単独ではインスリンの分泌をあまり促進しないためLPL(リポタンパクリパーゼ)が働きません。
ですので、血中の中性脂肪が増えて、高中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)になってしまいます。

①~④をまとめると“果糖はブドウ糖より身体によくない”

つまり、果糖は吸収されるのは遅いので血糖値が上がりにくいけれど、いったんブドウ糖と一緒に吸収されると、ブドウ糖以上の悪さを働くということです。

果糖というとブドウ糖より健康に良さそうなイメージがありますが、実は、血中の中性脂肪や脂肪酸、VLDLなどを増やす作用は強いんですね。



果物には読んで字のごとく果糖が多く含まれるといわれますが、果物には果糖のほかにもブドウ糖、砂糖(ショ糖)など多くの種類の糖が含まれ、果物の種類によってそれぞれ割合が違います。


果糖には、10℃ぐらいに冷やすと甘みが増すという特徴があります。
ですから、冷やして食べると甘みの増す果物(リンゴ、梨、ビワなど)は果糖が多いといえるでしょう。
果物はそのまま食べるのは問題になりません。
しかし、ジュースやスムージー、シャーベットなどに加工したものは、意外なほど多量の果物の摂取になってしまいます。
食べすぎには注意ですね。


注意が必要な成分表示は

果糖とブドウ糖が1:1の割合で含まれる砂糖(ショ糖)の取りすぎは良くないですね。
もっとも要注意なのは、甘味料として食品や飲み物に添加されている果糖です。
「果糖」と書かれているものだけでなく、

「ブドウ糖果糖液糖」、
「果糖ブドウ糖液糖」、
「高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖」

などと書かれている場合もあります。
どれも異性化糖(高果糖コーンシロップ)を意味しています。

冷やして食べることが多いアイスクリームや清涼飲料、スイーツには、果糖の冷やして甘さが増す性質を利用するために異性化糖がよく使用されています。
これらの表示のある製品には果糖とブドウ糖がたっぷり入っていると思って間違いありません。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
果糖は別腹
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糖質制限 糖質は何gまでOK?


糖尿病
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ブドウ糖と果糖の毒性

ブドウ糖と果糖は双子の兄弟だけど

米や小麦粉(デンプン)などに含まれるブドウ糖(グルコース)と、果物に多い果糖(フルクトース)。
どちらもよく目にする甘味料ですね。
この二つについて知っておくことは、糖質制限をするうえでポイントになります。
化学構造を比べてみましょう。

下の絵が化学構造です。
化学の苦手な人にはちょっとわかりにくいかもしれませんが、ざっと形を眺めてください。
ほとんど同じ構造で、まるで双子の兄弟のようです。

まずは、上のブドウ糖をみてください。
真ん中の魚の背骨のようなまっすぐ(鎖状)なブドウ糖は、左右にある輪っか(環状)の形にもなります。
1番のC(炭素)につながっているO(酸素)が5番目のCとつながって丸くなるのです。

また、下の果糖は、ブドウ糖と1と2のCの部分が変わっているだけです。
これも、まっすぐになったり、環になったりします。
それだけでなく、果糖は、上のブドウ糖にも、簡単に形を変えることができるのです。

ブドウ糖や果糖は毒性(糖化作用)がある


実は、下の絵で、ブドウ糖の1のピンク色部分には酸化されやすく(還元性があるともいう)、ほかのものと反応しやすい性質があります。
ですから、体に吸収されると、体の構成成分であるタンパク質と、簡単に結びついてしまいます。
糖が結びつくことでタンパク質は通常通りの働きができなくなります。
よくない作用といえますね。

糖がタンパク質に結びつくことをタンパク質の糖化といいます。
結びついてできたものはAGE
終末糖化産物とか最終糖化産物とも呼ばれます。
今話題の、老化物質の1つですね。

糖尿病の指標となる、糖化ヘモグロビン(HbA1c)も赤血球のタンパク質であるヘモグロビンにブドウ糖が結びついたものです。
糖尿病では血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上がるために、ブドウ糖が赤血球に結びついてしまい、HbA1cが多くなります。
こうなると赤血球は本来の働きをしにくくなってしまっています。
糖尿病患者さんが血管の病気になりやすい原因の1つとされています。



