熱があるときの薬の選び方
頭痛・生理痛の薬から選びましょう。
熱・頭痛・生理痛には、だいたい同じ薬が効きます。
なので、解熱薬のことを解熱鎮痛薬ということもあります。
ついでに炎症を抑える作用もあると、解熱消炎鎮痛薬と呼ぶこともあります。
店頭で買える鎮痛薬の中で一番効くのはロキソニンS(ロキソプロフェン)だといわれていますが、イブプロフェンやアスピリン(アセチルサリチル酸ともいいます)、アセトアミノフェンでも十分です。
ロキソニンSは値段が高いですからね。
カフェインやブロムワレリル尿素など、ほかの成分も入っている薬がほとんどです。
一緒に飲めばより効果が上がることを期待して入っているのだと思いますが、さほど、関係ないように思います。
その証拠に、お医者さんが処方するときには、鎮痛薬しか出しません。
余計な副作用を避けるためには、鎮痛薬だけが単味で入っている商品をお勧めしますが、探すのが難しいかもしれません。
単味の薬の候補としては、イブプロフェンだったら「リングルアイビー」、アセトアミノフェンだったら「タイレノール」、アスピリンだったら「バファリンA」といったところが、探しやすいかと思います。
「バイエルアスピリン」も単味ですが、バファリンAのほうが、胃への刺激が少ないように工夫されているようです。
イブプロフェンには1回150㎎のものと200㎎のものがあります。
まずは、150mgを試してみるのがよいでしょう。
頭痛の薬は胃に悪いから何か食べてから飲むように、とよく言われます。
これは本当です。
ただし、理由は胃に悪いというだけではなくて、食べ物と一緒でないと、吸収できないことがあるためです。
ちなみにアセトアミノフェンは胃に悪いことはありません。
胃の弱い人にお勧めです。
理由は後で説明しますね。
薬は、作用を理解してから使いましょう
薬が身体のどこに作用しているのか、必要な作用以外にどんな作用を示すのか(これが副作用です)、よく理解することは大切です。
食品添加物を気にしている方は多いと思います。
でも、よく考えてください。
食品添加物にはいろいろな規定があって、ごく少量、決められた成分が選ばれてはいっているだけなんです。
それに比べると、医薬品は、明らかに体に何かしらの作用を示す物質が、作用を示すのに必要な量入っています。
本当に必要な薬を厳選して使う必要を感じませんか?
例えば・・・
胃腸障害やアレルギーが起こらず、使いやすいとされているアセトアミノフェンでも、大量に使うと、まれに重篤な肝障害が起こることがあります。
アセトアミノフェンは、総合感冒薬にもよく使われるので、総合感冒薬と鎮痛薬を一緒に飲んだら、たくさんアセトアミノフェンを飲んでしまっていた、なんてことにもなりかねません。
注意はこのくらいにして、解熱鎮痛薬の作用機序を見てみましょう。
鎮痛薬はどうやって効くの?
まずは、プロスタグランジンを紹介しましょう
プロスタグタンジンとは、、局所ホルモンとか、オータコイドと呼ばれる物質で、体の色々な細胞で色々な働きをしているものです。細胞膜を材料にして、必要に応じて細胞の中で作られます。
血液を固めたり、血管を広げたり、痛みを感じさせたり、胃を守ったり・・・それはそれは、たくさんの作用を示します。
子宮を収縮させる作用もあります。
プロスタグランジンのおかげで、赤ちゃんが生まれてくるわけです。
ただし、この子宮収縮作用が、生理痛の原因にもなります。
解熱薬で生理痛が治るのは、この両方に作用するからですね。
どの作用も、本来は体を正常に保つための作用なのですが、日常生活に支障をきたすのは困る、というので、これを抑える薬がよく使われているわけです。
プロスタグランジンの作用の中で、熱を下げる作用にスポットを当てて、もう少し詳しく説明しましょう。
ウイルスが感染すると、これを退治しようと免疫系が働きます。
この時に出てくるサイトカインという物質の作用で、細胞壁を構成する不飽和脂肪酸の一つであるアラキドン酸が細胞の中に遊離してきます。
図の上の方の細胞膜の紫の部分が脂肪酸、脂肪酸の一部(赤い部分)がアラキドン酸です。
シクロオキシゲナーゼという酵素(タンパク質)が働くと、アラキドン酸はプロスタグランジンになります。
細胞壁はどの細胞にもあるので、どの細胞でもプロスタグランジンができるわけです。
プロスタグランジンの作用 |
プロスタグランジンに対する解熱鎮痛薬の作用 |
プロスタグランジンを作らせないのが解熱鎮痛薬
解熱鎮痛薬は、シクロオキシゲナーゼを働けなくする薬です。つまり、解熱鎮痛薬はプロスタグランジンを作らせないようにするんです。
熱や痛みによく効きます。
