
小児が抗菌薬(抗生剤、抗生物質とも呼ばれます)を何度も使うと、生涯にわたっての体重増加につながる
という研究結果が、アメリカで発表されました。B S Schwartz, J Pollak,et al.International journal of obesity (2005). 2015 Oct 21; doi: 10.1038/ijo.2015.218.
【対象】
米国の3~18歳の若者 16万3,820人
【結果】
- 約21%が小児期に7回以上の抗菌薬の処方を受けていた。
- これらの群の15歳時の体重は、抗菌薬を使用しなかった群よりも1.4kg多かった。
- 特に、マクロライド系抗菌薬で体重増加が多く認められた。
【考察】
- 抗菌薬を小児に与えるたびに、体重増加が速まることを示唆している。
- 小児期の抗菌薬の投与で、生涯にわたりBMIが変わる可能性がある。
- このような抗菌薬が繰り返されることで、成人期にはさらに体重増加が悪化する可能性が高まる。
- 抗菌薬の全身投与は、臨床的にどうしても必要とされる場合を除き避けるべきである。
抗菌薬は腸内細菌にも影響する
どうして、抗菌薬の投与が体重を増加させるのでしょうか。
その理由として、消化管の細菌の一部が抗菌薬によって殺されることが考えられます。
健康な成人の消化管には、約100兆個の細菌が棲んでいます。
ただ棲んでいるのではなく、人が生きていくのに必要な栄養素を作ったり、免疫系をコントロールしたり、様々な役割を果たしています。
しかも、種類が多く、それぞれ、人が食べる食物を栄養源にして、持ちつ持たれつの絶妙な関係を築いています。
ここへ、細菌を殺す薬、つまり、抗菌薬が入ってくれば、想像できないほど、大きな影響を及ぼすことになります。
体重が増えることもその一つと考えられています。
抗菌薬が必要な病気は少ない
風邪をひいたときに、お医者さんに抗菌薬を処方してもらうと安心する方もいるようですが、風邪の原因は多くの場合、ウイルスです。細菌が原因となっているケースの方が少ないと思われます。
ウイルスに、抗菌薬は全く効果がありません。
ただ、原因が細菌なのかウイルスなのかを調べようと思ったら、何日も時間がかかってしまうことが多いので、医師によっては、とりあえず抗菌薬を処方していることもあるようです。
でも、抗菌薬を飲まなければ、重症化してしまうような病気は、多くはありません。
抗菌薬を飲むことで、体の中にはじめから住んでいる細菌たちを殺してしまう危険性を考えれば、できることならば、抗菌薬の使用は避けたいところです。
といっても、自分で判断するのは難しいですから、風邪で医師から薬を処方された時、
「この中に抗菌薬はありますか?
私の症状には、抗菌薬が必要ですか?」
と聞いてみてください。
ちなみに、抗菌薬はお店で買うことはできません。
ご参考までに、マクロライド系抗菌薬には右の薬があります。
マクロライド系抗菌薬は、先ほど紹介した研究結果で、特に体重増加が多くみられたとされる抗菌薬です。
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