ブドウ糖(グルコース)、果糖、構造、化学平衡


果糖はブドウ糖よりも毒性が高く、肝臓で早く処理される

上の絵のように、ブドウ糖は血液の中で、真ん中のまっすぐな形となったり、両側の輪っかの形となったりしています。
これを平衡といいます。
とはいっても、真ん中のまっすぐな形にはわずか0.25%ぐらいしかなりません。

輪っかの形のブドウ糖には1のピンク色の部分がないので、還元性がありません。
つまり、毒性を発揮しません。

ところが、下の果糖は血中に入ると、70%もがまっすぐな形になります。
なんとブドウ糖の280倍!
そのうえ、先ほどの説明の通り、果糖はブドウ糖になりやすいので、まっすぐなブドウ糖に形を変えて毒性を発揮してしまいます。

果糖の摂りすぎは肥満の原因

このように、果糖は体にとってとても危険な存在。
だから果糖が吸収されると、肝臓は速やかに果糖の形を変えようとがんばって処理(代謝)します。

まずは、果糖を中性脂肪(トリグリセリド)に変換するので、中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)になります。
もちろん、これは肥満の原因。

それでも処理しきれなかった過剰な果糖は、乳酸という物質になって血中に出ていって血液を酸性にします。
それに、肝臓はとても頑張り屋さんなので、果糖をたくさん摂りすぎると疲れてしまいます。
そう、果糖は肝臓にとってかなり迷惑な存在だったのです。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
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2014年5月16日金曜日

「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い

今日は糖の仲間の呼び方についてお話します。

上手にムダなく糖質制限をしようと思ったら、食品中の栄養成分をなるべく正確に知ることが大事です。
実は糖質がほとんど入っていないものをがまんして、かわりに糖質の多いものをそうとは知らずに摂っていた・・・なんていうことになったら、一大事ですからね。
そんな間違いを起こさないために、まず栄養素や成分についての用語の知識を整理してみました。

「糖類」「糖質」「炭水化物」・・・違いは何?


カロリー制限や糖質制限用の食品や飲み物には、「糖質0」とか、「糖類ゼロ」、「カロリーオフ」、「カロリーゼロ」など、表示されています。
まずは、これらが何を指しているかを説明します。

↓の図(ベン図ですね…懐かしい)をよく見てください。

この中で、何が血糖値をあげるかわかりますか?

イヌリン、ポリデキストロース、セルロース、 難消化性デキストリン、多糖類、グルコース、ぶどう糖、 フルクトース、果糖、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン、糖アルコール、還元麦芽糖水飴、エリスリトール、キシリトール、 マルチトール、ラクチトール、アセスルファムK、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、砂糖、ショ糖、スクロース、 乳糖、ラクトース、麦芽糖、マルトース、 トレハロース、異性化糖、高果糖コーンシロップ、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖


答えは、赤字で示したものです。

赤: 血糖値をあげるもの
紫: 大量に摂ると血糖値をあげるもの
黒: 血糖値をあげないもの

糖類はもちろんですが、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン、還元麦芽糖水飴も、血糖値をあげやすい成分です。
水飴は大丈夫とか、オリゴ糖は消化されない、なんてことはありません。

集合の包含関係の大きい順に

炭水化物>食物繊維≧糖質糖類となっていることに注目です。

さて、

糖質オフ」とは、

食品100g当たり、糖質の含有量が5.0g未満(飲料100mLでは2.5g未満)の製品で表示可能です。
この基準を満たせば、「低」、「ロー」、「カット」といった“低い”を意味する言葉を使用できます。

糖質ゼロ」とは、

食品100gあたり(飲料100mLあたり)、糖質の含有量が0.5g未満の製品で表示可能です。
この基準を満たせば、「ノン」、「レス」、「無」といった“含まない”を意味する言葉がつかえます。

では、「糖類オフ」と「糖質オフ」との違いは?

