いきいき!エバーグリーンラブ: HRTはいつまで続ける?

2018年9月6日木曜日

HRTはいつまで続ける?

ホルモン補充療法(HRT)は、いつまで続ければよいの?
HRTをお勧めすると、よく尋ねられます。

答えは、「ずっと続けることをお勧めします」です。
ただし、年齢に応じて使う薬を変更します。

では、どのように続ければよいかと、その理由についてお話しましょう。

HRTの継続方法

HRTを更年期からスタートする場合、エストラジオール製剤とプロゲスチン製剤を使います。

エストラジオール女性ホルモンそのものですので、強い薬のように感じるかもしれませんが、避妊や月経困難症に使われる低用量ピル(OC)や、低用量ピルよりさらにエストロゲンの量を減らした超低用量ピルに比べても、ずっと活性の低い薬です。
HRT ホルモン補充療法 エストラジオール プロゲスチン製剤 
更年期から60歳くらいまではエストラジオール製剤+プロゲスチン製剤、
それ以降はエストリオール製剤を使用




低用量ピルや超低用量ピルは、生理のある人がエストラジオールの分泌をコントロールするための薬ですから、 エストラジオールより強い作用が必要です。
そのため、エストラジオールの活性を高めたエチニルエストラジオールという成分が使われています。

一方、HRTでは、分泌されなくなったエストラジオールを少しだけ補えばよいので、エストラジオールそのものを、必要最低量使うだけで済みます。
これは、もともと分泌されていた量に比べてもずっと少なめですし、周期的に濃度が非常に高くなることもありません。

ですから、低用量ピルや超低用量ピルで見られる、吐き気や頭痛などの副作用は、エストラジオールでは見られません。

更年期からHRTを始めた方も、年齢を重ねて活動性が落ちてきたなと思ったら、エストラジオール製剤+プロゲスチン製剤から、さらに活性の低いエストリオール製剤に変更します。
そうすれば、生涯、副作用を生じることなくエストロゲンが枯渇するのを防げます。

60歳を過ぎてからHRTを始めるときには、エストリオール製剤を用います。
使い方の詳細はこちらをご覧ください。  
HRTで使われる薬剤~エストロゲン製剤

更年期が終わってHRTを止めたらどうなるの?


一般的に、更年期障害で婦人科を受診してHRTを始めた場合、5年程度で「もう更年期は過ぎたから、HRTは終了します」と言われます。
これは、アメリカの臨床試験の見誤った報告などから、いまだに間違った認識が広まっているためと思われます。
問題となった臨床試験についてはこちらをご覧ください。
 ⇒HRTは乳がんの原因になる??
更年期が終わったときに、急にHRTをやめても問題はないのでしょうか?

HRTを5年で中止したとき、更年期症状が再発する場合があります。
ホットフラッシュや動悸など、HRTを始める前と同じ症状が現れれば、自分自身で気づきますから、医師に相談してもう一度HRTを始めれば解決します。

問題なのは、HRTのおかげで発症しないですんでいた”更年期症状とは気づきにくい病気”が発症する場合です。
例としては、うつ、めまい、関節痛などが挙げられます。

HRTを中止したために関節痛が現れたとしても、婦人科の医師はそれがHRTを中止したためだとは気づかずに、整形外科の受診を勧めるでしょう。
整形外科の医師が更年期障害と関節痛の関係を知っているケースはほとんどありませんから、痛み止めが処方されたり、重症な場合には副作用の多い関節リウマチの治療をされてしまうことになりかねません。

そのようなことにならないためにも、HRTは継続することをお勧めします。
”月ごとの出血がどうしても嫌”というような場合には、エストラジオール製剤+プロゲスチン製剤の代わりにエストリオール製剤を使えばよいでしょう。

どうしてもHRTを中止したいという方も、突然やめるのではなく、しばらくエストリオール製剤に切り替えてから終了することで、副作用が起こりにくくなると考えられます。

HRTを継続する期間について、 日本産婦人科学会の「HRTガイドライン2017年度版」では、”HRTの継続を制限する一律の年齢や投与期間はない”としています。
HRTは、”何年か続けたら、あるいは何歳以上になったら、止めた方が良い”という制限は設けなくてよいということです。

なのに、一般の婦人科では5年程度HRTを続けると、ぷっつり中止されてしまいます。
何故なのか、疑問ですね。

おさらい!

