インフルエンザ予防接種がもうひとつ効かないのには、理由があります。
主に2つ。
1つは、インフルエンザウイルスにはいくつか種類があるうえ、変化しやすく、色々予測してワクチンを作っても、それとはちょっと違った形のウイルスが流行ってしまうことが多いため。
もう1つは、これまで「免疫力」と呼んでいた、感染を防ぐシステム上の問題です。
この問題点について解説する前に、免疫についてお話ししましょう。
免疫って何?
免疫とは、身体に入ってきた敵をやっつけるシステムです。
戦闘員は、リンパ球とか、好中球、マクロファージのような白血球と呼ばれるグループの仲間たちです。
聞いたことがありますね?
これらの戦闘員には、それぞれ持ち場や役割が分担されていいます。
血液の中での戦いに強いもの、リンパ管戦が得意なもの、あるいは細胞の間に入って行って細胞を叩き壊して中に潜んでいる敵を追い出すもの。
敵だと思えば相手かまわず戦いを挑む戦闘員もいれば、特定の相手だけに有効な武器を持った戦闘員もいます。
特定な相手を選ぶ戦闘員の方が強力です。
相手が決まっていないと、間違って自分の細胞に戦いを挑んでしまいかねませんから、特に強力な戦闘員は、特定の相手と以外戦えないようにできているのです。
このように免疫という自衛隊は複雑で、あまりにたくさんの戦闘員がいるので、ここでは、予防接種に関連する戦闘員にスポットを当てます。
主役戦闘員はB細胞。
武器は抗体。
脇役戦闘員として、樹状細胞とT細胞が登場します。
のどの奥の細胞に入ったインフルエンザウイルスをいち早く捕まえるのは、この樹状細胞です。
樹状細胞が、インフルエンザウイルスを全部食べつくせれば、それで感染は治まるのですが、そう簡単にはいきません。
インフルエンザウイルスは強力で、増殖も速いので、多くの場合、樹状細胞には食べきれないくらいすぐに増えてしまいます。
B細胞は、リンパ球の一種です。
B細胞は、特定の敵を強力に退治する武器を作ることができます。
どういうことかというと、インフルエンザウイルス退治にはインフルエンザウイルス退治専門のB細胞がいて、インフルエンザウイルスだけを追撃するミサイルを大量に発射するのです。
この追撃ミサイルが抗体です。
T細胞もリンパ球の一種。
インフルエンザウイルス退治専門T細胞は、インフルエンザウイルスを食べた樹状細胞の指令を受けて発動します。
樹状細胞は、食べたウイルスの破片を目印としてつけた旗を自分の表面に立てて、これでインフルエンザウイルス退治専門T細胞に指令を伝えます。
インフルエンザウイルスを食べた樹状細胞
というややこしい手順を踏んで、ようやく抗体がインフルエンザウイルスに攻撃を開始します。
そのため、7日~10日も時間がかかります。
この間に、他の戦闘員の力で、インフルエンザはほとんど治ってしまいますね。
ちょっと間が抜けている感じもしますが、この専門T細胞・B細胞は、1度発動するとそのあとはいつでも出動できる状態で待機するようになります。
ですから、2度目に同じ敵が現れたときには、すぐにやっつけることができます。
同じタイプのインフルエンザに2回罹ることがなくてすむのは、この待機システムのおかげです。
専門T細胞・B細胞の効果が何年続くかは人によって違いますが、何十年も持続するケースも認められています。
戦闘員は、リンパ球とか、好中球、マクロファージのような白血球と呼ばれるグループの仲間たちです。
聞いたことがありますね?
