女性の人生は女性ホルモン次第
更年期を過ぎても元気な秘訣
精巧!女性ホルモン調節システム
ホルモンと言われてもなじみのない方が多いと思いますので、ここではホルモンとはどういうものかについて、女性ホルモンを中心にお話しします。
基礎的な話なので、理科は苦手・・・という方は読まなくても大丈夫です。
ホルモン補充療法(HRT)の原理を理解したい!という方は、じっくりご覧ください。
基礎的な話なので、理科は苦手・・・という方は読まなくても大丈夫です。
ホルモン補充療法(HRT)の原理を理解したい!という方は、じっくりご覧ください。
ホルモンの構造には3種類ある
前回、ホルモンとは、特定の器官から必要に応じて分泌されて、血流に乗って目的の器官に届けられて作用する物質だとお話ししました。
(最近では、ホルモンが作られた細胞やそのすぐ近くで作用する場合もあることが確認されました。
脂肪細胞、骨、脳、冠動脈などに見られるエストロゲンは、1つの例です。)
(最近では、ホルモンが作られた細胞やそのすぐ近くで作用する場合もあることが確認されました。
脂肪細胞、骨、脳、冠動脈などに見られるエストロゲンは、1つの例です。)
ホルモンにはたくさんの種類がありますが、構造から大きく3つに分けられます。
- ペプチドホルモン:タンパク質でできている(副甲状腺ホルモン、インスリン、インクレチン、成長ホルモンなど)
- ステロイドホルモン:ステロイドから作られる(男性ホルモン、女性ホルモンなど)
- アミン・アミノ酸誘導体ホルモン:甲状腺ホルモン、副腎髄質ホルモン(アドレナリンなど)
女性ホルモンの種類
女性ホルモンは、エストロゲンとプロゲステロンに大きく分けられます。エストロゲンには20種類以上の物質が確認されていますが、主なものはエストロン、エストラジオール、エストリオールの3種類です。
コレステロールから作られるので、コレステロールと似た形をしていますね。
水酸基の数の違いから、エストロンはE1(イーワン)、エストラジオールはE2(イーツー)、エストリオールはE3(イースリー)と呼ばれます。
どれも、エストロゲン受容体に作用しますが、作用の強さが違います。
エストラジオールが最も活性が高く、エストラジオールを100とすると、エストロンは10、エストリオールは1くらいとされています。
百枝幹雄 偏『基礎からわかる女性内分泌』診断と治療社 2016; pp98.より。ただし、「エストラジオール:エストロン:エストリオール=10:5:1とする教科書もある」としています。根拠となるデータの記載はありません。『ディビゲル®インタビューフォーム』では、ラットの最小発情量よりエストラジオール:エストロン:エストリオール=20:10:1とされています。 中山徹也ほか:産科と婦人科 1965; 32(5): 635
エストロゲンが作られる流れ
ステロイドホルモンはコレステロールから作られる
エストロゲンは、コレステロールから作られるとお話ししました。
でも、コレステロールが簡単にエストロゲンになるわけではなく、いろいろな酵素が順番に働くことで、いろいろな物質を経由してエストラジオールやエストロンになり、最終的には一番活性の低いエストリオールになります。
コレステロールを出発点にして、どのように3種類のエストロゲンができるかの流れを見てみましょう。
酵素は、それぞれ決まった器官にしか存在しませんから、必要な酵素の存在する器官で、それぞれのホルモンは作られることになります。
原料となるコレステロールは、もともと細胞にあったものに加えて、血液中をLDLコレステロールとして運ばれてきたものを取り込んで使います。
LDLコレステロールというと、「悪玉コレステロール」と呼ばれて目の敵にされていますが、 実は、身体にとって大切なものなのですね。
女性ホルモンは主に卵巣で作られる
エストロゲンは、主に卵巣で作られます。
卵巣には エストロゲンとプロゲステロンを作るための酵素を活性化する作用を持つ、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン、黄体形成ホルモン)の受容体があるためです。
閉経前は卵巣が元気なので、脳から分泌されるFSHとLHが卵巣に作用することで、特に卵巣で大量にエストロゲンとプロゲステロンが作られます。
閉経後に卵巣が働かなくなると、 脂肪細胞が主な エストロゲンの供給部位になります。
脂肪細胞にも、少しだけエストロゲンを作る酵素(アロマターゼ)があります。