どちらも含有量が5.0g未満(飲料100mLでは2.5g未満)の製品ということ。
ただし、なにが「オフ」になっているかの対象が違います。
もう一度上の図を見てください。

糖類オフ」の場合は
上の図中のグリーン色の中にある成分が対象となります。
例えば、砂糖と果糖を含んでいて、その総量が5.0g未満(飲料100mLでは2.5g未満)の製品ということです。

一方、「糖質オフ」の場合は、上の図中のピンク色とグリーン色の両方の成分が対象です。
例えば「糖質」としてオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、人工甘味料スクラロースが入っていて、砂糖や果糖などの「糖類」は入ってなくて、その総量が、5.0g未満(飲料100mLでは2.5g未満)の製品は「糖質オフ」と表示できます。
これは納得です。

しかし!!
仮に、この製品に「糖類」の砂糖と果糖が加えられても、
加えられた砂糖と果糖の総量が、5.0g未満(飲料100mLでは2.5g未満)であれば、「糖質オフ」、または、「糖類オフ」と表示できてしまうのです。
それは、炭水化物、糖質糖類の“それぞれ”の含有量が、それぞれ基準を満たしていれば、それぞれ表示してもよい、というルールがあるからです。
場合によっては、糖質オフ」と「糖類オフ」を両方表示している製品のほうが、総量としての炭水化物含有量が多いというマジックが生まれかねません。

さらーに!

「50%オフ」、「糖質2分の1」はどういう意味???

こういう表示の製品はよく見ると「当社製品に比べて糖質50%オフ」などと書かれているはずです。このような表示をするための条件は

  1. 比較対照する製品が明らかである。
  2. 両製品で比較される内容成分の差が、食品100g当たり5g以上、飲料100mL当たり2.5g以上ある。

ことが条件だそうです。


日本での食品の成分の表示は入り組んでいます。
ここでは詳しくは触れませんが、表示義務を規定している法律とそれぞれの規制当局が異なり、複雑になっているのが一因でしょう。
メーカーのキャッチコピーに惑わされない賢い消費者にならないと、努力が無駄になりかねませんね。

ちなみに上記のことは、他の栄養素やカロリー(熱量)でも同じルールで表示されています。

商品の成分表示は字が小さくて読むのがつらいですが、がんばって熟読すると、いろいろ気づくことが出てきますよ。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
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何を食べると血糖値が上がる?

血糖値が上がる栄養素はなんでしょう?

1.炭水化物
2.脂質
3.タンパク質


正解は「炭水化物」です。
それ以外は血糖値をあげません。
意外でしょう?

アメリカ糖尿病学会は、糖尿病の教科書で「炭水化物・タンパク質・脂肪はみなカロリーを含んでいる。しかし、炭水化物だけが、血糖値に直接作用する*」と書いています。

*出典:Life With DiabetesA Siries of Teaching Outlines by the Michigan Diabetes Research and Training Center , American Diabetes Assoiation ,4th Edition,2009

実は、以前は、「糖質は100%、タンパク質は約50%、脂質は10%未満が血糖に変わる」
とされていました。
現在では、

糖質のみが血糖値をあげる

ことが分かっています。

また、下の表のように、血糖値を大きく上げるのは、デンプン(白米や小麦粉など)や果物の中の果糖(フルクトース)であることもわかっています。

炭水化物 脂質 果物 牛乳 野菜 肉 魚 脂肪 脂質
血糖値を上げる食物

お肉や魚、脂質は血糖値をあげないのですね。

糖質や糖尿病については下記もご覧ください。

糖質
血糖になる栄養素
何を食べると血糖値が上がる?
「糖類オフ」と「糖質オフ」の違い
ブドウ糖と果糖の毒性
果糖はブドウ糖より危険
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糖質制限 糖質は何gまでOK?


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血糖になる栄養素

ブドウ糖(グルコース)、アミノ酸、脂肪酸 脂肪酸、長鎖、短鎖 リンパ 中性脂肪 短い脂肪酸 リポタンパク カイロミクロン キロミクロン 静脈  動脈 消化に時間がかかる 吸収できない エネルギー 栄養素 リノレン酸 トリプシン キモトリプシン 肉 早い栄養素 膵液 化学構造 アミノ酸 すぐに吸収
血糖値といえば、血液中の糖の濃度。
この「糖」とは何を指しているかご存知ですか?
いろいろある糖の中でも、「グルコース」の濃度を示しています。
グルコースのことをブドウ糖ともいいます。

血糖値をあげる栄養素は何?

