いきいき!エバーグリーンラブ

2018年9月6日木曜日

HRTはいつまで続ける?

ホルモン補充療法(HRT)は、いつまで続ければよいの?
HRTをお勧めすると、よく尋ねられます。

答えは、「ずっと続けることをお勧めします」です。
ただし、年齢に応じて使う薬を変更します。

では、どのように続ければよいかと、その理由についてお話しましょう。

HRTの継続方法

HRTを更年期からスタートする場合、エストラジオール製剤とプロゲスチン製剤を使います。

エストラジオール女性ホルモンそのものですので、強い薬のように感じるかもしれませんが、避妊や月経困難症に使われる低用量ピル(OC)や、低用量ピルよりさらにエストロゲンの量を減らした超低用量ピルに比べても、ずっと活性の低い薬です。
HRT ホルモン補充療法 エストラジオール プロゲスチン製剤 
更年期から60歳くらいまではエストラジオール製剤+プロゲスチン製剤、
それ以降はエストリオール製剤を使用




低用量ピルや超低用量ピルは、生理のある人がエストラジオールの分泌をコントロールするための薬ですから、 エストラジオールより強い作用が必要です。
そのため、エストラジオールの活性を高めたエチニルエストラジオールという成分が使われています。

一方、HRTでは、分泌されなくなったエストラジオールを少しだけ補えばよいので、エストラジオールそのものを、必要最低量使うだけで済みます。
これは、もともと分泌されていた量に比べてもずっと少なめですし、周期的に濃度が非常に高くなることもありません。

ですから、低用量ピルや超低用量ピルで見られる、吐き気や頭痛などの副作用は、エストラジオールでは見られません。

更年期からHRTを始めた方も、年齢を重ねて活動性が落ちてきたなと思ったら、エストラジオール製剤+プロゲスチン製剤から、さらに活性の低いエストリオール製剤に変更します。
そうすれば、生涯、副作用を生じることなくエストロゲンが枯渇するのを防げます。

60歳を過ぎてからHRTを始めるときには、エストリオール製剤を用います。
使い方の詳細はこちらをご覧ください。  
HRTで使われる薬剤~エストロゲン製剤

更年期が終わってHRTを止めたらどうなるの?


一般的に、更年期障害で婦人科を受診してHRTを始めた場合、5年程度で「もう更年期は過ぎたから、HRTは終了します」と言われます。
これは、アメリカの臨床試験の見誤った報告などから、いまだに間違った認識が広まっているためと思われます。
問題となった臨床試験についてはこちらをご覧ください。
 ⇒HRTは乳がんの原因になる??
更年期が終わったときに、急にHRTをやめても問題はないのでしょうか?

HRTを5年で中止したとき、更年期症状が再発する場合があります。
ホットフラッシュや動悸など、HRTを始める前と同じ症状が現れれば、自分自身で気づきますから、医師に相談してもう一度HRTを始めれば解決します。

問題なのは、HRTのおかげで発症しないですんでいた”更年期症状とは気づきにくい病気”が発症する場合です。
例としては、うつ、めまい、関節痛などが挙げられます。

HRTを中止したために関節痛が現れたとしても、婦人科の医師はそれがHRTを中止したためだとは気づかずに、整形外科の受診を勧めるでしょう。
整形外科の医師が更年期障害と関節痛の関係を知っているケースはほとんどありませんから、痛み止めが処方されたり、重症な場合には副作用の多い関節リウマチの治療をされてしまうことになりかねません。

そのようなことにならないためにも、HRTは継続することをお勧めします。
”月ごとの出血がどうしても嫌”というような場合には、エストラジオール製剤+プロゲスチン製剤の代わりにエストリオール製剤を使えばよいでしょう。

どうしてもHRTを中止したいという方も、突然やめるのではなく、しばらくエストリオール製剤に切り替えてから終了することで、副作用が起こりにくくなると考えられます。

HRTを継続する期間について、 日本産婦人科学会の「HRTガイドライン2017年度版」では、”HRTの継続を制限する一律の年齢や投与期間はない”としています。
HRTは、”何年か続けたら、あるいは何歳以上になったら、止めた方が良い”という制限は設けなくてよいということです。

なのに、一般の婦人科では5年程度HRTを続けると、ぷっつり中止されてしまいます。
何故なのか、疑問ですね。

おさらい!