とはいっても、作られるのは非常に少量ですし、分泌のシステムも異なります。
プロゲステロンがエストロゲン合成の上流にある
上の図を一部抜き出して大きくしてみましょう。
プロゲステロンは、上の段のコレステロールから2番目にあります。
エストロゲンは右下の、生合成の下流です。
したがって、プロゲステロンがエストロゲンの原料になることがわかります。
だからといって、プロゲステロンを薬などで外から投与すればエストロゲンが生合成されるようになるというわけではありません。
プロゲステロンからエストロゲンを作るためには、図の流れの中にある様々な酵素を持つ細胞の中にプロゲステロンが存在する必要があるのです。
ホルモン補充療法(HRT)の方法として、「プロゲステロンだけを投与すれば、エストロゲンはプロゲステロンから作られる量で十分」としている専門家もいらっしゃいますが、生体内の仕組みを考えると間違っているのではないかと思われます。
エストロゲンはプロゲステロンより活性が高い
ここで、月経周期のなかでのプロゲステロンとエストラジオールの分泌の様子を見てみましょう。
いつ分泌されるかの詳細なメカニズムは、
精巧!女性ホルモン調節システム
をご覧ください。
ここでは、分泌される量に注目してください。
一見、同じくらい分泌されているように見えますね。
でも、プロゲステロンは単位がng/mL、エストラジオールはpg/mLです。
1ng(ナノグラム)=1,000pg(ピコグラム)ですから、プロゲステロンはエストラジオールの100倍分泌されているわけです。
ここから、エストラジオールはプロゲステロンに比べて、ほんの少量で作用を発揮する、つまり、活性が高いことが予想されます。
このことは、ホルモン補充療法(HRT)で使う薬剤の量を考える際にも、思い出すと役に立ちます。
プロゲステロンから男性ホルモンを経てエストロゲンができる
プロゲステロンからエストロゲンへの流れをたどっていくと、途中に水色で囲まれた男性ホルモンを経由していることがわかります。
卵巣では、男性ホルモンをエストロゲンに変換するアロマターゼ(水色の矢印)という酵素の働きが活発なので、 男性ホルモンはエストロゲンに変換されて分泌されることになるのです。
例:アロマターゼによるエストロゲンの生合成
上の図のアロマターゼが働く箇所を拡大してみましょう。エストロン(E1)はアンドロステンジオン、エストラジオール(E2)はテストステロンという男性ホルモンから、アロマターゼによって作られます。
アロマターゼは、骨や脳、血管、脂肪組織、皮膚、肝臓、胎盤、性腺などの器官でもつくられるので、卵巣以外でもエストロゲンは合成されますが、卵巣に比べるとずっと少量です。
【参考】アロマターゼを阻害する抗がん薬
アロマターゼを阻害する薬(アロマターゼ阻害薬)は、閉経後の乳がんの治療薬として使われています。
乳がん細胞はエストロゲンの働きで増殖します。
アロマターゼ阻害薬はアロマターゼの働きを抑えてエストロゲンをなくし、乳がんの増殖を抑えます。
アロマターゼ阻害薬が保険適応となるのは閉経後で、閉経前の女性は適応ではありません。
閉経後にも、エストロゲンは皮下脂肪で 少量作られるので、これを抑えてエストロゲンを枯渇させるのが作用機序とされています。
アロマターゼ阻害薬の作用に関するいろいろな資料に、「エストロゲンは閉経前は(アロマターゼの関与なしに)卵巣で作られるが、閉経後にはアロマターゼによって脂肪細胞で作られるようになるので、保険適応は閉経後」と説明されていますが、これは誤りではないかと思われます。
エストロゲンは、閉経前も閉経後もアロマターゼの働きで作られることに違いはありません。
ということは、理論上は、閉経前でも卵巣のアロマターゼの働きを阻害すればエストロゲンは作られなくなるので、効果があるように思えます。
しかし、閉経前は卵巣でのアロマターゼの分泌が非常に多いので、閉経前の卵巣でのエストロゲンの生合成を抑えようとするならば、非常に大量のアロマターゼ阻害薬を投与する必要があります。
それだけの量の薬を投与すれば、当然、副作用も多くなりますから、閉経前の乳がんを保険適応に薬を開発することはできなかったのでしょう。
エストロゲンが全くなくなってしまうためですね。
閉経後のほんの少量のエストロゲンであっても、重要な役割を果たしていることがよくわかります。
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