いきいき!エバーグリーンラブ: 主食の罠

2016年8月6日土曜日

主食の罠

主食をたくさん食べると、やっぱり太るようですね。

面白い調査結果を報道で知りました。

『主食の重ね食べ』は肥満のもと

大阪府健康医療部が2016年8月2日に発表した、大阪版健康・栄養調査結果(速報版)によると、男女とも 4 人に 1 人が、1 日 1 食以上、主食の重ね食べ、をしているということです。

具体的には、
  • お好み焼き+ごはん
  • うどん+かやくごはん
  • ラーメン+チャーハン
  • そば+どんぶりもの
などの組み合わせでしょうね。
週に1食以上、「主食の重ね食べ」をしている人の割合をBMI(体格指数)別にみると、肥満の人は63.9%で、普通(51.6%)、やせ(44.6%)の人より高かったったということです。

この調査は2015年11-12月、18歳以上の大阪府民1858人から回答を得たものです。
大阪版健康・栄養調査結果(速報版)

News Up 「重ね食べ」は肥満の元?

調査報告書には、『主食の重ね食べは「太りそうだ」と思う人が男女とも多く、特に女性はどの世代も多い傾向だった』との記述もありました。
主食好きの人は、わかっているのについやってしまう。ということでしょうか?

これには仕組みがあります。
主食の白米や精製された小麦粉などは、糖質が多く含まれているので、余計におなかが空いてしまうのでしたね。
⇒糖質は食欲を増進させる

白米の食べすぎが糖尿病の原因に?

実は、白米の過食がアジア地域(日本人と中国人)の2型糖尿病の主な原因であることは、明らかになっています。

この研究では、メタアナリシスという解析方法で、7つの前向き観察研究(プロスペクティブコーホート研究)を解析対象として、
  • 228,869人のアメリカ人とオーストラリア人
  • 123,479人の日本人と中国人
を4-22年間観察した食事内容と2型糖尿病発病割合などの結果を比較しました。

解析結果は、
  1. 日本人と中国人で白米の摂取量が多かったグループは、少なかったグループに比べて、 55% 2型糖尿病になりやすかった[相対危険度1.55 (95%信頼区間1.20-2.01)] 
  2. アメリカ人とオーストラリア人で 白米の摂取量が多かったグループは、少なかったグループに比べて12% 2型糖尿病になりやすかった[相対危険度1.12(95%信頼区間 0.94-1.33)]
  3. 1の結果と2の結果を統計学的に解析すると、同じ量の白米を摂取した場合、アメリカ人とオーストラリア人に比べて、日本人と中国人のほうが糖尿病になりやすいと判断できる。
  4. 白米の摂取量が多ければ多いほど2型糖尿病の発病リスクは高まった(線形相関あり)。
  5. 2型糖尿病の発病リスクは、およそ1日600g(ご飯4杯)の摂取で、まったく白米を摂らない場合に比べて約50%上昇すると推算された。
いかがでしょう?

白米、うどん、パンなど、精製度が高く、エネルギーの密度が高い食品はやはりほどほどにしないと危険ですね。

日本独特の「主食」という奇妙な考え方

エバーグリーン研究室では、我々日本人が陥っている最悪の食習慣が「主食」を摂るということにあると考えます。

「主食」について調べるとわかりますが、「主食」の概念は先進国では日本以外ではまず見当たりません。
欧米人もパンやパスタは食べますが、それが「主食」になることはありません。
中国人も、南の地域では白米を多く食べるようですが、あえて「主食」といえば餃子のようです。
つまり、他の国の人々も、高エネルギー密度のデンプンを食べてはいますが、その量と割合が日本人ほど高くないということです。

「主食」は、英訳すればメインディッシュになります。
日本人の多くが、ご飯やうどんがメインディッシュということです。

外国人がこれを聞くととても驚きます。
多くの外国の料理のメインディッシュは,
肉や魚などのタンパク質が豊富な料理です。

日本人は、もともと狩猟採取による肉食中心の雑食であったのが、農業振興と租税の目的で律令時代のころから始まった肉食禁止令などによって、次第に米中心の食生活となり、江戸時代には通貨の代わりになるまでになりました。
元禄時代に精米技術の普及によって、庶民も白米を食べるようになると、脚気=「江戸患い」が出現しました。

その後も、農業保護の政策から、米を中心とした「主食」の考え方は日本に蔓延しています。
明治期にも海軍軍医の高木兼寛が海軍で多くの死者を出していた脚気の原因を白米中心の食事であることを発見して、海軍の食事内容を改めたことは有名です。

脚気の直接の原因はビタミンB1不足です。
精米によって白米にすることで、玄米に含まれていたビタミンB1は失われコメの栄養価が変わってしまうわけです。
そして、白米のご飯(主食)と漬物といった栄養価の足りない食事スタイルで脚気が起こっていたのです。
ちなみに脚気による死亡者数は、1923(大正12)年の26,796人がピークだそうです。

昭和に入っても1975年に日本神経学会で脚気の症例が全国各地から報告されて、学会がざわめいたことがあるそうです。
このころは、ちょうど高度成長期で豊かになるとともに、白米中心の食事に加え、インスタント食品や外食などの機会が増えてきたからと思われます。