更年期症状の治療より重要なHRTの目的

HRTを続けることの大切さを、もう一度確認しましょう。

ここでは、HRTの目的を「閉経に伴う身体の衰えを予防すること」と考えてお話します。

閉経してエストロゲンが分泌されなくなると、どのような疾患に罹る可能性があるかを図にしました。
エストリオール製剤 エストロゲン HRT 関節痛 関節リウマチ 骨粗鬆症 糖尿病 高血圧 脂質異常症 脳卒中 不眠 うつ病 切迫性尿失禁 神経系の異常 頭痛 更年期障害 耐糖能異常 動脈硬化 腎不全 認知機能障害 認知症 骨折 
更年期以降エストロゲンの分泌が低下すると、
はじめは症状としては現れない身体の異常(黄色)が起こり、
年を取るに従い重篤な疾患(ピンク)となって現れる。
ここにかかれている疾患は、どれもエストロゲン不足が原因の1つとなっている可能性が、医学的に確認されているものです。

黄色エストロゲン不足で起こる目に見えない身体の異常、ピンクはその状態が進行して発症する疾患を表します。

例えば、骨粗鬆症エストロゲン不足で起こる病気の代表ですが、骨粗鬆症になっても特に症状はなく、体調は変わりません。
ところが、脆くなった骨が折れると、一日中痛みが続き、折れた場所によっては寝たきりになってしまいます。

”骨粗鬆症と診断されてから骨粗鬆症のくすりを飲み始めればいい”と思っている方もいるかもしれませんね。
骨粗鬆症というのは、骨がスカスカになってしまった状態です。
骨粗鬆症の薬は、スカスカになった骨を、これ以上スカスカにしないようにはできても、元に戻す力には限界があります。
はじめから、スカスカにならないようにすること、50歳の時点での骨の状態を維持することが重要なのです。

図に示した骨粗鬆症以外の病気についても、同じことが言えます。
これらの病気を予防するためにHRTを行うのであれば、生涯継続することをお勧めします。

”本来の女性ホルモンがある状態を維持する”のがHRT

高血圧や糖尿病などの生活習慣病の薬を飲むのと、HRTを同じように考えている方が多いので、追加の説明をさせてください。

運動や食事療法をしても血圧が下がらない方は、「血圧の薬はずっと飲み続けなければいけない」ことは、皆さん、よく理解されていると思います。
 正常な血圧を保つ機能がうまく働かなくなってしまったとき、そのままにしておくと血管に負荷がかかって動脈硬化や、脳卒中、心筋梗塞などになってしまいます。
これを防ぐために、薬で血管を緩めるのが、「血圧の薬」の目的です。
血圧の薬」を飲んでも、血圧が正常だったころの元の身体に戻るわけではありません

HRTは、血圧の薬とは使う意義が少し違います。

HRTは、もともと身体を正常に保つために出ていた女性ホルモンが閉経して出なくなってしまったので、身体の機能が損なわれないように、薬として女性ホルモンを補いましょう、というものです。
つまり、HRT「本来の状態を保つ」ためのメンテナンス作業といえます。
エストリオール製剤 エストロゲン HRT 関節痛 関節リウマチ 骨粗鬆症 糖尿病 高血圧 脂質異常症 脳卒中 不眠 うつ病 切迫性尿失禁 神経系の異常 頭痛 更年期障害 耐糖能異常 動脈硬化 腎不全 認知機能障害 認知症 骨折 HRT ホルモン補充療法 
女性ホルモンメンテナンスで、健康に年を取る!


ただし、女性ホルモン(エストロゲンプロゲスチンを補充しただけでは片手落ちです。
補った女性ホルモンが正しく働くように、それに見合った運動や食事を心がける必要があります。
⇒運動すればHRTの乳がんリスクが減少

HRTは、前向きに生きる女性を補佐するもの。
故障を防ぎながら 楽しく年を取りましょう、というのが「女性ホルモンメンテナンス」の目的です。

ヒトが生物である限り、身体の老化は、どうしたって止めることはできません。
でも、その老化のカーブを緩やかにして、幸せな高齢期を過ごすことは可能です。
そのために、更年期や閉経周辺期を迎えたら、自分の身体を過信せず、HRT+正しい食事や運動、そして禁煙=女性ホルモンメンテナンスが必須となるのです。


女性ホルモンについての詳細は、こちらをご覧ください。
女性の人生は女性ホルモン次第
更年期を過ぎても元気な秘訣
⇒精巧!女性ホルモン調節システム
⇒女性ホルモンはこうして作られる
⇒ホルモンの非常事態が更年期症状に!