では、血糖、つまり血液中のグルコースとなる食物・栄養素は何でしょう?
「糖質」です。
三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)のうちの炭水化物は、糖質と食物繊維を合わせたもの
ですから、糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたものです。
この辺のお話はまた、別の機会に。
⇒糖の仲間の呼び方について

ここでは、どうやって糖質が吸収されて、血の中で血糖となるのかをみてみましょう。
中学受験 理科 生化学 消化 吸収の仕組み 体の仕組み 食べ物 どこから吸収 吸収が早い 
消化の模式図


食べ物は、この絵のように、噛んで飲み込まれて、胃、十二指腸、小腸と消化器の下の方へ送られ、
だんだん消化されて、小さくなっていきます。
栄養素の多くが、小腸で吸収されます。

このように、栄養素にするために、吸収できるように小さくしていくことを消化といいます。

なぜ、消化する必要があるのでしょう?

小腸の表面の細胞(上皮細胞)が腸内の栄養素を取り込もうとしても、栄養素がある一定の大きさまで消化されて、吸収できる化学構造になっていないと、取り込めないからです。



炭水化物の消化と吸収

デンプンは単糖になって吸収される

パンを食べたとします。
その主成分はデンプン。、
グルコース(ブドウ糖)が連なった形をしています(下図)。

デンプンは、まず、口の中で唾液中の消化酵素のアミラーゼで分解されます。
これは、小学校の頃、理科の実験で試したことがありますね。
お米にヨウ素液を掛けると紫になるけれど、くちゃくちゃ噛んでからヨウ素液をかけると、色がつかない、というあれです。
これは、噛むことでお米のデンプンが消化されて切り分けられることで、ヨウ素デンプン反応が起こらなくなるためです。

このとき、デンプンはランダムにブツブツ切られて、グルコース(ブドウ糖)が連なった形になります。

この状態で胃を通過して十二指腸までたどり着くと、膵液の中の膵アミラーゼでさらに細かく切られます。
下のイラストにある、グルコース(ブドウ糖)2つが連なっているものはマルトース(麦芽糖)です。
十二指腸を通過して小腸まで行くと、今度はマルターゼが働いてグルコース(ブドウ糖)となります。

糖質は、こうやって1つの糖の形にならないと吸収されません。
1つになった糖の形を単糖といいます。

アミラーゼ、マルターゼ 中学受験 理科 生化学 消化 吸収の仕組み 体の仕組み 食べ物 どこから吸収 吸収が早い グルコース ブドウ糖 マルトース 麦芽糖 消化酵素 タンパク質 たんぱく質 胃 中学受験 生化学 単糖類 でんぷん デンプン 膵臓 ショ糖 砂糖 果糖 血糖値 糖質 甘草 小腸 糖尿病 消化 分解 バラバラ 時間がかかる 全身 炭水化物
炭水化物の消化(デンプン~麦芽糖~ブドウ糖) C=炭素 O=酸素 H=水素

吸収されたグルコースは、肝臓から全身へ

小腸の壁から吸収されたグルコースは、門脈という血管を通じて肝臓に運ばれます。
肝臓から上大静脈という太い血管を経由して全身に流れます。
これが血糖となるのです。


グルコース(ブドウ糖)を食べれば、すぐに血糖値が上がる

糖質はバラバラにされ、グルコースなどの1つの単位(単糖)になるまで、時間がかかります。
でも、いったんグルコースになると、速やかに全身を流れます。
ですから、はじめから単糖の形の糖質を摂ると、すぐに血糖値が上昇するわけですね。


ちなみに、糖尿病患者さんが薬の副作用などで低血糖になると、砂糖ではなく、グルコースを摂ります。
砂糖(ショ糖)はグルコースと果糖が1つずつつながったものです。
だから、血糖値を速やかに上げたい場合には、グルコースと果糖に消化(分解)する手間がかからないグルコース(ブドウ糖)を使うのです。

このように糖質、特に単糖類は「速い」栄養素といえます。
すぐにエネルギーとなり、瞬発力を支えてくれます。
ですので、成長期の人や、アスリート向けの栄養素といえるでしょう。

さて、では他の栄養素はどうでしょう?