アスピリン、ロキソニン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどが、よく見かける解熱鎮痛薬です。
湿布薬に入っているインドメタシン、ジクロフェナク、ケトプロフェンも、同じ作用を持っています。
これらの成分が入っている薬は、同じような商品名でもちょっと値段が高めです。
湿布については、また別の機会に説明しますね。
解熱鎮痛薬の中でも、アセトアミノフェンはちょっと作用メカニズムが違っていて、プロスタグランジンを抑える作用は弱いとされています。
解熱鎮痛作用は他の作用メカニズムがあるようですが、詳細はわかっていません。
他の解熱鎮痛薬に比べてマイルドな薬とされています。
それから、生理痛には、他の解熱鎮痛薬を使ってください。
解熱鎮痛薬に注意が必要な人
胃の弱い人
解熱鎮痛薬は、よく効く薬なのですが、副作用もあります。胃粘膜を守っているプロスタグランジンを減らすため、胃の弱い人には向きません。
胃の弱い人はアセトアミノフェンがよいでしょう。
アセトアミノフェンは、ロキソニン、イブプロフェン、アスピリンなどに比べると、炎症を抑える作用が弱いとされていますが、副作用は少ないので、まずはアセトアミノフェンを試してみるのが良いかもしれません。
喘息の人
アスピリン喘息といって、稀にですが、喘息が起こりやすくなる人がいます。喘息の人も、アセトアミノフェンがよいでしょう。
頭痛で1か月に10日以上解熱鎮痛薬を使っている人
薬剤誘発性頭痛と呼ばれる頭痛があります。名前の通り、頭痛薬の使い過ぎで起こる頭痛です。
1か月に10日以上、頭痛薬を使っている人は、その可能性があるのでお医者さんに行くことをお勧めします。
薬を飲んでも効かなかったらどうする?
飲み薬は、効果が出るのにだいたい30分かかります。なので、30分はがまんしてください。
30分を過ぎても効かなかったり、ちょっとは効いたけどまたぶり返してしまったりしたら、4時間以上間隔をあけてからもう一度薬を飲んでください。
お医者さんによっては大事を取って「6時間あけてください」といわれることもあるようですが、私は4時間で飲んでいます。
おなかがすいているときに飲んで効かなかったときに、何か食べたら効いてきたこともあります。
2回飲んでも効かなければ、人によって効きにくい成分があることもあるので、違う成分の薬に変えてみるのもいいです。
ただし、薬が効かないような重篤な病気の場合もあります。
具合が悪ければ、早めにお医者さんに行きましょう。
最後にひとこと
解熱鎮痛薬は、感染した状態を治そうとして体が出している熱を無理やり下げたり、痛みを感じにくくしたりする薬です。症状を取る効果は高いですが、体を健康な状態に治しているわけではありません。
熱が出るのは、そのほうがウイルスや細菌と戦いやすくなるので、体がそうしているのです。
くしゃみや咳や鼻水が出るのもウィルスなどの病原体を外に出してしまおうとしているのです。
どうしても症状を抑えなければならない時以外は、薬を飲まずに安静にしていたほうが風邪は早く治るかもしれません。
薬を飲む前に、そのことを思い出してくださいね。
風邪で食欲がないときには、無理をして食べないことです。
胃腸が弱っているために食欲がないのですから、食べても十分吸収されません。
水分だけ補給するといいでしょう。
⇒総合感冒薬についてはこちらをご覧ください。
大変詳しい解説が図になっているので、よくわかりました。解熱鎮痛薬で「痛いから決められた容量以上飲む」という人、「痛いけれどくせになりそうなので、控え目に飲む」「かなり痛いくなってから飲む」という話を聞きます。また一般薬と病院で処方される薬の違いはあまりよく知らないかもしれません。調剤薬局ならまだしも、ドラッグストアですと、成分のことを聞いても詳しく説明してくれる薬剤師さんはいるかな??(いてほしいんですが)
返信削除薬の適正な量を見極めるのはとても難しいですね。体重や年齢、その他、いろいろな要素が関係しますから。市販薬では、副作用が出ないように少なめに設定されているケースもありますが、解熱鎮痛薬は、市販薬でもお医者さんが普通に使う用量と同じものが多いようです。少なめに飲んでも、それで効けばOKです。でも、すっきり効かず、結局がまんしたり、何度も飲むことのほうが多いのでは??月に10回以内ならば、くせにはなりませんから、きちんと飲んで大丈夫です。私はよく頭痛薬を使いますが、痛くなり始めに飲むと、一回の服用で治せることが多いです。
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