
インフルエンザの一番の恐ろしさは、それが原因で死亡する例がみられることでしょう。
ただし、ほとんどの場合、インフルエンザそのものが原因で死亡するわけではありません。
では、何が原因で死亡するのか・・・それを知っておくと、罹ったときの対策などにも役立つことがあります。
インフルエンザで怖いのは脳症と細菌性肺炎です。
今回はまず、インフルエンザ脳症についてお話しします。インフルエンザ脳症とは
インフルエンザウイルスの感染が原因で、意識障害を伴う脳神経の障害によるさまざまな症状をインフルエンザ脳症といいます。意識障害の起こり方にもいろいろあり、ほとんどの場合は、12~24 時間以上の持続しますが、いったん治ったように見えた後、悪化するケースもあるといいます。
インフルエンザウイルスが脳の中に入るのが原因なのかというとそうでもなく、脳内にウイルスが見つかる人は少ないようです。
とにかく、症状もさまざま、経過もさまざま、と、家庭での判断は難しいです。
医師でさえも、診断が難しいのですから。
そして、決め手となる治療法も、治療薬もないのが現状です。
詳細を知りたい方は、厚生労働省の「インフルエンザ脳症ガイドライン」をご覧ください。
42ページからなるガイドラインのうち、5ページがグリーフケア・・・亡くなった方の家族へのケアについての記載になっていることからも、この疾患の治療の難しさが窺われます。
インフルエンザ脳症になりやすい年齢は?
厚生労働省の調査では、毎年50~200人のインフルエンザ脳症患者が報告され、その約10~30%が死亡しているといいます。2012年末から2013年初めにかけて流行した時にインフルエンザ脳症に罹った人の年齢は右のとおりです。
半数は10歳以下の小児ですが、大人は絶対大丈夫、というわけでもありません。
高齢者も、注意が必要なようです。
インフルエンザ脳症対策は?
インフルエンザ脳症が発症してしまったら、これといって対策がないのが現状です。
タミフルは効くかどうかわからないけれど、厚生労働省は推奨
インフルエンザに効果があるとされているタミフル(一般名:オセルタミビル)などの抗ウイルス薬も、脳症に対して有効かどうかは効果が確認されていません。ただ、タミフルを服用することで早く熱が下がる効果が期待できるので、厚生労働省の「インフルエンザ脳症ガイドライン」では使うことを勧めています。
タミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬も、薬理作用から同じ効果が考えられますが、なぜタミフルだけが勧められているかというと、使用経験が多いからだということです。
なにしろ、全体の症例数が非常に少ないですから。
タミフルを飲むと早く熱が下がる、というのは本当のようですが、半日~1日程度です。
また、熱は下がるけれども、病気の進行状態がよくなるわけではない、という意見もあります。
世界レベルの研究では、タミフルは勧められていない
2014年4月10日に、タミフルの臨床試験20件(対象患者 9,623人)、ザナミビル(商品名:リレンザ)の臨床試験26件(対象患者 14,628人)の有効性・安全性を検討した結果が発表されました。
これは、 コクラン共同計画という、世界的に様々なデータを集めて解析し、薬剤などの有効性を検討する計画の一つとして行われたものです。
その中に
という報告がありました。
脳炎に関しての記述ではありませんが、インフルエンザが原因で起こる他の疾患は、タミフルでは減らすことができない、ということがいえます。
もうひとつ・・・
これは、 コクラン共同計画という、世界的に様々なデータを集めて解析し、薬剤などの有効性を検討する計画の一つとして行われたものです。
その中に
- タミフルもリレンザも、成人および小児で、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎の発症を減らさなかった
という報告がありました。
脳炎に関しての記述ではありませんが、インフルエンザが原因で起こる他の疾患は、タミフルでは減らすことができない、ということがいえます。
もうひとつ・・・
- タミフルを使った成人・小児には、感染と戦うための抗体を作る力が低下した人が、使わなかった人に比べて多く見られた
この辺の解説は、
解熱鎮痛薬は使わない方がいい
解熱鎮痛薬については、使わないほうがいいとされています。
結果は表のように、解熱鎮痛薬を使わなかった人に比べて、解熱鎮痛薬を使った人では死亡した割合が高いことが認められました。
とはいっても、症例数が少ないので、明言することはできません。
でも、リスクは何としても避けたいので、特に、ジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)とメフェナム酸(商品名:ポンタール)は、使わない方がいいとされています。
このほかにも、対象になった患者さんが使っていなかった解熱鎮痛薬はたくさんありますが、それらの薬剤も、同じような結果になることが考えられます。
インフルエンザでなくても、小児には熱を下げるために解熱鎮痛薬は使わない方が良いとされています。
痛みどめとして使用するときには、アセトアミノフェンを選ぶことをお勧めします。
参考
平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長:岡山大学医学部森島恒雄教授)
最近では、小児科でこのような薬を処方されることはなくなってきています。
でも、お店で販売しているものの中にも入っている成分ですので、ご家庭で使ってしまうことのないように注意してください。
解熱鎮痛薬としてだけでなく、総合感冒薬などの中にも含まれていることがあります。
次の成分は、どのような症状に対してもお子さんには使わないように気を付けましょう。
アスピリン(アセチルサリチル酸)
イブプロフェン
ジクロフェナクナトリウム
ロキソプロフェンナトリウム
イソプロピルアンチピリン
詳しくはこちらをご覧ください。
予防接種をすればインフルエンザ脳症になりにくい?