タンパク質の消化と吸収


肉を食べたとします。
その主成分のタンパク質。

タンパク質はアミノ酸2~3個にまで消化される

タンパク質は、色々な種類のアミノ酸が立体的に連なった形をしています。
まず、で消化酵素ペプシンで立体的な形を崩され、さらに小腸では膵液の中のトリプシン、キモトリプシン、ペプチダーゼ類で分解されます。
最終的には、ほとんどが1つのアミノ酸か、2~3個連なった形にまで分解され、最後には小腸の上皮細胞の表面にある酵素で、1つのアミノ酸にしてから、吸収されます。

中学受験 理科 生化学 消化 吸収の仕組み 体の仕組み 食べ物 どこから吸収 吸収が早い ブドウ糖(グルコース)、アミノ酸、脂肪酸 脂肪酸、長鎖、短鎖 リンパ 中性脂肪 短い脂肪酸 リポタンパク カイロミクロン キロミクロン 静脈  動脈 消化に時間がかかる 吸収できない エネルギー 栄養素 リノレン酸 トリプシン キモトリプシン 肉 早い栄養素 膵液 化学構造 アミノ酸 すぐに吸収
タンパク質の消化(C=炭素 O=酸素 H=水素 N=窒素)

吸収されたアミノ酸は、ほとんどがタンパク質に組み直される


これらのアミノ酸は、まず肝臓に運ばれて、大半はタンパク質に組み直されます。
なんだ、じゃあ、分解しなければよかったのに、と思われるかもしれませんね。
分解するには理由があります。

その時に体が必要な種類のタンパク質を必要な量だけ作る必要があるためです。
それに、ほかの生物を構成しているタンパク質では、微妙に形が違います。
ブタ肉と牛肉では味が違いますよね・・・

もう少し難しい話をすると、自分のものではないタンパク質は、排除するようなシステムが、私たちの体には備わっています。
このシステムが作動する結果起こるのがアレルギー。
ですから、食べた物が体の中に入った時に異物として認識しないように、自分用のタンパク質に作り変える必要があるのでしょう。

肝臓で作られるタンパク質、全身の組織で作られるタンパク質


肝臓でアミノ酸をもとに作られ(合成され)るタンパク質は、アルブミン、α‐グロブリン、β‐グロブリン、リポタンパク、フィブリノーゲン、プロトロンビンなどの血漿タンパクと呼ばれるものです。

肝臓で血漿タンパクに合成されなかったアミノ酸は、血管を通じて、全身に運ばれて、それぞれの組織(臓器)に必要とされる分だけタンパク質に組み立てられます。

このように、吸収されたアミノ酸は、ほとんどが体内で新しいタンパク質の原料となります。
でも、一部、例外があるんです。

タンパク質にならないアミノ酸は

アミノ酸の一部(糖原生アミノ酸)は肝臓でグルコースに変換されますが(糖新生)、絶食などをして血中のグルコース濃度が(血糖値)が著しく低くない限り、血糖値をすごく上げるほどには変換されません。

糖新生の量は、一定の血糖値(おおよそ100mg/dL)を維持するようにプログラムされています。
ですので、カロリーが不足していなければ、タンパク質を食べても、血糖は上がらないわけです。

また、グルコースに変換される場合でも、グルコースになって肝臓から放出され、血糖になるには3-4時間かかるようです。

アミノ酸がグルコースに変換される糖新生については改めてお話します。


また、血液中のアミノ酸バランスは、常にほぼ一定になるようにコントロールされています。
これは、それぞれの組織(臓器)必要なときに必要なアミノ酸を供給できるようにしているのでしょうね。

脂肪(脂質)の消化と吸収


脂肪は消化・吸収が遅い

最後に脂肪です。
健康診断で中性脂肪とかトリグリセリドとか書かれているのがこれです。
三大栄養素としては脂質となっています。

脂肪を多く含む食品は「腹持ちがいい」ことが多いと思いませんか?
たとえばお昼に揚げ物なんかを食べると、「もたれちゃって夜までおなか空かなかった」、なんて体験もあるでしょう。

実は、脂肪は消化・吸収がきわめて遅いのです。
だから、脂っこいものを食べると、なかなか消化・吸収が進まなくて、「もたれ」、「重さ」などを感じることが多いのですね。

脂肪はまず、グリセリンと脂肪酸に分解される

グリセリンに3つの脂肪酸がくっついたものが脂肪です。
下の図の左上のピンクの部分を見てください。
脂肪は、このピンク部分のように、とても大きい(長い)化学構造を持っています。

左の縦に並んでいる3つのC(炭素)酸素(O)水素(H)がくっついたところがグリセリンです。
赤い点線の右の部分が脂肪酸
この赤い点線のところで、グリセリンと脂肪酸に切られます。
これを行うのは、胃液や膵液に含まれるリパーゼという消化酵素です。