2018年8月3日金曜日

レシピ*低糖質 黒ごまアイス

黒ゴマとカシューナッツと豆乳で作る、砂糖なしのアイスです。
混ぜて固めるだけなので、お手軽です。

低糖質でビタミンたっぷり。
暑さで食欲のないときの栄養補給にも最適です。

 【材料】(7cm×7cmの容器に軽く12個分)
  • 黒ごま 80g
  • カシューナッツ 60g
  • エリスリトール 80g(甘さ控えめ)
  • 卵 2個
  • 豆乳(牛乳でも) 400mL 
  • ごま油 小さじ1

【作り方】
  1. バイタミックスに材料を全部入れて混ぜる。
  2. 容器に分けて冷凍庫へ。
  • 小さいミキサーで作るときは、半量で。
  • 低糖質でなくてよければ、エリスリトールと同量の砂糖を使ってください。
  •  冷凍庫に入れてから、何度か混ぜ直せばコチコチにならずに作れますが、面倒なのではじめから小さい容器に分注してしまいました。
  • カシューナッツは無塩。なければ塩味が付いていても、支障ありません。

ごまは、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛と、ミネラルが豊富に含まれます。
植物にしてはビタミンB群が多いこと、葉酸、ビタミンKが多いことも特徴的です。
不飽和脂肪酸も多いのですが、惜しいことに大部分はオメガ3ではなくオメガ6です。

ちなみに、カシューナッツにはさらに多くのビタミンKが含まれます。
カルシウム 、マグネシウム、ビタミンKといえば、骨を丈夫にするのに必要な栄養素で有名ですね。

たんぱく質も、ごま、カシューナッツともに、大豆に負けないくらい含まれています。

暑いとのど越しのよいお素麺や冷や麦を選びがちですが、これでは糖質ばかりで、かえって暑さに負けてしまいます。
ミネラル、ビタミン、たんぱく質豊富な、黒ごまアイスはいかがですか?

2018年7月25日水曜日

脳は美味しさであなたを騙す!!

暑いですね。
熱中症にご注意ですが、食欲も落ち気味だし、涼をとるために、アイスクリームやシェイクの誘惑に負けてしまう人も多いと思います。

暑いと、スイーツも冷たさと喉ごしの良さを求めて、アイスクリームやシェイクなどの流動食を選びがちです。
アイスクリームやシェイクは、冷たさやのどごしの良さだけでなく、糖質と脂質がたっぷり入っていて、とても美味しいものですね。

これ以外にも、様々な状況で人間の生活に楽しみと彩りを与えてくれるように思える、現代先進国での「美味しい」食品は私たちの周りに溢れかえっています。

美味しさについて考える

でも、「美味しさ」って何でしょうか?
もちろんヒトをはじめとする動物は栄養やエネルギーを食事(食餌)の形でとらないと生存できません。

ですので、生物は食べ物の「味」を感じるように味蕾などのセンサーを発達させて、安全に食べることができ、栄養やエネルギーとなる食物を選別できるように進化してきました。
味覚といえば、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味の5味が有名ですね。
この5味は食物に栄養があるか、毒性がないかを判別するのに役立ってきたと考えられます。

例えば、私たちは、塩分(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質)がなければ、生きていけません。
山間・内陸地域では昔から塩は貴重品でした。
土や泥を食べる植物食の動物は少なくありません。
あれは土や泥のなかに塩味を感じて、塩分を補給しているのです。
塩味を感じ取る味覚は、貴重な塩分を摂取するためのセンサーだったのですね。

甘味について言えば、哺乳類の中で、唾液にアミラーゼを含む種は少数です。
アミラーゼはでんぷんを分解して麦芽糖に分解して甘味を感じさせます。
たまたま、唾液中にアミラーゼを分泌する能力を持った種が、ドングリやナッツ、根菜や球根、未精製の穀物のでんぷん中の糖質を甘いと感じるようになり、穀物を食餌として取り入れていったのです。

肉食目の動物として進化してきた野生のネコ科の動物は、酸味、苦味、塩味しか味覚を持っていません。
酸味は腐敗した食物、苦味は毒性のある食物を警告する役割でしょう。
塩味は特に肉食のネコ科動物にとって肉や血の味で、「美味しい」のでしょうね。

