むくみですよね。
今日はむくみのメカニズムについてみてみましょう。
むくみ(浮腫)は、細胞と細胞の間の水分が、多くなりすぎた状態です。
細胞と細胞の間を満たしている水分を「細胞間液」「組織液」「間質液」などと呼びますが、呼び方が違うだけで同じ意味です。
細胞と細胞の間を満たしている液体ですから「細胞間液」がわかりやすいので、この言葉を使って説明します。
血管とリンパ管
下の絵で、赤から青へ色が連続しているパイプが血管(動脈~静脈)です。血管は体の隅に行くほど細くなり、やがて動脈から静脈となり、また太くなっていきます。
すみれ色のパイプはリンパ管です。
リンパ管は、体の隅々に通じていて、リンパ節に向かってリンパ液を送っています。
下の絵は、血管がもっとも細くなる体の隅ずみの部分、いわゆる末梢の細胞の集まり(組織)での模式図です。
末梢組織では、細胞たちが、血管(動脈)に乗って流れてきた、酸素、水(H2O)、栄養素の供給を受けます。
静脈とリンパ管は、余分な細胞間液や、細胞が出す老廃物を運んでくれる役目があります。
水、栄養素はとても小さく、血管の中で液体成分である血漿(けっしょうと読みます)に溶け込んでいます。
動脈から、酸素、水、栄養素が細胞に配られて、一方、細胞から出るいらない老廃物を静脈やリンパ管が送り出すためには、血漿と細胞間液のやり取りが欠かせません。
末梢組織を通る毛細血管には、大きな穴が開いていて、赤血球が運んできた酸素や、血漿中の水、栄養素など小さな物質を自由に通します。
末梢組織では、血漿が細胞間液となり、細胞間液が血漿となり、どちらも、ほぼ自由に行き来しているといえます。
下の絵ではその様子を矢印と点線の矢印で表しています。
むくみ(浮腫)のメカニズム |
むくんだ状態ってどういうこと?
絵の上の青い点線で囲まれた部分は、むくんでいない正常な組織です。下のオレンジで囲まれた部分がむくんだ状態です。
正常組織では、血漿と細胞間液のやり取りは盛んで、余分な細胞間液は、細胞の出す老廃物や、死んだ細胞の残りかすなどもリンパ管に吸収されて、これらの働きで、一定の体積(図では面積)を保たれています。
でも、むくんだ組織では血管に細胞間液が戻っていかず、細胞間にとどまってしまっています。
また、余分な老廃物などが細胞間液とともにリンパ管に吸収されず、これが原因で、オレンジの点線で囲まれた体積は青い点線で囲まれた体積より大きくなります。
体積が大きくなる、つまり普通より膨らむ、これがむくみのメカニズムです。
ちなみに、すべての体液で体重の60%を占めていて、細胞間液は体重の15%、血漿は5%の割合です。
また、細胞の中の体液=細胞内液の体重に対する割合は40%です。
ではなぜ、健康な人でもむくむのでしょう
注目は、緑色の点であらわした、アルブミンというタンパク質と、すみれ色であらわしたリンパ管です。アルブミンは肝臓で作られて、血液に乗って体中を回っているタンパク質です。
いろいろな働きがありますが、もっとも大事なのは、末梢組織で、血漿と細胞間液のやり取りを調節する働きです。
血漿の中の小さい物質は毛細血管を通り抜けられますが、アルブミンは大きなタンパク質なので、ほとんど通り抜けられません。
この血液中のアルブミンが浸透圧を調節しているのです。
青い点線で囲まれた、正常な組織の血管には、緑の点のアルブミンがたくさんあります。
血管内の濃度が細胞間液に比べて高い状態です(浸透圧が高い状態)。
でも、オレンジの点線で囲まれたむくみの組織の血管では、アルブミンが少なくなっていて、細胞間液とあまり変わりません(浸透圧に差がない状態)。
物理法則として、濃度は一定になりたがるので、正常組織のように血管の中と細胞間の濃度に差があり、血管内の浸透圧が細胞間より高い場合は、血漿(血管の中)から細胞間液に移動した液体が、再び、血管に戻ろうとします。
ですので、正常な組織では、いったん血漿から細胞間液として出たものの9割は、再び血漿として回収されるため、むくむことはないのです。
では、むくんでいるのはどういう状態なのでしょうか。
むくみの場合は、血管の中と細胞間の濃度に差がないか、細胞間の浸透圧のほうが高い状態。
濃度に差がない場合は血漿から細胞間液に移動した液体が、再び、血管に戻れず、細胞間に留まってしまうのです。
細胞間液の浸透圧のほうが高い状態では、血管内の水分を細胞間液に引き寄せ、むくみがさらに進みます。
また、血漿から細胞間液として出た液体の残りの1割はリンパ管に吸収されていくのですが、リンパ管の働きが悪くなると、吸収も遅くなり、これも、むくみの原因になります。
今はやりのリンパマッサージは、リンパ管をマッサージすることで働きを高めることを期待されて行われているのでしょう。
細胞間液として出た液体の残りの1割がリンパ管に吸収されていくので、リンパマッサージの効果の程度も推定できますね。
アルブミンがちゃんと働いていない状態って?
