いきいき!エバーグリーンラブ: 糖質は食べ物でとる必要はない?

2014年8月4日月曜日

糖質は食べ物でとる必要はない?


みやざきちかし

糖質制限に関心がある人たちには、グルコース(ブドウ糖)を極端に悪者にしてしまう場合もあるようです。
糖質は体内で作られるので、食べ物でとる必要はない、といった極端な意見もあります。
でも、グルコース(ブドウ糖)が重要な栄養であることに変わりはありません。
しっかりと、グルコース(ブドウ糖)の身体での役割を理解しておきましょう。

この記事をよく理解するため下記のコンテンツもどうぞ。
糖をためる仕組み、脂肪を消費する仕組み
血糖値だけでない空腹感のメカニズム

血液中に必要なグルコース(ブドウ糖)の量は?

私たちヒトは、血糖値を70-100mg/dL(血液1リットル中に0.7-1g)ぐらいに保つようにプログラムされています。
血糖値を100mg/dL(血液1リットル中に1g)に保つということは、60kgの人の血液量(血漿=血液の液体成分)は約3リットルですので、全血液(全血漿)中に約3gのグルコース(ブドウ糖)が溶けている状態ということになります。

なぜ、血糖値を100mg/dLに保つ必要があるのかというと、グルコース(ブドウ糖)を常に必要とする臓器(細胞)があるからです。
その代表が赤血球と脳と網膜の細胞です。
中でも赤血球は、グルコースが唯一のエネルギー源。
赤血球は身体の隅ずみまで酸素を運び、脳は考えたり、危険を察知したり、常に情報を処理していますし、網膜はどんな時も光を感じ続けるというように、常に一生懸命に働いている必要があるため、手っ取り早いエネルギーがー必要なのでしょう。


これらの臓器は自分でエネルギーを貯蔵する仕組みは持っていなくて、使うときに使う分だけ細胞の外・・・つまり血液(細胞間液)からエネルギー源を取り込みます。
このエネルギー源として好まれるのがグルコース(ブドウ糖)。
だから、血液中に常にグルコースを確保しておく必要があるのです。
その適量が血液1リットル中に1g。
濃度で表すと100mg/dLになります。

では、他の臓器はどうなのでしょう。
筋肉などほとんどの臓器のエネルギー源は、中性脂肪(脂肪酸)やケトン体です。
つまり、グルコース(ブドウ糖)以外のものを利用しているのです。
これは、赤血球や脳などグルコースが必要な細胞にグルコースを回すためのシステムなのでしょうね。

血液中のグルコース(ブドウ糖)の量はこうして調節する


さて、常に血糖値を100mg/dLぐらいに保つためには、結構たいへんな仕組みが必要です。
まず大まかに状況を分けて考える必要があります。


①食事が定期的に取れる場合の食後など

・肝臓が食事から得た、グルコース(ブドウ糖)を血液中に出したり、グリコーゲンにして肝臓の中に貯めたりして調節する。
・だぶついたグルコースはインスリンが処理して100mg/dLまで下げる。
・しばらくは血糖値が100mg/dLの状態が維持される。

②前回の食事から時間がたっているとき(寝ているときなど)

・肝臓はグリコーゲンを分解して、グルコース(ブドウ糖)を血液中に出して、調節しようとするが、長時間はむりで、グリコーゲンがなくなってしまう。
・そこで、肝臓は糖新生というシステムを働かせて、グルコース(ブドウ糖)を作りだして、血液に放出して、血糖値を100mg/dLに保つ。

けっとういじ しすてむ ぐりこーげん ぶんかい とうしんせい
血糖維持システム(グリコーゲン分解・糖新生)


つまり、外からのグルコース(ブドウ糖)だけに頼るのではなくて、主に肝臓と腎臓(すこしだけ腸管)にグルコース(ブドウ糖)を作ってもらい一定の濃度を保つシステムを働かせているわけです。

わかりにくいので、もう少し詳しく説明しましょう。

食後の調節の仕方

食事をすると、食事の中の糖質が肝臓に吸収されて、肝臓は血糖値を100mg/dLに保つように調節します。
もし足りなければ、グルコース(ブドウ糖)を放出し、余っていれば肝臓の中でグリコーゲンとして貯えます。
肝臓に貯えておけるグリコーゲンの量(グリコーゲンプール)は決まっていて、肝臓の重さの8%(大人で100-120 g)ぐらいとされます。
グルコースがグリコーゲンとして貯えられる量に換算すると、130gぐらいの計算になります。
これ以上グルコース(ブドウ糖)があると、肝臓から出て行って血糖値が100mg/dL以上に上がってしまいます。
つまり、グルコース(ブドウ糖)がだぶついた状態なのですね。

それを膵臓は察知して、インスリンを速やかに出します。
そして、インスリンが指令を出して、だぶついたグルコース(ブドウ糖)をせっせと筋肉の細胞に取り込ませてグリコーゲンとして貯えさせます。
全身の筋肉の重さがあるので、大半のグルコースが筋肉に貯蔵されます。
でも、筋肉に蓄えられるグリコーゲンは、筋肉の重さの1~2%とされるので、あまりにグルコースが多いと貯蔵しきれません。

残りのグルコース(ブドウ糖)はどうなるかというと、脂肪細胞に取り込まれ、中性脂肪に組み替えられます。
こちらは際限なく取り込めるので、脂肪細胞は際限なく太ってゆくのでした・・・
⇒インスリンの働きはこちらをどうぞ