もっとも、聞くところによると最近の飼いネコは、甘いものも好むそうですが…。
家畜化による味覚の破壊でしょうかね。

このように、本来、味覚とは、生物の進化の観点から見れば、安全に食餌を確保するために備わった感覚の1つに過ぎません。

例えば、ゾウやキリンは、海から遠く離れたサバンナに住み、塩分をほとんど含まない木の枝や葉、皮、草などを主食とする植物食のため塩分が不足しがちです。
塩分が不足すると何十キロも歩いて、壁から塩が染み出す洞窟に塩を舐めに行くそうです。
ゾウやキリンは、脳が塩味を感じると同時に、それが「美味しい」=「快い」と感じるように進化したおかげで、わざわざ体力を使って洞窟まで行き、生命を維持することができているわけです。

このように、我々の行動を「快い」というご褒美(報酬)で制御する神経システムが脳内に備わっています。
報酬が与えられたときに快感を感じるように働くこの脳のシステムを報酬系といいます。

「美味しさ」とは、進化に伴って、味覚と報酬系が連携して、得難い栄養素やミネラルなどを摂食させる行動を制御しているうちに発達した感覚と思われます。

実は、この報酬系が、現代文明を生き抜く人間にとっていろいろな問題を引き起こしているのです。

今日は、そんな、味覚と嗜好と報酬系の罠を解明した研究をご紹介しようと思います。

脂肪と炭水化物は、同時に摂るとより満足できる

Supra-Additive Effects of Combining Fat and Carbohydrate on Food Reward

DiFeliceantonio et al., 2018, Cell Metabolism 28, 33–44

【研究の参加者】
 206人の成人

【研究の方法】
 全く同じカロリーとなる量の3種類のスナック食品
  ①主に炭水化物(糖質)を含む(例えばキャンディー)
  ②主に脂肪を含む(例えばチーズ)
  ③脂肪と炭水化物を両方を含む(例えばクリームサンドビスケット)
 の写真を参加者に見せて、その時の脳の活動を、脳の機能情報を測定するfMRI
   (functional MRI、機能的MRI)で計測した。

さらに、1、2、3の食品に含まれる、見た目で推定したカロリーの(密度の)順位を聞いた。
また、どのスナック食品にお金を払う気があるか、その順位を聞いた。


【研究の結果】
 ・脂肪と炭水化物を両方を含むクリームサンドビスケットなどを見た時に、報酬系の神経
  回路がより強く活性化されることが分かった。

 ・試験参加者は②の脂肪の多い食品が高カロリーだとの推定はかなり正確にできた
  が、炭水化物を含む食品のカロリーの推定は個人によってばらつきが大きかっ
  た。

 ・また、試験参加者は脂肪と炭水化物を両方を含むクリームサンドビスケットなどが
  一番お金を払ってもよい、と回答した。

【研究の考察】
脳の報酬系は単に摂取できそうなカロリーの増加に比例して活性化するのではない。
脂質と炭水化物(糖質)を両方含む食品を摂取する見込みが立つと相乗作用が発揮され、より報酬系が活性化する。

これが、脂肪と炭水化物の両方を含むクリームサンドビスケットのような加工食品の過剰摂取の原因の1つと考えられる。

炭水化物(糖質)のみ、脂肪のみの食餌と、炭水化物(糖質)+脂肪の食餌への報酬系の反応では異なるメカニズムが存在すると思われる。

実際に、マウスやラットに炭水化物(糖質)のみ、脂肪のみを好きなだけ与える実験を行うと、マウスやラットは食餌量を自ら調整して体重は変わらないが、炭水化物(糖質)+脂肪の食餌を無制限に与えると歯止めがきかず、たちまち太ることが分かっている。

脳の報酬系があなたを騙して炭水化物(糖質)+脂質を食べさせる

いかがですか?