脂肪酸と一言で言っていますが、脂肪酸には図のように色々なものがあります。
どれも、炭素(C)の鎖の端に、カルボン酸(COOH)がついています。

小さい方が吸収されやすいならば、長い鎖をバラバラに消化すれば良いように思えますね。
残念ながら、図に×がついているように、短い脂肪酸にまで消化する能力は人間は持ち合わせていないようです。

長い脂肪酸はリンパ管経由で全身へ


短い脂肪酸は、小腸から門脈経由で肝臓に行きエネルギーとして利用されます。

しかし、多くの場合、脂肪酸は長くてサイズが大きいため、そのままでは小腸から吸収できません。
このため、十二指腸で胆嚢から分泌された胆汁酸の働きにより、ミセルという分子に取り込まれ、小腸まで運ばれてから、小腸の細胞(小腸上皮細胞)の表面で再び分解され脂肪酸となって、小腸の細胞の中に入ります。
小腸の細胞の中に入った脂肪酸は、カイロミクロン(キロミクロン)という大きなリポタンパク質(脂肪酸を運ぶバスケット)に組み入られます。

このカイロミクロンは分子が大きいので、ほかの栄養素のように小腸上皮細胞についている血管(門脈)経由で肝臓に直接は入らず、小腸のリンパ管(腔)に放出されて、リンパの流れに乗ってやがて静脈と合流して全身へ運ばれます。
そして、全身の細胞に取り込まれてから、短い脂肪酸に変えられてエネルギーになります。

エネルギーにならなかった血液中の余分な脂肪酸は、脂肪細胞に取り込まれて蓄積していきます。
これが、内臓脂肪や皮下脂肪です。


このように、脂肪成分の多くはリンパ~静脈~動脈経由の長い道のりをたどります。
脂肪が吸収されるのに食後3、4時間かかるのはこうした長いプロセスがあるからです。

このように脂肪は消化・吸収に時間がかかり、食後の血糖値の上昇には関係ありません

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脂肪の消化


吸収が速い栄養素は老化を進める?


もう一度、炭水化物(糖類)、タンパク質(アミノ酸)、脂肪酸の構造を見比べましょう。

中学受験 理科 生化学 消化 吸収の仕組み 体の仕組み 食べ物 どこから吸収 吸収が早い ブドウ糖(グルコース)、アミノ酸、脂肪酸 脂肪酸、長鎖、短鎖 リンパ 中性脂肪 短い脂肪酸 リポタンパク カイロミクロン キロミクロン 静脈  動脈 消化に時間がかかる 吸収できない エネルギー 栄養素 リノレン酸 化学構造 アミノ酸 すぐに吸収
炭水化物(糖類)、タンパク質(アミノ酸)、脂肪酸の構造



おおざっぱに言って、化学構造が小さいほうがエネルギーとなるのが早いといえるでしょう。

タンパク質アミノ酸2つがつながっているジペプチドまでに消化されていれば、速やかに吸収されます。
糖質も、グルコース果糖のような単糖の形に消化されていれば、速やかに吸収されます。
一方、脂肪酸はその大きな化学構造から消化・吸収に時間がかかります。

特に、糖質はグルコースや果糖などの単糖や砂糖など二糖類の形(単純糖質、遊離糖質)で摂取すると、消化の必要がなくそのまま体が吸収できるので、すぐにエネルギーとなりやすい「効率が良い速い」栄養素、といえます。
このことからも、ペットボトル飲料に入っている、ブドウ糖果糖液糖などを取るとすぐに血糖が上がるのもうなずけますね。


「速い」はキーワードですので覚えておいてください。

活発に細胞が分裂して成長している若いうちは、単純糖質たっぷりのファーストフードを食べても悪影響を免れるかもしれません。
でも、成熟して完成した体は、単純糖質などの効率が良い速い」栄養はあまり求めていません.。
多く摂ると老化を進め、病気の原因になることにつながります。


いつまでも若く美しく健康に過ごすための基本姿勢は、「ゆっくり急がない」ことです
成熟した私たちには「速い」ことは必要ありません。
栄養素も、食べ物も、必要な分だけ、ゆっくり味わって楽しみましょう。