また、ずいぶん過激で危険なダイエットの1つとして、便秘ではないのに下剤を常用する人もいます。
これも、「お腹の中にウ○チをためていると、なんとなく、体に悪そう」とか「便秘をしていると太る」という心理が働いているからかもしれません。
ちょっと気にしすぎで、ちょっと神経質かなって人もいらっしゃいますね。
さて、その極め付けというか、科学的な観点から見ればちょっと放っておけないのがあります。
それは「宿便」。
「滞留便」などとも呼ばれます。
宿便はマッサージや足つぼ指圧、整体などで改善できるとする宣伝や、宿便には漢方薬などの薬が良いというクリニックや薬局もあります。
宿便があると、腸の壁に便が長期間たまり、それが身体に悪く、肥満や他の病気の原因もになる、などとして、腸管洗浄をビジネスとして行う企業もあります。
宿便てなんでしょうか?ホントなんでしょうか???
宿便はウソ |
実は、宿便は起こりえません。
まず、いくらひどい便秘でも、1週間以上便通がないことはまれでしょう。それに、腸の壁は襞(ヒダ)になっていて、内容物を運ぶために常に動いています。あるときには同じ箇所が山になり、次には谷になっていきます。
その山と谷の表面(粘膜)では、粘液が分泌されていて、とてもなめらかで、外からもの=ウ○チの成分が容易には体内にはいらないようにバリアーしているのです。
さらに、腸の壁の表面の細胞は、1日から7日間で剥がれ落ちて新しい細胞に入れ替わります。
つまり、腸の襞にウ○チがへばりつくことはできないようになっているのです。
もちろん、癌などの原因で腸が閉塞している人は、大便が出ないこともあるでしょうが、こうなると宿便どころの話ではありません。
すぐに治療が必要です。
ここでは腸管にこのような異常がないことを前提にお話しします。
さて、腸の検査で内視鏡を挿入された経験のある方は、モニター画面にうつされたご自分の腸の中を見たことがあると思います。
内視鏡の検査の前に、強力な下剤をのみ、水分も2リットルぐらい飲まされます。
つまり、排便をした後と同じ状態を強制的に作るわけです。
腸の中にはウ○チはひとかけらもありません。
腸壁はきれいなピンク色をしています。
ここまで、強制的にしなくても、頻度は低くても排便があれば、宿便がたまることはありません。
断食して、水しか飲まないのに便が出る、これこそ宿便だとする論法もあります。
これは以下のように説明できます。
1.腸には常在している細菌(腸内細菌、腸内細菌叢)が100兆個ぐらい住んでいて、重量は1kg~1.5kgになるとされています。
2.先ほどお話ししたように、腸壁の細胞は1日から7日間で剥がれ落ちてきます。
3.便の成分の7割から8割は水分です。
これらのことから、断食しても便が出るのは、
水分+腸内細菌+腸壁の死んだ細胞
で構成された便が出るからだということがわかります。
決して腸にへばりついていた古い便が出るからではありません。
このように、宿便という言葉と考えは、明らかに間違ったものです。
もしも、宿便を排除する様々な治療?や方法で、腸内細菌、腸内細菌叢を乱しているのなら、これは身体にとってとても悪いことをしているといえます。
腸内の細菌たちは私たちと共生している共生微生物で、私たちが消化できない物質を分解してくれたり、アミノ酸やペプチドやビタミンを産生してくれたり、いろいろなメリットがあります。
「除菌」は人類を滅ぼす?
強制的に下剤をかけたり、必要もないのに腸管を洗浄したりすれば、当然、腸内の細菌にもある程度影響します。
やはり、科学的に根拠のない「作られた病気」を気にして、必要のない治療や処置を受けたり行ったりすれば、結局自分が損をすることになります。
少なくとも、「宿便」というキーワードであなたを誘う、
医療・健康関係の機関、人、モノ、広告などは
信じないことをお勧めします。
ところで、宿便が気になる人は便秘のことも気になりますよね。
便秘についても別の機会にお話します。
最後に、腸内細菌をはじめ、皮膚の常在菌やのどや鼻の常在菌も、私たちを感染から守る免疫に役立っています。
除菌は危険 |
最近の、除菌ブームにも、ゆめゆめ騙されないように…。
医師に”腸内洗浄を”勧められて困ってしまいました。3回ほど大腸内視鏡をやり、その時にウ〇〇を出し切りましたが、特にすっきり感も肌の調子がよくなったとか、おなかのぽっこりがなくなったなど、期待するようなことは何も起こりませんでした。何となく気まずくなった医師を変えないといけませんが、記事を書いてくださって少しスッキリです。
返信削除コメントありがとうございます。お気持ちの清涼剤に少しだけお役にたててよかったです。
削除特に私たち日本人は気配りをしますので、「医師との関係」は難しいですよね。これまでの私たちの経験から得た、医師や医療従事者との付き合い方や、施設や診療科の選び方、セカンド・オピニオンの取り方など、公開してゆくつもりです。また、読んでください。