⇒脂肪をためる仕組み
今日はいよいよ、エネルギーを貯めこみすぎて景気が悪くなった身体での脂肪細胞エネルギー銀行の末路をお話しましよう。
さて、白色脂肪細胞はまず、前駆脂肪細胞という脂肪細胞の赤ちゃんが、脂肪を貯えていって脂肪滴(脂肪の塊)を作り、成熟脂肪細胞になるのでした。
下の絵を見てください。
善玉の成熟脂肪細胞から悪玉の肥大化脂肪細胞へ |
優良企業の成熟脂肪細胞
前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞に成長した白色脂肪細胞は、上の絵のように適正な大きさの時には、アディポネクチンというインスリンの働きを助ける物質を出しています。
脂肪細胞から出たアディポネクチンは、血液に乗って全身の細胞に行きわたります。
そして、インスリンが働きやすくしたり、脂肪を燃やしたり、炎症を抑えたりして、動脈硬化にならないように働いています。
心臓に対しても、太らないように保護しています。
善玉社員である成熟脂肪細胞は、お客様である全身の細胞に役に立つアディポネクチンを貸出しているわけです。
優秀な銀行員ですね。
同時に、インスリンの指令で、食事で血液に入ってくる脂肪酸やグルコース(ブドウ糖)をせっせと脂肪にして脂肪滴にため込みます。
貯めこむ脂肪滴の量が適正な間は、成熟脂肪細胞は優良社員なのですが、脂肪滴は段々と大きくなります。
脂肪滴が大きくなりすぎると、成熟脂肪細胞は肥大化脂肪細胞になります。
脂肪滴が大きくなりすぎ、脂肪細胞は悪玉社員に
こうなると、銀行員は一気に悪玉社員に変身。
高血圧の原因となるアンジオテンシノーゲンや血が固まる原因となるPAI-1などをまき散らして、全身の細胞に迷惑をかけます。
反対に、正義の味方だったアディポネクチンは出なくなって、インスリンの指令が届きにくくなリます。
そのため、脂肪酸やグルコース(ブドウ糖)を取り込む能力にも限界がきます。
取り込まないだけではなく、肥大化脂肪細胞は大きくなりすぎて苦しいので、脂肪滴の中性脂肪を分解して、脂肪酸を血液に放出してスリムになろうとします。
でも、わずかな効果しかありません。
さらに悪いことに、脂肪酸の血液中の濃度が高くなると、インスリンはさらに働きにくくなります。
となると・・・血液中には脂肪酸があふれてしまいます。
肥大化脂肪細胞がパンパンになると、脂肪細胞は増える
こうなると、脂肪を貯めるために新しい細胞を増やすしかありません。
赤ちゃんの前駆脂肪細胞が成熟脂肪細胞になります(分化)。
新しくできた成熟脂肪細胞は細胞分裂して仲間を増やし、どんどん入ってくる脂肪酸やグルコース(ブドウ糖)に対処しようとします。
つまり、脂肪滴がパンパンに膨れて肥大化すると、細胞分裂する。
増えた成熟脂肪細胞にさらに脂肪をため込み、肥大化脂肪細胞が増える、
という悪循環に陥ります。
脂肪組織がどんどん大きくなって、身体はますます太るわけです。
ちなみに、1つの脂肪細胞の容積は最大400倍にも膨れ上がるといいます。
健康な成人では脂肪細胞の数は300億個といわれていますが、肥満者では最大600億個もの脂肪細胞を抱えていることもあります。
白色脂肪細胞の成長と肥大化 |
エネルギー銀行暴走!炎症物質を出し始める
こうなると、もう、インスリンの指令もまったく受け入れられなくなります。このような状態をインスリン抵抗性といいます。
命令系統が破たんして、悪玉社員ばかりになって、通常業務ができなくなったエネルギー銀行は、暴走を始めます。
脂肪酸やグルコース(ブドウ糖)を取り込む代わりに、下の絵のような、炎症を起こす物質を出し始めるのです。
肥大化脂肪細胞とTNF-α |
ちょっと、聞きなれないかもしれませんが、この二つがエネルギー銀行を破たんさせる悪者です。
限界に達した肥大化脂肪細胞は、まず、MCP-1を出しします。
MCP-1は、血管を流れる白血球の1種の単球を活性化させて、マクロファージにして自分の周りに呼び寄せます。
マクロファージはTNFαを出して、炎症を引き起こします。
こうして、肥大化白色脂肪細胞がたくさんある内臓脂肪組織は、もはや脂肪を貯めておくエネルギー源銀行ではなく、炎症が絶えない「火の車」の組織になっていくのでした。
この「炎症」が絶えない状態がヤバイ!!のです。
内臓脂肪の炎症が続くと、糖尿病だけでなく、心筋梗塞や脳卒中をひき起こす動脈硬化や、癌の発病リスクも上がることがわかっています。
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