もちろん医療技術の進歩も影響しているのでしょうが、日本人の平均寿命の延長は高度成長期から始まった、コメの消費量の減少に比例しています。

また、戦前までは小さかった日本人の体格が、戦後急速に大きくなったのも、食事に占める炭水化物の割合が少なくなり、タンパク質の摂取割合が増えたためと思われます。

日本の栄養学と栄養食品の問題点

日本の栄養学はあまり進歩していないようです。
PFCバランスなどと呼ばれる、1日のエネルギーの13~20%はタンパク質、20~30%は脂肪で、50~65%は炭水化物(でんぷん・糖質、食物繊維、アルコールも含む)で摂りなさいという、炭水化物が多過ぎる食事指導を行っているのが実情です。

ここにも、「主食」の考えが影響していると思われます。
「主食」の考えを改めない限り、日本食が健康食とは言えないでしょう。

日本の栄養学の問題点は、食事に含まれる栄養素の割合や熱量にばかり着目して、各食品の消化・吸収を含めたエネルギー密度・効率という視野が乏しいことと考えます。
日本の栄養学の問題点は、食事に含まれる栄養素の割合や熱量にばかり着目して、各食品の消化・吸収を含めたエネルギー密度・効率という視野が乏しい バナナジュース イラスト 

例えば、同じ量の糖質を含む食品であっても、バナナをミキサーでジュースにした飲み物のほうが、固形のバナナよりもエネルギー密度が高くなり、消化・吸収効率が良いことは、実験しなくても論理的に直観できます。

安直なキャッチの商品に注意

「食べられないなら飲めばいい」などという安直なキャッチコピーで、栄養バランスが取れているとする流動食を宣伝している食品・製薬メーカーもありますが、あのような商品を一般向けに開発する意図がわかりません。

その商品は、1パケージで200kcal/125mL(1mL当たり1.6kcal)のエネルギーだそうですが、125mLなら一気に飲めるでしょう。
200kcal(おにぎり1個強のエネルギー、糖質29.3g!角砂糖7.3個分に相当)を一飲みで摂るなんて恐ろしいことです。
仮に一食の摂取カロリーを800kcalとしても、通常の調理での、固形物の多い、のど越しの良くない、よく噛む必要のある食事では、早く食べても30分はかけているはずです。

明治 メイバランス イラストこのような商品を飲むと、唾液の分泌は少なく、胃を素通りして、膵臓がびっくりして膵アミラーゼを盛んに分泌させて膵臓に負担をかけ、急速に小腸から栄養が吸収され、血糖値の急上昇とインスリンの過剰分泌の恐れがあると思います。

ちなみに、この商品と同じグループに分類される液体半消化態栄養剤の医薬品の用法では1時間に50-100mLの速度で投与するとなっています。

※液体半消化態栄養剤:口から食べられなくなってしまった人が固形の食事の代わりに摂取する医薬品

この医薬品の液体半消化態栄養剤は、各栄養成分の組成と配合量は異なりますが、エネルギーは1mL当たり1.5kcalと上の商品と同様です。

一般に販売されている流動食のように飲む食品はこれ以外にもありますが、忙しいからと言ってこのような食品を使用しないことをお勧めします。

第一、栄養学などで食品のエネルギー換算に用いる、食品の物理的燃焼熱を基にしたアトウォーター換算係数には、問題点が多すぎます。

※ アトウォーター換算係数:食品のカロリーを計算する際に用いる係数。
食品を燃やして生じる熱量(燃焼熱)から,それを摂取した場合に糞に排泄される部分の燃焼熱と、尿に排泄される部分の燃焼熱を差し引いて求める。
炭水化物とタンパク質は1gを4kcal、脂質は1gを9kcalとする。

栄養学が、この問題点を認識できていないはずがありません。
学問として、なぜ率先して改善しないのか理解できません。
栄養学は、農業・畜産業をはじめ食品業界、外食産業などの利権が関係しやすい学問領域ですが、もう少し進歩していただきたいものです。


バランスのよい食事 20のポイント

バランス良い食事が大切とは、栄養士による栄養指導の決まり文句ですが、具体性に欠けます。

それよりも、
  1. 主な食品の主要な栄養成分を覚えておく
  2. 一種類の食品や1つの栄養素を含むものをたくさん食べすぎない
  3. いろいろな食材を用いて食事をする
  4. 動物にとってはタンパク質が最も重要な栄養素
  5. 濃い味付けを避け、薄味に慣れる(塩分を控える)
  6. 同じ調理法のものを食べすぎない(揚げ物、炒め物ばかりなど)
  7. スムージーや粥、餅など極端に粉砕・加熱・加工調理したものは控えめに
  8. のど越しの良い食物(カレーなどルーのかかったもの、あんかけの丼もの・麺、汁の多い丼もの、汁かけ飯、麺類、噛まなくて済む柔らかい食物、流動食)を食べすぎない
  9. 加工食品を食べすぎない
  10. 糖質を摂るときは食物繊維(野菜)を一緒に食べる
  11. 美味しいものは習慣性・依存性があるので嗜好品と考える
  12. 塩+砂糖+油脂の多い味付けが習慣性・依存性をもたらす
  13. 美味しい(甘い)飲み物は飲まない(子供には水!)
  14. 早食いしない(1口で30回は噛んで、食物に唾液を良く絡めてから飲み込む)
  15. 大食いしない
  16. 保存食を買い置きしない
  17. 外食を控える
  18. 食べ放題は危険
  19. 満腹を感じたら食べない。無理して食べない
  20. 食べること以外の楽しみを持つ
を心掛けると良いと思います。
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