これまでのデータを分析したところでは、インフルエンザワクチンには、脳症の予防効果や重症化阻止効果は認められません。ただ、感染すること自体を予防すれば、脳症になる可能性を減らすことはできます。
また、皆が予防接種を受けて感染源が減れば、脳症患者を減らすことにつながると考えられるという意見もあります。
とはいっても、以前、小学生が学校で全員、インフルエンザの予防接種を受けていた時にも、いくらか少なくはなったようですが、やっぱり、学級閉鎖することもありました。
脳症に備えてかかりつけ大病院を
日ごろからできる対策として、お子さんが小さいときには、3人のかかりつけ医を作っておくことをお勧めします。
ひとつは近所の小児科医。
もうひとつは近所の総合病院の小児科医。
最後に、大病院の小児科医。
大きな病気をする機会がないと、なかなか大病院にかかることはありませんが、一度、何かの機会に「いい先生」を探しておくのがいいでしょう。
全くあてのない方は、インフルエンザ脳症対策としては、小児神専門医をチェックしておくと役立つかもしれません。
日本小児神経学会のホームページにリストがあります。
参考にしてみてください。ひとつは近所の小児科医。
もうひとつは近所の総合病院の小児科医。
最後に、大病院の小児科医。
大きな病気をする機会がないと、なかなか大病院にかかることはありませんが、一度、何かの機会に「いい先生」を探しておくのがいいでしょう。
全くあてのない方は、インフルエンザ脳症対策としては、小児神専門医をチェックしておくと役立つかもしれません。
日本小児神経学会のホームページにリストがあります。
原因については研究中
最後にちょっと難しい話になりますが、インフルエンザ脳症の原因については、専門家が様々な研究を行っているので、紹介します。チトクロームCという、ミトコンドリアの膜にあるタンパク質が増えていた
チトクロームCは、細胞のアポトーシス(必要に応じて細胞が自殺すること)を起こすときに働くもので、中枢神経系のアポトーシスに関係していると考えられる。血液中のサイトカインの値が高かった
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サイトカインとは、本来は外から侵入してきた細菌やウイルスなどの敵から自分自身を守るために体が出す物質。
これが、働きすぎると、自分自身を傷つけてしまう。
これについては、衛生的すぎる環境が過剰な免疫反応を起こす原因になっていることが考えられています。
昔は細菌やウイルスがいっぱいいる中で生活していたので、あまり免疫反応が過敏になりすぎないように、コントロールするシステムが自然に働いて、インフルエンザごときで脳症にはならなかったかもしれません。
詳しくはこちらを。
「除菌」は人類を滅ぼす?
血管内皮障害が起きていた
血管内皮(血管の内側を構成する膜)に障害が起きて、血流障害が起こっていた。脂肪酸の代謝異常が見られた
インフルエンザ脳症の一部の症例(約3%)に、CPT2(カルニチンパルミトイル トランスフェラーゼ II)という酵素をつくる遺伝子に異常が見られました。
CPT2とは、脂肪酸を代謝してエネルギーを作るために必要な酵素です。
このような遺伝子の異常があると、高熱が続くことで、CPT2の働きが弱まってエネルギー不足になり、インフルエンザ脳症の状態を引き起こすのではないかと考えられています。
以上のようなことが、脳症が発症した患者さんについて、脳や血液に何か異常が見られないかを調べた結果、確認されました。
とはいえ、症例数が少ないので、なかなか成果が上がらないようです。
現在も引き続き、研究中です。
がんばって解明していただきたいですね。
参考
平成15年度厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療及び予防方法の確立に関する研究」(班長:岡山大学医学部森島恒雄教授)
とはいえ、症例数が少ないので、なかなか成果が上がらないようです。
現在も引き続き、研究中です。
がんばって解明していただきたいですね。
参考
平成15年度厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療及び予防方法の確立に関する研究」(班長:岡山大学医学部森島恒雄教授)
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