いきいき!エバーグリーンラブ: 運動不足で脳がしぼむ!

2016年2月17日水曜日

運動不足で脳がしぼむ!

運動の習慣をつけようと思っても、三日坊主になってしまうのは、運動の効果を実感しにくいことが原因となっていると思います。

運動して、体重が減ったり、筋力がついてくるのも、即効性はなく、最低でも2~3か月は時間がかかります。

本当は、ポジティブなことで、運動するモチベーションを上げるべきなのですが、今日は、中年・壮年期の我々には身につまされる、アメリカのボストン大学などの研究チームの報告をご紹介します。

中年期の運動不足で脳が萎縮

中年期の運動による血圧と心拍数、フィットネスが20年後の脳の容積に影響する

Nicole L. Spartano et.al. Midlife exercise blood pressure, heart rate, and fitness relate to brain volume 2 decades later. Neurology 10.1212/WNL.0000000000002415

People who exercise at middle age might have bigger brains later on

【研究の目的】
  • 低い心肺機能や、運動時の血圧、心拍の状態が、後年の脳の形態にどのように影響するかを調べる。
【研究の参加者】
  • マサチューセッツ州フラミンガム市の住民を対象としたフラミンガムオフスプリング研究の参加者のうち、認知症や他の神経症状がなく心疾患や脳卒中の経験がない20歳以上平均年齢 40±9歳の1,094人。そのうち53.9%が女性
【研究の方法】
  • 研究開始当初に参加者にランニングマシンで運動してもらうテストを実施し、脳の状態を磁気共鳴断層撮影(MRI)装置で調べた。併せて認知機能など神経学的検査も行った。
  • 約20年後(その時点での参加者の平均年齢58±8歳)に再び同じ運動テストと検査を行った。
  • 運動の能力は、心拍数が限界の値に達するまでに走り続けることのできる時間で測定した。
【研究の結果】

●研究当初と20年後の成績をそれぞれ比較したところ、運動能力の低い人や、運動時の拡張期血圧(下の血圧)と心拍数が高い人は、運動能力や血圧・心拍が正常な人と比較して、脳の容積が少ないことが統計学的にはっきり認められた。

●脳の容積と神経学的検査を総合して計算すると、20年後のテストで運動能力が低かった人のうち、
・心疾患の症状がなく、降圧薬を飲んでいない人は、脳の老化が1年分加速していると推算された。
・心疾患の症状があり、降圧薬を飲んだりしている人は、脳の老化が2年分加速していると推算された。
・研究開始時に高血圧(140/90 mmHg以上)であったり、境界域高血圧(120/80 ~139/89 mmHg)の人も20年後の脳の容積が少ないことも統計学的に明らかだった。

●運動能力の平均値から1標準偏差(-1SD)値が低いと、約1年分の脳の老化と換算できた。
つまり、運動能力が低い人ほど、脳の老化が進んでいると推算できた。

【研究結果から考えられること】
  • 脳の健康には中年期の運動が大切で、「運動によって血流が増え、より多くの酸素が脳に運ばれることで、高齢になったときの認知機能の低下を防げる可能性がある」と研究のリーダーNicole Spartanoさんはコメントしている。



5年後、20年後にボケないために運動しよう

いかがでしょうか。

アメリカでの別な研究でも、平均 45.5 (±3.5)歳の研究参加者565人に同様な試験を行ったところ、運動能力の高い人では、5年後の脳の萎縮も少ないという結果が得られています。

この結果は、参加者の年齢、性別、人種、BMI、飲酒状況、喫煙状況、血圧値、糖尿病の有無、血中コレステロール値、肺機能の個人差に関係なく同じでした。

つまり、個々人のライフスタイルや身体の状態に少々の差があっても、運動して運動能力を高めれば、皆、脳が萎縮しにくくなると言えるわけです。

Na Zhu. et.al. Cardiorespiratory fitness and brain volume and white matter integrity.Neurology June 9, 2015 vol. 84 no. 23 2347-2353


これらの研究から、運動の効果は、即効性はなくても、少なくとも5年後、20年後には、認知機能に良い影響があることがわかります。


運動習慣をポジティブに考えよう

他の生物と違って、人間の持つ最大の能力の1つは、長期的な視野を持てることです(でも、ネガティブになると、これが人類の不幸の原因なのかもしれませんが…)。

ポジティブな視点で、運動の目標を立てて努力できれば、歳をとっても、健康というお金では買えない幸せが手に入るようです。

目標は、1日40分ほどの軽い運動でよいのです。
そして継続することが大切です。


「物忘れがひどくなってきているんだけど、いい薬はないかしら」
と訊かれることがあります。
「アルツハイマー型認知症」の進行を遅らせるとされている薬は発売されていますが、「物忘れ」の進行を遅らせる薬はありません。
「運動が、物忘れに効く最良の薬」ということです。


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