いきいき!エバーグリーンラブ: 精巧!女性ホルモン調節システム

2017年2月19日日曜日

精巧!女性ホルモン調節システム

女性ホルモンが女性の健康にいかに大切かについてお話してきました。

女性の人生は女性ホルモン次第
更年期を過ぎても元気な秘訣

これまで一括して「女性ホルモン」と呼んできましたが、女性ホルモンにはいくつかの種類があります。

ここでは、女性ホルモンについてもう少し詳しく説明し、生殖年齢での月経周期や、更年期以降の分泌量の変化を見てみましょう。

いかに精巧にコントロールされているかがわかります。
そして、更年期を迎えること・・・そのシステムが働かなくなることが、女性の身体にとっていかに大きな変化かを感じられると思います。

女性ホルモンの種類

女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。

プロゲステロンは黄体形成ホルモンとも呼ばれます。

エストロゲンには20以上の種類が確認されていますが、主なものはエストラジオール、エストロン、エストリオールの3つです。

中でもエストラジオールが最も活性が高く、エストラジオールを10とすると、エストロンは5、エストリオールは1くらいです。
エストラジオール100、エストロン10、エストリオール1とする教科書もあります。
百枝幹雄編 『基礎からわかる女性内分泌』診断と治療社 2016; p98

卵巣での卵胞の成熟~排卵~黄体形成

女性ホルモンの最大の目的は生殖です。
そのために、排卵、月経などの月経周期を調整しています。

したがって、女性ホルモンは主に卵巣で働きます。

卵巣には、卵胞という卵子を育てる袋がたくさん詰まっています。
生まれたときには約200万個ありますが加齢に伴って失われていき、生殖年齢では20万~30万個と言われています。

1回の月経周期に数個の卵胞が成熟し、多くの場合、そのうちの1つが排卵します。
排卵後、卵胞は黄体になります。

同時に、子宮内膜は厚くなり、排卵した卵子が受精した場合に、受精卵を受け入れる準備をします。

受精卵が着床しなければ、子宮内膜は脱落して(月経)、また排卵の準備に入ります。
これが月経周期です。

この一連の流れをコントロールしているのが、卵胞と黄体から分泌されるエストロゲンプロゲステロンです。
そして、さらにこれらのホルモンも、脳から分泌されるホルモンでコントロールされています。

女性ホルモンの分泌をコントロールするホルモン


月経周期をコントロールするホルモンを見てみましょう。

エストロゲンプロゲステロンもゴナドトロピンにコントロールされ、ゴナドトロピンはGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)にコントロールされています。反対に、ゴナドトロピン、GnRHは、エストロゲンにコントロールされています。

  • GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:ゴナドトロピン放出ホルモン)
脳の視床下部から分泌。下垂体に作用して、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を分泌します
  • ゴナドトロピン (LH:黄体化ホルモン、黄体形成ホルモンと、FSH:卵胞刺激ホルモン)
性腺刺激ホルモンとも呼ばれます。脳の下垂体から分泌されて、卵巣に作用します。
  • FSH:卵胞刺激ホルモン
    卵巣で卵胞に働いて、エストロゲンを分泌させ、卵胞を発育させます。
    •  LH:黄体化ホルモン、黄体形成ホルモン
    卵胞が十分に大きくなりエストロゲン量が増えると、下垂体からLHが大量に分泌され、排卵(卵子が卵胞から出て、子宮へ向かう)し、卵胞は黄体になります。
    LHは黄体に働いてプロゲステロンを分泌させます。
    • エストロゲン(主にエストラジオール):卵胞ホルモン
    FSHとLHの刺激により、卵胞で作られます。
    血液中のエストラジオール濃度が200pg/mL以下では、視床下部からのGnRHの分泌を抑えるように働きます。
    200~300pg/mL になると、視床下部からGnRHを分泌させ、GnRHの分泌に伴って下垂体からLHが大量に分泌します(LHサージ)
    • プロゲステロン:黄体ホルモン 
    LHが大量に分泌すると、卵胞は排卵します。
    排卵後、卵胞は黄体となり、プロゲステロンを分泌します。
    排卵した卵子が受精せず、子宮内膜に着床しないと、黄体はしぼんで白体となり、プロゲステロンの分泌もなくなります。
    肥厚していた子宮内膜は脱落します。これが月経(生理)です。

    月経周期と女性ホルモンの分泌

    以上のホルモンの分泌を図にまとめました。
    約28日の月経周期の中で、激しく変動していることがわかります。



    エストラジオールの分泌量は、一番多いときには200~300pg/mL、人によっては500pg/mLを超えます。

    エストラジオールのフィードバックシステム

    エストラジオールは、血中濃度が高くなってくると、エストラジオールの分泌を増やすホルモンであるFSHを抑えるように働きます。
    これを負のフィードバックといいます。

    一方で、さらにエストラジオールの血中濃度が高くなると、今度はプロゲステロンの分泌を増やすホルモンであるLHの分泌を増やすように働きます。
    これを正のフィードバックといいます。

    エストラジオールは、血中濃度の微妙な違いで、月経周期をコントロールしているわけです。

    生涯を通してのエストラジオールの分泌

    では、生涯を通してエストラジオールの血中濃度を見てみましょう。


    個人差はありますが、一般的に、右の図のように推移するとされています。

    生殖可能な年齢では変動が大きいので、平均値を取るとだいたいピンクの線くらいになります。

    閉経を過ぎると、常に月経周期の中で一番少なかった時よりもさらに少ない量しか分泌されていません。
     
    ヒトの身体は、ホメオスタシスと言って恒常性を保とうとする方向に働きます。
    不足したエストラジオールを分泌させるために、更年期以降、FSHの血中濃度が上昇するのは、その1例です。

    エストラジオールの働きがなくなることに加えて、これまでになかった状況に身体が対応しようとがんばることで、様々な身体面、精神面での問題が起こるのは当然のことでしょう。

    この問題を何とか乗り越えるために、更年期を迎えたらホルモン補充療法(HRT:Hormone replacement therapy)で女性ホルモンを補ってはいかがでしょうか?
     これからブログの中で、更年期とそれ以降の女性の健康や、HRTに関する話題を取り上げていきますね。
    参考にしてください。

    注意

    • HRT を行う際には、定期的に運動することをお勧めします。
    • HRT に用いる薬を入手するには、病院で医師に処方していただく必要があります。
    • 基礎疾患がある方などでは、HRTが行えない場合もあります。
    • HRT には注意すべき副作用があります。
    • HRT 実施にあたっては、婦人科を受診して、医師に相談してください。 

     

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