いきいき!エバーグリーンラブ: インフルエンザ*タミフルはどのくらい効くの?

2014年12月7日日曜日

インフルエンザ*タミフルはどのくらい効くの?

インフルエンザに罹ったら48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を飲む!
決まりごとのように思っている方がずいぶん増えたように思います。

とはいえ、それはなかなか厳しいです。
熱が高くて、だるくて、のどは痛いし、鼻水は出るし・・・・そんな時に、医者に行って検査して、それから薬局に行って薬をもらう。
その間、あっちでもこっちでもウイルスをまき散らす。
このような努力の結果、得られる効果はどのくらいなのでしょうか?

一方で、子どもが抗インフルエンザウイルス薬を飲むと異常行動を起こすことがあるとも言われています。
これは本当のことなのでしょうか?

今回は、こういった疑問について検証してみます。


抗インフルエンザウイルス薬の効果のほどは?

インフルエンザに対してお医者さんが使っている抗ウイルス薬も、最近では種類が増えてきました。
おなじみのタミフル(カプセル)やリレンザ(吸入)のほかにも、注射剤や、1回だけ吸入すればいいイナビルも発売されています。

「インフルエンザになったら48時間以内にタミフルを飲めば早く治る!」というのが常識のように話されていますが、これは本当でしょうか?






タミフル・リレンザはインフルエンザの症状を約半日短縮

2014年4月10日に、オセルタミビル(商品名:タミフル)の試験20件(対象患者 9,623人)、ザナミビル商品名:リレンザ)の試験26件(対象患者 14,628人)の有効性・安全性を検討した結果が発表されました。
これは、 コクラン共同計画という、世界的に様々なデータを集めて解析し、薬剤などの有効性を検討する計画の一つとして行われたものです。

【結果】
  • 成人でインフルエンザ様症状が現れている期間を、タミフルは7日間から6.3日間に、リレンザは6.6日間から6日間に短縮した
  • 小児での効果は成人よりも不確かだった
  • リレンザは成人で気管支炎の発症を約1.8%減らした
  • タミフルもリレンザも、成人および小児で、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎の発症を減らさなかった
  • タミフルでは、成人で約4%、小児で約5%、吐き気と嘔吐の副作用リスクが増加した
  • タミフルを使った成人・小児には、感染と戦うための抗体を作る力が低下した人が、使わなかった人に比べて多く見られた

つまり、タミフルもリレンザも、大人では効いてはいるものの、半日程度早く治るくらいの効き方で、20人に1人くらいの割合で、副作用として吐き気が見られることがある、ということです。

なんだ、たいしたことないんだ・・・と、評判とのあまりの違いに私も驚きました。

日本の開発時のデータを見ると

では、日本で発売する前に製薬メーカーが厚生労働省の審査を受けるために行った患者さんでの試験の成績はどうだったのでしょう?

タミフルとプラセボ(タミフルと似せて作られた薬効成分のないカプセル)を比較した試験の結果は次の通りです。

平熱(36.9℃)に回復するまでの時間は,タミフル投与群では 33.1 時間(約1.4 日)、プラセボ投与群で 60.5 時間(約 2.5 日)と約 1 日短縮しした

タミフルを飲んだことで短縮された、症状が治るまでの時間は次の通り

  • 鼻症状 15.3時間
  • のどの痛み 9.1時間
  • 咳 13.5時間
  • 筋肉痛 10.8時間
  • 倦怠感 7時間
  • 頭痛 5.2時間
第Ⅲ相臨床試験成績

う~ん。微妙。

皆、タミフルに効いてほしいと願っている?

この程度の効果なのに、なぜ、「インフルエンザに罹ったらタミフル!」と言われるようになってしまったのでしょう?

ここからは、私の推測ですが・・・
高い化粧品を買ったとき、すごくきれいになったように感じますよね?
タミフルも同じ。
辛い中、病院に行って検査をして待たされてやっともらった薬ですから、「効いてほしい」と願って使うわけです。
それで、なんだかすごくよく効いたような気がしてしまうのかもしれません。
タミフルを飲んだ時と飲まなかったときとを、自分自身で比較することはできませんからね。

異常行動はタミフルの副作用??