食事から時間がたった時の調節の仕方

血液中のグルコース(ブドウ糖)が足りなくなると、肝臓は肝臓の中に貯えてあるグリコーゲンを分解して、グルコース(ブドウ糖)を血液中に出して調節します。
でも、寝ているときなどではこれだけでは足りなくて、グリコーゲンは少なくなっていきます。

そうなると、体(肝臓と腎臓)は、糖以外の成分を材料にして糖を作り始めます。
これを糖新生といいます。
糖新生の原料とエネルギーは糖原性アミノ酸とよばれるアミノ酸やピルビン酸、乳酸、中性脂肪、グリセロールです。

食事からグルコース(ブドウ糖)が供給されるときにはそれで血糖値を保ち、足りなくなったら、肝臓でグリコーゲンを分解して補い、さらに糖新生でも作る。
そのほうが安定して血糖値を保てます。

糖新生は常に働いていますが、特によく働くのは、食事時間の間隔があいたときや、寝ているときです。
また、運動しているときは、筋肉が乳酸を生み出すので、これも利用します。
運動中も、食事はとれませんので、とても理にかなっています。

ここまでの仕組みを血糖値とインスリンの分泌、糖新生との関係の図にまとめてみました。

けっとうち いんすりん とうしんせい ケットウチ インスリン トウシンセイ
血糖値とインスリン分泌と糖新生


糖新生の原料とエネルギーは、どこから供給されるのでしょうか?
糖原性アミノ酸や、乳酸、中性脂肪なども、食事をした後数時間は血中に残っていますので、まずは、これらを原料とエネルギーとして糖新生が起こります。

でも、寝ているときや、食事の間隔があいたときなどは、血液中に原料がなくなってしまいますね。
ご安心ください。
糖原性アミノ酸は筋肉を分解して取り出され(筋肉は主にアミノ酸の連なったタンパク質)、中性脂肪は脂肪組織から取り出されます。

そう、ここでめでたくお腹の脂肪が使われるんです!
筋肉を分解して原料の糖原性アミノ酸を作り出して、脂肪から中性脂肪を取り出して、さらに脂肪酸にして糖新生のエネルギー源とします。

ちなみに、筋肉や肝臓などに貯えられたグリコーゲンは、利用されないのか?というと、肝臓のグリコーゲンはお話ししたように血糖の維持に使われますが、筋肉のグリコーゲンは、筋肉だけで消費されて血糖の維持には使われません。

血糖値の調節システムには長い長い歴史がある


でもどうして、こんなに複雑な仕組みが備わったのでしょうか?

我々の祖先は常に飢餓と戦ってきたのです。
食事も不定期で、食事から常に一定の糖質を摂れるとは限りません。
そのために、摂取できたグルコース(ブドウ糖)をムダなく脂肪として蓄え、必要な時にそれをエネルギーにしてグルコース(ブドウ糖)を作り出すシステムを編み出しました。
こうすれば、炭水化物・糖質を食事で取れないときも血糖値を一定に保てます。

いっぺんにたくさんのグルコース(ブドウ糖)を食べられるのは、果物や穀物が実るような限られた期間(季節)だけでしたから、インスリンが働き続ける期間も、一時的なものでした。

こんなに、いつもグルコース(ブドウ糖)を摂取している状況になったのはごく最近。
なので、私たちの体は、飢餓の時代の遺伝子の指令に従って、それでも一生懸命、グルコース(ブドウ糖)を蓄えようとします。
⇒人類の食性の変化の歴史についてはこちらをどうぞ

血糖値が上がりすぎると、グルコース(ブドウ糖)が毒性を発揮してしまいますから、インスリンはびっくりして猛烈に働き続けているんです。
このように、もともとの使われ方と違うインスリンが、身体によくない作用を持つことになるのです。
このお話はまた、別な機会にお話ししますね。

そして、インスリンや膵臓や身体の細胞が対応しきれなくなってしまった結果起こるのが糖尿病(2型)・・・
⇒グルコース(ブドウ糖)の毒性についてはこちらを


今、私たちの環境は、私たちの体の仕組みが作られてきた環境からずいぶん離れてしまいました。
その分、目に見えないところで、いろいろな負荷がかかているようです。

糖質(グルコース)は体内で作られるので、食べ物でとる必要はない、といった意見には問題がありますが、現代の食生活の食品にはあまりにも単純糖質が多く含まれています。
糖質制限を実践するかどうかはさておき、普通の食生活では、血糖値が上がりインスリンが過剰に働きがちなことに注意しておく必要はありますね。


私たちの体は常にエネルギーを取り込み、それを消費・発散させています。
これをよどみなく行っているのが生命といえます。
その1つの象徴的な生理現象が、血糖値を100mg/dL(血液1リットル中に1g)に保つということ、60kgの人で、全血液中に約3gのグルコース(ブドウ糖)が溶けている状態を保つことなのです。

今回のコンテンツに特に関連が深いのは

糖をためる仕組み、脂肪を消費する仕組み
空腹感を抑える食べ方
血糖値だけでない空腹感のメカニズム
インスリンは肥満ホルモン?!
脂肪を貯めるしくみ
りんご型肥満でおなかが炎症
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栄養素や血糖値・糖質や糖尿病について、こちらもご覧ください。

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