食べれば速やかに血糖値が上がり、すぐにエネルギーとなる炭水化物(糖質)と、そのままエネルギーとして貯蔵できる脂質が揃っている食物をヒトやげっ歯類は見分けて、好むということですね。

エバーグリーン研究室では、炭水化物(糖質)と脂質の報酬系への影響は以前も、『糖・脂質・塩~おいしさの罠』でお伝えしてきました。
実はこのことは、食品業界ではよく研究され、加工食品開発では常識のことのようです。

食品企業は、報酬系を刺激する=自社製品にいかに消費者を依存させるかの研究に余念なく、またそれを公表することもなかったわけです。

上記の研究の結果は、研究者への企業の資金提供による利益相反もなく、参加者も多い介入研究で、信頼性が高くかなり説得力があります。

やはり、我々が幸せに感じている「美味しさ」は、脳の報酬系が我々の行動を制御するための、感覚や感情の1つに過ぎないのです。

美味しい食品や料理は、脳の報酬系を刺激する糖・脂質・塩などの要素をそろえていけばいくらでも作り出すことができるわけです。

しかし、そこに、報酬系による「おいしさの罠」があることをお忘れなく。
脳は美味しさであなたを騙す!! のです。

先ほど例に挙げた飼いネコのように、文明による家畜化=飽食=美食の環境は、本来の味覚を破壊してしまうようです。
そして、報酬系の「欲望」を満たすために、甘く、コクがあり(脂質)、塩味の効いた美食をたらふく繰り返す飽食を嗜好し、やがて肥満、高血圧、糖尿病をはじめとする不健康に陥るわけです。

報酬系を活性化させる刺激糖+脂質や塩味ばかりではありません。
薬物、アルコール、タバコ、糖・脂質・塩分にまみれた美味と飽食、ギャンブル、セックス、ゲーム、SNS、収集癖、物欲、ファッション、新しいもの好き、これらを得るための貨幣…報酬系を満たす刺激と欲望とその依存には限りがありません。

糖・脂質・塩分などは、滅多にありつけないけれど、おなじみの物質でしたから、環境に過剰に存在しなければ生物にとって問題にはなりませんでした。
しかし、現代先進国では人々がSNSでその日に食べたグルメ食のスナップを競ってアップするなど、美食・飽食の限りを尽くしているように見えます。

さらに、文明が進んで発明・発見された薬物やアルコール、ニコチン、カフェインや、社会システムが生み出した貨幣などがもたらす優越感・射幸心・安心などの、生物として未経験の刺激に報酬系のA10ドパミン神経系が過剰に活性化するのは容易に想像できます。


報酬系~依存 との戦いに勝って、心と身体の健康を保つ

現代文明社会の先進国に住むヒトにとっての報酬系の問題点は、報酬系が「依存」を生みやすいことです。

先にお話ししたように、もともと報酬系は、得難い栄養素などを苦労を労わずに探させるために、進化に伴って脳が仕組んだものでした。
昔々、塩や、果物の中の糖類などは、容易く手にはいるものではなかったからこそ、報酬系は努力してでも手に入れさせるように仕向けるようになったのです。
ですから報酬系の指令には強力な強制力があります。

しかし、現代文明社会の先進国に住むヒトは上にあげた「欲望」を容易に満たすことができるので、報酬系の指令はだんだんエスカレートしていきます。
「依存」を招く事柄の特徴は、それを満たしてもまた更に「欲望」が「もっと、もっと」と輪をかけて湧いてくることです。
その結果、報酬系の指令を満たし続けざるを得なくなる「依存症」に陥ります。
薬物依存だけでなく、アルコール、ニコチン、カフェイン、美味と飽食、ギャンブル、セックスなど依存症を引き起こす欲望はなんと身近なものでしょうか。
依存症は「病気」というより、報酬系が引き起こす過剰な環境への適応障害という側面が大きいといえるでしょう。

現在の先進諸国と呼ばれるコミュニティの貨幣経済に代表される社会システムも、社会の構成員の多くを占める企業などの様々な法人や、政治・行政組織やその外郭団体などに属する人々が、「貨幣依存症」に陥って行き詰まっているのかもしれません。
個人的には、ヒトは文明を開いて約1万年を経た現在、様々な依存症の1つとして「貨幣依存症」の問題点をやっと認識し始めたところと感じています。
貨幣依存症」は収入や資産の多いお金持ちや、地位が高いとされる人、国家資格取得者や公務員などの身分を保証されているという人に好発しているようですね。
恐らく、これらの人々は、貨幣を手に入れる目算が付くと沢山ドパミンが分泌され、充足感を得るのでしょう。
同時に、裕福であることに強迫されて、失うことが恐ろしくなり、ますます「貨幣依存症」に陥っていくのでしょうね。
単なる依存症より質が悪い気がします。