異常行動とは

では、タミフルで異常行動の副作用が出ることがある、というのは本当でしょうか?
異常行動とはどういうことかというと・・・

  • 突然立ち上がって部屋から出ようとする
  • 興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り、意味のわからないことを言う
  • 興奮して窓を開けてベランダに出ようとする
  • 自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない
  • 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す
  • 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る
  • 突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする

詳細は岡部信彦 平成25年度厚生労働科学研究費補助金 インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の情報収集に関する研究

異常行動は抗インフルエンザウイルス薬を使わなくても起こる

異常行動の件については、毎年、厚生労働省の調査が行われています。
厚生労働省科学研究
その結果、これまでに分かったことは・・・

  • 抗インフルエンザウイルス薬を使っても使わなくても、インフルエンザに罹ると異常行動がみられることがある
  • 抗インフルエンザウイルス薬としては、タミフルだけでなく、リレンザやイナビルでも同程度に異常行動がみられる

アメリカの厚生労働省に当たる機関であるFDAは、「タミフルと報告された小児死亡との間に因果関係があるとは結論づけられない」との見解です。
FDA Pediatric Advisory Committee November 18, 2005 Questions and Tamiflu Q&A

つまり、抗インフルエンザウイルス薬を飲んでも飲まなくても、インフルエンザに罹ったら異常行動がみられることがあるということです。
家族がインフルエンザで熱を出しているときには、危ない行動をとることがないように気をつけましょう。

タミフルの気になる作用

ここまでのお話は、「たいして効かないけれど、少しでも早く熱を下げたければタミフルを使えばOK」とまとめられそうです。
が、それだけのことのために安易にタミフルを使わないほうがいいかも?という報告があります。

タミフルを使うと、抗体が作られにくくなる?

まずは、先ほどご紹介したコクラン共同計画の報告の一番最後の項目です。
  • タミフルを使った成人・小児には、感染と戦うための抗体を作る力が低下した人が、使わなかった人に比べて多く見られた
どういうことかというと、病原微生物が感染すると、ヒトはその病原菌と闘う戦闘員である抗体を作ります。
抗体ができるのには1週間から10日と時間がかかるので、インフルエンザだと、多くの人は治りかけた頃に戦闘員が充実してくることになり・・・ちょっと遅い感じですね。
でも、一度抗体を作ると、2度目に同じ病原微生物が感染した時には、すぐに出動して、感染を防いでくれます。

この抗体は血液中に流れているので、どのくらいあるか、採血して調べることができます。
インフルエンザに罹った後に血液検査をしたところ、タミフルを使った人は使わなかった人に比べて少ない場合が多かったのです。

同じシーズンに2回もインフルエンザに罹ったという話を聞くことがありますが、そういう人は、ひょっとしたら、タミフルを使ったために抗体があまり作られなかったのかもしれません。

タミフルは、中枢神経抑制作用で症状が治ったように見せている?

もうひとつ、このコクラン共同計画の報告で述べられている、気になる考察があります。

  • タミフルが炎症促進性サイトカインの濃度を低下させることで、免疫反応が治まり、インフルエンザの症状が改善していることが考えられる。
  • とすると、タミフルには中枢神経(脳の神経)抑制作用があり、その結果、熱が下がり、見かけ上、症状が改善したようになるという可能性がある。

ということです。
参考:川島紘一郎著「その薬、必要ですか?」ポプラ社.2014年8月

この話を読み解くには、まず、製薬メーカーの言っている抗インフルエンザウイルス薬の作用を理解する必要がありますね。
その辺は、こちらをご覧ください。
インフルエンザ*タミフルで予防できる?

タミフル、リレンザがきかないのならばイナビルが良いのかというと、そうとも言えません。
詳しくはこちらで。
インフルエンザ治療薬 イナビルは本当に有効?



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