これらの戦闘員には、それぞれ持ち場や役割が分担されていいます。
血液の中での戦いに強いもの、リンパ管戦が得意なもの、あるいは細胞の間に入って行って細胞を叩き壊して中に潜んでいる敵を追い出すもの。
敵だと思えば相手かまわず戦いを挑む戦闘員もいれば、特定の相手だけに有効な武器を持った戦闘員もいます。
特定な相手を選ぶ戦闘員の方が強力です。
相手が決まっていないと、間違って自分の細胞に戦いを挑んでしまいかねませんから、特に強力な戦闘員は、特定の相手と以外戦えないようにできているのです。
このように免疫という自衛隊は複雑で、あまりにたくさんの戦闘員がいるので、ここでは、予防接種に関連する戦闘員にスポットを当てます。
インフルエンザウイルスが感染してから抗体ができるまで
予防接種は、「特定の相手に戦いを挑む強力な戦闘員」を外部から養成するシステムです。主役戦闘員はB細胞。
武器は抗体。
脇役戦闘員として、樹状細胞とT細胞が登場します。
樹状細胞が先陣を切る
樹状細胞は血液やリンパ管ではなく、組織の中に住んでいて、外敵が侵入すると捕まえて食べます。のどの奥の細胞に入ったインフルエンザウイルスをいち早く捕まえるのは、この樹状細胞です。
樹状細胞が、インフルエンザウイルスを全部食べつくせれば、それで感染は治まるのですが、そう簡単にはいきません。
インフルエンザウイルスは強力で、増殖も速いので、多くの場合、樹状細胞には食べきれないくらいすぐに増えてしまいます。
ヒーローはB細胞
ここで、B細胞が活躍します。B細胞は、リンパ球の一種です。
B細胞は、特定の敵を強力に退治する武器を作ることができます。
どういうことかというと、インフルエンザウイルス退治にはインフルエンザウイルス退治専門のB細胞がいて、インフルエンザウイルスだけを追撃するミサイルを大量に発射するのです。
この追撃ミサイルが抗体です。
重要なサブキャラT細胞
しかし、インフルエンザウイルス退治専門B細胞を発動させるにはインフルエンザウイルス退治専門T細胞の助けが必要です。T細胞もリンパ球の一種。
インフルエンザウイルス退治専門T細胞は、インフルエンザウイルスを食べた樹状細胞の指令を受けて発動します。
樹状細胞は、食べたウイルスの破片を目印としてつけた旗を自分の表面に立てて、これでインフルエンザウイルス退治専門T細胞に指令を伝えます。
樹状細胞がインフルエンザウイルスを食べてからB細胞が抗体を作るまでをイラストにしました。
インフルエンザウイルスが感染してから、T細胞、B細胞に退治されるまで |
抗体を作るには時間がかかる
まとめると、
インフルエンザウイルスを食べた樹状細胞
↓指令
インフルエンザウイルス退治専門T細胞
↓指令
インフルエンザウイルス退治専門B細胞
↓武器産生
インフルエンザウイルス追撃抗体
というややこしい手順を踏んで、ようやく抗体がインフルエンザウイルスに攻撃を開始します。
そのため、7日~10日も時間がかかります。
この間に、他の戦闘員の力で、インフルエンザはほとんど治ってしまいますね。
ちょっと間が抜けている感じもしますが、この専門T細胞・B細胞は、1度発動するとそのあとはいつでも出動できる状態で待機するようになります。
ですから、2度目に同じ敵が現れたときには、すぐにやっつけることができます。
同じタイプのインフルエンザに2回罹ることがなくてすむのは、この待機システムのおかげです。
専門T細胞・B細胞の効果が何年続くかは人によって違いますが、何十年も持続するケースも認められています。
予防接種で抗体を作る
B細胞・T細胞には、1度発動されると、2度目に同じ敵が侵入した時にすぐに発動するという性質があることはお話ししました。
ですから、予防接種でインフルエンザウイルス退治専門B細胞・T細胞を発動させておけば、本当にインフルエンザに罹ったときに、すぐに抗体が作られるわけです。
予防接種に用いるワクチンは、インフルエンザウイルスの毒性をなくしたうえで、目印にしやすい一部分だけを取り出したものです。
H1N1とかH3N2とかいうインフルエンザの型の、「H」や「N」は、この目印にしているタンパク質を意味しています。
このように、予防接種で用いるワクチンはインフルエンザウイルスの一部だけで遺伝子は含まれていませんから、接種しても増殖できません。
予防接種でインフルエンザに感染することは絶対にない、ということです。
予防接種を受けた後にリンパ節が腫れることがあるのは、リンパ節がB細胞、T細胞といったリンパ球の活動基地であるためです。
予防接種を受けるといつも熱が出る・・・という方もいますが、インフルエンザにかかったわけではありません。
B細胞やT細胞が活動するためには、ここには説明しきれなかった大勢の戦闘部隊存在します。
これらの部隊が一度に活発に働くために微熱が出るものと考えられます。
予防接種でできる抗体では感染を防げない
予防接種をすれば万全、という感じがしますね。しかし、ここに落とし穴があります。
説明の前に、インフルエンザウイルスが体の中のどこにいるかを見てみましょう。
インフルエンザウイルスの挙動
インフルエンザウイルスは、口や鼻からのどの奥に入ってきて、のどの粘膜の細胞の中に侵入して増殖します。これが潜伏期間といわれる、感染しているけれど症状が出ない期間です。
