女性のほうがアルツハイマー型認知症になりやすい?
下のグラフは、アルツハイマー型認知症で受診している人の割合を人口動態統計の男女の人数で、それぞれ割った値です。
男性に比べて女性に明らかに多いことがわかります。
この原因は、更年期を過ぎた女性では、女性ホルモンの血中濃度が男性に比べて低いことにあると考えられます。
男性に比べて女性に明らかに多いことがわかります。
この原因は、更年期を過ぎた女性では、女性ホルモンの血中濃度が男性に比べて低いことにあると考えられます。
アルツハイマー型認知症の受療率(受診者割合 男女別) |
初潮から閉経までの期間が長いと認知機能障害のリスクが低い
今回は、初潮から閉経までの期間が長い女性は認知機能障害のリスクが低いという、国内の調査結果をご紹介します。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの報告です。
Shimizu Y, et al. Maturitas. 2019 Jul 2. [Epub ahead of print]
【研究期間】
1990年の「健康関連調査」と2014~2015年に行った「こころの検診」
【対象】
長野県南佐久郡の一般住民
40~59歳の「健康関連調査」の回答者約1万2,000人のうち、「こころの検診」にも参加した女性から、うつと診断された人を除外した670人。【方法】
670人中227人が認知機能障害(軽度認知障害が196人と認知症が31人)と診断された。
この227人について、アンケート調査から得た月経に関連する情報(初潮年齢、月経規則性、月経周期、出産回数、初産年齢、授乳経験、女性ホルモン剤服用経験、閉経年齢、初潮から閉経までの期間など)と、認知機能障害の発症リスクとの関連を検討した。
認知機能に影響があるとわかっている因子(年齢、BMI、教育歴、喫煙習慣、余暇・運動活動状況、高血圧や糖尿病・うつの既往)の影響は調整した。
【結果】
初潮から閉経までの期間が長いほど、認知機能障害のリスクが有意に低下することが認められた(傾向性P=0.032)。
具体的には、初潮から閉経までの期間が33年以下の人の認知機能障害発症リスクを1とした場合、38年以上の人のリスクは0.62となり、38%の有意なリスク低下が認められた(P<0.05)。
なお、初潮から閉経までの期間が34~37年の人のリスクは0.89だが、この低下率は有意でなかった。
以上の結果から、生理のある期間、つまり女性ホルモンが分泌している期間が長いほど認知機能障害を防ぐように働く可能性が示唆されました。
閉経後もホルモン補充療法を継続すれば、より、認知機能障害の予防効果が上がることが予想されます。
認知機能に対するエストロゲンの効果
認知機能障害やアルツハイマー型認知症に対するエストロゲンの効果については、動物を使った試験で有効性が確認されています。
中でも海馬という記憶にかかわる部位からの情報を伝えるGABA(γアミノ酪酸:ギャバと読みます)を分泌する神経細胞に多く存在していることがわかっています。
GABAというのは、神経の信号の伝達を弱める神経伝達物質です。
GABA神経にエストロゲンが作用すると、神経の末端からGABAが出るのを抑え、その先の神経の働きが弱められなくなります。
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