アルブミンは、肝臓が疲れていると十分作られません。大量に毎日のように飲酒している人では、アルコールの代謝に肝臓が忙しくて、アルブミンの産生効率が低下してしまうと考えられます。
また、アルブミンは栄養状態が悪いと作れません。
疲労したり、何らかの原因で食事でタンパク質が十分とれていないとむくみやすくなるのです。
極端なダイエットが原因のむくみも無視できませんね。
飲酒した後のむくみ
ちなみに、アルコールを飲んだあくる日、むくむことがあるかと思います。
アルコールを代謝するのに水が必要です。
ですので、飲酒中は脳が水分を摂れと指令を出して、無意識に水分を必要量取り込み、それを使って肝臓がせっせとアルコールを代謝してくれます。
しかし、酔いが進むと、脳の水分調節をつかさどっていた機能が低下していまい、水を摂りすぎてしまうようです。
また、酔いが回って、そのままベッドに倒れこむ、といった事態になりがちですが、睡眠中は抗利尿ホルモンが分泌されるので、これが水をため込む原因ともなります。
抗利尿ホルモンとは、名前の通りおしっこを出さないようにするホルモン。
夜中におしっこをしなくて済むように分泌されるのですが、むくみには逆効果なわけです。
飲酒して、あくる日むくまないコツは、お酒とともに、必要以上に水をごくごく飲まないことです。
ストローを添えたコップで水を飲むのがお勧めです。
また飲酒中はおしっこを決して我慢しないことも大切です。
ただし、二日酔いの予防には水をたくさん摂るのが効果的。
どちらを取るか、悩みどころです。
ナトリウム(塩分)の取りすぎも原因に
ナトリウム(塩分)の摂りすぎもむくみの原因となります。ナトリウム(塩分)をたくさん摂ると、細胞間液のナトリウム濃度が高くなり、浸透圧が上がります。
すると、細胞間液の濃度を下げようとして、血管内の水分を引き寄せます。
こうして細胞間液の体積は増えて、むくみとなるのです。
細胞間液は増加しているのに、血管内の血液量(体積)は減少しているという状態です。
これを腎臓は、細胞間液が減ったのだと勘違いして、ナトリウムと水分を尿として排泄することを抑えてしまい、細胞間液のナトリウム濃度がさらに上がり、さらにむくむという悪循環になります。
また、血中のナトリウム濃度が上がると、脳の視床下部の口渇中枢が働いてナトリウム濃度を低下させようと、水を飲むように指令します。
これが、塩辛いものを食べたときにのどが渇く理由です。
こんなわけで、ナトリウムを摂りすぎると、細胞間液も血管の中も、体中に過剰な水に満たされてしまっているわけです。
日本人の多くは、食塩や塩辛い味付けのものを摂りすぎで、むくみがちで、これが原因で、高血圧となっている場合が多いと思われます。
まとめると、特に病気のない人では、
●むくみは細胞と細胞の間に液体がたまってしまう状態
●むくみは疲労やタンパク質の摂取不足、肝臓の機能が落ちると起こる
●ナトリウム(塩分)の摂りすぎでも起こる
●アルコールも原因となる
むくみやすい人は覚えておいて損はないと思いますよ。
これ以外にも、糖尿病予備群の人では、糖の摂りすぎでむくむ可能性があります。
糖質制限でむくみがなくなったという人は意外に多いようです。
この話は下のページで。
糖質制限 糖質は何gまでOK?
また、脱水によって却ってむくむこともあります。
これについてはまた別の機会にお話ししますね。
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