そのあと、インフルエンザウイルスは感染したのどの粘膜の細胞を壊して外に出ていきますが、血液の中にインフルエンザウイルスが観察されることはほとんどないとされています。
つまり、発熱や関節痛などの全身性の症状は、ウイルスが悪さをしているのではなく、ウイルスを退治しようとしている自分の身体の攻撃の結果だと考えられます。
喉の炎症や鼻水も、免疫系が過剰に反応している結果。
この、過剰な免疫応答がインフルエンザが発症した状態です。
ほとんどの人は、発症してから1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症などになり、入院したり、中には死に至ったりするケースもあります。
これをインフルエンザの重症化といいます。
予防接種したワクチンが作用する場所
インフルエンザの予防接種は皮下注射ですから、ワクチンは皮下の組織から血液中にしみ出ていきます。そして、血液の中でインフルエンザを退治する武器、抗体を作ります。
ですから、予防接種が威力を発揮するのは、血液の中。
ここにウイルスが存在するのは、ごく稀な例です。
とすると、予防接種で感染を防ぐことはできないように思われます。
予防接種の効果が一番期待できるのは、重症化を防ぐこととされています。
重症化する可能性が高いといわれている高齢者や、基礎疾患のある方には、特に予防接種が勧められるのはこのためです。
参考 厚生労働省 インフルエンザQ&A Q17
しかし、インフルエンザウイルスが侵入することができる人の細胞は、喉にしかありません。
どうも、理屈が合わないような気がします。
感染を防ぐ抗体にはいろいろある
IgG、IgA、IgM、IgD、IgE。
抗体のことをイムノグロブリンともいうのですが、Igはイムノグロブリンの略です。
ここでは、インフルエンザに関係しているIgGとIgAについてお話しします。
抗体のことをイムノグロブリンともいうのですが、Igはイムノグロブリンの略です。
ここでは、インフルエンザに関係しているIgGとIgAについてお話しします。
抗体は種類によって持ち場が違う
一方、IgAという抗体は、のどの粘膜の奥にあるリンパ小胞というリンパ組織でB細胞から作られます。
イムノグロブリンは、Yの形をしたタンパク質で、のどの粘膜のIgAは、これが2つくっついてできています。
どちらもYの字の2つの先端に、緑色の部分がありますね。
これはインフルエンザウイルスの膜のタンパク質にピッタリはまる形をしています。
ここで、インフルエンザウイルスを捕まえるのです。
インフルエンザウイルス退治専門T細胞から指令を受けたインフルエンザウイルス退治専門B細胞は、インフルエンザウイルス追撃ミサイルである抗体を作れるようになるというお話はしましたね。
このインフルエンザウイルス退治専門B細胞は、作業をする場所によって違う形の抗体を作ります。
血液やリンパの巡回用にはIgGを、のどの粘膜の監視にはIgAを作って、ウイルスの襲撃に備えます。
そうです。
感染しようとするインフルエンザウイルスからのどの粘膜を守るには、IgAを予防接種で作っておけばいいわけです。
だったら、IgAをワクチンで人工的に作らせることができないか?と考えますよね。
イムノグロブリンは、Yの形をしたタンパク質で、のどの粘膜のIgAは、これが2つくっついてできています。
どちらもYの字の2つの先端に、緑色の部分がありますね。
これはインフルエンザウイルスの膜のタンパク質にピッタリはまる形をしています。
ここで、インフルエンザウイルスを捕まえるのです。
インフルエンザウイルス退治専門T細胞から指令を受けたインフルエンザウイルス退治専門B細胞は、インフルエンザウイルス追撃ミサイルである抗体を作れるようになるというお話はしましたね。
このインフルエンザウイルス退治専門B細胞は、作業をする場所によって違う形の抗体を作ります。
血液やリンパの巡回用にはIgGを、のどの粘膜の監視にはIgAを作って、ウイルスの襲撃に備えます。
のどの敵にはIgAで備える?
IgAは、のどからのウイルスや細菌の感染を防ぎます。感染しようとするインフルエンザウイルスからのどの粘膜を守るには、IgAを予防接種で作っておけばいいわけです。
だったら、IgAをワクチンで人工的に作らせることができないか?と考えますよね。
アメリカでは、予防接種でIgAを作らせようと、吸入でのどに直接噴霧するワクチンを作りました。
でも、顔が腫れるなどの副反応が多いうえ、思ったほどの効果も得られなかったようです。
対象も2~49歳と限られていて、肝心の高齢者は使用できません。
でも、顔が腫れるなどの副反応が多いうえ、思ったほどの効果も得られなかったようです。
対象も2~49歳と限られていて、肝心の高齢者は使用できません。
日本でも、色々な製薬企業がチャレンジしているので、いずれ完成するかもしれません。
参考 笹月健彦監修 エッセンシャル免疫学第2版 2010. 東京. メディカルサイエンス・インターナショナル
インフルエンザシリーズ、こちらもご覧ください。
インフルエンザ*脳症って?
インフルエンザ*タミフルはどのくらい効くの?
インフルエンザ*タミフルで予防できる?
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