なぜこんなにも様々な依存が蔓延るのでしょう?
人間は文明を発明し、ヒトの生存に有利な環境を手にしましたが、脳の報酬系に代表される我々の体の生物学的(生理学的)システムは、文明化された環境に適応するためのものではなかったことを忘れてはなりません。
現代文明の利便性に、生物としてのヒトは適応できていないのです。

現代文明社会の先進国に住むヒトの健康と心の豊かさの鍵は、欲望を満たすことに溺れがちな自分を客観視して、報酬系ではなく、前頭葉の機能=理性で判断し自制することにあるようです。
一方で、ホモサピエンスになって初めて発達した前頭葉の新機能としての理性は、古い脳機能である報酬系のA10ドパミン神経系の生理的指令に打ち勝つことが困難のようです。

「欲望」という報酬系の指令を疑うことなく素直に従っていては、健康や心の豊かさは遠のいていくばかりでしょう。

また、「欲望」と、「それを満たせない不安と恐怖」を巧みに刺激し、貨幣獲得や購買行動を制御しようとする他者が発信する「情報」=広告や商品の宣伝、メディアコンテンツあるいは保険などを鵜呑みにしないという、客観性も必要となるでしょう。

貴方が感じている「美味しさ」「愉快」「快楽」「幸福」「裕福」「安心」が、本当に健康や心の豊かさに結び付いているか、点検してみてもよいかもしれません。

自分の感覚や価値観を常に点検する姿勢が必要なようです。

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2018年4月4日水曜日

運動すればHRTの乳がんリスクが減少

運動を習慣にしている女性では、乳がんのリスクが低いことは多くの研究で証明されています。
今日は、女性ホルモン(エストロゲン)と運動の関係についての研究を紹介します。

エストロゲンは、体の中で酵素の働きによって少しずつ形を変え、最終的に尿中あるいは糞便中に排泄されます。
このように、化学物質が体の中で形(構造)を変えることを「代謝」、形が変わった物質を「代謝物」といいます。

形が変わると、作用も変わります。
エストロゲンの代謝物の中には、作用の強いものもあれば弱いものもあり、また、発がん性と関係のあるものもあります。

エストロゲンがどのようなタイプの代謝物に変化するかに、運動が関係しているというデータが、アメリカで報告されています。

運動で乳がんリスクが低下する

以前、HRT を行うことで乳がんのリスクが高まると、多くの方に誤解されているというお話をしました。
HRTは乳がんの原因になる??   

最近のデータでは、HRTにより乳がんによる死亡はむしろ減少することが確認されています。
18年のフォローでHRTの安全性を検証

とはいっても、HRTを行うか否かにかかわらず、乳がんにはなりたくないですね。

運動を習慣にしている女性では、乳がんのリスクが低いことは多くの研究で証明されています。

今回紹介する研究は、運動が乳がんのリスクを減らす理由を検討したものです。
若い女性を対象に、運動することでエストロゲンの代謝が乳がんになりにくい方向に進むようになることが報告されました。
 Smith AJ et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2013 May;22(5):756-64.

【臨床試験報告】
対象:運動習慣のない18-30歳の391人の女性を、運動を行う群212人と行わなわない群179人に分けた。
方法:運動を行う群では1回30分間の有酸素運動を週に5回のペースで16週間行った。
16週間後に、運動を行った群と行わなかった群とで、血液中のエストロゲンの代謝物の濃度を測定した。
結果:運動を行った群では行わなかった群に比べて、エストロゲンの代謝物のうち2-OHE1(2-ヒドロキシエストロン)に対する16α-OHE1(16アルファ-ヒドロキシエストロン)の割合が統計学的に有意に少なかった(p=0.045)。

まとめると 
  • 血液中のエストロゲンが代謝された結果できる物質の中で、16α-OHE1に対する2-OHE1の割合が高いと乳がんになりにくい。 
  • 運動すると16α-OHE1に対する2-OHE1の割合が増える。 
  • このような仕組みで運動すると乳がんになりにくくなることがわかった。 

つまり、運動すると、エストロゲンの代謝物のうち、16α-OHE1に対する2-OHE1の割合が高くなることで乳がんになりにくくなると考えられます。

HRTでエストロゲンを補う場合も、同様に運動することで乳がんのリスクを減らすことができるといえるでしょう。

HRTで補うエストロゲンは、若いときの分泌量に比べればほんの少量ですから、過度な運動は必要ありません。
とはいえ、「HRTをしていれば安心」と思わずに、「HRTで身体を若く保っているのだから、それなりの運動をしよう」と意識することは必要です。