更年期症状の治療より重要なHRTの目的

HRTを続けることの大切さを、もう一度確認しましょう。

ここでは、HRTの目的を「閉経に伴う身体の衰えを予防すること」と考えてお話します。

閉経してエストロゲンが分泌されなくなると、どのような疾患に罹る可能性があるかを図にしました。
エストリオール製剤 エストロゲン HRT 関節痛 関節リウマチ 骨粗鬆症 糖尿病 高血圧 脂質異常症 脳卒中 不眠 うつ病 切迫性尿失禁 神経系の異常 頭痛 更年期障害 耐糖能異常 動脈硬化 腎不全 認知機能障害 認知症 骨折 
更年期以降エストロゲンの分泌が低下すると、
はじめは症状としては現れない身体の異常(黄色)が起こり、
年を取るに従い重篤な疾患(ピンク)となって現れる。
ここにかかれている疾患は、どれもエストロゲン不足が原因の1つとなっている可能性が、医学的に確認されているものです。

黄色エストロゲン不足で起こる目に見えない身体の異常、ピンクはその状態が進行して発症する疾患を表します。

例えば、骨粗鬆症エストロゲン不足で起こる病気の代表ですが、骨粗鬆症になっても特に症状はなく、体調は変わりません。
ところが、脆くなった骨が折れると、一日中痛みが続き、折れた場所によっては寝たきりになってしまいます。

”骨粗鬆症と診断されてから骨粗鬆症のくすりを飲み始めればいい”と思っている方もいるかもしれませんね。
骨粗鬆症というのは、骨がスカスカになってしまった状態です。
骨粗鬆症の薬は、スカスカになった骨を、これ以上スカスカにしないようにはできても、元に戻す力には限界があります。
はじめから、スカスカにならないようにすること、50歳の時点での骨の状態を維持することが重要なのです。

図に示した骨粗鬆症以外の病気についても、同じことが言えます。
これらの病気を予防するためにHRTを行うのであれば、生涯継続することをお勧めします。

”本来の女性ホルモンがある状態を維持する”のがHRT

高血圧や糖尿病などの生活習慣病の薬を飲むのと、HRTを同じように考えている方が多いので、追加の説明をさせてください。

運動や食事療法をしても血圧が下がらない方は、「血圧の薬はずっと飲み続けなければいけない」ことは、皆さん、よく理解されていると思います。
 正常な血圧を保つ機能がうまく働かなくなってしまったとき、そのままにしておくと血管に負荷がかかって動脈硬化や、脳卒中、心筋梗塞などになってしまいます。
これを防ぐために、薬で血管を緩めるのが、「血圧の薬」の目的です。
血圧の薬」を飲んでも、血圧が正常だったころの元の身体に戻るわけではありません

HRTは、血圧の薬とは使う意義が少し違います。

HRTは、もともと身体を正常に保つために出ていた女性ホルモンが閉経して出なくなってしまったので、身体の機能が損なわれないように、薬として女性ホルモンを補いましょう、というものです。
つまり、HRT「本来の状態を保つ」ためのメンテナンス作業といえます。
エストリオール製剤 エストロゲン HRT 関節痛 関節リウマチ 骨粗鬆症 糖尿病 高血圧 脂質異常症 脳卒中 不眠 うつ病 切迫性尿失禁 神経系の異常 頭痛 更年期障害 耐糖能異常 動脈硬化 腎不全 認知機能障害 認知症 骨折 HRT ホルモン補充療法 
女性ホルモンメンテナンスで、健康に年を取る!


ただし、女性ホルモン(エストロゲンプロゲスチンを補充しただけでは片手落ちです。
補った女性ホルモンが正しく働くように、それに見合った運動や食事を心がける必要があります。
⇒運動すればHRTの乳がんリスクが減少

HRTは、前向きに生きる女性を補佐するもの。
故障を防ぎながら 楽しく年を取りましょう、というのが「女性ホルモンメンテナンス」の目的です。

ヒトが生物である限り、身体の老化は、どうしたって止めることはできません。
でも、その老化のカーブを緩やかにして、幸せな高齢期を過ごすことは可能です。
そのために、更年期や閉経周辺期を迎えたら、自分の身体を過信せず、HRT+正しい食事や運動、そして禁煙=女性ホルモンメンテナンスが必須となるのです。


女性ホルモンについての詳細は、こちらをご覧ください。
女性の人生は女性ホルモン次第
更年期を過ぎても元気な秘訣
⇒精巧!女性ホルモン調節システム
⇒女性ホルモンはこうして作られる
⇒ホルモンの非常事態が更年期症状に!

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