エストロゲンの代謝とリスクの関係

下の図は、エストロゲンの代謝経路を示しています。 

エストロゲンの代謝経路 ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ CYP COMT エストロン 
エストラジオールは、HRTに用いられるエストラーナテープやジュリナなどの主成分。
エストリオールは、HRTに用いられるホーリンなどの主成分。
ピンクは活性が高い代謝物、緑は活性が弱い物質を示す。

赤枠16α-OHE14-OHE1は、活性が高く悪玉と考えられます。

反対に、2-メトキシエストロンや2-メトキシエストラジオールなどは、ほとんど活性を示しません。
「メトキシ〇〇」というのは「CH3-O:メトキシ基」が付いた形です。
このようにメトキシ化された化学構造になると、体外に排泄されます。

したがって、エストラジオールからエストロンに代謝されたあと、16α-OHE14-ヒドロキシエストロン(4-OHE1)ではなく、2-OHE1の方向に代謝が進めば、リスクを減らすことができるといえます。
ここで働いているのはシトクロムP450 1A1(CYP1A1:シップワンエーワンと読みます)という酵素です。

また、4-OHE1から4-メトキシエストロンへの代謝が進めば、悪玉が早く身体からなくなります。
この反応は、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT:コムトと読みます)という酵素が働くことで進みます。
運動することでCOMTの活性が高まり、16-OHE14-OHE1が作られにくくなると考えられます。

細胞分裂が異常に速まって歯止めが効かなくなっているのががん細胞です。
エストラジオール16α-OHE1は細胞が分裂するのを速め、2-メトキシエストラジオールはその作用を抑えるという報告もあります。
Lewis JS et al. J Mol Endocrinol. 2005; 34(1): 91-105.

また、エストリオールは60歳代以降の方のHRTに勧められるエストロゲン製剤ホーリンの主成分ですが、エストリオールからは他の物質に代謝される矢印は出ていません。
エストリオールも体外に排泄されやすい物質です。
したがって、エストリオールが乳がんを増やすことはありません

経口のエストラジオールは 16α‐OHエストロンに代謝されやすい

エストラジオールの経口薬は、飲むと腸管から吸収されて、肝臓で90%が代謝を受けます。
実はこのとき、ちょっと困ったことがあります。

肝臓には図の17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17β-HSD)の6型CYP3A4が豊富にあるので、
エストラジオール → エストロン → 16α-OHE1
の反応が進みやすいと考えられます。

エストラジオールの経口薬にはジュリナがあります。
ジュリナの臨床試験の結果を見たところでは、代謝が原因となるような副作用は認められていませんが、経口薬では理論的には16α-OHE1が多く産生される可能性があります。

経口薬を使用する場合は、運動をしたほうがより安心と言えるでしょう。
エストラジオール製剤の種類についてはこちらをご覧ください。

経口のエストラジオールでは薬の常用、飲酒の習慣もリスクに

薬によってはCYP3A4を増やしてしまうものがあります。
飲酒の習慣のある人もCYP3A4がたくさん出ています。

他の薬を常用する必要のある人や飲酒の習慣のある人では、経口薬でのHRTは避けたほうがよいかもしれません。

禁煙はHRTでは必須

喫煙の習慣はCYP1B1を増やします。
その結果悪玉の4-OHE1が増えてしまうと考えられます。

喫煙は静脈血栓塞栓症のリスクでもありますから、HRTそのものもお勧めできません。
そもそも、喫煙の習慣があるということは、“若さも健康も諦め、老後は呼吸困難と寝たきりに甘んじる”ということと同義だと思います。

喫煙者は、HRTを行う前に禁煙することが必須でしょう。

喫煙は「ニコチン依存症」という立派な病気です。
禁煙治療は新薬が開発され、とても進歩しています。
諦めずに是非禁煙しましょう。


HRTに関するこれまでの記事は、こちらをご覧ください。

女性の人生は女性ホルモン次第
更年期を過ぎても元気な秘訣
精巧!女性ホルモン調節システム
女性ホルモンはこうして作られる
ホルモンの非常事態が更年期症状に!
HRTは乳がんの原因になる??
HRTで使われる薬剤~エストロゲン製剤
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18年のフォローでHRTの安全性を検証 
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